ECサイトや金融、小売りなど、さまざまなサービスで横断的にひとつのポイントを貯めたり、使ったりできる「ポイント経済圏」。楽天やPayPayなどのポイント経済圏がネット通販や金融サービスに主軸を置く中、それらとは対照的に、実店舗を中心に構築されているのが「イオン経済圏」です。
全国各地に店舗を構えるイオンやイオンモール、ウエルシア薬局などでポイントの利活用や割引きを受けられる点が特徴的です。この経済圏の中でおトクに活動するためのカギはどこにあるのか。SNSでポイ活に関する情報を発信している「ハイジ博士」(ハンドルネーム)の解説を交え、イオン経済圏の攻略法を紹介していきます。
取材協力・解説 ハイジ博士
「ハイジ博士」のハンドルネームでポイ活情報を発信。2018年12月に開催された「PayPay」の大規模キャンペーンをきっかけにポイントのおトクさに目覚め「ポイ活」を本格的に開始。ポイントサイトやクレジットカード・電子マネー利用などで、年間50万円以上のポイントを稼いでいる。2020年2月からX(旧Twitter)で発信を始め、情報の正確性とわかりやすさで人気は急上昇。2024年6月現在のフォロワー数は9万人以上。「日経クロストレンド」、マネーフォワード「MONEY PLUS」などの各種メディアでも活躍中。素顔は奥さんと娘さんの3人で暮らす30代の会社員。
まずはイオン経済圏の概要から見ていきましょう。経済圏を構成する主要なサービスをまとめたのが下表になります。目立つのはやはり実店舗の豊富さ。純粋持ち株会社のイオンは、総合スーパーの「イオン」、食品スーパーの「マックスバリュ」、小型の食品スーパー「まいばすけっと」など、国内外に17,000以上の店舗を抱えています。
これらの店舗で「イオンカード」や電子マネー「WAON」を使うと、割引きやポイント還元を受けられ、イオングループの共通ポイント「WAON POINT」を買い物に使うことができます(ただし、割引きやポイントアップのキャンペーンは、イオンとそのほかのグループ店舗で内容が異なったり、実施されていなかったりします)。
ちなみに、福井県は全国で唯一、イオンのショッピングセンターがない「イオンなし県」として知られていましたが、2024年7月13日に福井市に開業予定。これによって、イオンは全47都道府県への出店を達成することになります。
イオンの公式サイトなどを基に編集部作成
楽天やPayPayなど、そのほかのポイント経済圏と比べると、イオン経済圏は実店舗が非常に充実したリアル型の経済圏。
食料品や日用品を扱うスーパーのイオンでポイントを使えたり、割引きを受けられたりするので、家計の節約に直接つなげられる点は大きなメリットと言えそうです。
ただその半面、ECサイトに関しては「イオンネットスーパー」ぐらいしか目立ったものがなく、利用できるサービスが少ないのが弱点。そのため、イオン経済圏に向いているか否かは、イオングループの店舗が生活圏内にあるかどうかにかかってくると言えそうです。
また、イオン経済圏で活動する際に覚えておきたいのが、「WAON POINT」と「電子マネーWAONポイント」の違い。「WAON POINT」はイオングループの共通ポイントという位置づけになっており、下表のとおり貯める際の選択肢が豊富。
いっぽう、「電子マネーWAONポイント」は、WAONを「WAON POINT加盟店以外」の店舗で利用するときに貯まるポイントです(非常にまぎらわしいですが、WAONを「WAON POINT 加盟店(主にイオングループ)」で使うと貯まるのは「WAON POINT」)。
参考HP:「WAON POINT 加盟店」
使い道の面で見ると、「WAON POINT」は「1P=1円」としてイオングループでの買い物に充当できるほか、ほかのポイントへの交換や、1Pの価値を高める使い方も可能です(後述します)。
いっぽうの「電子マネーWAONポイント」はそのままでは使えず、WAON残高に「1P=1円」としてチャージするしかありません。そうした意味で「WAON POINT」のほうが利用価値は高く、こちらがイオン経済圏の中核となるポイントサービスです。
続いて紹介するのは、イオン経済圏で活動する際に重要となってくるアイテムです。
最初にあげられるイオンカードは約50種類あり、いずれの券種も年会費は無料です。基本的にはショッピング利用時には200円で「WAON POINT」が1P貯まり、基本のポイント還元率は0.5%。イオンのグループ店舗で使うと1%還元(200円で2P)にアップします。後述する、イオングループでのポイントアップや割引き特典を受けられるのも、イオンカードの大きな特徴と言えそうです。
こうしたイオンカードのスペックは全券種で共通ですが、WAONやイオン銀行キャッシュカードの機能が付帯していたり、イオンシネマや首都高を割引きで利用できたりするカードもあります。イオンカードを検討する際は、そうした「機能面」や「追加特典」の点で選ぶとよいでしょう。
