選び方・特集

ノートパソコンは液晶と有機ELのどちらを買えばいいのか?

ノートパソコンのディスプレイといえば、かつては液晶が主流でした。ですが、ここ数年は有機EL(OLED)を搭載するモデルが多数発売されています。

一般的には「技術的にも新しい有機ELのほうがきれい」いわれており、それは事実でしょう。ただ、それだけで選んでいいのか、あるいは実際のところ有機ELと液晶にはどんな違いがあるのか、そのあたりも気になるところです。

そこで今回の記事では、同じサイズのノートパソコンで有機ELモデルと液晶モデルを用意し、じっくりと比較。どういった人が有機ELモデル、あるいは液晶モデルを買うべきなのかを解説します。

比較方法

有機ELモデルと液晶モデルを同照明下に配置し、同じ映像や写真を表示して比較しました。ディスプレイの輝度は同値にし、色の鮮やかさ、明暗などの表現力、体感的なコントラスト、文字の精細さや可読性などに着目していきます。

・比較に使った製品はこちら
有機ELモデル…HP Pavilion Plus 14-ew0023TU(14.0型WQXGA+光沢OLEDディスプレイ / 2880×1800 / 16:10 /最大 120Hz)

液晶モデル…HP Pavilion Plus 14-ew0022TU(14.0型WQXGA 非光沢・IPSディスプレイ / 2560×1600 / 16:10 /最大 120Hz)

・チェック項目は以下
映り/文字の見やすさ/映り込み(目の疲れ)/価格

有機ELと液晶をHPの実機で比較! やはり有機ELはきれい!

今回はHPのノートパソコン「HP PavilionPlus 14」の有機ELモデルと液晶モデルをお借りして、それぞれを比較しました。なお、仕様の関係で有機ELモデルはグレア(光沢)、液晶モデルはノングレア(非光沢)となっているため、完全な同条件比較ではないのはご容赦ください。

また、有機ELモデルと液晶モデルで解像度がわずかに異なるため、比較時は表示解像度を統一しました。ちなみに結果は、やはり映りに関しては有機ELモデルが一段上という印象。それぞれの比較検証の結果を詳しく見ていきましょう。

映り:色の再現・明暗の表現で勝る有機EL

見比べてみてわかるのは、明らかに有機ELモデルのほうが色鮮やかであることです。海の青はより青く、草木の緑はより深い緑として表現されています。有機ELモデルの発色を見てから液晶モデルを見ると、もやがかかったような印象すら受けます。

左:有機ELモデル、右:液晶モデル。有機ELモデルは青空の色の違いを表示できているが液晶モデルは全体にべたっとした印象に。芝生や葉の色も有機ELモデルのほうが緑を鮮やかに描写。液晶モデルは何となく全体が青みがかってしまっています

左:有機ELモデル、右:液晶モデル。有機ELモデルは青空の色の違いを表示できているが液晶モデルは全体にべたっとした印象に。芝生や葉の色も有機ELモデルのほうが緑を鮮やかに描写。液晶モデルは何となく全体が青みがかってしまっています

左:有機ELモデル、右:液晶モデル。同じ青い海を表示しても、有機ELモデルのほうが彩度が高く、また、海の色の違いをしっかりと表現できています

左:有機ELモデル、右:液晶モデル。同じ青い海を表示しても、有機ELモデルのほうが彩度が高く、また、海の色の違いをしっかりと表現できています

海の比較に使った元画像はこちらです

海の比較に使った元画像はこちらです

左:有機ELモデル、右:液晶モデル。明暗差が激しい画面だと自発光する有機ELモデルが明らかに有利。明るい場所はしっかり明るく、ディテールも細かく描写されています

左:有機ELモデル、右:液晶モデル。明暗差が激しい画面だと自発光する有機ELモデルが明らかに有利。明るい場所はしっかり明るく、ディテールも細かく描写されています

また、「有機ELは液晶に比べて輝度が低い傾向にある」と言われることがありますが、いざ並べて比較してみるとそこまで明確な輝度差があるようには感じませんでした。むしろ今回はディスプレイ輝度を同じ数値に揃えた場合、液晶モデルのほうがやや暗めの印象。これは元々のピーク輝度の違いによるのかもしれません。

実際に、今回使用した機材は有機ELモデルの方がピーク輝度が高くなっています。このように近年は画面輝度の高い有機ELも多く、輝度がそこまでデメリットになることはないでしょう。

文字の見やすさ:結果的に見やすい有機EL

次は、テキストの読みやすさに注目して見比べていきます。筆者は軽い乱視持ちで、小さい文字はあまり得意ではありませんが、有機ELモデルも液晶モデルもおおむね同様の読みやすさかなと感じました。一般論としては有機ELの文字がクッキリしていて読みやすいとされています。確かに差はありますが「液晶モデルの文字が読みにくい」というレベルではありません。

左:有機ELモデル、右:液晶モデル。有機ELモデルは「暗闇」や「輪郭」といった細かい文字もはっきりと描写できています。バックライトを搭載しない有機ELは、液晶よりも輝度が低い黒が表現できるため、文字がクッキリ見えるとされています

左:有機ELモデル、右:液晶モデル。有機ELモデルは「暗闇」や「輪郭」といった細かい文字もはっきりと描写できています。バックライトを搭載しない有機ELは、液晶よりも輝度が低い黒が表現できるため、文字がクッキリ見えるとされています

