「REDMAGIC 9 Pro」は、2024年1月23日より日本国内で発売される、Nubia Technologyのゲーミングスマートフォン。国内向けのスマホとしては、最新世代のハイエンドSoC「Snapdragon 8 Gen 3」を初めて搭載する注目モデルだ。ゲーミング以外の性能の高さをウリにするのも注目点である。その実力をいち早く検証した。
「Snapdragon 8 Gen 3」搭載の最速スマホ「REDMAGIC 9 Pro」。ゲームはもちろん汎用性を追求しているのも特徴だ
ゲーミングスマートフォンは、FPSやTPS、リズムゲーム、アクションRPGのように、繊細な操作と高い処理性能が求められるゲームを想定したものだ。ただ、ハイエンドスマートフォンの一種なので、Google Playでアプリを自由にインストールできる、普通のスマートフォンでもある。性能のわりに割安なものが多いのも特徴だ。
「REDMAGIC」は、ASUSの「ROG Phone」シリーズと並ぶ代表的なゲーミングスマートフォン。2020年発売の「RedMagic 5」以来、毎年製品を日本市場に投入している。
今回取り上げる「REDMAGIC 9 Pro」は、2023年末にグローバル発表が行われ、2024年1月23日より国内で発売される高性能モデル。ハイエンドSoC「Snapdragon 8 Gen 3」の性能を知るうえでも注目度の高い製品である。
最新のハイエンドSoC「Snapdragon 8 Gen 3」を国内販売モデルとしてはいち早く搭載する
「REDMAGIC 9 Pro」は、2480×1116という少し変則的なフルHD+表示に対応する約6.8インチ有機ELディスプレイを備えている。サイズは76.35(幅)×163.98(高さ)×8.9(厚さ)mmで、重量は約229gというなかなかの大型モデルだ。このサイズは、後述する冷却システム「ICE 13.0」がエアフローを必要とするため。防水・防塵にも対応していない。
実機の感触は曲線部分が少なく、ごつごつしている。背面に突起がほぼなくフラットなのも特徴だ。そのため机の上に置くいわゆる“置きプレー”に適していると言える。
また、ゲーミングスマホとしては色使いが抑えられたデザインなのも特徴だ。ただ、背面の「09」のロゴや冷却ファン、ショルダーボタンなど所々にイルミネーションが仕組まれているので、“らしさ”を主張することはできる。
ゲーミングスマホは派手なデザインのものが多いが、本機は色使いが少ないデザインを採用。大人が使っても違和感のないデザインと言えよう
背面の「09」のロゴにLEDが内蔵されている
ショルダーボタンにもLEDが内蔵されている。角張ったデザインもこの構図からだとわかりやすいだろう
冷却ファンに備わるLEDはゲーミングPCのような派手なイルミネーションだ
ファンのイルミネーションはオン・オフの選択が可能、発光パターンも選べる
機能面に迫ろう。外部インターフェイスとしてNFCポートを備えているが、おサイフケータイは利用できない。USBポートはUSB 3.2対応かつDP ALTモードの映像出力も可能だ。
サウンド機能は、ステレオスピーカーおよびヘッドホン端子を備え、サウンドエンハンサーとして「DTS Sound」が搭載されている。BluetoothのオーディオコーデックはSBC、AAC、aptX、aptX HD、aptX Adaptive、aptX TWS+、LDAC、LC3、Opusに対応している。センサー類に注目するとハイエンドスマホでよく見られる気圧センサーは搭載されていない。
通信機能を見ると、日本でも昨年12月末に解禁されたばかりのWi-Fi 7に対応している点は注目だろう。nanoSIMスロットは2個備える。5G(NSAモード)の対応周波数帯は、n41/n77/n78なので、NTTドコモの使用するn79に対応していない点には注意だ。
なお、SAモードにも対応しており、こちらの対応周波数帯はn1/n3/n28/n77/n78。4Gについては、国内4キャリアのプラチナバンドやコアバンドに対応しているので、どこのSIMカードを使ってもエリアで困ることは考えにくい。
