コストパフォーマンス重視でスマートフォンを選びたいけど、性能には妥協したくない。そんな人にチェックしてほしいのが、シャオミ第3のブランド「POCO」シリーズのエントリーモデル「POCO M7 Pro 5G」だ。3万円前後の低価格ながら、長く使える工夫が詰まった1台に仕上がっている。
シャオミ「POCO M7 Pro 5G」。2025年4月3日発売。直販価格は32,980円(税込)
最初に販売ルートと価格を確認しよう。販売ルートは、シャオミのメーカー直販、家電量販店のECサイト、大手ECサイトのほか、MVNOではイオンモバイルで取り扱われる。なお、イオンモールに出店したシャオミの常設店舗「Xiaomi Store」では実機を展示している。直販価格は32,980円で、価格.com最安価格は29,980円だ(いずれも税込、2025年4月中旬時点)。
搭載される6.67インチのディスプレイには、高画質な有機ELを採用。解像度は2400×1080のフルHD+で、HDR10やHLG、120Hzのリフレッシュレート、240Hzのタッチサンプリングレートに対応している。HDRの動画や静止画の表示が可能だ。もちろん、アクションゲームとの相性もよいし、日常行う画面操作もスムーズだ。このディスプレイはかなりの高性能で、本機を選ぶ大きな動機になるだろう。
3万円前後の製品だが6.67インチの有機ELディスプレイを採用する
リフレッシュレートは表示するアプリによって自動で切り替わるが、手動で60Hzと120Hzを切り替えられる
サウンド機能も強力。本体に2個のスピーカーやヘッドホン端子を備え、ステレオ再生やバーチャルサラウンドのDolby Atmosに対応しており、ハイエンドに近い性能だ。このように、ハイエンドクラスのかなり強力な映像・サウンド性能を備えつつ、3万円前半の低価格を実現しているのが、「POCO M7 Pro 5G」の大きな魅力である。
ボディサイズは約75.7(幅)×162.4(高さ)×7.99(厚さ)mmで、重量は190g。6.67インチディスプレイを搭載するAndroidスマートフォンとしては標準的なサイズだ。防水・防塵仕様はIP64の飛沫防水にとどまっており、水が多少かぶるのはよいが水没に耐えることができない点には注意したい。加えて、NFCに対応するが、おサイフケータイには対応していない。
ディスプレイと側面フレームの継ぎ目は隠されていない。こだわりやぜいたくさは感じないが、価格以上の質感は備わっている
背面のパネルは樹脂製。ラメの入った凝った塗装が施されている
ヘッドホン端子を搭載する
サウンド効果としてDolby Atmosに対応。独自のXiaomiサウンドも選べる
ボディ下面にUSB Type-CポートとSIMカードスロットを配置する
基本性能に大きな影響を与えるSoCには、メディアテック製の「Dimensity 7025-Ultra」を採用する。メモリーは8GBでストレージは256GB。microSDメモリーカードスロットを備えており、ストレージの増設も可能だ。仮想メモリー機能によって、ストレージを最大8GBまでメモリーとして使用できる。OSは、Android 14をベースにしたシャオミ独自の「Xiaomi Hyper OS」だ。
8GBのメモリーと256GBのストレージを備えている点は魅力だ。特に、扱うデータが大きくなっている近ごろのアプリ事情を考えると、256GBのストレージは重宝しそうだ。
microSDメモリーカードスロットは、SIM2カードスロットと排他利用になる
以下に、いくつかのベンチマークアプリを使用した結果を掲載する。
シングルコアが952、マルチコアは2293となった。国内では有力なミドルレンジスマホで、価格.comにおけるSIMフリー版の最安価格が5万円台前半であるシャープ「AQUOS sense9」の同アプリのスコア(シングルコア992、マルチコア2752)に肉薄する結果だ
総合スコアは466522(CPU:160209、GPU:48788、MEM:126115、UX:131410)。グラフィック性能を示す「GPU」のスコアが5万ポイント以下と振るわなかった。右は「AQUOS sense9」の結果。「GPU」のスコアで大きな差がついた
