めまぐるしく変化するキャッシュレス決済の動向を伝える本連載。今月のキャッシュレス関連のニュースの中から、マネー担当の編集部員やライターが気になったものをピックアップしてお伝えします。記事後半では、現在開催中のキャッシュレス決済関連キャンペーン情報も掲載していますので、こちらもぜひチェックを!
2023年4月のトップニュースは、Yahoo!ショッピングが本格展開を始めた「おトク指定便」です。「余裕のある配達日」をユーザーが指定すると、ショップ側がユーザーにPayPayポイントを付与するというユニークな取り組みとなっています。昨今ニュースなどで報じられることが増えている、「物流の2024年問題」とともに、仕組みやメリットを解説します。
このほか、今月は証券会社とポイントプログラムを組み合わせた動きが目立ちました。「SMBC日興証券」「PayPay証券」「楽天証券」のそれぞれの動きをまとめてご紹介します。
急がない配達にメリット⁉ Yahoo!ショッピングの「おトク指定便」とは?
「物流の2024年問題」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 来年2024年4月から適用される「働き方改革関連法」により、トラックドライバーの時間外労働の上限が年間960時間に制限されるようになります。これにより、慢性化していたトラックドライバーの長時間労働の是正が期待されるいっぽう、労働時間の減少によるドライバーの収入減などの理由により、多くの離職者が生まれる可能性も指摘されています。
物流業界は現時点でも人手が足りていないと言われていますが、2024年4月以降はその傾向に拍車がかかり、物流の広範囲にその影響が及ぶことが懸念されているのです。
2024年4月以降、物流に大きな影響が?
「物流の2024年問題」の影響は、当然ながら、私たちが利用する通販やECサイトの商品の配送にも及ぶことが考えられます。そんな中、「おトク指定便」というサービスの本格展開を始めたのが、ECサイト大手のYahoo!ショッピングです。これは、同サイトで買い物をしたユーザーが、「余裕のある配達日」(急がない配達日)を指定すると、指定日によってあらかじめ決められた「PayPayポイント」がユーザーに付与されるという、ユニークな内容となっています。
2023年4月より、Yahoo!ショッピングの全ストアに本格展開された「おトク指定便」。ユーザーへのサービス提供の有無は出店するストア側が任意で決める仕組みです。届け日は最大14日後まで、ユーザーに付与するポイントも1〜100ポイントの間でストア側が設定できます(画像はヤフーのプレスリリースより)
「おトク指定便」は2022年8月末から2023年3月末にかけて、Yahoo!ショッピングの一部店舗で実証実験が行われていました。それによると、この間、該当する店舗の全注文者の約51%のユーザーが、「おトク指定便」を利用したそうです。この結果は、ヤフーが想定していた以上の利用率だったとのことで、今回、Yahoo!ショッピングの全ストアに本格展開するはこびとなったようです。
ヤフーによると、現在、Yahoo!ショッピングでは、全体の注文の約8割は「届け日指定のない注文」となっており、そのような注文は原則として、各ストアが設定する最短の日程で商品が発送されているそうです。
届け日を指定しないユーザーが、「届け日を本当に気にしていない」のか、あるいは、上記のような仕組みを知ったうえで「最短での発送を期待してそうしている」のかまではわからなかったわけですが、いずれにせよ、8割の注文が機械的に最短で発送されていることから、出荷・配送作業には一定の負担がかかっていることは容易に想像が付きます。
「おトク指定便」では、ユーザー側にポイントというメリットを提示することで、「受け取るのは遅くてもいい」と考えるユーザーを可視化することができます。それにより、出店しているストアや配送業者の側にも、出荷作業や配送作業の分散・軽減といったメリットが期待できるわけで、なかなか合理的な仕組みと言えそうです。
「おトク指定便」の画面イメージ(画像はヤフーのプレスリリースより)
