スマホとおカネの気になるハナシ

なぜ安い? シャオミの最新ハイエンド「Xiaomi 14T」シリーズから理由を探る

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スマートフォンやモバイル通信とお金にまつわる話題を解説していく「スマホとおカネの気になるハナシ」。今回の話題は、スマートフォンはもちろん家電製品でも安価な製品を続々と投入するシャオミだ。なぜ安さを追求できるのかに迫った。
※本記事中の価格は税込で統一している。

物価上昇の最中ににもかかわらず、前モデルから価格据え置きとなったシャオミ「Xiaomi 14T」シリーズ。なぜ安いのか? 背景に迫った

物価上昇の最中ににもかかわらず、前モデルから価格据え置きとなったシャオミ「Xiaomi 14T」シリーズ。なぜ安いのか? 背景に迫った

今でも10万円そこそこで最新ハイエンドスマホを投入できるシャオミ

2024年10月10日、中国メーカーであるシャオミは、都内で新製品発表イベントを実施した。その中ではさまざまな新製品が発表されたのだが、注目を集めたのはやはり、新しいスマートフォン「Xiaomi 14T」「Xiaomi 14T Pro」であろう。

これら2機種は、2023年に日本でも販売された「Xiaomi 13T」「Xiaomi 13T Pro」の後継機種。シャオミのラインアップでは「Xiaomi 14 Ultra」のように最高峰の機能・性能を備えたフラッグシップではないものの、それに続く高い性能を備えるハイエンドモデルの位置付けだ。

シャオミの新しいスマートフォン、「Xiaomi 14T」(左)と「Xiaomi 14T Pro」(右)。いずれも非常に高い性能を備えながら、低価格を実現したコストパフォーマンスの高いモデルだ

シャオミの新しいスマートフォン、「Xiaomi 14T」(左)と「Xiaomi 14T Pro」(右)。いずれも非常に高い性能を備えながら、低価格を実現したコストパフォーマンスの高いモデルだ

ライカカメラや最新チップセットを搭載、ハイエンドスマホの流行であるAI機能も実装

「Xiaomi 14T」と「Xiaomi 14T Pro」は、いずれもハイエンドスマホらしい高い性能を備えている。実際、両機種は、カメラを老舗カメラメーカーの独ライカカメラと協業で開発。ライカカメラの「SUMMILUX」を冠するレンズを採用した広角・超広角・望遠の3眼カメラを搭載しており、幅広いシーンに対応した撮影ができる仕組みだ。

加えて、最もよく使用する広角カメラのイメージセンサーに、「Xiaomi 14T」はソニー製の「IMX906」、「Xiaomi 14T Pro」に至っては独自の「Light Fusion 900」を採用。それに加えてAI技術を活用した独自の画像処理「Xiaomi AISP」を取り入れることで、高い画質を実現。とりわけセンサー自体のサイズと画素が大きい「Xiaomi 14T Pro」は暗い場所での撮影に強く、場所を選ぶことなくライカ画質の美しい写真を撮影できる。

「Xiaomi 13T」シリーズでは諸事情から、日本だけライカカメラと共同開発したカメラが搭載されなかったが、「Xiaomi 14 T」シリーズでは両機種ともにライカカメラと共同開発した3眼カメラを搭載している

「Xiaomi 13T」シリーズでは諸事情から、日本だけライカカメラと共同開発したカメラが搭載されなかったが、「Xiaomi 14 T」シリーズでは両機種ともにライカカメラと共同開発した3眼カメラを搭載している

また、性能を大きく左右するチップセットについても、「Xiaomi 14T」は「Dimensity 8300 Ultra」、「Xiaomi 14T Pro」は「Dimensity 9300+」と、いずれもメディアテック製のグレードの高いものを採用。いずれもCPUやGPUの性能が高いだけでなく、デバイス上でAI関連の処理を高速にこなすことにも力が入れられている。

