実践主義! 高橋庄太郎の山道具コレクト
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ダウンウェアの新潮流! 丈の長さが特徴的な防寒具、モンベル「スペリオダウン」シリーズ

これからの季節、街中以上にアウトドアで欠かせないのが防寒着である。近年はさまざまな素材のものが開発されており、定番品としては起毛素材のフリースが挙げられるが、重量のわりに軽くて暖かいのは、何と言っても中綿入りのインサレーションだ。最近は化学繊維の中綿にもすぐれた素材が開発されているとはいえ、やはりグースなどの羽毛を使ったダウンウェアが主流といえるだろう。

使いやすく、暖かさも申し分なしのダウンウェア

毎年のように多くのアウトドアメーカーがダウンウェアの新製品をリリースしている。その中でも、上半身用の長袖ジャケットやベストは寒冷期の休憩時には手放せない存在で、非常にバリエーションが多い。また、最近はロングパンツもポピュラーになりつつあり、寒さに弱い方、または山小屋やテントで凍えそうな山中の夜を過ごす人には非常に心強い一着になっている。

そして、近年になって目立ってきたのが「丈の長さが少し変わった」袖や裾をもつ製品だ。これは、ダウン製品の新潮流と言ってよいかもしれない。今回テストするのは、モンベル「スペリオダウンコンバーチブルジャケット」と「スペリオダウンニーロングパンツ」という上半身用、下半身用の2点である。

左が「スペリオダウンコンバーチブルジャケット」、右が「スペリオダウンニーロングパンツ」。どちらも「スペリオダウン」シリーズで、同シリーズにはほかにベストやラウンドネックジャケット、通常の長さのロングパンツなども用意されている

スペリオダウンコンバーチブルジャケット(以下、コンバーチブルJK)の特徴は、袖の途中にジッパーがつけられていて、長袖としても半袖としても使えるということ。街着のダウンジャケットにはときどき見られる仕様だが、アウトドア用にはめずらしいタイプである。

コンバーチブルJKの腕の部分を外した状態。こうなると完全にジップアップ式Tシャツのようなルックスになる

コンバーチブルJKの腕の部分を外した状態。こうなると完全にジップアップ式Tシャツのようなルックスになる

二の腕をぐるりと巻くようにジッパーがつけられ、簡単に腕の部分を切り離すことができる。ジッパーを覆い隠すようにフラップもつけられ、寒気が入りにくい構造になっている

一般的なジャケットのように、ポケットは左右の腰元にひとつずつ。そして、それらのポケットのちょうど裏に当たる部分にも内ポケットがつけられている。ファスナーなどで閉められるわけではないので、入れたものを完全に保管できるわけではないが、その代わりに深さがあるので、思った以上にモノが出てきにくい

デザイン上のユニークさに目をとらわれがちだが、コンバーチブルJKの中綿に使われているダウンは、高質な800フィルパワーだ。「フィルパワー」とはダウンの品質を表す単位で、ごく簡単に説明すると「一定の重量をかけて圧縮したダウンが、どれくらいのかさまで復元するか」ということを基に算出した数値である。少量でもふっくらとふくらみ、暖気をたっぷりとため込めるものほど高品質というわけだ。アウトドア用として使われるものの多くは650〜700フィルパワー以上で、800は十分に高品質と言ってよい。これ以上に高質の1,000フィルパワーのダウン製品などもモンベルは取り扱っているが、希少ゆえに高価になってしまうため、これくらいが価格と機能性とのバランスがほどよく取れているのである

いっぽう、スペリオダウンニーロングパンツ(以下、ニーロングPT)は、ジッパーで長さを変えられるわけではない。だが、ニーロング、つまり「膝下」という絶妙な長さの丈にデザインされた製品だ。

縦横のキルティングパターンのコンバーチブルJKと異なり、ニーロングPTはステッチをななめにとった格子状のパターン。こちらにも800フィルパワーの高質ダウンが使われている

着用したうえで、上から見下ろしたカット。ブルーのニーロングPTとネイビーのソックスの間に見えるのは黒いタイツだ。ふくらはぎ付近はパンツで覆われず、露出していることがわかる

保温力だけを考えれば、足首までの丈があるロングパンツのほうが、もちろん暖かい。しかし、ダウン製品の表面素材は軽量化や保温力アップのために超薄手のものが使われがちで、屋外では裾を引っかけて破いてしまうことはめずらしくない。特にその恐れは上半身よりも下半身、さらに膝下に顕著だ。地面に近い場所にある枝や岩で擦ってしまうことが多いからである。これに対して、丈を膝下までで抑えたニーロングPTは引っかかる恐れがいくぶん少なくなり、扱いやすい。今回は一般的なブーツと合わせたが、スキーブーツや長靴などとともに身につけても裾がもたれることがなく、これも膝下タイプのメリットといえるだろう。

ちなみに、ニーロングPTの生地に使われている繊維は20デニールのナイロン。それに対し、コンバーチブルJKは10デニールのナイロンである。要するにニーロングPTのほうが厚くて丈夫な生地を使っているのだ。これはやはりパンツのほうが傷みやすいのに対し、ジャケットは軽くてやわらかな薄手の生地のほうが体を動かしやすいからだろう。