ボディ下面にあるUSB Type-CポートはUSB 3.2に対応。また、DP ALTモードの映像出力も可能だ
ボディ上面にヘッドホン端子を備える
nanoSIMカードスロットを2基備える。eSIMには対応していない
本機のディスプレイは、ディスプレイは前モデル「REDMAGIC 8」同様に、フロントカメラをディスプレイの下に埋め込む「UDC:Under Display Camera」のため、視界をさえぎるカメラを収めるノッチやパンチホールがない。UDCが画質に与える影響も白く明るいものを表示させた場合にうっすらと影がわかる程度に抑えられている。
画面占有率93.7%を誇るディスプレイ。視界をさえぎるものがないのはありがたい
画面下に埋め込まれたカメラは、上の写真の構図中央あたりにあるのだが、かなり自然に隠れている
本機はゲーミングスマホらしく120Hzのリフレッシュレートに対応している。競合する「ROG Phone」シリーズが165Hzのリフレッシュレートに対応しているので、スペックを比較すると見劣りする。ただ、120Hz以上のリフレッシュレートに対応するゲームアプリは少ないため、PC用のゲーミングディスプレイのようにリフレッシュレートを高める必要は現状のスマートフォンではあまりない。
いっぽうで、タッチサンプリングレートはアプリの対応が不要なので、使用する機会はずっと多いだろう。本機のタッチサンプリングレートは、マルチタッチの場合で960Hz、シングルタッチで瞬間的に2000Hzというすさまじい性能だ。
最大輝度は従来モデルの1300nitから1600nitに高められたため、屋外における視認性も良好である。もちろんHDR対応だ。ゲームはもちろんだが日常使うスマートフォンとしても高品質なディスプレイと言える。
注目の基本性能を見てみよう。SoCは先に触れたように「Snapdragon 8 Gen 3」を搭載している。このSoCは、2023年10月に発表されたもので、正規販売モデルでは本機が国内初の搭載だ。
SoCメーカーであるクアルコムによると、前世代の「Snapdragon 8 Gen 2」と比較してCPUの処理性能を30%高めつつ、電力効率も20%、グラフィック性能も3Dの描画と電力効率が25%それぞれ向上している。また、レイトレーシング機能が強化され「グローバル・イルミネーション」に対応し、より正確な描写が可能だ。なお、「グローバル・イルミネーション」は、次世代のゲームエンジン「Unreal Engine 5」でサポートされる予定。さらに、独自のゲーム用コプロセッサー「Red Core 2 Pro」がシステムの最適化を行っている。
ラインアップされるのは、12GBメモリー+256GBストレージと、16GB+512GBストレージの2モデル。メモリーはLPDDR5X、ストレージはUFS4.0に対応している。OSはAndroid 14をベースにしたREDMAGIC OS 9.0を使用。従来からOSの日本語化はされていたが、昨年より和訳の見直しを実施して不自然な表現が減っている。そのため、ユーザーを選びにくくなっているのは確かだろう。
AnTuTuベンチマークのスコア。左が本機、右は1世代前の「Snapdragon 8 Gen 2」を搭載する「ROG Phone 7 Ultimate」のもの
定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク(バージョン10.X)」のスコアは、2169655。1世代前のSoC「Snapdragon 8 Gen 2」を搭載する「ROG Phone 7 Ultimate」のスコア(1515192)と比べると4割ほどスコアが伸びている。
サブスコアを見るとゲームにおいて特に重視される指標となるグラフィック性能「GPU」が913042で、「ROG Phone 7 Ultimate」の520881よりも約4割向上している。高い描画処理が求められる最新ゲームでも心強い存在だろう。
