「預けても増えない」が常識だった普通預金が様変わりしつつあるようです。日銀の「利上げ」の影響で、メガバンク3行の普通預金金利は、現在年0.2%に上がっています。まだまだ、「預けると増える」と言えるほどではないかもしれませんが、2024年3月の「利上げ前」の金利が年0.001%だったことを踏まえると、1年で200倍というハイペースで預金金利が上がっていることは確かです。
本記事掲載のネット銀行一覧。普通預金の適用金利や金利アップの条件は2025年4月1日時点
この動きはネット銀行にも波及しています。多くのネット銀行が普通預金の金利を年0.2%程度に変更済み。さらに、「利用状況」や「預金金額」などの条件を満たすことで、“メガバンク以上”の金利を適用するネット銀行も出てきています。日銀の「追加利上げ」の可能性を考えると、今後ますます「どこの銀行に預けるか」が重要になってきそうな予感があります。
そこで本記事では、2025年4月時点で、普通預金金利が比較的高い10のネット銀行を、最大で目指せる金利順にご紹介します。本記事は銀行の動向に合わせて随時情報を更新する予定なので、ぜひ、「預けてトクする銀行」を見つける参考にしてもらえればと思います。
▼本記事から申し込めるネット銀行口座
まず、意外と知らない人も多い、普通預金の金利や受け取れる利息などの基礎知識を、Q&Aでまとめます。各銀行の解説とともに、銀行選びにお役立てください。
※本章は「一般社団法人 全国銀行協会」公式サイトや金融機関公式サイトの解説を基に構成しています
普通預金の金利は、一般的には「年利=1年あたりの利率」を意味し「%」で表示されます(年〇%、あるいは年利〇%)。たとえば、100万円を年0.3%の普通預金に1年間預けると3,000円の利息(利子)が発生します。
利息の支払い日は金融機関ごとに異なりますが、半年ごとの年に2回支払われるのが一般的です。金融機関のなかには、本記事で紹介しているSBI新生銀行の「普通預金の利息は毎月支払われる」のように、支払いスケジュールが異なるところもあります。本記事では、各銀行の説明の中で、「いつ利息が支払われるか」も記載しています。
支払われた利息は、普通預金の元金に組み込まれます。
普通預金の利息は、20.315%の税率で課税されます。20.315%の内訳は、所得税15.315%(復興特別所得税0.315%を含む)、地方税5%です。Q1の3,000円の利息であれば、609円(※)が課税され、残りの2,391円を受け取ることになります。
※所得税と地方税は1円未満切り捨て、復興特別所得税は50銭以下切り捨て、50銭超切り上げ
普通預金の利息は1日単位で計算されます。1日に発生する利息は下記の計算式で算出できます。
預けた金額×金利÷365
仮に100万円を、金利が年0.3%の普通預金に半年間(182日間)預けた場合の利息は下記のように計算できます(預けている期間中の金利変動はないと仮定します)。
100万円×0.3%=3,000円
3,000円÷365×182=1,495円(1円未満切り捨て)
そして、Q3のとおり、1,495円に課税され、税引き後の金額を受け取ります。
東京スター銀行
1999年6月に経営破綻した旧・東京相和銀行の営業地盤を譲り受けた第二地方銀行。2001年営業開始。ネットバンキングだけでなく、実店舗でも営業。2014年には台湾大手銀行の中國信託商業銀行が全株式を取得
東京スター銀行の「スターワン円普通預金」の通常の金利は年0.2%です。しかし、所定の条件をクリアするごとに金利が上乗せされる「金利優遇プログラム」によって、最大で年0.6%が目指せます。
「金利優遇プログラム」の条件は下記の3つ。このうち、「条件1」をクリアした場合は年0.6%にアップ。「条件2」と「条件3」は、どちらかひとつをクリアなら年0.4%、両方をクリアした場合は年0.6%です。この中では、比較的クリアが容易な「条件1」は狙い目かもしれません。
条件1:給与・年金の受取口座として同行口座を指定
