「OPPO Reno10 Pro 5G」は、2023年10月6日に登場した、オウガ・ジャパン「OPPO」ブランドの新型スマートフォン。ミドルレンジに位置づけられる売れ筋の製品だ。充電機能やスペック、カメラなどの特徴をレビューしよう。
「Reno10 Pro 5G」は、80Wの「SUPERVOOCフラッシュチャージ」機能によって、4600mAhのバッテリーを28分でフル充電できる「28分ワンダフルチャージ!」に対応している
本機は、「OPPO」の製品ラインの中では、ミドルレンジスマートフォンに位置づけられる製品。6.4インチモデルの「OPPO Reno9 A」よりも格上の製品で、ディスプレイにはひと回り大きな6.7インチを採用している。
それでいて重量は約185gに抑えられており、大画面と軽量化のバランスが取れている。デザインも優美でなかなか特徴的、特に背面のカメラ部分はほかにはないデザインだ。なお、おサイフケータイとIP5Xの防水仕様、IPX4の防塵仕様に対応している。
ディスプレイは最大120HzのリフレッシュレートをサポートしたFHD+(2412×1080)の有機ELディスプレイで、約10億色の表示、HDR10+対応、最大240Hzのタッチサンプリングレートに対応。ゲームや動画の視聴用途に適している。
販売ルートは、MVNO事業者では「IIJmio」や「mineo」、MNO事業者では「ソフトバンク」ブランドから発売されている。なお、家電量販店のヤマダ電機、ヨドバシカメラ、ビックカメラなどでも購入できる。
光沢がありつつマットな背面加工。指紋も目立ちにくく、高級感も高い見事な背面デザイン
大画面のディスプレイは、約10億色の表示やHDR10+に対応。タッチサンプリングレートも最大240Hzに対応しており、ゲームにも向いている
背面も同様に側面がカーブしていて薄くなっている
本機は、同梱のAC充電器を使った80Wの「SUPERVOOCフラッシュチャージ」機能によって、公称値4600mAhのバッテリーを28分でフル充電するという「28分ワンダフルチャージ!」に対応している。
ソフトバンクは、「神ジューデン」というキャッチフレーズでシャオミ「Xiaomi 12T Pro」を販売しているが、その「神ジューデン」第2弾製品として位置づけるのが本機だ。「Xiaomi 12T Pro」は19分で充電できるので、それに比べると少し控えめだが、28分というのは十分に速い。Google「Pixel 8 Pro」は5050mAhのバッテリーを30分で最大50%充電できるが、それに比べるとほぼ倍のスピードだ。実際に充電しているところ。50%から100%までの充電時間は約14分24秒。計算上は28分のちょうど半分だった
充電速度が速いので、すき間時間にちょっと充電すれば必要な充電ができる。シャワーの間、カフェで休憩の間と、細かな充電チャンスはたくさんあるので、いざという時にバッテリー切れを避けられる安心感があった。
なお、バッテリー持ちも悪いほうではないようで、少なくとも試用期間中、丸1日撮影に費やしてもバッテリーは十分残っていた。バッテリー制御に加えて短時間での急速充電と合わせれば、バッテリー切れの心配はあまりなさそうだ。
本機は、SoCにクアルコムの「Snapdragon 778G 5G」を採用している。メモリーは8GB、ストレージが256GBだ。メモリーカードスロットは搭載されない。メモリーもストレージもミッドレンジとしては十分なスペック。OSは、Android 13をカスタマイズしたColorOS 13だ。
パフォーマンスを調べるため、いくつかのベンチマークテストを実施した。グラフィック性能を計測する「3Dmark」の「Wild Life」は2478、一般的な処理性能を計測する「Geekbench 6」のシングルコアが924、マルチコアが2765と言う結果になった。
