低価格ながら、「吸引」+「水拭き」のW清掃で話題となったエントリーモデル「ルンバ エッセンシャルロボット」の発売から約1年。アイロボットジャパン合同会社は、ロボット掃除機「ルンバ」シリーズのラインアップを全面的に一新しました。
2025年4月に発売された、アイロボットの「ルンバ」新ラインアップ
新ラインアップは、
・エントリーモデル「ルンバ」(Roomba)
・ミドルクラス「ルンバ プラス」(Roomba Plus)
・フラグシップモデル「ルンバ マックス」(Roomba Max)
という3つのカテゴリに分かれており、ユーザーの環境や使い方に合わせて選べます。そこで今回は、新「ルンバ」シリーズから選ぶうえで、どの機種がどういった使い方に向いていそうか? という視点を中心に、新ラインアップの各モデルを紹介していきましょう。
……とその前に、今回の新ラインアップにおける最大のトピックとしてお伝えしておきたいのが、全機種の「LiDAR」搭載です。これは、レーザー光を照射することで対象物の形状や距離を計測する技術で、車の自動運転には必須のセンサー、と言えばわかりやすいでしょうか。
ロボット掃除機でも今や、「LiDAR」はマスト装備と言われていますが、定価5万円以下の低価格帯では、搭載モデルがまださほど多くありませんでした。その点、今回発表された中の最安価格モデルにまできちんと備えているのは、なかなかのインパクトと言えそう。
で、この「LiDAR」で何が変わってくるかというと、とにかく清掃効率が大幅にアップしているんです。
本体前面に大きく開いたスリットから「LiDAR」のレーザーを照射し、その反射を計測して室内の詳細なマッピングを行います
たとえば、数年前の旧モデルであれば、家の中をまるごとひとつの範囲として認識し、そのなかをすき間なくジグザグに走行しつつ清掃する……というのが基本でした。障害物などはまず一度体当たりすることで「ここに何かあるみたい。だから避けよう」という判断をしていました。
対して、「LiDAR」が搭載されていると、掃除を始める前に室内の精密なマッピングを作成し、それを元に効率的な清掃ルートが算出できます。加えて、家具などはぶつからないように回避したり、アプリ上のマップから「キッチンと寝室だけ掃除して」といった細やかな指示出しも可能になりました。
エントリーモデル「ルンバ」の3モデル
この「LiDAR」搭載によって最もアップグレード&お得感が出たのは、やはり低価格帯のエントリーモデルということになるでしょう。
スマホアプリから「火曜はキッチン、水曜と金曜は寝室の掃除」といった指示をしておけば、平日の仕事中に勝手に床をピカピカにしてくれるため、普段から忙しく、週末ぐらいしか掃除ができないひとり暮らしの人などは使いやすいはず。
このグレードには、最安の「ルンバ 105 Combo ロボット」(「ルンバ 105」)と、そこにゴミ回収用の全自動ステーションをプラスした「ルンバ 105 Combo ロボット+AutoEmpty充電ステーション」(「ルンバ 105 ステーション付き」)、本体のダストタンクにゴミ圧縮機構を備えた「ルンバ 205 DustCompactor Combo ロボット」(「ルンバ 205」)の3機種がラインアップされています(以下、ルンバ105・ルンバ205)。
「ルンバ 105 Combo ロボット」(左)と「ルンバ 105 Combo ロボット+AutoEmpty充電ステーション」(右)の「ホワイト」
「ルンバ 105 Combo ロボット」(左)と「ルンバ 105 Combo ロボット+AutoEmpty充電ステーション」(右)の「ブラック」
「ルンバ 205 DustCompactor Combo ロボット」の「ホワイト」と「ブラック」
また、従来機(「600」シリーズ)から最大70倍にまでアップした吸引力と、これまで上位モデルだけの機能だった「スマートスクラブ」(前進・後退を繰り返し、モップパッドで人の手のようにゴシゴシと拭く)によるパワフルな水拭きで、清掃における基本性能は一気に向上したと言えそう。
ただ、「スマートスクラブ」は、ていねいな分だけ拭き掃除に時間がかかるので、ワンルーム〜2DKぐらいの間取りで使いやすいです
そして、何より注目なのが、「ルンバ 205」のゴミ圧縮機構です。
同機種には、他社製品と比べても圧倒的に大型のダストタンクを備えており、吸引したゴミはここへ送られます。それと同時にタンク内のフラップが左右に動いてゴミをギュッと圧縮。タンク内のスペースを空けることで、なんと最大60日までゴミ捨てが不要になりました!
