購入回数や購入額などによって会員をランク分けし、ポイントなどの特典を還元する「会員ランク制度」。元々はネットショッピングやアパレル、コスメなどでよく行なわれていたマーケティング施策ですが、今ではさまざまなジャンルで活用されています。2023年10月1日からは、JR東日本でも「JRE POINTステージ」という新サービスがスタートします。いったいどのような内容なのでしょうか? 特典や条件などを紹介するとともに、筆者がどのステージを狙えそうか試算した結果もお伝えします。
「JRE POINTステージ」のスタートは2023年10月ですが、ステージを決める“ポイントの判定期間”はすでに3月から始まっています
「JRE POINTステージ」を説明するにあたってまず知っておきたいのが、JR東日本グループの共通ポイント「JRE POINT(ジェイアールイーポイント)」です。「えきねっと」でのきっぷ購入(JR東日本エリアの新幹線や特急列車)、駅ナカの加盟店での買い物、JR東日本のクレジットカード「ビューカード」での決済などで貯めることができます。
JRE POINTのロゴマーク(画像はJR東日本公式サイトより)
JRE POINTを貯める方法の中でも「在来線乗車ポイント」はなかなかユニークです。「JRE POINT WEBサイト」に、使っているSuicaの番号を登録しておくと、JR東日本エリアの在来線に乗車した時にJRE POINTが貯まります。
カードタイプのSuicaの場合、200円ごとに1ポイント貯まりますが、モバイルSuicaの場合は50円ごとに1ポイントと、カードタイプの4倍の付与率になります。筆者はモバイルSuicaを使っているので、「在来線乗車ポイントがたくさん貯まる!」と思えると、遠方での仕事も苦にならなくなりました。なお、「Suica定期券」を利用している場合は、定期券区間以外の乗車で「在来線乗車ポイント」が貯まります。
2023年10月からは、そのようにして貯めたポイント数によってステージが決まり、それに応じておトクな特典がもらえる可能性があるというわけです。
「JRE POINTステージ」のステージは、「ステージ1」「ステージ2」「ステージ3」「プレミアム」の4段階あります。6か月間の判定期間における獲得ポイント数や利用ポイント数、「JRE POINT WEBサイト」への登録状況などによって、どのステージになるかが決まります。
「JRE POINTステージ」のステージとその判定条件(画像はJR東日本公式サイトより)
「ステージ3」や「プレミアム」を狙う場合、Suicaとビューカードの「JRE POINT WEBサイト」への登録が必須になります。JREポイントを多く獲得できるという意味でも「ビューカード」は重要な存在なので、まだ持っていないJR東日本ユーザーの人は、これを機に保有を検討してみてもいいかもしれません。
ちなみに、「JRE POINTステージ」のサービスは2023年10月1日から始まるのですが、すでに2023年3月1日より判定期間に入っていて、「JRE POINT」の利用実績などが集計されています。毎年「3月〜8月」の利用実績によって「10月〜翌年3月」のステージが決まり、「9月〜翌年2月」の利用実績によって「4月〜9月」のステージがそれぞれ決まります。
「JRE POINTステージ」のステージ決定サイクル(画像はJR東日本公式サイトより)
「JRE POINTステージ」では、単にポイントを多く貯めればいいわけではありません。「ステージ3」以上を狙うには、獲得したポイントの内訳についても問われます。
前掲の「『JRE POINTステージ』のステージとその判定条件」の図にもありますが、「ステージ3」や「プレミアム」に必要な獲得ポイントには、「(内訳)鉄道」と「(内訳)お買いもの」があります。
「鉄道」カテゴリは、前出の「在来線乗車ポイント」や、Suicaグリーン券・モバイルSuica定期券の購入で貯まるポイントなどを指します。いっぽう、「お買いもの」カテゴリは、駅ナカの加盟店での買い物、JR東日本グループのショッピングモール「JRE MALL」での買い物やふるさと納税、JR東日本のシェアオフィス事業「STATION WORK」の利用で貯まるポイントなどが対象になります。
駅ナカでよく見かける「STATION WORK」のブースの利用で貯まるポイントは、「お買いもの」カテゴリの判定対象
また、もうひとつ注意したいのは、貯まった「JRE POINT」がすべて判定の対象になるわけではないという点です。キャンペーンなどで貯まったポイント、「マイナポイント」として獲得したポイント、同一運賃区間を同じ月内に10回以上利用することでもらえる「リピートポイントサービス」などは判定の対象外になります。これらすべてを頭に入れるのは難しいところですが、対象と対象外のポイントにどのようなものがあるのかについては、次の一覧表にざっと目を通しておくといいでしょう。
