サムスン「Galaxy Z Flip7」は、シリーズ7世代目となる縦折り型の折りたたみスマートフォン。
大手キャリアを含めて2025年8月1日から発売が開始されています。SIMフリーモデルのSamsungオンラインショップの価格は256GBモデルが164,800円、512GBモデルが182,900円。今回は、そのSIMフリーモデルの256GBモデルを使ってレビューします。
※本記事中の価格は税込で統一しています。
カバーディスプレイが大きくなったサムスン「Galaxy Z Flip6」。256GBモデルはNTTドコモ版が174,790円、KDDI版が165,000円、ソフトバンク版が164,880円で、2025年8月1日より販売中
「Galaxy Z Flip7」を手にしてまず感じたのは、縦折り型スマホとしての完成度の高さです。
前モデルの「Galaxy Z Flip6」でも、隙間なくぴたっと閉じるヒンジや、それでいてディスプレイの折り目が付きづらい構造、すっきりとムダをそぎ落としつつ強度が担保されたボディに、「これは、縦折り型の完成形に近いのでは?」と思ったのですが、今回さらに進化した本機を見て、「いよいよ最終形態か?」と思ってしまいました。7世代の積み重ねは、伊達ではないようです。
OSはAndroid 16ベースのOne UI 8.0を搭載。メインディスプレイは、1〜120Hzのリフレッシュレートをサポート。表示色は約1600万色をカバーしています
カバーディスプレイの表面には「Corning Gorilla Glass Victus 2」を使用
左からミント、コーラルレッド、ブルーシャドウ、ジェットブラック。大手キャリアや家電量販店では、取扱いカラーがジェットブラック、ブルーシャドウの2色、またはコーラルレッドを加えた3色です。サムスンオンラインショップでは、限定色のミントを選べます
側面には軽くて丈夫な、艶消しのアーマーアルミニウムフレームを採用
右サイドには指紋認証センサーを兼ねた電源ボタンと音量キーを配置。電源ボタンは前モデルよりもスリムになっています
左サイドにはSIMスロットがあります。nanoSIMのほか、eSIMにも対応。5Gはミリ波もサポートしています
上部と底部にはステレオスピーカーが搭載されていて、スリムな筐体に反してなかなか迫力のあるサウンドです
サムスンのロゴが配置されたヒンジ部分はよりフラットに。「おサイフケータイ」にも対応しています
筆者が“最終形態”と感じた最大の理由は、全画面となったカバーディスプレイ(サブディスプレイ)にあります。前モデルはカメラ部分を避けた約3.4インチの変形ディスプレイでしたが、本機は、カメラ周囲も含めて全面にSuper AMOLED(有機EL)ディスプレイを採用。ベゼル幅も1.25mmと細く、ディスプレイサイズは約4.1インチ(1048×948)まで拡大しています。これは初期のスマホとほぼ同じ大きさ。実際に2010年に発売された初代の「Galaxy S」のディスプレイは、約4.0インチ(480×800)でした。
右は初代「Galaxy S」。縦折り型スマホのカバーディスプレイは、初期のスマホの画面サイズを超えました
ディスプレイサイズが大きくなっただけでなく、カバー画面のカスタマイズ性も向上しています。壁紙の色やアイコン、時計の位置、ウィジェットなど、表示する内容をより細かく設定できるようになりました。ひんぱんに目にするカバーディスプレイを自分好みに飾ることは、縦折り型のスマホならではの楽しみなので、これはうれしいアップデートです。
カバー画面ごとにいろいろなカスタムが可能。種類も豊富に選べるようになっています
見た目に楽しいだけでなく、ディスプレイが大きくなったことで閉じたままできることが増え、実用度も増しています。表示可能なウィジェットの種類が増えているほか、サムスン提供の専用アプリ「Good Lock」を使えば、SNSからQRコード決済、ゲームまで、好きなアプリをカバー画面で起動できます。アプリによっては全画面表示にすると、操作ボタンなどがカメラと重なって使いにくくなるケースもありますが、その場合も表示範囲を切り替えられるようになっています。
さらに本機は、メインディスプレイだけでなく、カバーディスプレイもピーク輝度2600nit、120Hzのリフレッシュレートに対応。加えて、明るさやまぶしさを 抑える「ビジョンブースター」も適用されています。アプリが使いやすい大きさだけでなく、見やすさの面でも実用的なディスプレイと言えます。