なお、下記の7枚のカードについては、年間50万円以上のカード利用があると自動的に、「イオンゴールドカード」に切り替わります。
【イオンゴールドカードの対象カード】
・イオンカード
・イオンカード(WAON一体型)
・イオンカード(WAON一体型/ミッキーマウス デザイン)
・イオンカード(WAON一体型/トイ・ストーリー デザイン)
・イオンカードセレクト
・イオンカードセレクト(ミッキーマウス デザイン)
・イオンカードセレクト(トイ・ストーリー デザイン)
「イオンゴールドカード」は年会費無料のゴールドカードとして知られており、国内主要6空港のラウンジ利用や最高5000万円の海外旅行傷害保険が付帯しています。イオンゴールドは招待制で、みずから申し込んで入会することはできないので、イオンゴールドを目指している場合は、対象カードの中から選ぶとよいでしょう。
イオンゴールドカードは毎月20日と30日に、イオンモールの専門店で5%オフを受けられるなど、一般のイオンカードにはない特典が付帯しています
各種イオンカードの中でも、「イオンカードセレクト」はイオンカード、WAON、イオン銀行キャッシュカードの3機能が集約されている点が特徴的です。
通常のポイント還元に加えて、WAONにオートチャージをする際にも、チャージ200円ごとに1P貯まる点が強みになり、WAON払いをメインとする場合には、メリットの大きいカードです。
さらに、イオンカードセレクトは4種類のデザイン(通常デザイン、ミッキーマウス、トイ・ストーリー、ミニオンズ)がありますが、このうちミニオンズデザインを選ぶと、イオンシネマの映画料金が1,000円に割引きされるので(年間12回まで)、映画好きな方はこちらを選ぶとよいでしょう。ただし、ミニオンズデザインのイオンカードセレクトは、イオンゴールド招待の対象にならない点は注意が必要です。
なお、日曜日の首都高の通行料金が20%オフになる「イオン首都高カード」や、「WAON POINT」1,000PがETC走行1,200円分(20%増)に交換できる「イオンNEXCO西日本カード」も、ニーズによっては候補に入ってくるカードです。
電子マネーのWAONはイオングループの店舗に加え、ファミリーマートやローソン、マクドナルド、吉野家などで利用可能です。
イオンカードと同様に、通常利用では0.5%還元(200円で1P)、イオングループでは1%還元(200円で2P、、会員登録が必要)となります。こちらは事前に現金やイオン銀行ATMなどからチャージ、あるいはイオンカードからオートチャージの設定をして、利用することになります。
公式HP:「WAONが使えるお店」
AEON Payは、イオンが2021年9月から始めた独自のコード決済サービス。イオンのトータルアプリ「iAEON(アイイオン)」、またはイオンカード会員専用のアプリ「イオンウォレット」をダウンロードしたスマホで利用できます。
ひも付けたイオンカード払い、イオン銀行やイオンカードからのチャージ払い、貯めた「WAON POINT」払いという3種類の支払い方法が用意されています。イオングループのほか、スシローやヤマダ電機などでも利用可能です。通常利用では0.5%還元(200円で1P)、イオングループでは1%還元(200円で2P)となります。
公式HP:「AEON Payが使えるお店」
イオンカードを持ち歩かなくても、スマホにAEON Payを入れておけば、イオンの各種特典を利用できるのがメリット。また、イオンが普及に力を入れており、AEON Payだけを対象にした(イオンカードやWAONは対象外の)キャンペーンも定期的に開催している点も利点です。ユーザー同士で送金できる機能や、公共料金の支払いができる「請求書払い」の機能も備わっています。
毎月20日と30日にAEON Payで支払うと、抽選で支払い全額をポイントバックするキャンペーンが実施中(50,000Pが上限)
それでは、イオン経済圏の具体的な攻略法について見ていきましょう。前半の5つはより多くのポイントを貯めたり、割引きを受けたりする方法、後半の2つは貯めたポイントを有効活用する方法です。
イオン経済圏の“住人”にとって大事なのが毎月20日と30日。両日は「お客様感謝デー」と題し、全国のイオンやマックスバリュ、ダイエーなどでイオンカード、WAON、AEON Payの利用で5%オフの割引きを受けられます(一部、対象外商品あり)。毎月、定期的に開催されるので、この日にまとまった買い物をするやり方も効果的でしょう。
なお、毎月15日は55歳以上の方がイオンカードやG.G WAON(55歳以上限定で発行できるWAON)、AEON Payで支払いをすると5%オフの割引きを受けられます。対象となる方は、この日もチェックしておくとよいでしょう。
毎月20日と30日はイオンの「お客様感謝デー」。この日にまとめ買いをするユーザーも多くいます
