近年、投資信託の積立資金をクレジットカードで決済する「クレカ積立」が人気です。その背景には、積立金額に応じてクレジットカードのポイントが貯まることがあります。要は、「現金で積立投資をするよりも少しおトク感が感じられる投資サービス」というわけです。
現在、複数の「証券会社×クレジットカード会社」が「クレカ積立」に参入しています。それぞれ「ポイントの貯まりやすさ」や「貯まるポイントの種類」などの仕組みはバラバラで、どれがおトクなのかがやや見えにくい状況です。そこでこの企画では、気になる人も多いであろう「クレカ積立」のポイント還元率に注目しランキング化しました。
もちろんポイント還元率は、「クレカ積立」のひとつの要素にすぎません。利用する「クレカ積立」を決める際は、「選べる投資信託の数」、「つみたてNISA対象銘柄の数」、「貯まるポイントの使い道」などもチェックする必要があります。記事中でこれらの要素も紹介しているので、ぜひ総合的に判断してもらえればと思います。
この記事でランキングの対象としたのは、クレジットカードの年会費がかからない「年会費無料クレカ」(一部、「年会費実質無料」クレカも含みます)を使う、7つの「クレカ積立」サービスです。ランニングコストがかからないので、初心者の人でも比較的始めやすいサービスと言えます。
「クレカ積立」には、ゴールドやプラチナなど、グレードの高いクレジットカードを使うサービスもあります。これらは原則として年会費がかかるのですが、その分、ポイント還元率が高めに設定される傾向があります。これら、やや応用編の「クレカ積立」に関しては、本記事後編の「ゴールド・プラチナカード編」でランキングをご紹介します。
「クレカ積立」とは、クレジットカードで投資信託の積立投資ができるサービスを指します。証券会社とクレジットカード会社がタッグを組んでサービスを提供しています。
「クレカ積立」を利用する手順はおおむね下記のとおりです(サービスによって細かい違いはあります)。
1 「クレカ積立」を提供している証券会社に口座を作る
2 その証券会社の「クレカ積立」に使えるクレジットカードを作る
3 証券会社にクレジットカードを登録し、積み立てる投資信託や積立額を設定する
証券会社の口座とクレジットカードの2つを作ることになるので、やや面倒な面もありますが、作った後は、積み立ての設定さえすれば基本的にほったらかしでOKです。また最近は、1の証券口座と、2のクレジットカードを同時に作ることができるサービスもあります(SBI証券×三井住友カードなど)。
「クレカ積立」には、証券口座と対象のクレジットカードが必要。本記事では、年会費のかからないクレジットカードを使う7つの「クレカ積立」を、ポイント還元率の高い順に紹介します
「年会費無料クレカ編」のランキングは、原則として年会費がかからないクレジットカードを使う「クレカ積立」が対象です。厳密には年会費が存在するものの、年に1回以上利用などの条件をクリアすると年会費が無料となるものも含めています(「クレカ積立」で利用することを想定)。それでは、さっそくランキングをチェックしていきましょう。
3位は同率で2サービス。5~7位はポイント還元率の変動幅は同じものの、ポイント獲得の条件の厳しさなどを加味してランク付けしています。以下、各小見出し末尾の丸括弧内は「貯まるポイント」を指します
一般カード部門で最もポイント還元率が高いのが、「マネックス証券×マネックスカード」の組み合わせです。月の積立額に対して、1.1%のポイント還元率でマネックス証券の独自ポイント「マネックスポイント」が付与されます(100円の利用につき1ポイントのほか、1,000円の利用につき1ポイントが加算)。
画像は「マネックス証券」公式サイトより
「マネックス証券×マネックスカード」の「クレカ積立」概要
サービス開始:2022年2月
毎月の積立可能額:1,000〜50,000円(ファンドによって異なる場合あり)
対象の投資信託:1,200本以上
「つみたてNISA」対象銘柄:167本
「マネックスカード」の年会費は550円(初年度無料)ですが、年に1回以上カードを使うと無料となります。「クレカ積立」での利用もこの判定に含まれるので、本記事のテーマ的には“実質年会費無料”と考えていいでしょう。ただし「クレカ積立」以外の用途でのポイント還元率は1%となるのでご注意ください。
貯まった「マネックスポイント」は1P=1円として「Amazonギフト券」や「dポイント」、「Pontaポイント」などに交換できるほか、マネックス証券での投資信託の買い付けや株式の売買手数料に充当することもできます。
続いては、ポイント還元率1%の「auカブコム証券×au PAYカード」の組み合わせです。貯まるポイントは、共通ポイントのひとつである「Pontaポイント」です。
画像は「auカブコム証券」公式サイトより
「auカブコム証券×au PAYカード」の「クレカ積立」概要
サービス開始:2022年3月
毎月の積立可能額:100~50,000円
対象の投資信託:1,600本以上