「Good Lock」ではアプリの表示範囲を縦長、横長、全画面に切り替えられます
前モデルから大幅に強化されたAI機能も、カバーディスプレイで簡単に利用できます。天気予報やスケジュールなど、AIによってパーソナライズされた情報が見られる「Galaxy AI」の機能「Now brief」のウィジェットを利用できるほか、メールやLINEの通知から返信を生成して、サクっと返信するといったことが、メインディスプレイを開くことなく行えます。
電源ボタンを長押しすると、カバーディスプレイで「Gemini」が起動。友達と話すように音声で質問や相談ができる「Gemini Live」では、カメラで映した情報についてたずねることもできます。たとえば2着の服をディスプレイに映して、「どっちがいいと思う?」のように聞けば、応えてくれるというもの。そんなときに、スタンドなしでもカメラを固定できるのは、折りたたみスマホのメリットです。「Gemini Live」はいろいろなスマホで使えますが、音声で会話するだけなら画面を開く必要もないので、閉じた状態で使えるのはやはり手軽で便利です。
カバーディスプレイ&カメラを使用して、映ったものについて「Gemini」と会話ができます
今回大きくなったのはカバーディスプレイだけではありません。実はメインディスプレイにも、前モデルより約0.2インチ大きい、約6.9インチ、フルHD+(2520×1080)の「Dynamic AMOLED 2X(有機EL)」が採用されています。アスペクト比が21:9と、22:9だった前モデルよりもやや幅広になったおかげで、写真や電子コミックを少し大きく表示できます。
本体サイズは折りたたんだ状態で、約75.2(幅)×85.5(高さ)×13.7(厚さ)mm。開いた状態では約75.2(幅)×166.7(高さ)×6.5(厚さ)mmで、重量は約188g。縦、横のサイズが少し大きくなるいっぽうで、厚さは前モデルよりもスリムになっています。開いたときの厚さは前モデル比マイナス0.4mmですが、閉じたときはマイナス1.2mm。ピタッと閉じるのは前モデルも同じでしたが、本機は、より隙間なく閉じられる新型のアーマーアルミニウムヒンジを採用した影響を感じます。
スリムになってかつ、ディスプレイの折り目がより目立たなくなっています
このほかの進化点としては、「Galaxy Z Flip」シリーズ最大容量となる、容量4300mAhのバッテリーを採用。「Galaxy Z Flip6」は4000mAhだったので、300mAhの増量ですが、後述するSoCの変更も組み合わさり、メーカーが公表する動画の連続再生時間は、最長約23時間から約31時間へと大きく延びました。
筆者が実際に使用した感覚では、前モデルと比べてそこまでの違いは体感できませんでしたが、少なくとも余裕で1日は使える安心感があります。毎日の充電は必要ですが、45Wの急速充電に加えて15Wの急速ワイヤレス充電にも対応しているので、対応の充電器を使用すればより速く終わらせることができます。
カメラはメインの広角カメラが約5000万画素(F1.8)、超広角カメラが約1200万画素(F2.2)で、前モデルから変わっていません。メインカメラでは、光学相当2倍のズーム撮影が可能で、10倍のデジタルズームに対応する点も同じです。同時発売の横折り型モデル「Galaxy Z Fold7」が約2億画素のイメージセンサーを搭載するなど、大幅にカメラ性能を向上させたのと比べると少し寂しい気もしますが、大きなカメラはカバーディスプレイの表示領域に悪影響が出ますし、このカメラサイズがベストバランスとも思えます。
カバーディスプレイが大きく見やすくなって、メインカメラによるセルフィーが撮りやすくなりました
緑や空のグラデーションがしっかりと描写されていて、細部のディテールまでくっきり
光学相当2倍ズームで撮影。ズームしても緑や空のグラデーション、精細さは変わりません
10倍まで拡大するとさすがに粗さやコントラストの低下を感じますが、十分見られる写真になっています
背景のボケが大きくなるポートレートモードを使いました。毛など細かいところは一部背景に溶けてしまっていますが、雰囲気のある写真が撮れます