それゆえ両機種には、「Advanced AI」と呼ばれるAIを活用したさまざまなツールが標準で用意されており、発売当初から日本語に対応した形で提供されるとのこと。現時点ではその精度を確認することはできないが、文字起こしや翻訳、写真の加工などAIを活用したさまざまな機能がすぐ利用できる点は大きなメリットだ。

「Xiaomi 14T」シリーズはいずれもメディアテック製のチップセットを採用。「Xiaomi 14T」は「Dimensity 8300 Ultra」、「Xiaomi 14T Pro」は「Dimensity 9300+」を搭載しており性能は非常に高い

「Xiaomi 14T」シリーズはいずれもメディアテック製のチップセットを採用。「Xiaomi 14T」は「Dimensity 8300 Ultra」、「Xiaomi 14T Pro」は「Dimensity 9300+」を搭載しており性能は非常に高い

加えて両機種はともに5000mAhのバッテリーを搭載しており、なかでも「Xiaomi 14T Pro」は「Xiaomi 13T Pro」と同様、120Wの超高速充電に対応。19分で満充電を可能にするだけでなく、新たにワイヤレス充電にも対応している。就寝時のように充電は急がないが、手軽に充電したいニーズにも応えたのはうれしい。

そして「Xiaomi 14T」はKDDIの「au」「UQ mobile」から、「Xiaomi 14T Pro」はソフトバンクから販売されることもあり、いずれもIP68の防水・防塵性能とFeliCaを搭載し「おサイフケータイ」にしっかり対応。ハイエンドモデルとして非常に充実した機能・性能だけでなく、国内でも安心して利用できる仕組みが前モデルから変わらずに備わっている。

今や10万円そこそこの最新ハイエンドは間違いなく“格安”の範疇

価格は、執筆時点で公開されている「Xiaomi 14T Pro」のオープン市場向けモデル(いわゆる“SIMフリー”)が、メモリー12GB・ストレージ256GBのモデルで109,800円、メモリー12GB・ストレージ512GBのモデルで119,800円。前機種の「Xiaomi 13T Pro」の発売当初の価格が109,800円だったことから、価格は据え置かれている。

「Xiaomi 14T Pro」のオープン市場向けモデルは109,800円から。昨今のハイエンドモデルとしてはかなり安い価格を実現している

「Xiaomi 14T Pro」のオープン市場向けモデルは109,800円から。昨今のハイエンドモデルとしてはかなり安い価格を実現している

最近発売された同じハイエンドモデルと比べてみると、アップルの「iPhone 16」であればストレージ128GBモデルで124,800円、256GBモデルで139,800円、512GBモデルで169,800円となる。ストレージが同じモデル同士で比較すれば、「Xiaomi 14T Pro」のほうが3万〜5万円ほど安い計算となり、非常にお得感が高いことが理解できるだろう。

ただ、こうした価格の安さはスマートフォンに限ったものではない。今回同時に発表されたシャオミ製品では、「Xiaomi ロボット掃除機 X20 Pro」は高い性能を備えながら価格は69,800円と競合モデルと比べ非常に安い。また、100インチの大画面チューナーレステレビ「Xiaomi TV Max 100」は299,800円と、30万円を切る価格で購入できてしまう。数万円が相場とされるスマートウォッチだが、「Redmi Watch 5 Active」に至ってはなんと3,980円と、相場を大幅に下回る価格を実現しているのだ。

スマートウォッチの「Redmi Watch 5 Active」は、機能が絞られているとはいえ、3,980円の驚異的な安さを実現している

スマートウォッチの「Redmi Watch 5 Active」は、機能が絞られているとはいえ、3,980円の驚異的な安さを実現している

シャオミの安さはスケールメリットだけでは説明できない

なぜこれほどシャオミの製品は価格が安いのか? 単に規模の大きい中国メーカーで、スケールメリットが働くだけにとどまらない工夫が読み取れる。なかでも最も大きな要因は、販売される製品から得られる利益を大幅に抑えていることだろう。同社は以前からすべてのハードウェア製品における利益率の上限を5%と定めており、利益を抑えることで価格を引き下げているのだ。