条件2:300万円以上の資産運用商品(円仕組み預金、外貨預金、投資信託)を保有(※)
条件3:東京スター銀行のNISA口座を保有かつ投資信託を購入
※金融資産の価格変動により、月末の評価額が300万円未満になった場合は優遇金利の対象になりません
●東京スター銀行の普通預金の利息支払いタイミング:2月、8月
※東京スター銀行の普通預金の詳細はコチラ
auじぶん銀行
2008年6月にKDDIと三菱UFJ銀行の共同出資により、株式会社じぶん銀行として設立。同年7月に営業開始。2020年2月に現在のauじぶん銀行に商号変更。2025年1月にKDDIが全株を取得
auじぶん銀行は2025年3月より普通預金の金利を年0.21%に引き上げました。さらに、auじぶん銀行では、条件を満たすごとに金利が上乗せされ、最大で年0.51%まで目指せます。
金利アップの条件と上乗せされる金利は下記のとおりです。条件の内容を見てもわかるとおり、au経済圏のサービスをよく使う人に有利な仕組みです。すでにau関連サービスを使っている人や今後使う可能性のある人は、検討してみる価値がありそうです。
条件1:スマホ決済「au PAY」と「auじぶん銀行」の口座を連携 → +年0.05%
条件2:「au PAY カード」の利用代金を「auじぶん銀行」の口座から引き落とす → +年0.05%
条件3:「三菱UFJ eスマート証券」と「auじぶん銀行」の口座を連携する「auマネーコネクト」を設定 → +年0.1%。
条件4:auの料金プラン「auマネ活プラン+」への加入 → +年0.05%
条件5:「au PAY ゴールドカード」の利用代金を引き落とす → +年0.05%
●auじぶん銀行の普通預金の利息支払いタイミング:2月、8月
※auじぶん銀行の普通預金の詳細はコチラ
あおぞら銀行BANK
あおぞら銀行のインターネット専業支店。2009年4月にあおぞら銀行がインターネット支店(現BANK支店)を開設し、インターネットバンキング業務を開始。本記事掲載のGMOあおぞらネット銀行もあおぞら銀行のグループ会社だが、それぞれ別の銀行として営業
あおぞら銀行BANKの普通預金金利は、1円以上100万円以下の預金に対して年0.5%、100万円を超える預金に対しては年0.35%です。他行でよく見られる「証券会社の口座との連携」や「給与や年金の振込口座の設定」などの条件はなく、口座を開設すれば誰でもこの金利が適用されます。利用条件などを気にせずとも、預けるだけでメガバンク以上の金利が適用されるのは、大きなメリットでしょう。
●あおぞら銀行BANKの普通預金の利息支払いタイミング:2月、8月
※あおぞら銀行BANKの普通預金の詳細はコチラ
GMOあおぞらネット銀行
1994年に日債銀信託銀行として開業。GMOグループとあおぞら銀行の共同出資により2018年6月にGMOあおぞらネット銀行に社名変更。2018年7月からインターネット銀行としての事業を開始
GMOあおぞらネット銀行の普通預金金利は年0.2%ですが、提携サービスの利用状況などによって、金利を上げることも可能です。
最もおトクなのが「ハビト支店口座」の開設で、金利は年0.5%にアップします(ただし、年0.5%の金利が適用されるのは口座残高100万円以下の部分まで。100万円超の部分は普通預金の通常の金利が適用)。
「ハビト支店口座」とは、株式会社Habittoが提供する金融サービスアプリ「Habitto(ハビット)」内の同行専用支店口座のこと。この口座を開設すると、「Habitto」の専用アドバイザーより貯蓄・投資・保険など、お金に関するアドバイスを受けられます。ただし、「ハビト支店口座」の利用は無料ではあるものの、アドバイスの中で提携する企業の金融サービスが紹介されることがあるようです。「Habitto」の公式サイトなどでサービス内容をよく確認のうえ、「ハビト支店口座」の利用を検討するといいでしょう。
このほか、GMOあおぞらネット銀行とGMOクリック証券との口座連携サービス「証券コネクト口座」を開設すると、普通預金の金利は0.21%に上がります。