要求スペックの高い新しいゲームをいくつか試した。2023年11月に登場した「シャニソン」(バンダイナムコエンターテインメント製「アイドルマスター シャイニーカラーズ Song for Prism」)を最高画質に引き上げてもライブシーンにおけるコマ落ちは見られずノーツの動きもスムーズだった。また、「レスレリ」(コーエーテクモゲームス製「レスレリアーナのアトリエ 〜忘れられた錬金術と極夜の解放者〜」)も、クオリティを「ベスト」まで引き上げてもまだゲージにはいくらか余裕があった。
本機は、先にも述べたように冷却システム「ICE 13.0」を備えているのが特徴だ。これは、最高22000RPMの冷却ファンに表面積10182mm2の大型ベイパーチャンバーなどを組み合わせてCPUのコア温度を最大で25度引き下げるというものだ。上記の「レスレリ」は発熱の多さで知られているが、本機なら安定した動作が見込めるだろう。
しばらく使ってみたところ、バッテリー消費ペースが総じて速いことが気になった。上の「AnTuTuベンチマーク」アプリを実行した際のバッテリー消費を見ると7%はかなり多い部類だ。また、待機状態でも1時間に1%前後のペースでバッテリーが消費される。本機は6500mAhという大容量のバッテリーを備えているが、バッテリー持ちのよかった前モデル「REDMAGIC 8」のようなスタミナは望みにくい。
なお、同梱の出力80Wの充電器を使うことで最短35分のフル充電が可能。また、ACアダプターから直接電力を供給する「充電分離機能」も備えている。自宅など有線接続で使えるならそちらのほうが発熱を抑えつつ安定した動作が見込めるだろう。
メインカメラは、広角カメラと超広角カメラ(いずれも約5000万画素)、接写用のマクロ カメラ(約200万画素)の組み合わせ。広角カメラは、1/1.57インチの大型センサーで、光学式手ブレ補正を搭載するほか、フレア防止のコーティングも施されている。通常のハイエンドスマートフォンと比べてもそん色のないスペックと言えよう。
メインカメラは、広角、超広角、マクロという3基のカメラで構成される
以下に、メインカメラを使った作例を掲載する。初期設定のままシャッターを押すだけのカメラ任せで撮影を行っている。
正午ごろの街の様子を広角カメラで撮影。周辺部分までかなり安定した画質だ。誇張されやすい空の色も自然かつ肉眼の印象に近い。細部の再現性もなかなか高い。レスポンスにもすぐれており、ゲーミングスマホはカメラが弱いという今までのセオリーを軽く覆している
上と同じ構図を超広角カメラで撮影。焦点距離14mmの超広角なので、交差点の様子が広く構図に収まる
ライトアップされた夜景を広角カメラで撮影。コーティングが効いているのかゴーストやフレアが抑えられたクリアな写りだ。光学式手ブレ補正を搭載しているため手ブレに強く、10ショット以上撮影したが手ブレの影響は見られなかった
上と同じ構図を超広角カメラで撮影。光学式手ブレ補正がないためか、広角カメラと比べると手ブレにシビアな印象を受けた
ダイナミックレンジの広い構図だが、ハイライトと暗部、その中間がどれも破綻なく撮影できた
ゲーミングスマートフォンは、カメラの優先度が低くなりやすいが、本機は、光学式手ブレ補正やレンズのコーティングなど、なかなか凝ったカメラを備える。幅広い構図で誇張がなく素直でクリアな写真が手軽に撮れるので、カメラで失望することはないだろう。
最後に本機の価格を触れよう。12GBメモリー+256GBストレージモデルは109,800円、16GBメモリー+512GBストレージモデルは134,800円(いずれも税込)で、昨今のハイエンドスマートフォンとしては相当割安の部類に入る。
「Snapdragon 8 Gen 3」搭載による基本性能の高さに加えて、高性能なディスプレイやサウンド機能はゲーム以外の用途でも魅力的だ。使い勝手のよいカメラ機能を搭載するのも見逃せない点である。注意点としては、空冷の代償としてボディが大きいことと防水・防塵機能がないこと、そしておサイフケータイに対応していないことがある。これらに納得できるなら、本機は相当魅力的なゲーミングスマホ兼汎用ハイエンドスマートフォンと言えそうだ。
なお、本機のカラーバリエーションは、12GBメモリー+256GBストレージモデルが「スリート(ブラック)」の1色。16GBメモリー+512GBストレージモデルは「スノーフォール(シルバー)」と「サイクロン(ブラックのスケルトン)」の2色が用意される。