スマートフォンやモバイル通信とお金にまつわる話題を解説していく「スマホとおカネの気になるハナシ」。今回の話題は、Googleの人気スマートフォン「Pixel 9」シリーズだ。同シリーズの特徴を解説しつつ、お買い得な旧モデルの情報も含めながら“賢い”選び方を紹介しよう。
日本時間の2024年8月14日に新製品発表イベントを実施。「Pixel」シリーズのスマートフォン4機種などを発表している
日本で急速に人気を高めている、Googleのスマートフォン「Pixel」シリーズ。その最新モデル「Pixel 9」シリーズが、日本時間の2024年8月14日に発表されている。
今回の「Pixel 9」シリーズは、カメラ関連を中心としてAI技術を用いた機能の充実が進められており、カメラアプリには、新たに2回写真を撮影し、合成することで撮影者も含めた全員の集合写真を撮ることができる「一緒に写る」が追加。生成AI技術を活用した「編集マジック」にも、背景を生成して追加するなどして最適な画角にしてくれる「オートフレーム」などの機能が追加されている。
加えて音声アシスタントが従来の「Googleアシスタント」から、生成AIの技術を取り入れた「Gemini」に変更。チップセットにもAI処理の高速化を実現した力独自開発の「Tensor G4」が全モデルに採用されており、AI関連の機能・性能にとても力が入れられている。
「Pixel 9」シリーズのラインアップは、従来の「Pixel」シリーズと比べると大きな異変が起きている。それはラインアップが4機種に増えたことだ。従来の「Pixel」シリーズは、ディスプレイサイズが6インチ台前半と小さいスタンダードモデルと、6インチ台後半で画面サイズが大きく、カメラの数が多いなど、性能も高められている「Pro」モデルの2機種が展開されていた。
それら2機種をベースとして、ディスプレイを折りたためる「Fold」や、「a」が付く低価格モデルなどいくつかの派生モデルを提供するのが、従来の「Pixel」シリーズのラインアップとなっていた。だが、今回はそのラインアップ構成に大きな変化が出てきている。
各機種の端的な特徴は次のようになる。
まずはスタンダードモデルに位置づけられる「Pixel 9」だが、こちらは6.3インチディスプレイを採用した、片手でも持ちやすいコンパクトなボディが特徴。背面のカメラは広角・超広角の2眼構成と4機種の中では最も少ないが、ポップなカラーを複数用意するなどしてカジュアルさを打ち出しているようだ。
スタンダードモデルの「Pixel 9」は本体のコンパクトさに加え、ポップなカラーを用意するなどカジュアルさに重点が置かれている。そのいっぽう、カメラは2眼であるなど機能・性能はやや抑えられている
次に「Pixel 9 Pro」だが、こちらは「Pixel 9」と同じ6.3インチディスプレイを採用したコンパクトなモデルだ。だが、それでいて従来の「Pro」モデルと同様、広角、超広角に加え望遠カメラも搭載した3眼カメラを搭載しているなど、上位モデルらしい性能強化がなされている。
「Pixel 9 Pro」は「Pixel 9」と同じサイズ感ながら、望遠カメラを追加した3眼構成を採用。機能・性能の向上が図られている
「Pixel 9 Pro XL」は、「XL」という名前からわかるようにディスプレイが6.8インチと、大画面で画面が見やすいことが大きな特徴だ。いっぽうで機能・性能面は「Pixel 9 Pro」と共通しており、従来の「Pro」モデルの後継ポジションと見てよいだろう。
「Pixel 9 Pro XL」は6.8インチの大画面が特徴だが、機能・性能は「Pixel 9 Pro」と変わらない
そして「Pixel 9 Pro Fold」だが、こちらは閉じた状態で6.3インチ、開いた状態で8インチのディスプレイが利用できる、横折りタイプの折りたたみスマートフォン。カメラの性能など一部に違いはあるが、ベースの機能・性能はおおむねほかの「Pro」モデルを踏襲している。
「Pixel 9 Pro Fold」は、「Pixel 9 Pro」の機能・性能をおおむね踏襲した折りたたみスマートフォン。「Pixel Fold」よりいっそうの薄型・軽量化を推し進めている
前モデルの「Pixel 8」シリーズに当てはめると、「Pixel 9」は「Pixel 8」、「Pixel 9 Pro XL」は「Pixel 8 Pro」、「Pixel 9 Pro Fold」は「Pixel Fold」の後継機となる。いっぽうで「Pixel 9 Pro」に当てはまるものは従来存在せず、まったく新しいラインアップと見てよいだろう。
それゆえ「Pixel 9」シリーズで大画面が必要な人は「Pixel 9 XL」を、折りたたみタイプの端末が必要なら「Pixel 9 Pro Fold」を選べばよいことになる。いっぽうで選び方が難しいのが「Pixel 9」と「Pixel 9 Pro」だ。
そうした「Pixel」シリーズを選ぶにあたり、注目しておきたい4つの視点を以下にまとめた。
「Pixel 9」と「Pixel 9 Pro」は、サイズとチップセットの性能が同じであるいっぽう、価格にはかなり差がある。最も安い128GBモデルで比較すると、前者は128,900円、後者は159,900円(いずれも税込)と、およそ30,000円の差がある。選ぶうえでは、「Pixel 9 Pro」に追加されている機能と、約30,000円という差額をどうとらえるかが重要になってくるだろう。