「Snapdragon 778G 5G」は、ミドルハイ向けのSnapdragon 700番台で、2021年登場と言う少し古めの世代なので、最新世代のハイエンドSoCと比べるとスコアはだいたい半分くらいだろうか。超重量級の最新ゲームや重いAI処理などを行えばハイエンド機には及ばないが、実際の利用ではそこまでのパフォーマンスを求めないアプリが多い。「原神」のような重量級ゲームも特に違和感なくプレーできていた。必要十分なスペック性能を備えていると言ってよいだろう。
処理性能で特徴的なのは「Dynamic Computing Engine」だ。これは、システム劣化を防止すると言うもので、メーカーの製品ページでは「メモリアクセス効率が16倍」、「最大40個以上のアプリをバックグラウンドで起動」、「48か月システム劣化防止」といった言葉が並ぶ。ただし、効果を実感するのに数年の時間が必要なので、どの程度の影響があるのかは時間の限られる検証期間だけではよくわからない。
「Dynamic Computing Engine」の説明。このとおりであればなかなか魅力的ではあるが、短期間の検証では実際の動作はわからない
さらに、バッテリー寿命が4年間と言う独自の「Battery Health Engine」技術も備えている。これは、充電の制御やバッテリー修復技術などいくつかの技術を組み合わせたもの。バッテリー持ちの低下をきっかけに、スマートフォンを買い替える人も少なくないが、本機ならそうした理由による買い替えを遅らせることができるかもしれない。
「3Dmark」の「Wild Life」の結果は2478。「Snapdragon 778G」としては標準的な数字
「Geekbench」のCPUベンチマークの結果。こちらも、近ごろのミドルレンジスマホとしては標準的な値だ
原神をプレーしていても特に違和感はなく、滑らかに動作していた
カメラを見てみよう。背面のメインカメラは、主力となる約5000万画素の広角カメラ、約3200万画素の光学2倍ズーム望遠カメラ、約800万画素の超広角カメラという3台の組み合わせ。なお、ディスプレイ側のインカメラは約3200万画素だ。
独特のデザインのカメラ。一番大きな上のカメラがメインの広角カメラ、右下が超広角カメラ、左下が望遠カメラ
メインカメラはソニーIMX890イメージセンサーを採用し、35mm判換算で焦点距離24mm、 F1.8のレンズを搭載。通常の撮影時は4個のサブピクセルを仮想的にまとめて感度性能を高めるピクセルビニングにより約1250万画素で記録する。
光学2倍ズームカメラは、ソニーと共同開発したというIMX709イメージセンサーを搭載。「フラッグシップ級センサー」としており、本機とだいたい同価格帯であるNothing「Phone (2)」などに搭載されているソニー製「IMX615」センサーと比べて光の取り込み量は60%向上、ノイズは35%低減したとしている。レンズの焦点距離は35mm判換算47mm、F値はF2.0だ。なお、超広角カメラもソニー製イメージセンサー「IMX355」を搭載し、レンズの同焦点距離は16mm、F値はF2.2となる。
カメラアプリのユーザーインターフェイスとしては、ノーマルの「写真」モードが中央にあり、その左に「動画」「夜景」、右に「ポートレート」「その他」というモードが並ぶ。「その他」からはPRO、超高解像度、パノラマ、スローモーション、タイムラプス、アウト/イン同時動画記録、ステッカー、テキストスキャナーというモードが選べる。モードの並び替えはできるので、よく使う機能があれば使いやすい位置に配置することも可能だ。
カメラのUIは一般的。画角の切り替えは0.6倍、1倍、2倍、5倍。5倍はデジタルズーム
そのほかのモード。写真モードの上部にはフラッシュ、セルフタイマー、アスペクト比、解像度、オートHDRの切り替えができる。シャッター音はやや大きめ
以下に、静止画の作例を掲載する。
少し周辺の細部の描写が怪しいが、はっきりとした描写は明るく、過度な色乗りもない。記憶色という感じでよい印象だ
夕焼けが近づく時間帯の雰囲気がよく出た描写
超広角カメラで撮影。広々とした景色は撮影できるが、画素数があまり多くないので細かすぎる被写体は向いていない