●GMOあおぞらネット銀行の普通預金の利息支払いタイミング:毎月
※GMOあおぞらネット銀行の普通預金の詳細はコチラ
SBI新生銀行
2000年6月に日本長期信用銀行から新生銀行に行名を変更。2021年12月にSBIホールディングスに買収され、2023年1月よりSBI新生銀行に行名を変更。本格的なインターネットバンキングの参入はほかの銀行より早く、今では一般的なATMの24時間365日稼働や、ATM手数料の無料化などのサービスも早くから導入
SBI新生銀行の「パワーフレックス円普通預金」の金利は年0.21%です。さらに、「ステップアッププログラム」という5段階の優遇サービスで最上位ステージの「ダイヤモンドステージ」に判定されると、年0.4%まで金利が上がります。
「最上位ステージ」と聞くとかなり難度が高い印象を受けます。しかし、下記のいずれかの条件を満たすことで「ダイヤモンドステージ」に判定されるため、資産運用に慣れている、あるいはこれから始めたいという人なら目指しやすいかもしれません。
▼下記いずれかの条件を満たすと、翌々月から「ダイヤモンドステージ」にステージがアップ(普通預金の金利が年0.4%へアップ)
条件1:「SBI証券」との口座振替登録
条件2:SBI新生銀行の円普通預金口座と「SBI証券」の証券総合口座を連携させる、「SBI新生コネクト」という手数料無料の自動入出金サービスに加入
なお、SBI新生銀行の「パワーフレックス円普通預金」には、利息が毎月受け取れる特徴もあります(普通預金の利息は半年に1度受け取るのが一般的・後述)。
●SBI新生銀行の普通預金の利息支払いタイミング:毎月
PayPay銀行
日本初のインターネット専業銀行(当時はジャパンネット銀行)として2000年に開業。2021年4月に「PayPay銀行」に社名変更。PayPayアプリと連携し、口座開設申込を最短1分で可能にするなど先進的な取り組みが知られる。2024年5月時点での預金口座数は800万口座超
PayPay銀行の「ステップアップ円預金」の通常の金利は年0.2%ですが、預金残高に応じて金利が上乗せされます。また、年齢によっても金利アップの条件が変わるのも特徴です。金利が上がる条件は下記のとおりです。
▼29歳以下の人
預金残高10万円未満……年0.2%
預金残高10万円以上〜100万円未満……年0.3%
預金残高100万円以上……年0.4%
▼30歳以上
預金残高50万円未満……年0.2%
預金残高50万円以上〜200万円未満……年0.3%
預金残高200万円以上……年0.4%
●PayPay銀行の普通預金の利息支払いタイミング:毎月
※PayPay銀行の普通預金の詳細はコチラ
楽天銀行
2000年、伊藤忠商事が中心となり、住友商事、日本テレコム、日立製作所などが銀行設立を目的として日本電子決済企画を設立。2001年にイーバンク銀行に商号変更し、営業開始。2009年に楽天が親会社となり、2010年に楽天銀行に商号を変更し現在に至る
楽天銀行の普通預金の金利は2025年3月より年0.2%に引き上げられました。さらに、楽天証券と楽天銀行間の口座連携サービス「マネーブリッジ」を設定すると、金利は年0.28%にまでアップします(ただし、年0.28%が適用されるのは300万円以下の預金残高まで。300万円を超える部分には年0.22%の金利が適用)。また、「マネーブリッジ」を利用しない場合でも、「楽天カード」のユーザーであれば、楽天銀行の口座から利用代金が引き落とされると、金利が年0.22%にアップします。
そして、「マネーブリッジ」を設定したうえで、「楽天カード」の上位カード(年会費のかかる3券種)の引き落としがあるとさらに高い金利が目指せます。
「楽天ゴールドカード」(年会費2,200円)の利用代金の引き落としがあると、金利は年0.29%(「マネーブリッジ」による金利アップ分を含め)にアップ。「楽天プレミアムカード」(年会費11,000円)なら年0.3%、最上位の「楽天ブラックカード」(年会費33,000円)なら年0.34%になります。ただし、いずれも優遇金利が適用されるのは300万円以下の預金残高までであり、300万円を超える部分には年0.22%の金利が適用されるのでご注意ください。これらをまとめると、下記の表になります。