本州(東北地区を除く)と四国のイオン直営売り場などで開催される「ポイント10倍」キャンペーンも、見逃せないイベント(ダイエー、マックスバリュなどは対象外)。期間中に、イオンカードやAEON Payで支払うと、200円で「WAON POINT」10Pが還元され、5%還元となります。
このキャンペーンは不定期開催ではありますが、少なくとも1回以上開催される月が多く、2024年6月は14日〜16日、21日〜23日、28日が対象日となっています。実施日時は下記のキャンペーンページでチェックするとよいでしょう。ただし、こちらはWAON払いが対象外となる点に要注意です。
参考HP:イオンリテール「お得・キャンペーン」
5%オフとなる「お客様感謝デー」と、5%分のポイント還元を受けられる「ポイント10倍」キャンペーン。この2つはいずれも「5%」分の恩恵があるキャンペーンです。
「お客様感謝デー」は直接割引きを受けられ、定期的に開催されるため計画的に利用しやすいのは利点となります。ただ、ポイ活の視点で見ると5%分の「WAON POINT」が還元される「ポイント10倍」キャンペーンのほうが利用価値が高いと考えています。
というのも、通常「1P=1円」の価値を持つ「WAON POINT」は後述するように、その価値を最大1.5倍にまで高めるキャンペーンが利用できるからです。「WAON POINT」がこうしたキャンペーン利用にあたっての“原資“となることを考慮すると、個人的には「割引き」より「ポイント還元」を優先して活用するようにしています。
イオンカードを通常利用すると、ポイント還元率は0.5%(200円で1P)。ところが、毎月10日は「AEON CARD Wポイントデー」と題し、イオングループ以外で利用しても2倍の1%還元(200円で2P)にアップします。
高額なスマホやパソコンなどの購入を検討しているなら、ポイントが2倍となる毎月10日にイオンカードを使って購入するのがよさそうです。なぜなら、イオンカードは、充実のショッピング保険が付帯しているからです。
そもそも、年会費無料でショッピング保険が付帯するカードは少数派ですが、イオンカードのショッピング保険は、補償の対象期間が購入から180日間と長く、さらに対象外となることが多いスマホやパソコンも対象となっています。
そのため、スマホやパソコンなどをイオンカードで購入することで、有料の補償・オプションサービス料の節約にもつなげられます。私もショッピング保険を目当てに、10日にイオンカードを使ってiPhoneを購入した経験があります。
続いて万人向けではありませんが、状況によっては検討したい攻略法を紹介します。
ひとつめは、純粋持ち株会社の「イオン」(証券コード:8267)の株主優待の活用です。イオンは8月末と2月末の年2回、同社の株式100株以上を保有している株主に「オーナーズカード」を贈呈しています(本人用と家族用の計2枚)。
このカードをレジで提示し、イオンやマックスバリュなどで買い物をすると、半年ごとに利用金額の3〜7%分(100株保有で3%、500株以上で4%、1,000株以上で5%、3,000株以上で7%)のキャッシュバックを受けられます。
「オーナーズカード」は、毎月20日と30日の「お客様感謝デー」(5%オフ)と併用可能。つまり、この2日間は5%オフの割引きに加え、後日3%分のキャッシュバックを受けられるため、実質約8%おトクに買い物できることになります。なお、イオンの株価は2024年6月21日時点で3,406円(終値)のため、340,600円で優待の権利を得られる計算になります。
3〜7%分のキャッシュバックを受けられる「オーナーズカード」は人気の株主優待(画像は優待投資家のかすみちゃん提供)
イオン銀行の住宅ローンを検討しているなら要チェックなのが、イオンセレクトクラブの特典。こちらは、イオン銀行が指定する住宅ローンの契約者が「ローン完済」まで、イオンやマックスバリュ、まいばすけっとなどでの買い物がいつでも5%オフになる特典です。住宅ローンの支払いは30年以上にわたることも多く、その期間、5%オフとなるのはメリットと言えそうです。
「オーナーズカード」「イオンセレクトクラブ」いずれも、毎月20日と30日に5%オフとなる「お客様感謝デー」の特典と併用できるのはうれしいところです。
ただし、オーナーズカードはイオン株の保有が条件で、元本割れなど株価変動のリスクを負う点は頭に入れておきましょう。
また、イオンセレクトクラブについては、金利面を中心に他社商品と比べたときに、イオン銀行の住宅ローンにメリットがあるのかどうかは必ず検討する必要があるでしょう。当然のことではありますが、「完済までイオンで5%オフ」という特典だけを目当てに、住宅ローンを組むのは得策とは言えません。
ここまで紹介したのは、より多くの「WAON POINT」を貯めたり、割引きを受けたりする方法。ここからは、貯めた「WAON POINT」の有効活用策を紹介していきます。
