iPhoneユーザーがスマートウォッチの購入を検討する際、真っ先に候補に上がるのがアップルのApple Watchシリーズです。しかし、本シリーズは複数のラインアップごとに細かいバリエーションが用意されており、初めて購入を検討する人や、久しぶりに買い替える人にとっては、どのモデルを選択すべきかわかりにくいという側面もあります。
そこで本記事ではApple Watchのラインアップをおさらいしつつ、各製品の特徴や、選ぶ際に確認したいポイントを厳選して解説しましょう。なお、記事に表記の価格は、2023年8月上旬時点におけるオンラインのApple Storeのものです。
2023年8月上旬時点では、Apple Store(オンライン)にて大きく以下の5系統が展開されています。
・Apple Watch Ultra:2022年9月発売(アウトドア向けモデル)
・Apple Watch Series 8:2022年9月発売(スタンダードモデル)
・Apple Watch SE(第2世代):2022年9月発売(廉価モデル)
・Apple Watch Nike(ブランドコラボモデル)
・Apple Watch Hermès(ブランドコラボモデル)
まず覚えておきたいのは、ブランドコラボモデルである「Apple Watch Nike」と「Apple Watch Hermès」は、デバイス部分の仕様としてはスタンダードモデルの「Apple Watch Series 8」とほぼ同様ということです。ブランドコラボモデルの魅力は、専用の文字盤や、こだわりのストラップバンドにあるので、今回は情報を端的に整理するためにいったん除外しておきましょう。
と考えると、現状のApple Watchのラインアップは以下のようになります。
・Apple Watch Ultra
・Apple Watch Series 8(※派生モデルとして「Nike」モデル、「Hermès」モデルがある)
・Apple Watch SE(第2世代)
以降は、この3系統について、概要をチェックしていきます。
最上位の「Apple Watch Ultra」は、2022年秋に初めてラインアップに追加されたアウトドア仕様のモデル。Apple Store(オンライン)での価格は124,800円(税込、以下同)で、同シリーズの中で特に高価な1台です。デザインや機能についても独自のものが多く、ユニークな存在です。
Apple Watchシリーズは、モデルによってケース部分に使われている金属が異なります。本機のケースには、航空宇宙産業レベルの「チタニウム」が採用されており、ほかの選択肢はありません。ケースのカラーバリエーションも「ナチュラル」の1色のみです。
ケースのサイズ、形状もほかのモデルとは異なっています。具体的には、ケースサイズが49mmと大きく、ディスプレイ面もぐっと台のように盛り上がった形で、ややゴツさを感じる意匠になっています。
また、「アクションボタン」と呼ぶアプリのショートカット起動などを割り当てられる物理ボタンが備わっていること、サイドボタンや「Digital Crown(デジタルクラウン)」と呼ばれるリューズ状のボタンが大きく配置されていることなども、本モデルならではの特徴です。
「Apple Watch Ultra」では、こうしたハードウェアの工夫によって、アウトドアシーンでの使い勝手が高くなっています。水深40mまでのレクリエーションダイビングで利用できるうえ、-20度や55度といった厳しい温度環境下でも使用できるように設計されています。また、ボタンの形状が工夫されているため、アウトドアシーンでグローブを装着した状態などでも、比較的操作が行いやすいと言えます。
日々の活動量や睡眠を計測する機能など、Apple Watchシリーズが備えるライフログ関連機能についても、最上位モデルらしく“全部入り”で漏れなく備わっています。アウトドアシーンだけでなく、日常使いにも十分対応できるわけです。
日常使いのために購入する場合は、スタンダードモデルの「Apple Watch Series 8」がおすすめです。屋外でワークアウトを楽しむことはあっても、軽いジョギングや、サイクリング、カジュアルなハイキング程度という人ならば、こちらで十分対応できます。価格は59,800円〜。「Apple Watch Ultra」と比べて半額以下に収まるため、より一般向けのモデルだと言えます。
ケース素材は、軽くて安価な「アルミニウム」と、高級感のある「ステンレススチール」の2種類から選択できます。カラーバリエーションは豊富で、アルミニウムだとミッドナイト、スターライト、シルバー、(PRODUCT)REDの4色が、ステンレススチールだとグラファイト、シルバー、ゴールドの3色が用意されています。
ケースサイズは45mmと41mmの2種類があります。文字盤の見やすさを優先したい人は45mmを、小さい腕時計が好きな人や、腕が細い人などは41mmを検討してみるといいでしょう。
Apple Watchシリーズは、世代ごとに新機能が追加されてきました。「Apple Watch Series 8」で追加された機能は、皮膚温の計測機能です。これにより、寝ている間の手首の皮膚温を計測し、周期的な体温の変化について記録できます。女性の場合には、「周期記録」機能との連携により、排卵日の推定に役立てることが可能です。