近年、ECサイトの普及などを背景に、宅配便の取扱件数は増加の一途をたどっています。国土交通省によると、2021年の宅配便の総件数は49億5,323万個と50億個に迫っており、特に、直近5年間で約9.3億個増と、その急増ぶりは明らかです。
これにともない、1回の配達で荷物を届けられない「再配達」も物流業界の懸念材料となっています。2022年10月期の調査では、宅配便の総件数のうち約11.8%が再配達となっており、これを労働力に換算すると、年間約6万人分のドライバーの労働力に相当すると言われています(出典:「宅配便の再配達削減に向けて・国土交通省」)。
これらは当然、前出の「物流の2024年問題」にも大きく影響してくることから、国土交通省は、今月2023年4月を「再配達削減㏚月間」とし、再配達削減に向けた取り組みを強化しています。具体的には、「時間帯指定の活用」や、「コンビニでの受け取り・宅配ロッカー・置き配など、多様な受け取り方法の活用」など、受け取り方の工夫を利用者に推奨しています。しかしながら、こうした「努力」だけではなかなか状況が改善しないのも事実でしょう。
今回紹介したYahoo!ショッピングの「おトク指定便」は、直接的に再配達を減らす取り組みではありませんが、ECサイト側からメリットを提示して「余裕のある配達日」をユーザー側に選ばせることで、物流分野における労働力不足に対する具体的な解決策になっている点が興味深く感じられます。
アメリカでは、Yahoo!ショッピング同様「ゆっくり届ける代わりに割安にする配送」が、コスパやサステナブルなどの面で消費者からの支持を集めているようです。「おトク指定便」も、「少しでも早く」を追求してきた国内ECサイトにおける配送のあり方に一石を投じるものになるかもしれません。
近年は、クレジットカードを用いた積立投資や、ポイントを使った投資など、証券とポイントサービスとの関係性が強まっています。今月は、3つの証券会社からポイント関連の新しい動きがありました。ここで、それらをまとめてご紹介します。
SMBC日興証券は、2023年4月21日より、三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)の共通ポイントである「Vポイント」(運営は三井住友カード)を導入すると発表しました。
Vポイントは2020年6月に、三井住友カードの旧ポイントである「ワールドプレゼント」と、三井住友銀行の旧ポイントである「SMBCポイント」が統合され、SMBCグループの共通ポイントとして生まれたポイントです。貯めたVポイントには、Visa加盟店で買い物ができるスマホアプリ「Vポイント」への残高チャージや、三井住友カードの利用額への充当、三井住友銀行の振込手数料の割引、他社ポイントへの移行など多様な使い道があります。2024年春には、「Tポイント」との統合が目指されており、今もっとも勢いのあるポイントのひとつと言ってもいいでしょう。
存在感を強めているSMBCグループのVポイント(画像は三井住友カードのプレスリリースより)
SMBC日興証券では、「日興ファンドラップ」の契約者に対し、月末時点の時価残高に応じて、毎月Vポイントが付与されることになります。
年間の付与率は、月末時点の時価残高1億円以上で0.10%、同3,000万円以上1億円未満で0.05%、同1,000万円以上3,000万円未満で0.03%、同1,000万円未満で0.01%となっています。たとえば時価残高が1億円の場合「1億円×0.10%÷12≒8,333ポイント」が毎月付与されます。
本サービスを利用するには、「日興ファンドラップ」の申し込みとともに、Vポイントサービスへの申し込みも必要です。また、今後は、SMBC日興証券が実施する各種キャンペーンにおいても、Vポイントを貯めることができるようになる予定とのことです。
PayPay証券は、スマホ決済サービス「PayPay」内のミニアプリで有価証券の売買ができる「PayPay資産運用」において、あらたに「PayPayポイント」を使って有価証券を買い付けできる機能を追加しました。
「PayPay資産運用」での有価証券の買い付けにPayPayポイントが使えるようになりました。買付対象銘柄は、「PayPay資産運用」で取り扱っている米国ETF17銘柄と投資信託9銘柄(2023年4月8日時点)です(画像はPayPay証券のプレスリリースより)