ただ、文字の読みやすさ(視認性や可読性を含めて)については、フォントや背景色と文字色の関係、明るさのコントラストといった、さまざまな要素が影響してきます。発色とコントラストの面では確実に有機ELモデルが勝っているので、結果的に有機ELモデルの文字が読みやすい、といっても差し支えはないでしょう。「有機ELのほうが圧倒的に読みやすい!」というような、大差をつけての違いではありませんのであしからず。

映り込み:映り込みが激しく目の疲れが気になる有機EL

今回の比較では有機ELモデルがグレア(光沢)、液晶モデルがノングレア(非光沢)を使用しています。液晶モデルはグレアとノングレアで選べるモデルも多いですが、いっぽうで有機ELはほとんどがグレア仕様の製品です。

グレアとノングレアの差異は大きく、ツヤ感のあるグレアのパネルは非常にビビッドな発色をします。そのため有機ELと好相性ではありますが、光の反射や背景の映り込みが強いという特性も忘れてはいけません。「画質はよいけれど目が疲れやすそう」といったときに選択肢となるのが、反射光が入りにくいノングレアです。

単純化するなら、グレア=明るくて高画質だけれど高刺激、ノングレア=コントラストは落ちるけれど低刺激、ですね。目にやさしい有機ELや発色のよい液晶といったものも存在しますが、ディスプレイを選ぶ際は、有機ELか液晶という要素に加えて、グレアorノングレアも意識してみると、満足いく製品が選べるはずです。

左:有機ELモデル、右:液晶モデル。グレアの有機ELモデルでは背景の映り込みが激しく、中央部のカメラもはっきり視認できる。ノングレアの液晶モデルでも映り込んではいるが、ノングレアゆえにぼやけており像がはっきり判別できるレベルではない

左:有機ELモデル、右:液晶モデル。グレアの有機ELモデルでは背景の映り込みが激しく、中央部のカメラもはっきり視認できる。ノングレアの液晶モデルでも映り込んではいるが、ノングレアゆえにぼやけており像がはっきり判別できるレベルではない

価格:液晶と比べると結果的に価格高めの有機EL

有機ELモデルと液晶でノートパソコンの価格を比較すると、液晶よりも有機ELモデルのほうが高い傾向があります。これはそもそも有機ELは上位機に搭載されることが多いためです。

HPのPavilion Plus 14で見てみましょう。

有機ELモデル:HP Pavilion Plus 14 Ultra 7・32GBメモリ・1TB SSD・2.8K OLEDディスプレイ・マウス付 価格.com限定モデル [ナチュラルシルバー] 169,800円(税込)

液晶モデル:HP Pavilion Plus 14 Ultra 5/16GBメモリ/512GB SSD/WQXGA/IPSディスプレイ/マウス付 価格.com限定モデル [ナチュラルシルバー] 134,800円(税込)

価格.com最安価格で比べると有機ELモデルは169,800円(税込)、液晶モデルは134,800円(税込)です。ただし、ディスプレイ以外の構成を見るとCPU、メモリー容量、ストレージ容量ともに有機ELモデルのほうが高性能な構成となっています。このように有機ELだから高いのではなく、上位機だから価格が高めとなるケースが現状は見られます。

まとめ:優先するべきは画質か、仕事道具としての使いやすさか

今回は有機ELモデルと液晶モデル、2台のパソコンのディスプレイを並べて色や明るさなどを比較しましたが、やはり「高画質なのはどっち」と聞かれれば、有機ELだと断言できます。画質につながる色や明るさといった部分の描画力は、液晶よりも圧倒的にすぐれていました。

では、液晶が勝っている要素は何なのか。基本的には価格で、液晶モデルは有機ELモデルよりも低価格です。また、方式にもよりますが反射の少なさも液晶が勝っている点でしょう

ただ、重要なのはノートパソコンを選ぶにあたってディスプレイにどんな役割を求めるのかでしょう。きれいな画面で作業したいということに加え、映画やドラマを視聴するといった用途も重視するなら有機ELモデル。逆に仕事や授業など、ノートパソコンを実用重視で考えているのなら、コスパにすぐれモデルの選択肢が広い液晶モデルがいいのではないでしょうか。

ディスプレイに関する技術はどんどん進歩しています。液晶の弱点をカバーしたMini-LEDや、色域にすぐれたQLED、有機ELとQLEDを組み合わせたQD-OLEDなどなど、もはや一昔前の液晶や有機ELとは別物のディスプレイが普及する時代も、そう遠くないかもしれません。いずれにせよ今後、ノートパソコンを選ぶ際にはディスプレイについても確認してみると、さらに満足度の高い製品が選べるはずです。

ヤマダユウス型
Writer
ヤマダユウス型
ガジェット、音楽、楽器を主食とするライター。電気の通るモノに囲まれた生活を送りつつ、休日は登山やキャンプで魂を漂白している。
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柴田崇志(編集部)
Editor
柴田崇志(編集部)
モノ雑誌で10年弱編集を経験した後、カカクコムに入社。前職ではAV家電やカメラを中心に幅広い製品を担当。スペックからわかりづらい製品の違いをわかりやすく説明したいです。
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