焦点を絞った雰囲気があって美味しそうに見える写真が撮れます。色の再現度も高いです
明るめの夜景。シャッター速度は1/50秒で手持ちでもきれいな夜景撮影が行えました。白飛びを抑えた、締まった絵が撮れます
コントラストの強い夕方の写真ですが、緑のグラデーションもきれいに出ていて、歪みも抑えられています
約1000万画素(F2.2)のフロントカメラも含めて、カメラの基本スペック自体は前モデルと同じですが、レンズの周囲が光って今の撮影モードや使用カメラがわかる、ユニークなギミックを採用。AIを用いた撮影・編集機能も強化されています。被写体に応じて最適な設定で撮影ができるほか、編集機能では顔写真からイラストや3Dアニメなどを生成する「ポートレートスタジオ」が、人の顔だけでなくペットの顔にも対応しました。
撮影の操作に応じてカメラの周囲がリング状に光ります。見るべきカメラを示すほか、動画撮影時にはオレンジ色でモードがわかる仕組みです
人だけでなくペットの顔からも3Dアニメや油絵などを生成できるようになりました
ここまで、カバーディスプレイを中心に「Galaxy Z Flip7」が縦折り型スマホの“最終形態”たる、進化点を紹介してきたのですが、少し気になるところもあります。それがSoCの変更です。前モデルまでは定番のクアルコム製SoCが搭載されていました。しかし、今回は自社開発の「Exynos 2500」が採用されています。「Galaxy Z Fold7」と同じ「Snapdragon 8 Elite for Galaxy」を採用しなかったのは、おそらくコスト面での理由だと思われます。なお、「Galaxy Z Fold7」が前モデルから15,000円以上高い価格設定になっているのに対し、「Galaxy Z Flip7」の価格は5,000円程度の上昇に抑えられています。
では性能はどうなのか。気になるベンチマークテストの結果を、前モデル「Galaxy Z Flip6」と比較しました。
「AnTuTu Benchmark(V10)」や、グラフィック性能を計測する「3DMark」の「Wild Life Extreme」、マルチプラットフォーム対応の「Geekbench 6」のスコアは、概ね前モデルを上回る結果となりました。いっぽうで、実際の使い方に近いテストと言われる「PCMark Work3.0」は、前モデルを下回る結果に。特に「Wild Life Extreme」や「Geekbench 6 GPU」のようなグラフィック系のベンチマークテストで、よい結果が出ているようで、ゲームでは心強い存在と言えそうです。実際に使用した感想としてもまったくストレスなく、AIもサクサク使えました。
このほか、「Galaxy Z Flip」シリーズでは初めて、「Samsung DeX」に対応したのも本機の注目すべきポイントです。「Samsung DeX」はスマホをテレビやモニターに接続して、PCライクに使えるようにする機能。Bluetoothで接続すれば、キーボード入力やマウス操作もできます。カバーディスプレイで閉じたままウィジェットやアプリ、AIを操作することもできるし、モニターにつなげば、閉じたままPCのようにも使えるというわけです。
ケーブルでつなぐだけで、マルチウィンドウやドラッグ&ドロップなど、PCライクな操作ができます
「Galaxy Z Flip7」は、全面狭額縁のカバーディスプレイに、ピタっと閉じるスリムな筐体、大容量バッテリーなどの採用によって、完成度がさらに高まった印象を受けました。記事中でも述べましたが、「縦折りスマホの最終形態」に進化したと思えるほどの出来栄えです。
これまで、横折り型の「Galaxy Z Fold」シリーズはビジネスユーザー向け、縦折り型の「Galaxy Z Flip」シリーズは女性や若い世代向けというポジションでしたが、「Samsung DeX」への対応や、大きくなったカバーディスプレイで使えるAI機能などを考えると、今回の「Galaxy Z Flip7」はビジネスシーンにも十分対応できる一台と言えます。同時発売の「Galaxy Z Fold7」が劇的にスリムになったので、そちらの話題が目立ちますが、「Galaxy Z Flip7」もしっかりスリムになっていて、かつコンパクト。シャツの胸ポケットにすっぽり収まるサイズ感ながら、IPX8の防水性能、IP4Xの防塵性能がちゃんと担保されている点も安心できます。