スマホとおカネの気になるハナシ

日本でも買い時到来が近い!? 値下がり傾向の「折りたたみスマホ」最新動向

多くの人が関係する、スマートフォンやモバイル通信とお金にまつわる話題を解説していく「スマホとおカネの気になるハナシ」。今回は、折りたたみスマホの世界的な傾向を解説しつつ、国内における買い時に迫った。

ケータイの伝統があっても、なかなか広がらない折りたたみスマホ

海外では参入メーカーと機種数が増えて盛り上がりを見せつつある折りたたみスマホ。日本ではケータイの伝統があっても取り組むメーカーが少なく、これまでは盛り上がりに欠けるところがあったが、2023年は、その傾向に少しずつ変化が出てきている。

日本で積極的に折りたたみスマートフォンを投入しているメーカーと言えば、真っ先にあげられるのが先駆者・サムスン電子だろう。同社は2023年も最新機種の縦折り型の「Galaxy Z Flip5」と、横折り型の「Galaxy Z Fold5」の2機種を日本市場に投入している。

これらはNTTドコモとKDDIの「au」ブランドからのみ販売されているため、それ以外の携帯電話会社を契約している人には選びにくかった。だが、2023年12月7日には新たに、「Galaxy Z Flip5」と「Galaxy Z Fold5」のSIMフリー版(オープン市場向けモデル)を販売開始する予定だ。

SIMフリー版の「Galaxy Z Flip5」は、最上位の512GBモデルが用意される。ボディカラーは国内初投入のグレー

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SIMフリー版の「Galaxy Z Flip5」は512GBモデル、Galaxy Z Fold5は1TBモデルと最上位モデルのみが投入され、カラーも携帯2社向けとは異なるグレーのみと選択肢は狭い。だが、従来オープン市場向けに折りたたみスマートフォンを投入していなかったサムスン電子が、その販路を広げる動きに出たことは今後の販路拡大に期待が持てる動きでもある。

同じくSIMフリー版の「Galaxy Z Fold5」。こちらも最上位の1TBモデルが投入され、カラーもグレーのみの展開だ

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Googleやモトローラも製品を投入

2023年はほかにも折りたたみスマートフォンを投入するメーカーがいくつか出てきている。そのひとつが Googleだ。同社は2023年7月から横折り型のスマートフォン「Pixel Fold」を販売している。

「Pixel Fold」は「Pixel」シリーズということもあり、折りたたみスマートフォンであるにとどまらず、写真の一部被写体を消す「消しゴムマジック」や、ボイスレコーダーによる音声の文字起こしなど、AI技術を活用したさまざまな機能が利用できるのが大きな特徴。同社初の折りたたみスマートフォンとなるだけにデバイスの洗練度などは「Galaxy Z Fold5」に譲る部分もある。だが、完成度は比較的高く、価格.comに寄せられるユーザー満足度は4.30(2023年11月下旬時点の数値)で、一定の評判を得ているようだ。

Googleも初となる横折り型の折りたたみスマートフォン「Pixel Fold」を国内投入。PixelシリーズならではのAIを活用した機能の数々を、折りたたみスマートフォンならではの大画面で活用できるのが大きなポイントだ

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もうひとつ、折りたたみスマートフォンに力を入れる姿勢を見せたのがモトローラ・モビリティである。同社も早い時期から折りたたみスマートフォンを開発しているメーカーで、日本でもこれまで「razr」シリーズを断続的に投入してきた。

そして2023年はその姿勢をさらに強化。8月には同社の折りたたみスマートフォンの最新・最上位モデル「motorola razr 40 ultra」をオープン市場向けに投入している。さらに12月8日には、性能的にはミドルハイクラスの下位モデル「motorola razr 40」も日本市場に投入される予定だ。

モトローラ・モビリティも折りたたみスマートフォンの最新モデル「motorola razr 40 ultra」を投入。背面に約3.6インチの大画面ディスプレイを搭載し、さまざまなアプリが利用できるのが特徴だ

モトローラ・モビリティも折りたたみスマートフォンの最新モデル「motorola razr 40」シリーズを投入。背面に約3.6インチの大画面ディスプレイを搭載し、さまざまなアプリが利用できるのが特徴だ

上位モデルより下位モデルのほうが後に投入されるのは多少不思議な印象も受けるが、その理由は機能と販路にある。「motorola razr 40」は「motorola razr 40 ultra」が対応していないFeliCaに対応するなど日本向けのカスタマイズが施されている。なおかつ、オープン市場だけでなく、携帯大手の一角を占めるソフトバンクからも「motorola razr 40s」として販売されることが明らかにされている。

下位モデルの「motorola razr 40」は遅れて12月の発売となるが、そこにはFeliCaの搭載と、写真の兄弟モデル「motorola razr 40s」がソフトバンクから販売されることが影響したようだ

下位モデルの「motorola razr 40」は遅れて12月の発売となるが、そこにはFeliCaの搭載と、写真の兄弟モデル「motorola razr 40s」がソフトバンクから販売されることが影響したようだ

つまり「motorola razr 40」は国内向けのカスタマイズや、ソフトバンクとの調整などが必要だったことから発売が後ろ倒しになったわけだ。裏を返せば、それだけモトローラ・モビリティが「motorola razr 40」で日本の折りたたみスマートフォン市場開拓に積極的に取り組んでいるととらえることもできるだろう。

