スマホとおカネの気になるハナシ

登場3年で変わった! 廉価版料金プラン「ahamo」「povo」「LINEMO」を解説

スマートフォンやモバイル通信とお金にまつわる話題を解説していく「スマホとおカネの気になるハナシ」。今回の話題は大手通信事業者の「オンライン専用プラン」を取り上げよう。登場から3年が経過し、各サービスの個性や違いがはっきりしている。

※本記事中の価格は税込で統一している。

登場から3年が経過して、それぞれが別の道を進んでいる「ahamo」「povo2.0」「LINEMO」

登場から3年が経過して、それぞれが別の道を進んでいる「ahamo」「povo2.0」「LINEMO」

登場から3年で異なる変化を見せている各社のオンライン専用プラン

2021年に通信事業者3社から一斉に提供された、オンライン専用プラン。契約してすぐに使える手軽さに加えて、店舗でのサポートを省略することで、データ通信量は大容量ながら低価格な料金プランを実現している。NTTドコモが「ahamo」を発表して以降、KDDIが「povo」、ソフトバンクが「LINEMO」と相次いで同種のプランを提供し、非常に大きな話題となったことを記憶している人も多そうだ。

NTTドコモの「ahamo」以降、相次いで導入されたオンライン専用プランだが、現在その内容や位置付けは3社ともに大きく異なっている

NTTドコモの「ahamo」以降、相次いで導入されたオンライン専用プランだが、現在その内容や位置付けは3社ともに大きく異なっている

だが、それからおよそ3年が経過した現在、3社のオンライン専用プランは大きく変化しており、内容や位置付けも三者三様となっている。ソフトバンクが2024年6月6日に、「LINEMO」の新料金プラン「LINEMOベストプラン」「LINEMOベストプランV」の提供を発表したことを機会に、3社のオンライン専用プランの現在について触れてみよう。

シンプルで大容量のオンライン専用プランらしさを維持する「ahamo」

まずは「ahamo」に関してだが、NTTドコモは元々「UQ mobile」「ワイモバイル」といったサブブランドを持っていなかった。そのため、低価格プランの選択肢が少なく、安価で無料通話付き、そしてデータ通信量が大容量の「ahamo」は“攻めた”プランとして若い世代を中心に人気を博した経緯がある。

2023年に発表された新料金プランの名称が「eximo」「irumo」と、「ahamo」に合わせた名称になっていることが、同社における「ahamo」の存在感の大きさを示している。

それゆえ月額2,970円で20GBのデータ通信量が利用でき、5分間の通話定額が付属するといった「ahamo」のサービス内容は、サービス開始以降も変わっていない。ただ、その後の大容量ニーズの高まりを受け、通信量を80GB増量する「大盛りオプション」(月額1,980円)を追加しており、これを契約すると各種割引などの適用がなくても、月額4,950円で100GBのデータ通信が可能になる。

「ahamo」は2022年6月に、大容量通信を求めるユーザー向けに「大盛りオプション」を追加。割引なしで100GBの通信量を月額5,000円以下で利用できる

「ahamo」は2022年6月に、大容量通信を求めるユーザー向けに「大盛りオプション」を追加。割引なしで100GBの通信量を月額5,000円以下で利用できる

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2022/03/24 19:00

加えて最近では、「ドコモポイ活プラン」の第1弾として「ahamoポイ活」の提供を開始。月額2,200円の「ポイ活オプション」を契約することで、スマートフォン決済の「d払い」で支払った場合に「dポイント」が付与される割合が増える仕組みを、NTTドコモの料金プランの中でいち早く導入している。オプションの増加で値段が上がっている印象はあるものの、同社の中では若い世代を支えるシンプルで安価な“攻めた”プランである点は変わっていない。

