ソニーのゲーミングギアブランド「INZONE(インゾーン)」から、同ブランド初となるTWSタイプのゲーミングヘッドセット「INZONE Buds WF-G700N」(以下、「INZONE Buds」)と、オーバーイヤー型ワイヤレスゲーミングヘッドセットの新モデル「INZONE H5 WH-G500」(以下、「INZONE H5」)が発表された。発売日はいずれも10月27日。市場想定価格は、「INZONE Buds」が30,000円前後(税込)、「INZONE H5」が25,000円前後(税込)だ。
ソニー「INZONE Buds WF-G700N」
ソニー「INZONE H5 WH-G500」
同ブランド初のTWSタイプのゲーミングヘッドセットとして登場する「INZONE Buds」。コンセプトは“コアゲーマーが理想とする完全ワイヤレスゲーミングヘッドセット”で、音質やノイズキャンセリングといったソニーらしいこだわりをプラスしつつも、INZONEのメインターゲットであるPCゲーミング、なかでも競技性の高いゲームプレイを行うコアなユーザーを強く意識した製品となっている。
INZONE初のTWSタイプのゲーミングヘッドセットとして登場する「INZONE Buds」。ホワイトとブラックの2色のカラーバリエーションを用意
INZONE Budsの特徴
●通信遅延30ms未満の2.4GHzワイヤレス接続、Bluetooth LE Audioの2つの接続方法をサポート
●ノイズキャンセリング機能とアンビエントサウンドモード(外音取り込み)を搭載
●ヘッドセット単体で最大12時間(ノイキャンオフ/2.4GHzワイヤレス接続時、ノイキャンオン時/2.4GHzワイヤレス接続時は最大11時間)のスタミナバッテリー
●「WF-1000XM5」と同じ口径8.4mmの「ダイナミックドライバーX」を搭載
●専用PCソフトウェア「INZONE Hub」を活用した独自の立体音響技術「360 Spatial Sound for Gaming」
なかでもコアユーザー向けというコンセプトが色濃く表れているのが接続方法とバッテリー駆動時間の部分だろう。JBLやロジクール、RazerといったメジャーなメーカーからすでにTWSタイプのゲーミングヘッドセットがいくつか発売されているが、それらが従来型のBluetooth接続(Bluetooth Classic)をサポートしているのに対し、「INZONE Buds」の接続方法は充電ケースに一緒に格納されている専用USBトランシーバー(USB Type-C)を活用した超低遅延の2.4GHzワイヤレス接続と、Bluetooth LE Audioの2種類のみ。
従来型のBluetooth接続(Bluetooth Classic)をあえてサポートせず、2.4GHz独自無線およびLE Audioに特化した低消費電力プロセッサー「L1」を新規開発して搭載し、「WF-1000XM5」にも搭載されている大容量電池と組み合わせることで、2.4GHzの超低遅延ワイヤレス接続ながらヘッドセット単体で最大12時間(ノイキャンオフ/2.4GHzワイヤレス接続時、ノイキャンオン時/2.4GHzワイヤレス接続時は最大11時間)というスタミナバッテリーの両立を実現しているのだ。
「INZONE Buds」の接続方法は専用USBトランシーバーを活用した超低遅延の2.4GHzワイヤレス接続と、Bluetooth LE Audioの2種類のみ。従来型のBluetooth接続(Bluetooth Classic)は利用できない
専用USBトランシーバーは充電ケース内部中央に格納されている
「INZONE Buds」のバッテリー駆動時間。専用USBトランシーバーを使用した2.4GHzワイヤレス接続/ノイズキャンセリングオンでもヘッドセット単体で最大11時間というスタミナバッテリーを実現している
専用USBトランシーバーはUSB Type-C形状となっており、USB Type-C接続をサポートしているスマートフォンやタブレット端末も専用USBトランシーバーを挿して認識されれば接続自体は可能だし、コアゲーマーに求められる低遅延スペックや長時間のバッテリー駆動時間を実現するなら、通信遅延の大きい従来型のBluetooth接続(Bluetooth Classic)をあえて利用しないという割り切った仕様にしたのだろう。同社が「INZONE Buds」を“ゲーミングイヤホン”や“ゲーミングTWS”ではなく、あえて“完全ワイヤレスゲーミングヘッドセット”と呼ぶのもこのあたりが影響していそうだ。