体感速度に不満はないが、ベンチマークテストの結果を見るとグラフィック性能のスコアが振るわない。グラフィックを駆使するタイプのゲームを数種類試したが、画質設定を抑えたほうが動作はスムーズだった。ゲームを快適に楽しみたい場合は、「POCO」シリーズの「POCO X7 Pro」などもう少し上位の製品を選ぶほうがよいだろう。
「POCO」シリーズは、搭載する機能にメリハリをつけて高いコスパを実現するのが大きな特徴だ。メリハリをつける部分は機種ごとに微妙に異なるが、カメラをあまり重視しないことは同シリーズ全体の傾向ではある。
「POCO M7 Pro 5G」のメインカメラは、約5000万画素の広角カメラに、背景ぼけやオートフォーカスの精度向上などに活用する約200万画素の深度センサーを組み合わせている。深度センサーは映像を記録しないので、実質的にはシングルカメラだ。
背面に備わる2個のカメラ。そのうちひとつは背景ぼけやオートフォーカスなどに使う深度センサーで、映像の記録には使用しない
以下に、静止画の作例を掲載する。いずれも初期設定のままシャッターボタンを押すだけのカメラ任せで撮影を行っている。
渋谷の高層ビル群を撮影。明暗差が大きくカメラに負担のかかる構図だ。夜空全般にノイズがあってざらついた印象。しかし、ビルの解像感は全般的に維持されており、細部までよく写っている
明るい日中の画質は十分。画質の誇張も抑えられている
暗い店内で料理を撮影。手ブレやノイズは現れておらず、手軽に鮮明な写真が撮れる
搭載するカメラが実質的にひとつだけで、超広角カメラが搭載されていない点に注意だ。しかし、唯一のカメラである広角カメラは、3万円前後の製品としては、画質もレスポンスも悪くない。カメラを目的に選ぶ製品ではないが、カメラで大きく落胆することはなさそうだ。
電源周りを見てみよう。搭載するバッテリーは5110mAhの容量がある。このバッテリーは1600回の充放電を繰り返しても容量の80%以上が確保されることが、民間団体「TUV SUD(テュフ・ズード)」の認証で確認されている。スマートフォンの買い替え時をバッテリーの寿命で判断しているなら、本機はより長く使える経済的な製品となるだろう。
なお、45Wの急速充電に対応する充電器が同梱する。
「POCO M7 Pro 5G」が安価な理由のひとつは、日本市場向けの最適化を抑えて世界中で発売されているグローバルモデルをベースにしていることだ。
「日本市場向けの最適化がされていない」といっても、設定画面やメニューなどはちゃんと日本語化されているし、日本語のアプリやSNSは問題なく使える。問題となるのは、おサイフケータイに対応していない点と、本機の通信性能がNTTドコモの5Gネットワークをフルに使えないことの2点だ。
おサイフケータイに対応していない本機は、「モバイルSuica」や「モバイルPASMO」「モバイルICOCA」といった交通系ICカードや、「iD」や「Edy」「QUICPay」などタッチ決済が利用できない。
NTTドコモの5Gは少し説明が必要だろう。NTTドコモの5Gは、主にn78とn79の2種類の周波数帯を組み合わせて5Gの高速通信エリアを構築している。しかし、本機はそのうちn79に対応しておらず、理屈上はNTTドコモの5Gエリアの半分を利用できない。もちろん5G圏外でも4Gで補えるが、やはり5Gのほうが快適だ。なお、NTTドコモ以外の5Gではそうした制約はない。
高コスパなスマートフォンは、何を代償に低価格を実現しているかを見抜くことが重要だ。「POCO M7 Pro 5G」は、超広角カメラがないことと、水没には耐えられないこと、おサイフケータイに対応していないことなど、日本で重視される機能を見送り、量産効果の高いグローバルモデルのまま発売していることが高コスパの理由となる。
3万円前後だがディスプレイは高性能でサウンドも良好、1600回の充放電に対応するバッテリーや、8GBのメモリー、256GBのストレージなど、長く使い続けやすい条件が揃っている。ディスプレイやサウンド機能では妥協したくない、そんな人に選んでほしい1台だ。