シャオミはハードウェア製品の利益率を上限5%までとしており、利益の低さが価格を抑える大きな要因のひとつとなっている

シャオミはハードウェア製品の利益率を上限5%までとしており、利益の低さが価格を抑える大きな要因のひとつとなっている

ただ、利益が低いと企業としての儲けも少なくなってしまう。そこを補うために、同社はコストを抑えられる自社独自の販路を積極的に開拓している。中国でも当初はオンラインショップでの販売を主体に展開していた。その手法に限界が出てきたあたりで自社ショップを積極的に展開。この戦略を世界規模で応用、各国で独自の販路を開拓し、低価格でも高い利益を確保できる販売体制を整えた。

目立つ部分に注力、そうではない部分のコストは徹底的に削減

製品面でも低価格を実現する工夫がなされており、とりわけ同社のスマートフォンでよく見られるのが“メリハリ”だ。消費者が注目する、あるいはよく利用する機能には力を注ぐが、それ以外の部分は徹底してコストを抑えることで消費者の関心を惹きつつ価格を抑えている。

「Xiaomi 14T Pro」の場合も、先に触れたように多くの人が注目するカメラやチップセット、バッテリーなどは重点を置き強化を図るいっぽう、ボディの素材などはコストを抑えている様子だ。実際、「Xiaomi 14T Pro」は「チタン」の名前を冠したカラーを採用しているが、フレームの素材に採用しているのはアルミニウム合金で、「iPhone 16 Pro」のようなチタニウム素材ではない。

カラーバリエーションにチタンとあるが、ボディの素材はアルミニウム合金である

カラーバリエーションにチタンとあるが、ボディの素材はアルミニウム合金である

また、テレビにあえてチューナーを搭載せず、チューナーレステレビとして販売しているように、国ごとのカスタマイズを可能な限り抑えて販売する製品を共通化している。これも、コストの引き下げに作用する。「Xiaomi 14T」シリーズのように、日本向けにFeliCaを搭載するといった対応は、シャオミにとって実はかなり例外的な取り組みなのだ。

多くのメーカーにとって、こうした取り組みの一部は真似できても、すべて真似をするのは難しい。低価格を実現する戦略の徹底が、シャオミをスマートフォンメーカー大手に押し上げる要因になった。

業績を伸ばしているが、これ以上は政治が影響しそう

日本では携帯大手キャリアによるスマートフォン販売が主で自社販路の開拓がしにくい。しかもFeliCaを搭載するといったカスタマイズのニーズが高いなど、シャオミの成功パターンが通用しにくい市場環境だ。ただ、円安の長期化による国内スマートフォンメーカーの相次ぐ撤退や、値上げラッシュによる低価格ニーズの高まりが、価格面で強みのあるシャオミには好機となっているのだろう。

実際、調査会社Canalysの調査では、2024年第2四半期に国内スマートフォン出荷台数シェア3位を獲得しており、ローエンドスマートフォンの販売好調などで急成長を遂げたと見られている。為替の動向は近ごろ不安定だが、インフレの傾向は今後も続くと見られているだけに、今後シャオミがより躍進する背景はそろっている。

シャオミは2024年第2四半期、スマートフォン出荷台数シェアで世界だけでなく、日本でも第3位を獲得したとしている

シャオミは2024年第2四半期、スマートフォン出荷台数シェアで世界だけでなく、日本でも第3位を獲得したとしている

ただ、依然良好とは言えない日本と中国との政治的関係は、同社の成長に引き続き影響してくるだろう。過去の連載でも触れたように、日本政府が株式を保有する日本電信電話(NTT)の完全子会社であるNTTドコモが中国製品の販売を避ける傾向は変わっていない。言うまでもなく、NTTドコモは日本最大のシェアを持つ。それだけに、それがシャオミの販路拡大にどこまで影響するのか気になるところだ。

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佐野正弘
Writer
佐野正弘
福島県出身。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。
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田中 巧(編集部)
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田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよび、モバイルバッテリーを含む周辺機器には特に注力している。
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