豊富な製品ラインアップを誇るファーウェイのスマートフォン。エントリーモデルだけでも、「P20 lite」、「Mate 20 lite」、「nova lite 3」の3モデルが存在する。価格帯も近く、なかなか分かりづらいそれぞれの違いや個性を、ボディ、基本性能、カメラ、通信性能の4点から比較した。
ファーウェイのスマートフォンの国内向けラインアップは、大きく分けて「Mate」「P」「nova」の3シリーズあるが、それぞれに「lite」が付くエントリーモデルが用意されている。しかも、この3つの「lite」モデルは、シリーズの位置付けほどの違いがなく、価格も近い。それゆえどのモデルがどのような特徴があるのかわかりづらく、選ぶのに迷ってしまう人もいるだろう。
そこで、この3モデルについて、いくつかのポイントから比較を行い、それぞれの特徴をあぶり出してみた。なお、発売時期は「P20 lite」(2018年6月)、「Mate 20 lite」(2018年11月)、「nova lite 3」(2019年1月)となっている。
まずは、各機種のボディを見てみよう。「P20 lite」は、約5.84インチの液晶ディスプレイを搭載する、標準的なサイズだ。いっぽう「Mate 20 lite」は約6.3インチ、「Nova lite 3」は約 6.21インチの液晶ディスプレイを搭載する比較的大型モデルとなる。
ボディサイズを見ると、「nova lite 3」は厚みが7.95mmで、「Mate 20 lite」の約7.6mmや「P20 lite」の7.4mmと比較すると、やや厚みがある。重量は、画面の小さい「P20 lite」が約145gと軽く、「nova lite 3」が約160gで、「Mate 20 lite」が約172gとなる。「nova lite 3」は、6インチ以上の大画面モデルとしては比較的軽い。なお、3機種とも、防水・防塵仕様やタフネス仕様とはなっていない。
3機種の中では最大の「Mate 20 lite」を下に、「nova lite 3」を中に、「P20 lite」を上にして重ねた。画面サイズが約5.84インチの「P20 lite」は、ほかの2機種よりひと回り小さい
ディスプレイは、3機種ともフルHD+に対応だが、「P20 lite」が2,280×1,080、「Mate 20 lite」と「nova lite 3」が2,380×1,080という、縦方向の解像度で100の違いがある。各機種の画質はよく似ているが、細かく見ると「P20 lite」は、輝度やコントラスト、視野角などそつがない印象。この3機種ではもっとも高価な「Mate 20 lite」はもっとも鮮明で文字もクッキリ見やすく上質な印象だ。「nova lite 3」はコントラストが少々低く眠い印象で、この3機種の中ではやや画質は劣る。
いずれも切り欠き(ノッチ)を備えたフルHD+対応の液晶ディスプレイを搭載する。全般的な画質の傾向は似ているが、並べて見比べると、シリーズなりの差が見とれる
ボタンの配置や接続インターフェイスの位置は基本的に共通で、右側面にボリュームと電源ボタンが、下側面にヘッドホン端子とUSBポートが配置される。ただし、「P20 lite」と「Mate 20 lite」は、USB Type-Cポートなのに対し、「nova lite 3」は、microUSBポートという違いがある。このため、「P20 lite」と「Mate 20 lite」は、18W(9V/2A)の大電力を使ったファーウェイ独自の急速充電方式「HUAWEI Quick Charger」に対応しており、満充電にかかる時間は2時間以内だ。いっぽう「nova lite 3」は、10W(5V2A)の充電にしか対応せず、実際に充電を行ってみたところ満充電まで3時間程度かかった。(※3/22追記:今回の検証では3時間ほどかかりましたが、2時間程度で完了するというケースもあるようです)
「P20 lite」(上段)と「Mate 20 lite」(中段)はUSB Type-Cポートを、「nova lite 3」(下段)はmicroUSBポートという違いがある
次に、ボディの質感やデザインを見てみよう。3機種とも表面いっぱいに広がるノッチ付きのディスプレイ、光沢の強い背面など、デザインの方向性は共通。ただ、背面の素材が「P20 lite」と「Mate 20 lite」はガラスなのに対して、「nova lite 3」は樹脂という違いがある。今回使用した検証機の「nova lite 3」は、手元に届いた時点で細かな擦過傷が見られ、キズへの耐性はあまり期待できない、また背面を押すと軽く変形もする。ただし、「nova lite 3」と「P20 lite」には、保護カバーが同梱されているので、カバーを付ければこうした問題もある程度はカバーできる。
「P20 lite」のカラーは、ミッドナイトブラック、クラインブルー、サクラピンクの3色