2022年8月に始まった「PayPay資産運用」は、PayPayアプリから証券口座の開設や有価証券の売買ができるサービスです。これまでは、ユーザーがチャージするタイプの残高である「PayPay残高(PayPayマネー)」のみ、有価証券の買い付けに利用できましたが、2023年4月8日より、買い物などで付与されるPayPayポイントでも、有価証券の買い付けができるようになりました。
買付金額はPayPayマネーとPayPayポイントを合算することができ、100円から1円単位で利用が可能です。保有している有価証券を売却した場合は、PayPay残高(PayPayマネー)にチャージされ、PayPayでの買い物などに利用できる仕組みです。
楽天証券は、2023年6月買付分より、投資信託の積み立ての決済に楽天カードを利用した際のポイント付与率を引き上げると発表しました。
楽天証券がクレカ積立でのポイント付与率アップを発表(画像は楽天証券のプレスリリースより)
引き上げ率は、以下のとおりとなっており、楽天カードの種別によって異なります。また、今回のポイント付与率引き上げの対象となる投資信託は、信託報酬のうち、楽天証券が受け取る手数料(代行手数料)が年率4.0%未満のものです。同手数料が4.0%以上の投資信託の場合は、これまでどおり1.0%のポイント付与率が適用されます。
楽天カード:0.2%から0.5%へ
楽天ゴールドカード:0.2%から0.75%へ
楽天プレミアムカード:0.2%から1.0%へ
この動きの背景には、2024年1月から開始予定の新NISAの存在がありそうです。新NISAでは、投資枠が年間最大360万円(つみたて投資枠:120万円・成長投資枠:240万円、併用可能)となり、現行の年間投資上限額(つみたてNISA:40万円・一般NISA:120万円、併用不可)から大幅に拡大します。つまり、毎月10万円まで非課税枠で投資信託の積み立てができるようになるわけです。
現在、国内の証券会社のクレカ積立の上限額はどこも月5万円に設定されています。楽天証券も、楽天カードでの積み立ての上限額は月5万円です。いっぽう、楽天証券では楽天キャッシュ(楽天カードでチャージできる電子マネー)でも投資信託の積み立てが可能で、こちらの上限額も月5万円となっています。
これらは併用が可能なので、楽天証券を使えば、理論上、新NISAの積み立ての上限である月10万円を全額キャッシュレスで積み立て、ポイントを最大限受け取ることが可能です。楽天証券によると、このようなメリットのある証券会社は楽天証券のみとのことで、ポイント好きユーザーの関心を呼びそうです。
JR西日本の駅ナカ店舗にて、2023年春に誕生したJR西日本グループの共通ポイント「WESTER(ウェスタ―)ポイント」のスタートキャンペーンが実施中です。WESTERポイントは、通常110円の買い物につき1ポイント貯まりますが、同キャンペーンでは、対象の駅ナカ店舗で一度でもWESTERポイントを貯めた場合、別途150ポイントがプレゼントされます。150ポイント獲得のチャンスはキャンペーン期間中に計7回あり、各回ごとに150ポイントもらえます(スケジュールの詳細は公式サイトで確認できます)。貯めたポイントは1ポイント=1円として買い物などに使えます。
実施中〜2023年8月17日(木)※この間、対象店を変えながら全7回実施予定
https://www.westjr.co.jp/press/article/2023/04/page_22361.html
イオン系列の電子マネー「WAON」が、期間中に合計5,000円以上チャージした人を対象に、抽選で1,500人に1万ポイント(WAON POINT)が当たるキャンペーンを実施しています。5,000円のチャージをひと口として応募扱いとなり、チャージ額が多いとその分抽選口数が増える仕組みです。
実施中〜2023年5月15日(月)
https://www.waon.net/campaign/20230417_waon-charge/
(執筆協力:大正谷成晴)
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