ロボット掃除機のレビューを担当していると、最近とにかく感じるのが「機能の進化スピードが速い!」ってことです。
なにせ、昨年2024年のハイエンド機のスペックが1年後に発売されたミドルレンジ機のそれに抜かされる……というのは、もはや「業界あるある」と言えるぐらい。買う側としては「じゃあ、いつ買うのが正解なの?」と悩んでしまうのも当然でしょう。
曲線で構成されたドックが特徴的なロボロック(Roborock)の最新モデル「Qrevo Curv」
ただ、単なるスペック値では表せない機構の革新性や、使ってみないとわかりにくいメンテナンスの工夫などは、やはり高級モデルならでは、という部分が多いのもまた事実。
今回は、機構などを含め、さまざまな“ロボット掃除機のよさ”がぎっしり詰まったロボロックの最新ハイエンド機「Qrevo Curv」を実際に使ってみて感じた優秀さをお伝えします。
冒頭で「スペック値では表せないよさ」と述べましたが、スペックの優秀さも際立つのが、最新ハイエンド機というもの。
「Qrevo Curv」のスペックでまず驚かされたのが、18,500Paという圧倒的な吸引力です。ロボロックの先代ハイエンド機が10,000Paなので、1年も経たないうちに倍近くまでパワーを上げてきたわけです。
最大18,500Paのハイパワーで、大きめのゴミなども確実に吸引!
ちなみに、現在のコードレススティック掃除機の吸引力が大体12,000〜20,000Pa。従来のロボット掃除機までは、パワーが落ちる代わりに人間以上に何度も執拗に床を掃くなどで対応していたんですが、もはやパワーも現在の掃除機並みか、それ以上というところまで来たわけです。そのパワーでロボット掃除機ならではの“ミッチリとした掃除”を行うわけですから、人間の手による掃除機がけより確実にきれいになったのでは? というレベルまで到達したと言えそう。
加えて、部屋のカバー率もすごい。丸いボディではどうしても掃き残しが出がちな部屋の四隅では、伸縮式サイドブラシによって角までしっかりと手を伸ばしてゴミを吸引してくれます。メーカーサイトでは四隅のカバー率100%をうたっていますが、使ってみた体感としては「なるほど、嘘じゃねえな……」という感じでした。
部屋の四隅を検知すると、素早く展開する伸縮式サイドブラシ
丸いボディではどうしても届かなかった、コーナーのホコリも確実に掃き取ります
さらに、水拭きモップも同じく伸縮機能を持っており、壁際0mmまで密着させて拭き上げられます。微細なホコリや花粉は、どうしても室内の壁際や隅に集まってしまいがち。人の手でもそういった隅っこは入念に掃除するわけですから、「四隅のカバー率100%」&「壁際0mmのモップがけ」というのは、ロボット掃除機が人間を超えるうえではマストな性能だと思います。
伸縮モップが家具の下や壁際ギリギリまで攻めるので、掃除後に確認しても拭き残し感はゼロ
実際に使ってみてさらに驚いたのが、抜群の踏破性能です。
従来のロボット掃除機が特に苦手としていたのが、家のあちこちにある段差。ドアの下枠(くつずり)や敷居は、住んでいる人間にはほとんど気にならないものですが、ロボット掃除機にとってはなかなか乗り越えるのがキツい障害でした。すでにロボット掃除機を導入されている人なら、助走をつけて段差にガツンと突進し、強引に乗り越える姿を見たこともあるはず。
対して「Qrevo Curv」は、底部の3輪ホイールをそれぞれ個別にリフトアップすることで、最大で4cm(2層で。1層は最大3cm)を越えられるようになりました。従来機の乗り越え性能が約2cmなので、シンプルに倍の高さです。
従来機だと、何度かガツンと体当たりして越える1cm弱の下枠も、前輪をリフトさせてスルッと越えていきました
正直、今までの「助走をつけて段差にガツン」は、見ているこちらもハラハラしていたので、ボディを持ち上げてヒョイと乗り越える様子はなんとも頼もしいものです。
もうひとつ、これは驚きと言うよりも感心したことなんですが、ペットへの気遣いがすごい。