超広角レンズのパースを生かして、ビルの高さを強調した。こうした被写体だとレンズの特性が活きる
2倍望遠カメラで撮影。東京タワーの細部を描写するのに十分な画質だ
デジタル5倍ズームで撮影した。デジタルズーム特有のノイズは現れているがスマートフォン画面で見る分には十分だろう
帆船のロープや遠くに写る高層ビルの細かい被写体の写りを見ても良好な画質が見て取れる
左は広角カメラで撮影したもの。広い範囲を高画質に撮影できる。右は47mmの2倍望遠カメラで撮影。構図を整理しやすい画角だ
左撮影写真(3072x4096、5MB)
右撮影写真(2448x3264、3.4MB)
左はピクセルビニングを解除して5000万画素の高画素で撮影した写真で、右は通常の1250万画素で撮影した写真。5000万画素は等倍表示だとぼやけた描写だが、スマホ画面で見ると、高画素な分、解像感が増しているように見える。ただ、個人的にはそれほど高画素での撮影はデータ容量が増大するうえに感度性能も低下するため、使用する意味のある構図は限定されると思う
左撮影写真(4096x3072、5MB)
右撮影写真(8192x6144、16.2MB)
2倍望遠カメラでの撮影。左は通常モードで撮影しており、背景ボケは自然だがボケ量はそれほど大きくない。右はポートレートモードで撮影。石像の耳の一部に処理の失敗はあるが、大きくボケた背景の見栄えはよい
左撮影写真(2448x3264、3.3MB)
右撮影写真(2448x3264、2.2MB)
夜景モードでの撮影。手持ちで高画質な夜景が撮影可能
本機の広角カメラは、はっきりした描写でいたって素直に写る。細部の描写にわざとらしさを感じることはあるが、大抵のシーンで破綻は見られず、構図の雰囲気をよく再現した写真が撮れた。描写はトップクラスとは言えないが、価格性能比で考えれば大きな問題は感じない。
ピクセルビニングに対応した望遠カメラも、焦点距離が47mm相当と望遠カメラとしては控えめだが、カメラでは標準画角とされる50mm に近い扱いやすい画角なので、積極的に使う気になる。メインカメラで風景、望遠カメラで人を撮ると使いやすいし、背景を整理したいときにも便利だ。
画角としては使いやすいとはいえ、24mmと47mmの焦点距離の差は1〜2歩で、パースの付き方は別として、自分の足で前に出れば同じ効果が得られる場合も多い。その意味では、3〜5倍ズームぐらいのレンズのほうがより違いのある写真が撮れる。とはいえ、物理的に近づけないシーンもあるし、画質面でも倍率2倍と無理をしていないせいか良好な結果なので、これはこれでひとつの考え方だろう。
ただし、光学式手ブレ補正が非搭載なので、暗い構図の撮影では少し注意が必要だ。ちなみに、ズームのユーザーインターフェイスとして「5倍」も用意されているが、デジタルズームなので画質はそれなり。このあたりは割り切りが必要だろう。超広角カメラも800万画素のエントリークラスのセンサーで、メインカメラや望遠カメラほどの画質は期待できないという印象だ。
夜景モードやポートレートモード、4K/30pまでの動画など、必要な機能は十分に備えている。手軽に日常のスナップ撮影をしたり、旅の思い出写真や動画を撮ったりと、通常の撮影で困ることはなさそうだ。
「OPPO Reno10 Pro 5G」は、価格.com最安価格が75,800円程度(2023年10月下旬時点)で、円安の影響もあって絶対的な価格としてはやや高めな印象はある。ミッドレンジとしてはあと一息、価格が下がると買いやすいところではある。
ただ、全体的には完成度が高く、背面のカメラ部を含めたデザインも特徴的で品質はよい。急速充電などの使い勝手がよいうえに、日本仕様であるおサイフケータイにも対応し、マイナンバーカードの読み取りやスマホ用電子証明書にも対応する点も見逃せない。バランスのよい性能を備えており、不満は感じにくいだろう。
ゲーム、カメラ、動画など、ほとんどの機能を快適に利用できるスペックを備えつつ、10万円を大きく超えるようになったハイエンドスマートフォンに比べれば、価格も現実的で、手が届きやすい製品と言える。