両機種の大きな違いのひとつはカメラであり、先にも触れたように「Pixel 9 Pro」には望遠カメラが搭載されている。この望遠カメラは光学5倍ズーム相当での撮影が可能なほか、望遠カメラとAI技術を活用することで、最大30倍の超解像ズームに対応している。超解像ズームが8倍までの「Pixel 9」と比べ撮影シーンの幅が広いことは間違いない。
「Pixel 9 Pro」は望遠カメラを搭載しており、光学5倍ズーム相当での撮影が可能。AI技術を活用した超解像デジタルズームでは最大30倍までの撮影が可能だ
そしてもうひとつ、大きく違うのがRAMで、「Pixel 9」が12GBであるのに対し、「Pixel 9 Pro」は16GBと容量が多い。とはいえ、「Pixel 9」も、容量8GBだった「Pixel 8」と比べれば増量されており、RAMだけで「Pixel 9 Pro」を選ぶ理由は少ないように見える。
だが、今後を考えた場合、このRAMの違いが大きな差となる可能性が高い。なぜなら、「Pixel」シリーズで力が入れられているAI技術、とりわけ「Tensor G4」を使い、スマートフォン上でこなす生成AI関連の処理を高速にするには、RAMが非常に重要だからだ。実際「Pixel 9 Pro」では、「Pixel 9」では利用できない「ビデオ夜景モード」や、「動画ブースト」を用いた8K動画撮影などに対応している。
「Pixel 9」シリーズでは音声アシスタントが従来の「Googleアシスタント」に代わって、生成AI技術を活用した「Gemini」に変更されるなど、AI技術を活用したいっそうの機能強化が進められている
また、Googleは、生成AIを動かすのに欠かせないLLM(大規模言語モデル)を、スマートフォンなどに向けて小型化した「Gemini Nano」を提供した際、当初RAMが16GBの「Pixel 8 Pro」にのみ提供し、RAMが8GBの「Pixel 8」には提供しない方針だった。ユーザーの声などを受けて後に「Pixel 8」にも「Gemini Nano」を提供したようだが、それだけRAMの容量が、生成AIを動作させるうえでは重要になる。
そうしたことからRAMが12GBの「Pixel 9」を選んだ場合、将来的に提供されるAI関連の機能で利用できない、あるいは登場まで余計に時間がかかる可能性がある。「Pixel 9」シリーズは7年間のOSアップデートが保証されているだけに、長く使い続けながら、今後追加される新しいAI関連機能も利用したいというのであれば、多少値段が張っても「Pixel 9 Pro」が適するだろう。
いっぽうで、望遠撮影をあまり重視せず、しかもスマートフォンを2年程度で買い替えるつもりなら、「Pixel 9」を選んだほうがお得になる。とはいえ、どちらの機種も10万円以上の価格だけに、安く購入するにはGoogleが実施している下取りキャンペーンや、携帯各社の端末購入プログラムを活用するなどしたほうがよいだろう。
最新モデルの「Pixel 9」シリーズを選ばないというのも賢い選択だ。性能や新しい機能にそこまでこだわらないので、もっと安く「Pixel」シリーズが欲しいのなら、市場に在庫として残っている安価な「Pixel 8」シリーズを選ぶのもよいだろう。
実際、「Pixel 9」シリーズの発表直前には、携帯各社が在庫処分のためか「Pixel 8」シリーズを大幅に値引いて販売していることが話題となり、一部の事業者では「Pixel 8」が廉価モデルの「Pixel 8a」より安く売られる逆転現象さえ起きていたほどだ。
「Pixel 9」シリーズの発表による在庫処分のためか、「Pixel 8」シリーズは大幅に価格が下がっており、一部のショップなどでは「Pixel 8」を、廉価モデルの「Pixel 8a」より安く販売していたことがあった
むろん、「Pixel 9」シリーズが発売されることで「Pixel 8」シリーズの市場在庫は急速に減っていくことが予想される。今から「Pixel 8」シリーズを購入したいのであれば、ショップの在庫を見逃さないようにしたい。
最新の「Pixel 9」シリーズであっても「Pixel」シリーズをあまりおすすめできない人もいる。それはスマートフォンでのゲーミングを重視している人だ。なぜなら「Pixel」シリーズに搭載されているチップセットの「Tensor」シリーズは、AI関連処理をこなすNPU(Neural network Processing Unit)に力を入れている分、ほかのハイエンド向けチップセットと比べるとCPUやGPUの性能が低い傾向にあるからだ。
それは最新の「Tensor G4」も同様で、いくつかのAAAクラスでゲームを実際に試してみたところ、クアルコム製のハイエンド向け最新チップセット「Snapdragon 8 Gen 3」を搭載したスマートフォンと比べグラフィック設定が低く抑えられる傾向にあった。ゲーミングに重きを置いて機種選びをするなら、サムスン電子の「Galaxy S24」やエイスーステック・コンピューターの「Zenfone 11 Ultra」など、ほかのハイエンド向けチップセットを搭載した近い価格帯の機種を選んだほうが満足感は高いだろう。