「つみたてNISA」対象銘柄:190本
「au PAYカード」の年会費は1,375円かかりますが、auの携帯電話を契約しているか、年に1回以上の利用で無料になります。つまり、本記事的には“実質無料”と考えていいでしょう。同カードの「クレカ積立」以外の用途でのポイント還元率も1%です。
貯まった「Pontaポイント」は1P=1円として「Pontaポイント」加盟店での買い物に利用できるほか、「auカブコム証券」の単元未満株や投資信託の買い付けにも使えます。
なお、本サービスでは「クレカ積立」でのポイント付与以外に、投資信託の月間平均保有残高に応じても下記の還元率でポイントが貯まります。
・月間平均保有残高100万円未満の場合 → ポイント加算率0.05%(年率)
・同100万円以上3,000万円未満の場合 → ポイント加算率0.12%(年率)
・同3,000万円以上の場合 → ポイント加算率0.24%(年率)
※ただし、一部指定銘柄は保有残高に関係なく0.005%(年率)。
3位に入ったのが「SBI証券×三井住友カード(一般カード)」で、ポイント還元率は0.5%です。
「SBI証券×三井住友カード」の「クレカ積立」の対象となるクレジットカードは、「三井住友カードが発行するカード」です。「三井住友カード(NL)」や「Oliveフレキシブルペイ」などの年会費無料の一般カードの場合、0.5%の「Vポイント」が貯まります(提携カードの場合、独自のポイントが貯まる場合があります)。
「三井住友カード ゴールド(NL)」や「三井住友カード プラチナプリファード」、「Oliveフレキシブルペイプラチナプリファード」などの上位カードになると、ポイント還元率は1〜5%にアップします。こちらは後編の「ゴールド・プラチナカード編」で紹介します。
画像は「SBI証券」公式サイトより
「SBI証券×三井住友カード(一般カード)」の「クレカ積立」概要
サービス開始:2021年6月
毎月の積立可能額:100~50,000円
対象の投資信託:約2,600本以上
「つみたてNISA」対象銘柄:179本
「Vポイント」の用途は幅広く、専用アプリを利用してVisa加盟店での買い物に利用できるほか、三井住友カードの支払いへの充当、他社ポイントへの交換、SBI証券での投資信託のスポット購入、三井住友銀行の各種手数料への充当などができます。一部の他社ポイントへの交換を除き、原則として1P=1円で使えます。
また、「auカブコム証券×au PAYカード」と同じく、本サービスにも投資信託の月間保有残高に応じたポイント還元があり、月間平均保有金額が1,000万円未満で年率0.1%、1,000万円以上で年率0.2%の「Vポイント」が貯まります。
同率で3位に入ったのは、2023年6月買い付け分からポイント還元率が上がった「楽天証券×楽天カード(一般カード)」です。本サービスも「SBI証券×三井住友カード」と同じく、使うカードのグレードによってポイント還元率が変わるのが特徴で、年会費無料の「楽天カード(一般カード)」を使う場合のポイント還元率は0.5%です。
※「楽天ゴールドカード」「楽天プレミアムカード」については、「ゴールド・プラチナカード編」で触れます。
画像は「楽天証券」公式サイトより
「楽天証券×楽天カード(一般カード)」の「クレカ積立」概要
サービス開始:2018年
毎月の積立可能額:100~50,000円
対象の投資信託:2,600本
「つみたてNISA」対象銘柄:180本
本サービスで貯まるのは、共通ポイントとしておなじみの「楽天ポイント」です。貯まった楽天ポイントは1P=1円として楽天グループの幅広いサービスに利用できるほか、投資信託の買い付けなどにも使えます。
余談ですが、「楽天証券」では、楽天の電子マネー「楽天キャッシュ」でも積立投資ができます(「楽天カード」→「楽天キャッシュ」へのチャージ時に0.5%の「楽天ポイント」が貯まります)。こちらの限度額も毎月5万円なので、「クレカ積立」と合算すれば毎月最大10万円分をキャッシュレスで積み立てられます。これを活用すれば、2024年から始まる「新NISA」でのつみたて投資枠の年間120万円分を、すべてキャッシュレスで積み立てることも可能です。
5位は、商業施設を展開する丸井グループが運営する「tsumiki(つみき)証券」と、年会費無料の「エポスカード」の組み合わせです。本サービスでは年間の積立額に応じて「エポスポイント」が0.1〜0.5%貯まります。ポイント還元率は0.1%からスタートし、以降、1年ごとに0.1%ずつ上がり、5年目の0.5%が上限です。6年目以降は0.5%が継続されます。
画像は「tsumiki証券」公式サイトより
「tsumiki証券×エポスカード」の「クレカ積立」概要
サービス開始:2018年8月
毎月の積立可能額:100~50,000円
対象の投資信託:5本
「つみたてNISA」対象銘柄:4本