専用USBトランシーバーにはスライド式のスイッチが用意されており、PC接続時とPS5/モバイル機器接続時で切り替える形だ
デバイスとの珍しい接続方法やスタミナバッテリーにばかり目が行きがちだが、「INZONE Buds」のゲーミングギアらしい魅力はほかにも満載だ。たとえば、音質に関しては同社完全ワイヤレスイヤホンの最新モデル「WF-1000XM5」と同じ独自開発した口径8.4mmの「ダイナミックドライバーX」を搭載しているが、オーバーヘッドタイプのゲーミングヘッドセットの音質を完全ワイヤレスイヤホンで再現できるよう、ゲーミングギアとして音の定位や微細音にこだわった音質最適化を実施している。
ノイズキャンセリング機能に関しても、「1000X」シリーズで定評のある「デュアルノイズセンサーテクノロジー」によるノイズキャンセリング機能とアンビエントサウンドモード(外音取り込み)を実装してきたが、「1000X」シリーズとは異なり、屋内でのゲームプレイにフォーカスしたチューニングを実施したという。
「デュアルノイズセンサーテクノロジー」によるノイズキャンセリング機能を搭載。「1000X」シリーズと異なり、屋内ノイズを取り除く方向でチューニングしたという
さらに、INZONEのゲーミングヘッドセットは従来から専用PCソフトウェア「INZONE Hub」を活用し、撮影した耳の形状データを使った個人最適化を組み込んだ独自の立体音響技術「360 Spatial Sound for Gaming」で没入感を高めるというアプローチを採用しているが、「INZONE Buds」ではこの個人最適化機能もアップデート。撮影した耳の形状データだけでなく、テストトーンを流して耳の内側(外耳道)の形状を測定、その測定データを立体音響技術「360 Spatial Sound for Gaming」の最適化に用いることで、立体音響効果を高めたという。
独自の立体音響技術「360 Spatial Sound for Gaming」も搭載。撮影した耳の形状データを使った個人最適化だけでなく、テストトーンを使った耳の内側(外耳道)形状の測定データを用いた個人最適化も新たに盛り込まれた
ほかにも、ヘッドセット本体の形状には、「1000X」シリーズなどで採用実績のあるエルゴノミック・サーフェス・デザインをベースとしつつ、耳内部の体積を減らすことで圧迫感を軽減させ、長時間のゲームプレイでも快適な装着感を得られるようなデザインを採用したり、ヘッドセット本体のタッチセンサー部の周囲にエッジ感を設けることで操作性を高めるなど、さまざまな工夫が随所に盛り込まれている。
「INZONE Buds」のヘッドセット本体はいわゆるスティック型
「1000X」シリーズなどで採用実績のあるエルゴノミック・サーフェス・デザインを採用しつつ、耳の内部に収まらないデバイスをあえて外側に出し、耳周りの凹凸を避けるようにくぼみを追加するなど、耳内部に収まる部分の体積を減らす工夫を施すことで圧迫感を軽減させたという
「INZONE Buds」を装着したところ。黒いタッチセンサー部の周囲にエッジ感を設けることで操作性を高めたという
独自の立体音響技術「360 Spatial Sound for Gaming」をフルに楽しむなら専用PCソフトウェア「INZONE Hub」をインストールしたPCとの組み合わせが必須だし、Bluetooth LE Audio対応のスマートフォン・タブレット端末はまだまだ少なく、ほとんどのスマートフォン・タブレット端末との接続は専用USBトランシーバーを介した形になりそうだし、ややクセのある使い方になりそうではあるものの、2.4GHzの低遅延接続ができ、ノイズキャンセリング対応で10時間超のバッテリー駆動が可能なTWSタイプのゲーミングヘッドセットというのはかなり貴重だ。
オーバーイヤー型のゲーミングヘッドセットは側圧や重量感が苦手、バッテリー切れを気にせずケーブルレスの身軽なスタイルでPCゲーミングを本格的なサラウンドを楽しめるデバイスを探しているという人には「INZONE Buds」は魅力的な選択肢になりそうだ。