「WAON POINT」の活用法として人気があるのが、ドラッグストアチェーンのウエルシア薬局を舞台にした「ウエル活」です。
ウエルシア薬局では毎月20日を「お客様感謝デー」と題し、「WAON POINT」を200P以上利用すると、1.5倍相当の買い物ができる特典を用意しています。1日のポイント使用の上限は30,000ポイント(45,000円相当)となっています。2024年8月20日までは「Vポイント」も1.5倍の対象ですが、9月以降は「WAON POINT」のみが対象となります。
ウエルシアの「お客様感謝デー」では、たとえば「WAON POINT」1,000P(1,000円相当)を使うと1,500円分の商品を購入できます。実質的に約33%オフで買い物ができるキャンペーンとも言え、個人的には無数にあるポイ活の中でも「最強のポイ活」のひとつだと考えています。
ウエルシア薬局は、医薬品だけではなく、お米などの食料品や日用品も十分にそろっています。私も毎月20日は1万〜2万円相当のポイントを使って、ウエルシア薬局でこうした商品をまとめ買いするのがルーチンになっています。
ポイントの価値を1.5倍にアップさせる「ウエル活」は人気のポイ活(画像はウエルシア薬局公式サイトより)
毎月5日には、本州(東北地区を除く)・四国のイオンや専門店(WAON POINT加盟店に限定)で「WAON POINT」10P以上を利用すると、利用ポイントの10%分がバックされるキャンペーンが実施されています(マックスバリュ、ダイエーなどは対象外)。たとえば、1,000Pを利用したときは、後日100Pが戻ってくることに。900Pで1,000円分の買い物ができたことになり、実質10%オフの割引きを受けられることになります。
こちらも「WAON POINT」を1ポイント1円以上の価値にアップさせる使い道のひとつで、イオングループはもちろんのこと、専門店も対象になるとあって、実はかなりメリットの大きいキャンペーンです。
さらに、イオンモールに入る専門店でポイントバック率をアップさせたキャンペーンが不定期に実施されています。たとえば、2024年5月24日から3日間、「ノジマ」「サーティワン」「カルディ」などの専門店を対象に、20%分のポイントが返ってくるキャンペーンが行われました。
これらの専門店は、5%オフとなるお客様感謝デーでは割引きの対象とならないので、開催されたときには積極的に狙いたいキャンペーンと言えそうです。
イオンでは、買い物時に「WAON POINT」を利用すると、10%分のポイントが還元されるキャンペーンを毎月5日に実施中
これまで見てきたとおり、「WAON POINT」は、ウエルシアの「お客様感謝デー」(ポイントの価値が1.5倍)に代表されるように、利用価値の高い「使い道」が用意されています。いっぽうで、ポイント10倍キャンペーン(還元率5%)などは開催されているものの、「楽天ポイント」や「PayPayポイント」などと比べても、「貯めやすさ」という点では非力なのは否めません。
こうした弱点を補う意味で活用したいのが、三井住友フィナンシャルグループが展開する「Vポイント」です。
「Vポイント」は「WAON POINT」と1P単位で相互かつ即時の交換が可能で、相性は抜群です(交換上限は1か月3万P)。そして、「Vポイント」は非常に貯めやすいポイントとして知られており、「三井住友カード(NL)」や「三井住友カード ゴールド(NL)」を、コンビニや飲食チェーンの対象店で使うと7%以上のポイントが還元されます。
ウエルシアの「お客様感謝デー」は2024年8月までは「Vポイント」も1.5倍の対象になっていますが、「WAON POINT」のみが対象となる9月以降は、
(1)三井住友カードを使って、多くの「Vポイント」を獲得
(2)獲得した「Vポイント」を「WAON POINT」に交換
(3)交換した「WAON POINT」を原資にして「ウエル活」を実行
というステップを踏むことで、ポイ活におけるおトク度をかなり高められそうです。
(ただし、「Vポイント」と「WAON POINT」の等価交換が継続されるかは要チェックと考えています)。
以上、イオン経済圏の攻略法について紹介してきました。
イオン経済圏の最大の特徴は日本最大級のスーパー(イオン)とドラッグストア(ウエルシア)を足場に持ち、全国各地に張り巡らされたリアルなショッピングの場で、ポイントの利活用や割引きなどの特典を受けられる点にあります。イオンのお店が生活圏内にあれば、選ぶべき経済圏の候補に入ってきそうです。
そして、「WAON POINT」の価値を1.5倍にできる「ウエル活」は、イオン経済圏攻略のうえで欠かすことのできない要素です。その意味で、「イオンで貯めたポイントを(Vポイントからの交換も活用しながら)、毎月20日にウエルシアで集中的に利用する」というのが有効な攻略法になりそうです。