我が家には15歳になる老猫のリリーがいるんですが、本体カメラがこれを認識すると、掃除中でもメインブラシを停止させつつ、素早くその場から離れることで、驚かせないようにしてくれるんです。リリーさんは掃除機のノイズが苦手なので、ロボット掃除機が近寄ってくると逃げてしまうんですが、これなら問題なし。特に反応する様子もありませんでした。
前を横切る猫を検知すると、すかさずブラシを止めて静音化。その後、スーッと回避してくれました
筆者はそういうことも気にせずにガーッと掃除機をかけてしまうので、リリーさんに嫌われがち。となると、我が家の場合、人間より「Qrevo Curv」のほうが気遣いがある、と言ってもいいでしょう。
ロボロックは先代「S8 MaxV Ultra」からペットフレンドリーを強く打ち出しており、ほかにもペットの居場所を探すなどの機能を持っています。このあたりは他社よりも取り組みが進んでいる部分なので、室内でペットを飼われている家庭なら、選ぶ基準のひとつになるのでは。
たとえば、床に落ちている毛髪やペットの毛を掃き取った場合、メインブラシに毛がからまることがあります。これを放置すると、ブラシの回転が阻害されて掃除の効率が落ちたり、場合によっては故障につながったりすることも。
「Qrevo Curv」のメインブラシは2つに分離した独特な構造で、からまりつつある毛を中央に寄せてスルッと吸い込むように作られています。これにより、なんと毛の除去率も100%!
ブラシに付着した毛は回転しつつ中央に送られて、ブラシが分離したところから吸い込まれていく仕組み
ちなみに、サイドブラシも偏芯した珍しい非対称形状で、遠心力によって毛をからませることなくゴミを掃き集められるとのこと。
加えて、前側のホイールにはブラシを装備。走行時に付着した毛を落としてホイールシャフトへの毛のからみを解消するという工夫も施されています。
このあたりは細かいながらも、よくできているなという印象です。
前部ホイールに付着した毛を払うためのブラシ(手前の黒いパーツ)。ただし、シャフトに毛が付着していることもたまにあるので、効果は万全とは言いがたい……?
充電/ゴミ回収/給水・モップの洗浄/乾燥といった本体のメンテナンスを司る「4Way全自動ドックQ3」も、なかなかに高性能。特に、モップ洗浄は75度というかなりの高温水で行うため、モップに付着した皮脂など、油分の多い汚れもほぼ確実に洗い落としてくれるのが優秀です。
ドックの高さを抑えるためか、水タンク背面にゴミタンクを搭載するというちょっと珍しい配置。従来モデルのドックでは水タンクの下に搭載されていることが多いです
モップを洗浄するドックベースには、モップから落ちたゴミや砂ボコリなどが溜まりやすいため、従来であれば人間が手洗いをしないと悪臭が発生する原因になっていました。
しかし、「4Way全自動ドックQ3」は、ベース内に回転するスクレーパーを備えており、温水を流しつつ、ベース自体を自動で洗浄する機能が付いています。これが地味に便利で、メンテナンスの手間を大きく減らしてくれるんです。
そもそも、ロボット掃除機は掃除の手間を減らすために導入するのであって、そこにメンテナンスの手間がかかるようでは本末転倒。こういった工夫は特に進化していってほしい部分と言えます。
底に溜まった汚れをかき出す回転式スクレーパーを備えたドックベース。人の手でメンテナンスせずとも、汚れはほとんどなく、とても優秀です
「Qrevo Curv」をしばらく使ってみて強く感じたのは、従来のロボット掃除機の不満をうまく解消してきたな、という点です。
隅まで汚れを残さないカバー率の高さをはじめ、段差に対する安心感、地味にストレスのかかるメンテナンスの手間の解消は、すでにロボット掃除機を持っている人が不満に感じやすいポイントばかり。
高級機だけあって、気軽に買い替えるのは難しいですが、買い替えによって不満が解消できるなら一考の価値はあるかも。特に、中位機あたりを使っていて、「ロボット掃除機の便利さは体感しつつ、それでもちょっと不満はあるかな……」と感じている人なら、ドンピシャでハマるんじゃないでしょうか。
専用アプリから設定すれば、「ハロー ロッキー」と呼びかけるだけで操作が可能なのも便利。「ハロー ロッキー、寝室を掃除して」といった命令ができます