さらに注意点がもうひとつ。「ステージ3」以上を狙う場合、ポイントをSuicaにチャージしたり、ポイントで買い物するなどして、「使う」必要があることも覚えておきましょう。
「JRE POINTステージ」の判定対象となるポイント(上)と、ならないポイント(下)(画像はいずれもJR東日本公式サイトより)
次に、「JRE POINTステージ」の特典を紹介します。基本となる「ステージ1」では、キャンペーンやおトクな情報を取得することができ、「ステージ2」ではJR東日本グループ系のチェーンでさまざまな優待が受けられます。たとえば、「NewDaysアプリ」での会員限定クーポン、ベックスコーヒーショップのドリンクのサイズアップ、アキュア公式オンラインストアでの対象商品の割引などです。
「ステージ1」「ステージ2」の特典内容(画像はJR東日本公式サイトより)
「ステージ3」では期間限定のポイントアップキャンペーンへの参加や、JR・新幹線+宿泊プランの「JR東日本びゅうダイナミックレールパック」の割引クーポンがもらえます。
「プレミアム」になると、「JR東日本ホテルズ」直営レストランでグラススパークリングワインなどのサービスを受けることができるほか、通常6,000ポイント必要な「どこかにビューーン!」を4,000ポイントで利用できたりもします。さらに、「プレミアム」を2期以上連続で達成すると、特典のおトク感が上がります。
ステージが上がるごとに特典のグレードもアップ(画像はJR東日本公式サイトより)
実は、筆者が密かに狙っているのは、「プレミアム」以上の特典に含まれている「どこかにビューーン!」というサービスです。これは、JRE POINT6,000ポイント(通常時)で、JR東日本側がすすめる「4つの駅」の「どこか」に新幹線で往復できるというもの。内容がユニークなので、少しくわしく説明したいと思います。
JR東日本の「どこかにビューーン!」。仮に東京駅から秋田駅に新幹線で移動する場合、「JRE POINT特典チケット(往復)」だと24,220ポイント必要なところ、「どこかにビューーン!」だと6,000ポイント(「JRE POINTステージ」の「プレミアム」だと4,000ポイント)で往復できます。どこに行けるかは運次第ではあるものの(後述)、おトクな内容となっています(画像はJR東日本公式サイトより)
「どこかにビューーン!」の出発駅は東京駅、上野駅、大宮駅のいずれかを設定します。使いたい日時、時間帯、人数などを入力すると、まず4つの行き先候補が表示されます。最終的な目的地は、正式な申し込み後にこの4つの候補からランダムに選択される仕組みです。
表示された4つの行き先候補にピンとこない場合は再検索することも可能です。ただし、行き先候補は検索するたびに変わるので、同じ行き先候補が表示されるとは限りません。納得できる行き先候補が表示されたら、旅行者情報を入力して申し込みます。
「どこかにビューーン!」の対象エリア。まずこの中から4つの駅が「行き先候補」として表示され、最終的にその中のどこかの駅が目的地になります。行き先候補は検索し直すこともできます(画像はJR東日本公式サイトより)
上の画像は「5月某日出発・大人2名」で検索した際に表示された行き先候補の一例です。この状態で申し込むと、この4つの駅のどこかが目的地となります(画像はJR東日本公式サイトより)
申し込みは出発日の21〜6日前まで可能で、申し込みから3日以内に行き先が確定します。日帰りの場合、目的地での滞在時間を最短5時間から設定でき、宿泊する場合は最長7日間まで設定ができます。
友人や家族の分も一緒に申し込むことができ、最大6名のグループで旅行が可能。その際、ポイントをまとめて支払ったり、各自がそれぞれのポイントを使ったりもできます。列車でも並び席を確保できるので、「目的地がおまかせ」という以外は、普通の列車旅行と変わらずに使えそうです。
前出のとおり、「JRE POINTステージ」の「プレミアム」ではこのサービスを通常6,000ポイントのところ、4,000ポイントで利用できておトクになるというわけです。
なお、「プレミアム」を2期以上連続で達成すると、この「どこかにビューーン!」が、通常時の「1名分6,000ポイント」で2名利用できるようになり、さらにおトクになります。
このほか、人気の豪華クルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」の優先申し込みや、「JR東日本ホテルズ」直営レストランでの優待などの特典も用意されていて、「プレミアム」をキープするモチベーションを高めてくれそうです。
実際のところ、「JRE POINT」は1か月でどれくらい貯まり、2023年10月1日からの「JRE POINTステージ」で、どのあたりのステージが狙えそうなのでしょうか?