「Mate 20 lite」のカラーは、サファイアブルーとブラックの2色
「nova lite 3」は、オーロラブルー、コーラルレッド、ミッドナイトブラックの3色
「nova lite 3」の背面はやわらかい樹脂製なので軽く押すと凹む。細かなキズも付きやすいので、同梱されるカバーの存在はうれしい
基本性能を見てみよう。もっとも発売時期が古い「P20 lite」は、ファーウェイ自社製のSoC「Kirin 659」を採用し、4GBのRAMと32GBのストレージを組み合わせる。発売が比較的新しい「Mate 20 lite」と「nova lite 3」は、設計世代の新しい「Kirin 710」をそれぞれ搭載している。なお、「Mate 20 lite」は4GBのRAMと64GBのストレージを搭載するが、「nova lite 3」は、3GBのRAMと32GBのストレージとなっており、コストをより意識した構成だ。
この3機種の処理性能を、定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク(Ver7.1.4)」を使って計測した。「P20 lite」の総合スコアは87,313(CPU:41,530、GPU:13,113、UX:24,220、MEM:8,450)、「Mate 20 lite」の総合スコアは140,183(CPU:67,382、GPU:22,231、UX:37,601、MEM:12,969)、「nova lite 3」の総合スコアは、129,338(CPU:56,553、GPU:28,087、36,044、MEM:8,654)となった。処理性能では「Mate 20 lite」と「nova lite 3」が僅差、それらと少し差が付いて「P20 lite」となる。
AnTuTuベンチマークの計測結果。左が「P20 lite」、中央が「Mate 20 lite」、右が「nova lite 3」のもの。SoCの世代が新しい「Mate 20 lite」と「nova lite 3」のスコアが高い
体感速度については、アプリの起動速度では3機種ともそれほど明白な違いは感じ取れなかった。ただ、新しいSoCを搭載することでグラフィック性能を高めた「Mate 20 lite」と「nova lite 3」のほうが、Webページのスクロールや、3Dを使ったゲームの動きでは、よりスムーズであった。「Mate 20 lite」と「nova lite 3」の体感上の違いは、バックグラウンドアプリの挙動で、RAM容量が多い「Mate 20 lite」のほうが、アプリが勝手に終了してしまうことも少なかった。
OSは、いちばん新しい「nova lite 3」がAndroid 9.0なのに対して、「P20 lite」がAndroid 8.0、「Mate 20 lite」がAndroid 8.1という違いがある。ただし、ファーウェイのアナウンスでは「P20 lite」は2019年5月頃に、「Mate 20 lite」も同年3月頃に、Android 9(EMUI 9.0)へのバージョンアップを行うとしている。この点を考慮すれば、OSの違いを気にする必要はなさそうだ。
左から「P20 lite」「Mate 20 lite」「nova lite 3」の操作ボタンのカスタマイズ項目。各機種とも、プリインストールされるOSのバージョンが異なっており、メニューの項目やカスタマイズ内容に違う部分がある
次は、カメラ機能だ。いずれもメインカメラはダブルレンズカメラ。フロントカメラは、「Mate 20 lite」のみデュアルカメラと言う設定となる。各機種のメインカメラは、それぞれ、「P20 lite」が約1,600万+約200万画素、「Mate 20 lite」が約2,000万+約200万画素、「nova lite 3」は約1,300万+約200万画素と言う構成となる。各機種とも、光学ズーム対応ではなく、色情報を読み取るメインのセンサーの画素数がシリーズごとに異なっているという形だ。200万画素のイメージセンサーは、被写界深度の計測に使われている。なお、各機種ともAIシーン認識を備えており、カメラ任せでもきれいな撮影が行える。
いずれもメインカメラは「P20 lite」(左)は約1,600万+約200万画素。「Mate 20 lite」(中央)は約2,000万+約200万画素。「nova lite 3」(右)は約1,300万+200万画素
以下にメインカメラで撮影した作例を掲載する。特に断り書きのない場合、カメラ任せのオートモードで撮影を行っている。なお、いずれの作例は上から「P20 lite」「Mate 20 lite」「nova lite 3」の並びとなる。
明るい場所に設置された水槽のウツボを接写。発色の違いはほとんど感じられない。等倍にした場合の解像感は高解像度の「Mate 20 lite」が有利だが、そうでもしなければ解像感には違いはあまり感じられない
