スマートフォンやモバイル通信とお金にまつわる話題を解説していく「スマホとおカネの気になるハナシ」。今回は、NTTドコモとKDDIが発表した新料金プランの内容を踏まえ、小容量プランを求める場合の選択肢をいくつか紹介したい。
※本記事中の価格は税込で統一している。
携帯大手の発表した新料金プランは小容量プランが減っている。消費者でできる対策を考えてみた
物価高の昨今を反映し、NTTドコモ、KDDIは実質値上げとなる新料金プランを発表した。ソフトバンクはまだ具体的な動きを見せていないものの、携帯大手2社の料金が上がったことで、今後携帯大手の料金は値上げに向かうと考えたほうが現実的だろう。
そして2社の新料金プランの傾向からいくつかわかったことがある。それは一連の値上げの影響を大きく受けるのが、データ通信使い放題の高額な大容量プラン契約者よりむしろ、小容量で低価格の料金プランの契約者ということだ。実際、NTTドコモは今回明らかとなった料金プランの移行において小容量向けブランドの内容を変更。従来は、「irumo」で月間500MB、3GB、6GB、9GBの4つのメニューを選べたが、新料金プランの「ドコモ mini」では、月間4GBと10GBの2つに減らし縮小を図っている。
NTTドコモの新料金プランのひとつである「ドコモ mini」では、選べるメニューの数が「irumo」の4つから2つに絞られている
また、KDDIで低価格の領域を担うサブブランドのUQ mobileも、新料金プランでは最も容量が少なく価格が安い「ミニミニプラン」の後継プランが用意されなかった。加えて、KDDIは今後UQ mobileの価格改定も予定しており、その際には既存の「ミニミニプラン」も値上げがなされる可能性が高いことから、現在の低価格を維持できなくなることも考えられる。
UQ mobileの新プランは「コミコミプランバリュー」と「トクトクプラン2」の2つに集約。旧プランの新規受付は終了するため「ミニミニプラン」の後継は事実上なくなってしまう
ではなぜ、各社の値上げは大容量プランより、小容量プランのほうが影響を大きく受けるのか。そこには、小容量・低価格のプランに関する携帯大手側の本音が垣間見える。
そもそも携帯大手が小容量のプランの拡大を図ったのは、携帯電話料金の引き下げにとても熱心だった菅義偉氏の政権下にあった2020年から2021年にかけてである。それまで携帯大手は小容量・低価格プランの提供に消極的だったが、菅政権が政治的圧力で値下げを迫ったことで、そうしたプランも提供せざるを得なくなった。
だが、先に触れた「irumo」やUQ mobileなどは、いずれも店頭での契約やサポートに対応しているため、店舗運営のコストがかかる。しかし、低価格で提供しなければならない。結果、これらプランは携帯各社の業績を悪化させる要因となっていた。実際NTTドコモは「irumo」が非常に好評で、既存プランから「irumo」への乗り換えが急増した結果、通信料収入が減り業績回復を遅らせる主因にもなっている。
そしてもうひとつ、小容量・低価格のプランは、番号ポータビリティ(MNP)で他社から乗り換えることで得られる、スマートフォンの値引きやポイント還元などを目的として、契約と乗り換えを短期間で繰り返す「ホッピング」行為の踏み台として利用されることが多い。そのこともプラン縮小に大きく影響したと考えられる。
実際、NTTドコモの代表取締役社長である前田義晃氏は、終了を惜しむ声が多い「irumo」の0.5GBプランに関して、その半数が新規・MNPで契約した後、半年以内に他社へと移っていると話している。ここ最近、携帯各社による獲得競争が過熱しており、MNPで乗り換えた人に対するポイント還元などを多く付与する動きが目立っていた。だが、それだけにポイント還元を目当てとしたホッピング行為が増え、見過ごせない規模になったことも、小容量プランの縮小には大きく影響したのではないだろうか。
NTTドコモの前田氏は、2025年5月9日の日本電信電話(NTT)決算説明会で「irumo」の0.5GBプランに言及。新規・MNPで契約した人の半数が、半年以内に転出してしまっていたそうで、ホッピング目的での契約が相当数に上っていたようだ
ただ、NTTドコモとKDDIが小容量・低価格のプランを縮小したことで、その選択肢が消えてしまったのかと言うと必ずしもそうではない。実は今回の料金見直しで、2社が見直していない料金プラン・ブランドがある。それはオンライン専用で提供しているサービスだ。
実際、NTTドコモは「ahamo」、KDDIは「povo」と、オンライン専用のプラン・ブランドの料金の見直しは行っていない。「ahamo」は小容量・低価格とは言いづらいが、「povo」(povo 2.0)は通信量3GBを30日間利用できるトッピングを990円で販売するなど、小容量のトッピングもいくつか用意しているので、小容量・低価格プランの代替として利用が可能だ。