2024年4月には「ドコモポイ活プラン」の第1弾として、「ahamoの大盛りオプション」契約者に向けた「ポイ活オプション」を提供開始している

2024年4月には「ドコモポイ活プラン」の第1弾として、「ahamoの大盛りオプション」契約者に向けた「ポイ活オプション」を提供開始している

サブ回線向けの0円契約やコンビニ連携など新提案が続く「povo 2.0」

続いて「povo」はどうだろうか。KDDIは2021年9月と早々に「povo」のリニューアルを実施しており、「ahamo」に近い内容だった「povo」を現在の「povo 2.0」に変更している。「povo 2.0」は、月額0円で利用でき、有料で購入できる「トッピング」を追加すると高速データ通信や音声通話定額などが利用可能になる、プリペイド方式に近いサービス内容である。

KDDIの「povo」は、サービス提供開始からおよそ半年で現在の「2.0」へとリニューアル。月額0円から利用可能な、従来にはない需要を開拓するプランとなっている

KDDIの「povo」は、サービス提供開始からおよそ半年で現在の「2.0」へとリニューアル。月額0円から利用可能な、従来にはない需要を開拓するプランとなっている

「povo 2.0」は一定の制限はあれど、基本的に月額0円で回線を維持できる。それゆえメイン回線としての利用だけでなく、「ギガ不足」に陥った場合の補完用途や、災害や通信障害に備える予備回線としての活用など、サブ回線としての利用も注目されるようになった。サービス提供以降、物理SIMとeSIMのデュアルSIMに対応する機種が増えたこと、そして2022年にKDDI自身が3日間にわたる大規模通信障害を発生させたことなども、サブ回線としての利用拡大を後押ししている。

そうしたことから「povo 2.0」は、独自のポジションを生かしたサービス拡充が進められている。基本となるデータ通信のトッピングに関しても、1GBのデータ通信を7日間利用できて390円という短期間・小容量のものから、300GBを365日間使えて24,800円という長期間・大容量のものまで幅広く提供されている。

ほかにも2023年からは海外でデータ通信が利用可能になるローミング専用のトッピングが提供されている。2024年5月には留守番電話サービスのトッピングも提供開始。最近では特定の店舗の商品やサービスと、データ通信量がセットになったトッピングなども定期的に提供されている。

2024年6月時点の「povo 2.0」のトッピング。小容量から大容量、ローソンの「からあげクン」とのセットなど、非常に幅広い有料トッピングが用意されている

2024年6月時点の「povo 2.0」のトッピング。小容量から大容量、ローソンの「からあげクン」とのセットなど、非常に幅広い有料トッピングが用意されている

また2024年3月からは、本人確認不要でeSIMに登録してすぐ利用できる、サブ回線としての利用を強く意識したデータ専用プラン「povo 2.0 データ専用」の提供も開始。より手軽に利用できる環境を整えて利用拡大を図っているだけでなく、外部のアプリから「povo 2.0」のトッピングを購入できる仕組みを提供するなどのチャレンジも実施している。シンプルな「ahamo」の対極にあるが、「ahamo」以上に“攻めた”プランとして新たな需要開拓が進められている。

2024年3月にはデータ通信専用の「povo 2.0 データ専用」の提供を開始。購入できるトッピングに制約はあるが、本人確認不要かつeSIM専用なので、契約してすぐ使えることから、いざという時のギガ不足にも役立つ

2024年3月にはデータ通信専用の「povo 2.0 データ専用」の提供を開始。購入できるトッピングに制約はあるが、本人確認不要かつeSIM専用なので、契約してすぐ使えることから、いざという時のギガ不足にも役立つ

「LINEMO」はソフトバンクの苦手な小〜中容量単身者向け

そして「LINEMO」についてだが、「ahamo」や「povo 2.0」のオンライン専用プランと比べると存在感が薄い状況が続いている。ソフトバンクは元々、非常に強力な低価格のサブブランド「ワイモバイル」を持っていたことから、他社と比べると、乗り換える料金プランの選択の幅が豊富だった。あえてオンライン専用の「LINEMO」を選ぶ理由が薄かったことが、その要因だ。

