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10月1日から実施されるSIMロック廃止で変わることと注意点

2021年10月1日以降に発売される、通信キャリアの販売する端末にかけられているSIMロックが原則として廃止される。これにより、キャリアの販売する端末でも他社のSIMカードを自由に組み合わせられるようになり、端末と回線両方の価格競争が促進されることになる。SIMロック廃止の影響を解説しよう。

SIMロックの廃止がついに実現

SIMロックとかSIMフリーという言葉を目にする機会が増えた。SIMロックは、特定の通信事業社のSIMカードしか使えないようにするために、スマートフォン、ケータイ、モバイルWi-Fiルーターなどのモバイル端末にかけられた制限のこと。たとえば、NTTドコモの端末ならばNTTドコモの回線でないと使うことができないのが、常識になっていた。それに対して、SIMフリーとはそうした制限がかけられていない端末のことだ。

このSIMロックが、国の指導により2021年10月1日以降に発売される新製品について、原則として撤廃される。SIMロックの解除は近ごろ条件が緩和されており、場合によっては購入直後でも手数料無料で解除できる。ただ、解除の作業は不慣れな人には敷居が高かったのも事実。しかし、今後発売される端末はそうした作業が不要となるので、多くの人がSIMフリーの恩恵を享受できるだろう。

なお、国の指導を先取りする形で、SIMロックの撤廃はすでに一部の端末で始まっている。9月24日に発売された「iPhone 13」シリーズは4キャリア扱いモデルでもSIMロックはかかっていない。またauが、9月9日に発売したシャオミ「Redmi Note 10 JE」や、ソフトバンクの「LEITZ PHONE 1」や「razr 5G」もSIMフリーの状態で発売されている。

10月1日以前に発売されたスマートフォンも、SIMロック廃止を先取りする形で一部がSIMフリー化されている。写真はソフトバンクの「LEITZ PHONE 1」だが、こちらもSIMフリーだ

10月1日以前に発売されたスマートフォンも、SIMロック廃止を先取りする形で一部がSIMフリー化されている。写真はソフトバンクの「LEITZ PHONE 1」だが、こちらもSIMフリーだ

SIMロック廃止で回線の自由度が大幅に向上

SIMロックのかかっていない端末では、他社のSIMを挿して4Gや5Gなどのモバイル通信や音声通話、SMSなどが利用できる。これによりA社で買った端末をB社のSIMで使うことが容易に行えるようになる。

海外に出かけた際に、現地の安価なSIMをそのまま使うこともSIMフリーなら簡単だ。また、昨今注目を集めるeSIM(SIMカードの情報を電子化したもの)は、複数のeSIMデータを瞬間的に切り替えられる利点があるが、SIMフリーなら、それも容易だろう。

SIMを切り替えると、使えなくなる機能があるのではないかと心配かもしれない。確かにケータイの時代は、そういう機能やサービスが多かった。しかし、スマートフォンではそうした回線に基づく制約は激減している。スマートフォンのアプリ、オンラインストレージ、設定やデータのバックアップ、メールなどの根幹を支えているのは、iPhoneなら「Apple ID」、Androidなら「Googleアカウント」だろう。これらは通信キャリアとは無関係のサービスだ。また、通信キャリアのコンテンツサービスも、IDとパスワードでログインするオープン化が進んでおり、回線の種類は問われない。キャリアメールも、クラウド化が進んでいるのでサービスを維持する最低限の契約だけを残して、IMAPメールやWebメールとして使うことができる。

通信キャリアのコンテンツサービスは、回線に依存しないオープンなサービスに移行している。最低限の契約を残しておけばキャリアメールもWebメールやIMAPメールとしてスマートフォンやPCからアクセスできる

通信キャリアのコンテンツサービスは、回線に依存しないオープンなサービスに移行している。最低限の契約を残しておけばキャリアメールもWebメールやIMAPメールとしてスマートフォンやPCからアクセスできる

「バンド制限」や「IMEIロック」などSIMロック以外の制約がある場合も

SIMロックの廃止で、回線と端末の組み合わせの幅が増える。しかし、ほかの技術的な理由でSIMの組み合わせに制約が生じる場合がある。

SIMを自由に組み合わせて使うには、そのSIMの通信事業者が利用する電波の周波数帯と、端末の対応する周波数帯が合致している必要がある。この合致が不十分だと通信エリアが狭く、通信速度も不十分といった問題が起こりやすい。なお、周波数帯は4Gであれば大文字Bの付いた数字で、5Gなら小文字nの付いた数字で記載される。各端末の対応する周波数帯は、通信キャリアの製品スペック表や、SIMロック解除の案内ページにまとめられている(NTTドコモauソフトバンク)。

以下に、国内4キャリアが運用している電波の周波数帯をまとめた。(4Gから転用された5G周波数帯は除外。5Gへの転用が進行中のため、4Gも今後変更される場合がある。)。

NTTドコモ
4G:B1、B3、B19、B21、B28、B42
5G:n78、n79、n257

KDDI(UQコミュニケーションズを含む)
4G:B1、B3、B11、B18(B26)、B28、B41、B42
5G:n77、n78、n257

ソフトバンク(ワイヤレスシティプランニングを含む)
4G:B1、B3、B8、B11、B28、B41、B42
5G:n77、n257

楽天モバイル
4G:B3、B18(B26)
5G:n77、n257

このように、各社が利用している周波数帯は微妙に異なっている。重要なのは各社の4Gの中核となるプラチナバンドだ。NTTドコモならB19、auならB18(B26)、ソフトバンクならB8がそれに当たり、この周波数帯に対応していない端末では、エリアの面で不利になりやすい(B28もプラチナバンドだが、基地局数が少ないためサービスの中核を担う存在とは言いがたい)。このほか、通信キャリアによって微妙に異なるVoLTEの仕様に対応していないと、音声通話に支障が出る場合がある。

10月6日に発売されるサムスンのスマートフォン「Galaxy Fold3 5G」の国内向けの4G対応周波数帯は、NTTドコモ版「SC-55B」はB1、B3、B19、B21、B28、B42となる。いっぽう、au版「SCG11」は、B1、B3、B18、B28、B42と異なっており、それぞれが自社のプラチナバンドだけに対応している。また、他社のVoLTEへの対応状況もわからない。

同じ製品が複数の通信キャリアから発売されたとしても、同じ通信性能を持っているとは限らない。現実には、対応バンドなどの通信性能をより吟味しないと判断できない。なお、iPhoneシリーズについては、NTTドコモ、KDDI(UQ mobile)、ソフトバンク(ワイモバイル)、楽天モバイルのいずれも同じ仕様なので、通信性能も共通している。

端末ではなくSIMカード側に制限をかける場合もある。ソフトバンクはSIMをiPhone用、Andoid用など端末ごとに細分化する「IMEIロック」を実施しているので、そのままではSIMを使いまわすことが難しい。auの4Gプラン用SIMには、5G対応の 「iPhone 13/12」シリーズなどで利用できないという制約もある。

SIMロック撤廃は大きな一歩だが、新たな課題も見えてきた

SIMロックの撤廃は、今までの常識を変える大きな一歩だ。しかし、回線と端末を自由に組み合わせるには、SIMロック以外にも、対応周波数帯やVoLTEへの対応などの技術的な要素にも目配せが必要だ。今後は、端末の対応するバンドやSIMの情報など、より細かな技術情報の公開が通信キャリアに求められるし、ユーザーもそれらをよく吟味する必要があると言えよう。

田中 巧(編集部)

田中 巧(編集部)

FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。

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