圧縮用フラップが付いた「ルンバ205」の大型ダストタンク(左)。隣にある山盛りのゴミが、ギュッと圧縮されてタンクに溜まります
ひとり暮らしで持ち物や家具が多いと、ロボット掃除機を導入するにしても、全自動ステーションを設置する場所は取りにくいケースは考えられます。その場合、全自動ステーションレスかつゴミ捨ての手間も減らせる「ルンバ 205」は、導入メリットが大きそうです。
ミドルクラス「ルンバ プラス」のラインアップ
ミドルクラスのラインアップは、「ルンバ プラス 405 Combo」(以下、「ルンバ 405」)と「ルンバ プラス 505 Combo」(以下、「ルンバ 505」)の2機種。こちらは、水拭き機能を強化するため、ルンバ初となる回転式のデュアルモップを搭載しています。
さらに、両機種ともにゴミ回収とモップの洗浄/乾燥を自動化する「AutoWash充電ステーション」を備えており、日々の掃除はお任せしつつ、メンテナンスの手間もグッと削減できるのがポイントです。
「ルンバ プラス 405 Combo ロボット+AutoWash充電ステーション」
「ルンバ プラス 505 Combo ロボット+AutoWash充電ステーション」
回転式モップは、通常のモップパッド「スマートスクラブ」よりも拭き上げがスピーディーなので、4〜5人以上世帯の間取りでも割とサクッと清掃が終わります。特に生活する人が多くなると床の汚れも比例して増えるため、毎日スッキリと拭き掃除したい…・・・! という家庭には、このグレードが合いそう。
コスパの面でも、本シリーズはステーションを含めて機能的に“全部入り”と呼ばれるタイプなだけに、10万円前後の価格はお値ごろといった印象。実際に運用するうえでの満足感はかなり高いと思われます。
「ルンバ」史上初となる回転式モップ。水拭きの効率が大幅にアップしました
「ルンバ405」と「ルンバ505」には約3万円の価格差があり、性能的にも細かな違いがいくつかあります。
わかりやすいところで言えば、「ルンバ505」に初めて搭載された伸縮式回転式モップの「PerfectEdge」機能。こちらは水拭き時、壁際に来たときに回転式モップが伸びることで、部屋の隅々まで拭き漏れなく清掃できるというものです。
また、カメラで常に進行方向を監視し、床に強い汚れを発見した場合は自動的にモードを切り替えてよりパワフルな清掃を行う「Dirt Detect」も「ルンバ505」の独自機能です。
伸縮式モップが壁際ギリギリまで届く「PerfectEdge」機能で、室内の端に溜まった汚れも拭き残しません
ほかにもいくつかの差はありますが、「ルンバ 405」も十分に清掃能力は高いため、後はこれらの機能に3万円を払うかどうか? が選択のポイントでしょう。どちらを選んだとしても、まず満足できるはずです。
最後に、新しいフラグシップモデルとして発表された「ルンバ マックス 705 Vac ロボット+AutoEmpty 充電ステーション」(以下、「ルンバ 705」)ですが……、こちらは少し特殊というか、吸引清掃に特化したハイパワータイプとしてラインアップされています。
つまり水拭き機能は付いていないのですが、その代わりに吸引力はなんと従来機の180倍! 「ルンバ」史上最強のパワーと、床への密着力が高いゴム製「デュアルアクションブラシ」の組み合わせによって、床の吸引清掃で圧倒的な効果を発揮します。
人気の「ルンバ 600」シリーズから吸引力が180倍にアップした「ルンバ マックス 705 Vac ロボット+AutoEmpty 充電ステーション」
当然ながら、水拭きもしてほしい人には不向きなんですが、逆に言えば、水拭きできない畳やカーペットの部屋が多い家庭の場合は、これが最適解になるかも。
カーペットを認識すると自動で吸引力をパワーアップする機能も付いているので、カーペット深くに潜り込んだ髪の毛やペットの毛も強力に吸い取ってくれるのも頼もしいところ。また、ゴムブラシはこういった毛ゴミがからまりにくいという特性があるため、メンテナンスの手間もかかりにくいです。
カーペットの奥に入り込んだ髪の毛などを確実に吸引するパワフルさは、さすがフラグシップモデルといった感じ
また本機はフラグシップモデルだけあって、センサー類もパワフルです。「ClearView Pro LiDAR」と「PrecisionVision AI テクノロジー」の2つの高性能センサーを搭載しており、前者により室内をより正確にマッピングしつつ、後者により床に落ちているケーブル類やスリッパ、さらにはペットの排泄物もカメラで認識して、スマートに回避してくれます。
もちろん、汚れを検知して入念に清掃する「Dirt Detect」機能も備えているため、ただ任せておくだけで床はスッキリときれいになるはずです。
アイロボット(iRobot)「ルンバ(Roomba)」現行全ラインアップのスペック比較リスト。「ルンバ コンボ 10 Max ロボット+」2モデルは、2024年夏に発売された従来モデル
今回の新ラインアップは、全体的にどのカテゴリもコスパがよくなったという印象が強め。特に、エントリーモデル「ルンバ」にまで「LiDAR」が搭載されたのは、かなりのインパクトと言って間違いありません。
シリーズ全体で吸引力のアップを果たしたことで、清掃の基本能力も向上しているため、ぶっちゃけ、どのモデルでも買って不満が出ることはあまりなさそうです。
であれば、後は自分の生活スタイルや室内環境にマッチしたものを選ぶというのが、最大のポイント。水拭きが必要か? 充電ステーションを置く場所はあるか? そのサイズ感は? 掃除の頻度はどれぐらいか? などを確認しておけば、新しい“マイルンバ”でQOLアップは確実です。