ちょうどこの記事を執筆中に、JRE POINT事務局から、2023年3月分の「『JRE POINTステージ』達成状況のご案内」というメールが届いたので、内容をチェックしてみました。なお筆者はSuicaとビューカードを「JRE POINT WEBサイト」に登録済みで、定期券は使わず、取材などの移動のたびにモバイルSuicaで運賃を支払っています。
JRE POINT事務局から筆者にメールで届いた「『JRE POINTステージ』達成状況のご案内」。「JRE POINTステージ」の告知をかねてJRE POINTサービスにメールアドレスを登録している人全員に送信されたようです。来月以降は、JRE POINTのメルマガ購読者のみに届く予定との記載があります
この案内によると、筆者は2023年3月に「1,396ポイント」を獲得。このうち、「鉄道」カテゴリが「466ポイント」で、「お買いもの」カテゴリが「15ポイント」だったようです。そして現時点での獲得状況では「ステージ2」に判定されるとのこと。この結果をもとに6か月の判定期間で試算してみると、次のようになりました。
上記の表の「『プレミアム』で必要なポイント数」のうち、黒字が「プレミアム」達成条件をクリアできる見込みのもの。赤字が、現状のままではクリアできなさそうなものになります。総獲得ポイント数に関しては、6か月で8,376ポイントになるので、もう少し頑張れば10,000ポイント以上が条件の「プレミアム」が狙えそうです。
現状で圧倒的に足りていないのが、「お買いもの」カテゴリのポイントです……。筆者がよく利用している駅ナカの店舗では200円ごとに1ポイントが貯まるので、6か月で1,000ポイント以上を獲得するためには、1か月167ポイントとして、月に約33,400円分(!)の買い物が必要になります。これはあまり現実的ではありません。
もっと効率よくポイントを貯めるべく、たとえば、アトレやエキュート、グランスタなど、JR東日本グループの駅ビルで、100円ごとに1ポイント貯まる加盟店を利用するなど、もう少しうまく買い物する必要がありそうです。
また、JR東日本のECサイト「JRE MALL」では、通常100円ごとに1%付与されるポイントが、「ビューカード」で決済することで最大3.5%付与にアップするので、こちらも見逃せません。「JRE MALL」からは「ふるさと納税」もできるので、仮に30,000円分をふるさと納税すれば、それだけで1,050ポイント貯まります。もちろん返礼品も受け取れます。
「JRE MALL」×「ビューカード」の組み合わせは、「お買いもの」カテゴリの狙い目かも?(画像は「JRE MALL」公式サイトより)
ちなみに、総獲得ポイント数が1,624ポイント足りないところは、「えきねっと」でのきっぷなどの購入(予約時決済)でカバーできるもしれません。
筆者は昨年の夏、友人2人と一緒に東京駅〜上毛高原駅を「新幹線eチケット」でチケットレス乗車をしました。この場合、ビューカードで決済することで5%のポイントが付くので、往復3人分の合計金額36,120円の決済で、合計1,800ポイント(1人分600ポイント)を獲得することができました(友人たちの分を立て替えたため)。このように、8月末までにJRの特急のきっぷなどを「えきねっと」で買うように意識すれば、総ポイント数10,000ポイント以上もクリアできそうです。
ただし、あくまでも今回の試算は3月分のポイント数をベースにしたもので、同じ状況がこの先も続くとは限りません。今後も、毎月届く「『JRE POINTステージ』達成状況のご案内」を確認しながら、「プレミアム」のステージを虎視眈々と狙いたいと思います。
近年、鉄道に乗るほどランク(ステージ)が上がり、それによって、乗車時に付くポイントの付与率が上がるサービスを導入する鉄道会社が増加中です。たとえば、東京メトロの「メトポ」は、乗車状況などでランクが決まり、そのランクによって「メトポ」の付与率が上がります。また、東京都交通局の「ToKoPo」も、明確にはランク制とはうたっていないものの、都営地下鉄や都営バスの乗車回数が増えるごとにポイント付与率が上がります。
JR東日本の「JRE POINTステージ」はそれらとはやや性格が異なっていて、鉄道以外でのポイント獲得数も問われる点がややハードルを上げている印象を受けます。ただし、なかなか魅力的な特典が用意されていることは記事で紹介したとおりです。普段よくJR東日本を利用する人は、ポイント獲得を楽しみながら、ステージアップに挑戦してみてはいかがでしょうか?
わたたにさちこ。キャッシュレス決済やポイントなどについて、小学館発行のビジネス情報誌「DIME」を中心に、企業のオウンドメディアや情報サイトなどで幅広く執筆。生活情報サイト「All About」のガイドも務める。