製品は増えたが競争による価格の低下にはいたらず

このように、2023年はサムスン電子以外からも折りたたみスマートフォンの新機種が相次いで登場しており、選択肢が増え徐々に盛り上がりつつある様子も見せている。ただそれでも、折りたたみスマートフォンを実際に手にしている人はまだまだ少ないのが実状だ。

その普及を阻む最大の要因は価格であろう。折りたたみスマートフォンはディスプレイを折り曲げるという特殊な構造を採用しているだけに、通常のスマートフォンと比べ開発にもコストがかかるためその分値段が高くなる。

今回紹介した5機種はいずれもオープン市場で発売、あるいは発売予定なのでオープン市場向けモデルの価格を横並びで比較できる。すると、「Galaxy Z Flip5(512GBモデル)」は179,900円、「Galaxy Z Fold5(1TBモデル)」は298,200円、「Pixel Fold」は253,000円、「motorola razr 40 ultra」は155,800円、そして最も安い「motorola razr 40」は125,800円。いずれも軒並み10万円を超える値段で、お世辞にも買いやすいとは言いがたい。

なかでも「motorola razr 40」は、海外では10万円を切る価格で販売される国や地域も多いだけに、日本でも10万円を切ることが期待された。しかし、蓋を開けてみれば海外と比べてもかなり高額な値付けとなっている。その理由についてモトローラ・モビリティ側は円安の影響だけでなく、FeliCaを搭載するためのカスタマイズが必要なこと、そしてソフトバンクから販売することで品質試験にかかるコストがかさんだことが影響したと説明している。

日本の携帯電話会社は、世界的に見ても端末の品質に対する要求水準が非常に高い。加えて、折りたたみスマートフォンは構造的に故障などに対する不安が大きい。それだけに、ソフトバンクからの販売を実現するには品質に重点を置く必要があったと考えられ、それが値段に大きく反映された結果高額になってしまったようだ。

もちろん携帯各社から販売されている折りたたみスマートフォンは、各社の値引き施策を適用することで安く購入できる。実際ソフトバンクの「motorola razr 40s」や、MVNOとして「motorola razr 40」を独占販売するIIJmioは、番号ポータビリティで指定のプランに転入した人に対する値引きを適用することなどにより、10万円を切る価格で購入できる施策を打ち出している。

ソフトバンクは「motorola razr 40s」を99,680円で販売するとしているが、そのためには番号ポータビリティでソフトバンクに転入し、なおかつ「ペイトク」など指定の料金プランに加入する必要がある

ソフトバンクは「motorola razr 40s」を99,680円で販売するとしているが、そのためには番号ポータビリティでソフトバンクに転入し、なおかつ「ペイトク」など指定の料金プランに加入する必要がある

ただ、こうした施策は回線の乗り換えが必要だったり、期間限定であったりするなど一定の制約が存在するので、誰でも安く買えるわけではない。そうしたことから2023年時点では、日本において折りたたみスマートフォンがまだまだ高嶺の花で、多くの人にとって現実的ではないのが正直なところだろう。

2024年は折りたたみスマホの新規参入が増えて値下げが進む可能性がある

2024年は、これまでの折りたたみスマホの流れが大きく変わるかもしれない。登場から年数を重ねたことで開発のハードルが下がり、多くのメーカーが製品を提供できるようになったため、より低価格なモデルが登場する可能性が高まっているのだ。

海外では10万円を切るところも多い「motorola razr 40」がその象徴的な事例だが、ほかにも海外に目を移せば低価格化が進んでいることがわかる。たとえば、アフリカなどでローエンドのスマートフォンを主体に展開し、世界シェア上位に食い込んでいる中国の伝音控股(トランシオン)という企業も、2023年初頭に折りたたみスマートフォン「PHANTOM V Fold」を投入。日本では20万円を超える横折りタイプの機種ながら、販売されている国では15万円前後の値付けがなされているようだ。

「Tecno」などのブランドをアフリカ中心に展開し、スマートフォンのシェア上位に入るようになったトランシオンは、インドなどで従来より低価格の折りたたみスマートフォン「PHANTOM V Fold」を販売している

「Tecno」などのブランドをアフリカ中心に展開し、スマートフォンのシェア上位に入るようになったトランシオンは、インドなどで従来より低価格の折りたたみスマートフォン「PHANTOM V Fold」を販売している

他にもやはり日本進出していない中国のオナー(HONOR)が、ここ最近15万円前後の横折り型スマートフォンを相次いで投入し、低価格化を推し進めている。そうした世界的な流れを見ると、今後、より性能を抑えて低価格を実現する折りたたみスマートフォンが増え、それが日本にも流入することで低価格化が進む可能性は十分考えられそうだ。

元々、日本市場はケータイで折りたたみボディの使い勝手をよく知っている。来年こそ折りたたみスマートフォンの“買い時”が到来することに期待したい。

佐野正弘
Writer
佐野正弘
福島県出身。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。
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田中 巧(編集部)
Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよび、モバイルバッテリーを含む周辺機器には特に注力している。
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