楽天銀行の普通預金金利が上がる条件
金利アップの仕組みが、ほかのネット銀行と比べるとやや複雑ではありますが、楽天証券や対象カードを使っている人、あるいは使う予定のある人であれば、楽天銀行とセットでの利用を検討してみてもいいでしょう。
●楽天銀行の普通預金の利息支払いタイミング:3月、9月
※楽天銀行の普通預金の詳細はコチラ
イオン銀行
2007年10月開業。イオンモール内などにリアル店舗があり、店頭ではネットと同様に、預金や住宅ローン、投資信託、外貨預金、iDeCoなど幅広い商品を取り扱っている
イオン銀行の普通預金金利は年0.2%です。そして、この金利は「イオン銀行Myステージ」によって変動します。「イオン銀行Myステージ」は、クレジットカードの「イオンカード」、スマホ決済の「AEON Pay」などの利用代金の引き落としや、電子マネーの「WAON」の利用金額など、対象取引の利用状況によって、イオン銀行の各種取引が優遇されるサービスです。
対象取引の毎月の利用状況によって「イオン銀行スコア」という独自の点数が貯まり、その点数によって決定した「ステージ」に応じた優遇サービスが受けられる仕組みです。この優遇サービスの中に、イオン銀行の普通預金金利アップが含まれています。
「イオン銀行Myステージ」のステージごとの適用金利は下記のとおりです。
・プラチナ(必要なイオン銀行スコア150点以上) → 年0.25%
・ゴールド(必要なイオン銀行スコア100点以上) → 年0.22%
・シルバー(必要なイオン銀行スコア50点以上) → 年0.21%
・ブロンズ(必要なイオン銀行スコア20点以上) → 年0.2%
※1か月に獲得したイオン銀行スコアによって翌々月のステージが決定。
「給与や年金の受け取り」(30点)、「月末時点でイオンカードセレクトの契約がある」(10点)、「イオンカードやAEON Payの利用代金の引き落とし」(利用代金によって10〜100点)など、イオン銀行スコアの獲得チャンスの幅は広く、イオン経済圏をよく利用する人であれば、高金利が狙える可能性がありそうです。
●イオン銀行の普通預金の利息支払いタイミング:2月、8月
※イオン銀行の普通預金の詳細はコチラ
住信SBIネット銀行
三井住友信託銀行とSBIホールディングスが共同出資で設立したネット専業銀行。2007年9月に営業開始。2016年1月には日本で初めて非接触IC型デビットカード取扱い開始。2024年12月時点では預金総残高が10兆円を突破
住信SBIネット銀行の普通預金金利は2025年3月から年0.2%に引き上げられました。また「SBI証券」の証券口座と連携する「SBIハイブリッド預金」の場合、金利は年0.21%までアップします。
「SBIハイブリッド預金」は住信SBIネット銀行口座の残高で金融商品の取引ができる口座ですが、投資をせずに普通預金口座と連携させるだけでも金利は上がります。
●住信SBIネット銀行の普通預金の利息支払いタイミング:毎月
※住信SBIネット銀行の普通預金の詳細はコチラ
ソニー銀行
2001年4月にソニー、三井住友銀行などの出資によって設立されネット専業銀行。2008年3月にソニーフィナンシャルホールディングス株式会社(現:ソニーフィナンシャルグループ株式会社)の完全子会社化。2021年9月には預金残高3兆円を突破
ソニー銀行の普通預金の金利は2025年2月より年0.2%に上がりました。
ソニー銀行の普通預金は今のところメガバンクと同水準ですが、同行のVisaデビット付きキャッシュカード「Sony Bank WALLET」には、国内でのショッピングで最大2%のキャッシュバック機能が付いており、節約につながります。この点も加味してソニー銀行を検討するといいでしょう。
●ソニー銀行の普通預金の利息支払いタイミング:2月、8月