明暗差の大きな構図で、HDR機能を使って撮影を行った。なおピントは構図の中央に当たる軒裏にあわせている。「nova lite 3」はHDRの効果が薄く、軒裏が薄暗くなってしまった
丸の内の夜景を撮影。「P20 lite」は全体的に光量が不足している。逆に、「nova lite 3」は、実売3万円以下の価格帯としては、かなり鮮明だ
夜の花壇を撮影。なお、「Mate 20 lite」だけはオートフラッシュの設定になっていたが、条件をそろえるため、オフにしている。やはり、光量の面で「P20 lite」が不利で、「Mate 20 lite」と「nova lite 3」はほぼ互角。ただし、3機種とも手持ち撮影でも手ぶれがさほど目立たず、失敗写真は意外と少なかった
この3機種のメインカメラは、レンズの焦点距離が同じで、ダブルレンズカメラを生かした背景ぼかしの「アパチャー」機能、美顔機能など共通点は多い。ただ、「Mate 20 lite」には、ARエフェクトの「3D Qmoji」機能が搭載されていたり、ISO感度の上限が3200まで(そのほかの機種は1600)など、機能面では上である。十分な光量が確保できる明るい日中の撮影では顕著な違いは感じにくいが、夜景では意外と大きな差が現れ、鮮明な画像が手軽に撮れるのは「Mate 20 lite」と「nova lite3」の2機種となった。
「Mate 20 lite」には、2個のフロントカメラを生かしたARエフェクト「3D Qmoji」機能が備わる。これは、自分の表情に応じて、アバターの顔が変化するというもの
最後に通信性能を見てみよう。いずれの製品も、NTTドコモのB19、auのB18、ソフトバンク・ワイモバイルのB8といった、国内で使われるLTEのプラチナバンドに対応しており、通話エリアについては大きな違いはない。また、キャリアアグリゲーションにも対応している。ただ、「Mate 20 lite」については予定されているau VoLTEへの対応がまだ済んでおらず、auのSIMカードでの音声通話が行えない。
いずれも、nanoSIMカードスロットを2基備えているが、「P20 lite」のセカンダリーSIMカードスロットは2Gのみの対応に限られているので、日本国内ではデュアルSIM機として使うことができない。いっぽう「Mate 20 lite」と「nova lite 3」は、2基のSIMカードスロットのいずれもが2G/3G/4G対応のDSDV(デュアルSIMデュアルVoLTE)対応なので、SIMカードの組み合わせの自由度が高い。
Wi-Fiについては、「P20 lite」と「Mate 20 lite」は、2.4GHz帯と5GHz帯に対応しておりIEEE802.11a/b/g/n/acの各規格に対応する。いっぽう、「nova lite 3」は、2.4GHz帯のIEEE802.11 b/g/nの対応となっている。
デュアルSIM機としてみると、au VoLTEに対応済みの「nova lite 3」の使い勝手が最もすぐれているが、Wi-Fiが2.4GHz帯のみ対応というのがややネックとなる。
以上、ファーウェイのエントリーモデル3機種の違いと特徴に迫った。細かく見ていくと、3機種とも個性がかなり異なることがわかった。
昨年6月発売の「P20 lite」は、発売末期に近づいており、価格.comの最安価格は2万円台前半(2019年3月初旬現在)ともっとも安く買える。次期モデルの存在が気になる頃ではあるが、適度なサイズで、作りのよいボディや、基本性能面では今でも十分に満足でき、今回取り上げた3モデルの中では、バランスがいい。ただ、カメラの高感度撮影機能がやや弱い点と、国内では実質的にシングルSIMでしか使えないなど基本設計の古さを感じる部分も見られた。
「Mate 20 lite」は、今回取り上げたモデルではいちばん高い34,800円(税別)という価格もあり、ディスプレイの画質やボディの作り、基本性能など、全般今年1月に発売されたばかりだが、グレードが少し高く、欠点がもっとも目立たない製品だった。予算やボディの大きさを許容できれば、満足度の高い選択になるだろう。
シリーズ的に一番下の「nova lite 3」は、価格.comの最安価格が早くも28,000円以下まで下落しており、高いコストパフォーマンスに一層磨きがかかっている。ただ、今回、ほかのモデルと比較することで、ディスプレイの画質、樹脂製のボディ、充電時間、2.4GHzのみ対応のWi-Fi、RAMやストレージ容量の少なさなど、コスト削減の影響があちこちに感じられたのも確かだ。最新のSoC「Kirin 710」を搭載することで処理性能には余裕があり、カメラの性能も今回の3機種の中では良好な部類だが、注力している部分とそうでない部分の差がはっきりしており、使用用途をよく考えて選ぶ必要がありそうだ。
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