そうしたことからソフトバンクも「LINEMO」のテコ入れに動いており、それが先に触れた、2024年7月下旬以降に提供開始予定の新料金プラン「LINEMOベストプラン」および「LINEMOベストプランV」になる。これらはいずれも既存の料金プラン「ミニプラン」「スマホプラン」の後継と位置付けられるものだが、共通した特徴は月当たりの通信量に応じて月額料金が変化する、段階制を採用していることだ。

ほかの2社と比べると存在感が薄いソフトバンクの「LINEMO」だが、新料金プラン「LINEMOベストプラン」「LINEMOベストプランV」を2024年7月下旬以降に提供する予定だ

ほかの2社と比べると存在感が薄いソフトバンクの「LINEMO」だが、新料金プラン「LINEMOベストプラン」「LINEMOベストプランV」を2024年7月下旬以降に提供する予定だ

実際、「LINEMOベストプラン」は通信量が3GBまでであれば月額990円だが、それを超えても10GBまでは月額2,090円で高速通信が可能だ。「LINEMOベストプランV」も同様に、通信量20GBまでであれば月額2,970円だが、それを超えた場合は30GBまで、月額3,960円で高速通信を継続できる。

「LINEMO」の新料金プランはいずれも、通信量に応じて月額料金が変化する段階制を採用。通信量をオーバーしても、値段は上がるが上限までは高速通信を維持できる

「LINEMO」の新料金プランはいずれも、通信量に応じて月額料金が変化する段階制を採用。通信量をオーバーしても、値段は上がるが上限までは高速通信を維持できる

そして段階制を採用した料金プランとして、楽天モバイルの「Rakuten最強プラン」が知られる。それだけに新料金プランを導入した「LINEMO」は、ここ最近契約数を伸ばす楽天モバイルに対抗する役割が強まったと見ることもできる。

ただ、ソフトバンクのサービス内容を総合的に見ると、「LINEMO」の役割はそれだけにとどまらないようだ。ソフトバンクの主力はメインブランドの「ソフトバンク」とサブブランドのワイモバイルだが、それらはいずれも家族で契約するとお得になる割引施策が入っており、単身者が契約するメリットが薄い。

そうしたことから「LINEMO」は新料金プランの導入によって、2つのブランドでカバーできていない小〜中容量を求める単身者を獲得するブランドへと位置付けを変えているようだ。実際に新料金プランは、いずれも割引なしでオンライン専用プランらしい低価格を実現しつつ、段階制を導入することで、動画コンテンツの利用などで増えている通信量の増加に対応できる。

それら3つのブランドで顧客を全方位的にカバーすることで、ソフトバンクとしては通信を軸として、「LINE」「Yahoo! Japan」「PayPay」など、傘下の企業が提供するサービスに顧客を囲い込む、いわゆる「経済圏」ビジネスにいっそう力を入れようとしているようだ。

ソフトバンクは「ソフトバンク」「ワイモバイル」「LINEMO」の3ブランドで顧客を全方位的に抑えることに重点を置いており、「LINEMO」はほかの2ブランドでカバーできていない単身者の獲得に重点を置くようだ

ソフトバンクは「ソフトバンク」「ワイモバイル」「LINEMO」の3ブランドで顧客を全方位的に抑えることに重点を置いており、「LINEMO」はほかの2ブランドでカバーできていない単身者の獲得に重点を置くようだ

ただ、ほかの2ブランドではセットになっている、LINEヤフーの有料会員プログラム「LYPプレミアム」が、「LINEMO」ではセットになっていないなど、グループ間の連携は薄い。新料金プランでは「LINEスタンプ プレミアムfor LINEMO」も廃止された。「LINEMO」の存在感を高めるためには、まだサービス面で工夫の余地があるだろう。

佐野正弘
Writer
佐野正弘
福島県出身。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。
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田中 巧(編集部)
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田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよび、モバイルバッテリーを含む周辺機器には特に注力している。
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