また、同じオンライン専用のブランドでは、ソフトバンクの「LINEMO」も、通信量3GBまでであれば月額990円で利用できる低価格・小容量の「LINEMOベストプラン」を提供している。ソフトバンクは料金改定の方針を打ち出していないだけに今後が未知数な部分もあるが、他社と同様にオンライン専用プランの料金を見直さないのであれば、小容量・低価格プランの重要な選択肢となるだろう。
ソフトバンクのオンライン専用プラン「LINEMO」は、3GBまでであれば月額990円で利用できる「LINEMOベストプラン」を提供している
オンライン専用プラン・ブランドだけ値上げがなされない理由は、元々店舗でのサポートを省略している分、低コストで運用できる体制が整っているので物価高の影響を受けにくいためだろう。それゆえ、今後も低価格でサービスを利用し続けたいのであれば、値上げ影響を受けにくいオンライン専用プランは魅力的な選択肢となり得る。
同様に、小容量・低価格のサービスを提供しており、なおかつ値上げの方針を打ち出していないのがMVNOだ。大多数のMVNOは店舗を持たず、サポートもオンラインが主体であるなどオンライン専用プランと近い性格を持つのに加え、携帯電話会社からネットワークを借りる際に支払う接続料も基本的には下落傾向が続いているため、運営コストもその分減らすことができる。
総務省「接続料の算定等に関する研究会」第95回会合資料より。MVNOが携帯電話会社に支払うデータ接続料は、計算方法の変更などによって2026年に一部でやや上昇する可能性が出てきているが、基本的には下落が続いている
それに加えて、携帯電話会社と比べれば、保有する設備も少ないので電気代高騰などの影響も比較的小さい。それゆえ携帯大手の値上げをチャンスととらえているMVNOもいくつかあるようだ。実際、2025年に新規参入したメルカリの「メルカリモバイル」の事業を担当する、メルカリのDirector of Business and Marketing New Businessの永井美沙氏は、2025年5月23日にMMD研究所が実施したMVNO勉強会において、2社の値上げが「チャンスだと思っている」と話し、値上げの動きに合わせ2GBプランのキャンペーンを仕掛けているという。。
メルカリがMVNOとして2025年3月より提供開始している「メルカリモバイル」は、通信量2GBで月額990円から利用できるだけでなく、フリマアプリを提供するメルカリらしく“ギガ”の売買もできるのが大きな特徴だ
また、イオンリテールで「イオンモバイル」の事業を担う、イオンモバイル商品グループ統括マネージャーの井原龍二氏は、ショッピングモール「イオン」で携帯大手の代理店も手掛けていることを生かし、「イオン」の店頭で携帯大手が値上げしたことをうまく告知すると同時に、値上げした携帯大手のサービスと横並びでイオンモバイルのサービスを販売することにより、安さをアピールする姿勢を見せている。
とはいえ、これまで携帯大手の小容量プランを使っていた人が、オンライン専用プランやMVNOのサービスを選ぶうえでは障壁も少なからずある。ひとつは多くのサービスが店頭での契約やサポートができないことだ。もちろん、なかにはイオンモバイルのように店頭で契約できるサービスもあるのだが、数は非常に少ない。また、実店舗を作っても長く続けられるとも限らない。腰の据わった店頭サポートを求めると選択肢が極端に少なくなることは覚悟が必要だ。
MVNOのイオンモバイルは全国の「イオン」200店舗で契約やサポートができるが、そうしたMVNOは非常に数が少ない
そしてもうひとつは支払方法で、実はMVNOの大半は支払方法がクレジットカードだけに限定されている。そうしたサービスでは口座振替だけでなく、クレジットカードの国際ブランドが付いたプリペイドカードやデビットカードも利用できないことがほとんどだ。
もちろん、なかにはクレジットカードが必須ではないサービスもある。ユニークなところでは、メルカリモバイルは「メルカード」に加え「メルペイ」のあと払いが利用できるため、メルペイの残高や「メルカリ」のポイントなどを支払いに充てることが可能だ。
そのいっぽうで、携帯大手のオンライン専用プランは支払方法の柔軟性が高い。クレジットカードに加え、「ahamo」と「LINEMO」では口座振替が利用できるほか、「povo」(povo 2.0)はコンビニ払いで後払いできる「Paidy」の支払いに対応している。クレジットカード以外の支払い方法を選択したいのなら、携帯大手のオンライン専用プランを検討するとよいだろう。