貯まった「エポスポイント」は1P=1円として、マルイでの買い物やプリペイドカードのチャージに利用できるほか、Amazonなどのギフト券やJAL、ANAマイルへの交換(マイルは2P→1マイル)、100Pから投資信託の購入に充当することもできます。
本サービスで特徴的なのは、投資信託のラインアップが、「セゾン・グローバルバランスファンド」「セゾン資産形成の達人ファンド」「コモンズ30ファンド」「ひふみプラス」「まるごとひふみ15」の5本に絞られていることです。投資初心者の人にとっては、自分で選ぶ手間を軽減してくれるメリットがあるいっぽう、ある程度投資に慣れた人にはやや物足りなさを感じる点かもしれません。
6位に入ったのが「スマートプラス×セゾンカード・UCカード(一般カード)」です。「セゾンポケット」という名称で「クレカ積立」のサービスを展開しています。ポイント還元率は0.1〜0.5%の変動制です。数字上は5位の「tsumiki証券×エポスカード」と同じ変動幅ですが、還元率を上げる難度がやや高く、それを加味して6位にランキングしています。
画像は「セゾンポケット」公式サイトより
「スマートプラス×セゾンカード・UCカード」の「クレカ積立」概要
サービス開始:2019年11月
毎月の積立可能額:1,000~50,000円
対象の投資信託:2本
「つみたてNISA」対象銘柄:2本
※投資信託のほか、約130の株式や、10のETFも購入可能
株式の積立可能額は月5,000〜50,000円
本サービスのポイント還元率のルールはやや複雑です。判定の対象となるのは「月間の平均積立額」です。判定期間は「クレジットカードでの積み立て6回」(6か月間連続していなくてもOK)で、6回目の積み立てが終了した翌月に、下記の条件でポイントが付与されます。たとえば、6回の積み立てで合計13万円を投じたとすると、月の平均額は21,666円となるので、0.2%還元が適用されます。
・月間の平均積立額2万円未満 → 0.1%還元
・月間の平均積立額2万円以上 → 0.2%還元
・月間の平均積立額3万円以上 → 0.3%還元
・月間の平均積立額4万円以上 → 0.4%還元
・月間の平均積立額5万円以上 → 0.5%還元
貯まった「永久不滅ポイント」は、Amazonギフト券や各種商品に交換できるほか、買い物の支払い、投資信託や株式の積立購入代金に充てることもできます。
7位は、「大和コネクト証券×セゾンカード・UCカード(一般カード)」です。対象カードは「セゾンカード」および「クレディセゾン発行のUCカード」で、年会費無料の一般カードを使う場合のポイント還元率は0.1〜0.5%の変動制です。本サービスも、数字上は5位、6位のポイント還元率の変動幅と同じですが、ポイント還元を受けられるのは「月5,000円以上の積み立てから」と若干ハードルが高めで、これを考慮して7位にランキングしています。
7位は、「大和コネクト証券×セゾンカード・UCカード(一般カード)」です。対象カードは「セゾンカード」および「クレディセゾン発行のUCカード」で、年会費無料の一般カードを使う場合のポイント還元率は0.1〜0.5%の変動制です。本サービスも、数字上は5位、6位のポイント還元率の変動幅と同じですが、ポイント還元を受けられるのは「月5,000円以上の積み立てから」と若干ハードルが高めで、これを考慮して7位にランキングしています。
「大和コネクト証券×セゾンカード・UCカード(一般カード)」の「クレカ積立」概要
サービス開始:2023年1月
毎月の積立可能額:1,000~50,000円
対象の投資信託:35本
「つみたてNISA」対象銘柄:16本
本サービスでは、下記のとおり、月5,000円以上の積み立てからポイント還元の対象になります。10,000円ごとに還元率が0.1%上がり、最大で0.5%還元が目指せます。
・月間積立額5,000円以上20,000円未満……0.1%還元
・月間積立額20,000円以上30,000円未満……0.2%還元
・月間積立額30,000円以上40,000円未満……0.3%還元
・月間積立額40,000円以上50,000円未満……0.4%還元
・月間積立額50,000円……0.5%還元
なお、「セゾンプラチナ・アメリカン・エキスプレス・カード」などグレードの高いクレジットカードを使う場合、ポイント還元率は1%になります。こちらは、「ゴールド・プラチナカード編」で触れます。
まとめ:年会費実質無料で1%超のポイント還元率は魅力
今回のランキングで目についたのは、1位の「マネックス証券×マネックスカード」、2位の「auカブコム証券×au PAYカード」のおトクさです。それぞれポイント還元率は1%を超えており、クレジットカードの年会費も実質無料です。これから「クレカ積立」を始める人にとっては、有力候補のひとつになりうるサービスと言えそうです。
後日公開予定の「ゴールド・プラチナカード編」で紹介するサービスも含めて、皆さんのベストな「クレカ積立」選びの参考になれば幸いです。
(執筆協力:百瀬康司)
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