なお、一般的に使われることの多い「基礎体温」とは違って、「皮膚温」はさまざまな要因で変動しやすい扱いの難しい指標です。しかし、「Apple Watch Series 8」は、ディスプレイ側の温度センサーで測定した環境温度によって数値を補正することで、「皮膚温の変動」を意味のあるデータとして捉える仕組みになっています(皮膚温の計測は「Apple Watch Ultra」も対応)。
そのほか、「Apple Watch Series 8」を選ぶメリットとしては、ディスプレイが常時表示をサポートしていることがあげられます。腕を下ろしている状態でも、文字盤が真っ暗にならず、時計としてのデザインが楽しめますし、満員電車などで腕を動かして画面を点灯させづらい場面でも、時刻を確認しやすくなります。
なお、同機能は「Apple Watch Series 5」から搭載されているので、Series 8の新機能というわけではありませんが、後述する「Apple Watch SE(第2世代)」は非対応のため、購入検討時にチェックしておきたいポイントのひとつとなります。
「Apple Watch SE(第2世代)」は、37,800円から購入できるコストパフォーマンス重視の端末です。先述した「Apple Watch Series 8」と比べ、最小構成だと2万円強安く入手できますが、一部サポートしていない機能があることは理解しておきましょう。
ケース素材は「アルミニウム」のみ。カラーバリエーションはミッドナイト、スターライト、シルバーの3色から選択できます。ケースサイズは44mmと40mmの2種類。「Apple Watch Series 8」と比べると、ディスプレイの表示領域は少しだけ狭まります。
「Apple Watch Series 8」が対応しているものの、「Apple Watch SE(第2世代)」で対応していない機能は以下のとおりです。主に5つの機能が利用できません。
(1)血中酸素ウェルネスの測定
(2)心電図の測定
(3)皮膚温の計測
(4)高速充電
(5)常時表示
「血中酸素ウェルネスの測定」「心電図の測定」「高速充電」などが欲しい場合には、「Apple Watch Series 8」を選ぶほうが満足度は高くなるでしょう。いっぽう、これらの機能にこだわらない人であれば、「Apple Watch SE(第2世代)」のほうが費用を抑えられます。
廉価版に相当するとはいえ、「Apple Watch SE(第2世代)」は基本的にスマートウォッチに期待されがちな機能をまんべんなく備えています。運動(ワークアウト)の計測、睡眠の計測、心拍数/活動量の計測、通知の表示、アラームの設定、アプリの使用、コンパスの使用、転倒検出、衝突事故検出などは問題なく使えます。
上述してきた3つの系統のほか、Apple Watchの購入を検討する際には「GPSモデル」と「GPS+Cellularモデル」について選択する場面が出てきます。両者の違いを把握しておきましょう。
GPSモデルとは、Apple Watch単体でモバイル通信が利用できない機種のことを指します。つまり、外出時などに、ペアリングしたiPhoneを近くに持っていないと、Apple Watchで通話を行ったり、メッセージを送受信したりすることはできません。
GPS + Cellularモデルとは、専用の通信プランを契約すれば、Apple Watch単体でもモバイル通信が利用できる機種のことを指します。この場合、外出時にペアリングしたiPhoneを携行していなくとも、Apple Watchからメッセージの送受信や緊急通話の発信などの機能を利用できます。
また、GPS + Cellularモデルでは、ファミリー共有設定機能を活用することで、iPhoneを持っていない家族でもApple Watchが使えるようにセッティングすることが可能です。ただし、GPS + Cellularモデルのほうが高額であり、専用の通信プランを契約するために別途月額の維持費も発生する点は留意しておきましょう。
なお、上述してきた3系統について、「Apple Watch Ultra」ではGPSモデルの選択肢がなく、GPS + Cellularモデルのみが用意されています。「Apple Watch Series 8/SE(第2世代)」では、GPSモデル、またはGPS + Cellularモデルを選択できます。
まず、登山やウィンタースポーツ、ダイビングなどの比較的過酷な環境でアウトドアスポーツを楽しむかどうか。常時表示ディスプレイや皮膚温計測機能、高速充電機能の有無にこだわりたいかどうか。なるべく安価に入手したいかどうか、といったポイントで、3つの系統を選択しましょう。そのうえで、単体での通信が必要かどうかを決めます。そして、自身の好きな色やバンドの組み合わせを探っていきましょう。
ちなみに、Appleの公式サイトには、「Apple Watch Studio」というWebページが用意されており、画面サイズやケースの種類、バンドの種類などの組み合わせで、好みの組み合わせを探せるようになっています。こちらも必要に応じて活用してみてください。
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