「INZONE Buds」と同タイミングで発売となる「INZONE H5」は、オーバーイヤー型ワイヤレスゲーミングヘッドセット。製品名末尾が“H5”ということで、「INZONE H3」と「INZONE H7」の中間に位置するモデルということになるが、「INZONE H7」は生産完了になるとのことなので、実質的には「INZONE H7」の後継モデルという位置づけになる。
INZONE H5の特徴
●通信遅延30ms未満の2.4GHzワイヤレス接続、3.5mmワイヤード接続の2つの接続方法をサポート
●バッテリー性能は最大28時間
●260gの軽量ボディ
●専用PCソフトウェア「INZONE Hub」を活用した独自の立体音響技術「360 Spatial Sound for Gaming」
●AI技術を活用した高精度ボイスピックアップテクノロジー搭載
ノイズキャンセリング機能なし、2.4GHzワイヤレス接続対応という点は「INZONE H7」に近いが、「INZONE H7」にあったBluetooth接続を省き、代わりに3.5mmワイヤード接続をサポートし、1台でワイヤレス接続とワイヤード接続の2つの接続方法を利用できるようになったのは「INZONE H5」の大きな特徴だ。
専用USBトランシーバー(USB Type-C)による低遅延な2.4GHzワイヤレス接続だけでなく、3.5mmワイヤード接続にも対応する。なお、ヘッドセット本体のUSB Type-Cは充電機能のみとなる
また、「INZONE H5」ではヘッドセット本体のデザインが大きく見直されており、重量が「INZONE H7」の325gから260gと大幅に軽量化されている点も見逃せないポイントだ。ちなみに、ハウジングは「INZONE H7」に比べてかなり小型化しているが、耳が収まる空間は「INZONE H7」と同等の容積を確保。側圧に関しても約20%低減したそうで、長時間プレイでもより快適に装着できるようになったそうだ。
写真左が「INZONE H5」、右が「INZONE H7」のハウジング部分。パッと見ただけでもかなりコンパクトになっていることがわかる
ハウジング部分は小さくなっているが、耳が収まるイヤーパッド内側の空間は「INZONE H7」と同等の容積を確保したそう。ちなみに、イヤーパッドの素材は「INZONE H7」同様にさらさらとした肌触りのナイロン素材となっている
「INZONE H5」では、軽量化のためにヘッドバンド部分の幅を細くして部品重量を削減。細いヘッドバンドでも快適な装着感を得られるよう、クッションの厚みや硬さも見直したそうだ。ほかにも、側圧を約20%低減させたほか、スライダーには任意の位置に合わせられる無段階調整スライダーを採用するなど、快適性を上げる工夫が随所に盛り込まれている
ドライバーユニットは口径40mmで、同社音楽用ヘッドホンで培った振動板形状を採用し、豊かない高域と力強い低域を両立。専用PCソフトウェア「INZONE Hub」を活用した独自の立体音響技術「360 Spatial Sound for Gaming」もサポートする。マイクは「INZONE H7」同様に跳ね上げると自動でオフになり、下ろすとオンになるという仕様。「WF-1000XM5」にも搭載されたAI技術活用の「高精度ボイスピックアップテクノロジー」が新たに導入され、よりクリアな通話が可能になったそうだ。
迫力のあるサウンドを実現するため、ハウジング上部のダクトで低域をコントロールするというアプローチは「INZONE H7」と共通だが、「INZONE H5」ではハウジングの小型化に伴い、ダクトの位置が若干変更されている
マイク部分に「高精度ボイスピックアップテクノロジー」が新たに導入され、よりクリアな通話が可能になったのもポイントだ
バッテリー駆動時間こそ「INZONE H7」の最大40時間を下回る最大28時間となってしまったが、2.4GHzワイヤレス接続と3.5mmワイヤード接続の両対応でプレイスタイルに合わせて幅広い使い方ができるようになった「INZONE H5」。必要十分な機能を備え、音もよく、軽量で長時間プレイでも快適に使えるバランス型のミドルレンジモデルとして注目されそうだ。