スペリオダウンシリーズに使われている生地には超耐久撥水加工が施されており、水が多少かかっても、すぐに弾き飛ばしてくれるのがありがたい。ただし、あくまでも撥水性が高いだけであり、生地の縫い目からは少しずつ浸水していくので、過信はしないほうがよい。また、この生地には帯電防止加工もプラスされており、ピリッという不快な感覚は生じない

腕が外せるとはいえ、長袖タイプと同様のサイズ感があり、10デニールの生地を使っているコンバーチブルJK。膝下までの長さしかなく、20デニールの生地を用いているニーロングパンツ。それらを付属のスタッフバッグに入れると以下のような大きさになる。

パープルがコンバーチブルJKで、ブルーがニーロングPT。カタログ的なスペックでは収納サイズはどちらも10(直径)×15(長さ)cmとなっているが、実際はニーロングパンツのほうがひと回り小さい

ところで、アウトドア用途のダウンウェアは、アウターとしても、インナーとしても使用される。正確に言えば、アウターとしての用途がメインのものと、インナーとしての用途がメインのものに大別されるということだ。スペリオダウンシリーズはアウターとしても有用だが、どれもシンプルな形状にデザインされており、その意味ではインナー用途を強く意識しているようだ。すっきりとした形であるほどウェア同士の引っかかりや摩擦が少なくなり、その上に防水性のジャケットなどを重ねて着やすいからである。そのような考え方は、ウェアのディテールにも表れている。

コンバーチブルJKの袖。ベルクロなどで締められるわけではなく、たんにゴムで伸縮させているだけだ。しかし、このシンプルさゆえに、上にハードシェルなどの防水性ジャケットを合わせても、袖口がもたれずに済む

コンバーチブルJKの脇からアームホールの部分を内側から見た様子。縫製は最低限に済ませ、重ね着して圧迫された際の脇下のゴロつきを抑えている

ニーロングPTのウエスト部分もゴムで伸縮させただけの簡素な造り。この上にほかのパンツを重ねるシチュエーションはあまりないが、少なくても上半身のジャケット類は重なってくるので、やはりこのようにシンプルなほうが着心地はいい。腰を一周する細いヒモが付属しているのは、ずり下がり防止のためだ

ニーロングPTの裾の部分。折り返してみるとよくわかるが、単純に縫い合わせているだけである。ほかのダウンパンツの中には裾をベルクロで絞ったり、ゴムで伸縮させていたりするものもあるが、このようにシンプルなもののほうが違和感なく使える

雪が降る低温でも暑くなるほどの保温力

今回テストに使った山は海に近いため、山麓が晴れていても頂上付近が雨や雪であることは意外と多い。この時はかなり低温で、ほぼ無風で雪はまったくなかった山麓から標高を上げると、強い風に乗って小雪が降ってきた。

山頂は休憩するのもイヤになるような強風で、小雪ながらも吹雪の様相。行動着の上にコンバーチブルJKを着用して体を温めた

風が弱い場所に移動すると雪はもう吹き飛ばず、表面生地に付着していく。このような状況の場合は、この上にさらに防水性のジャケットを着ると保温力が圧倒的に向上する

山頂からはコンバーチブルJKを着たままで下山を開始した。しかし、風の勢いが低下するにつれて、体感温度はどんどん上昇していく。そこで、長袖の状態にしておいたコンバーチブルJKを半袖にしてみることにした。

このウェアの袖には、セミオートジッパーが使われている。ジッパータブをジッパーが開くほうの向きに倒すと、ほんのわずかな力でどんどん開いていく。なかなか便利な工夫だ

ジッパーを半分だけ空けている様子。内部への通気性が高まり、ウェア内部の過度な温度上昇を抑えられるので、この状態のまま着用するという手もある。中途半端にも見えるが、ベンチレーターの一種と考えれば機能的だ

完全に半袖にすると、このような姿に。これで体感温度は一気に下がり、ほどよい温度感になった。半袖のダウンは見慣れないものだが、思ったよりも見た目も悪くない

半袖にした途端、ウェア内部に溜まっていた熱と湿気が逃げていくのがわかる。袖が手首まであるのか、二の腕までしかないのかでは、大きな違いだ。予想以上に変わる暖かさには驚いてしまう。別の言い方をすれば、袖の有無を変えるだけで幅広い温度帯に対応できるのである。その後、さらに標高を下げると半袖でも暑いくらいになり、最後には脱いでしまい、付属のスタッフバッグに押し込んで下山を完了した。

山行を終えて

ダウン製品の出番はいまや寒冷期に限らず、北アルプスのような高山では夏でも多用される。800フィルパワーのダウンをたっぷりと使ったスペリオダウンシリーズは、夏季に使うことを考えると、保温力が高すぎるように思えるほど暖かい。だが、今回のコンバーチブルJKであれば、寒い時期はいうまでもなく、半袖の状態にすれば夏にも使える。同様にニーロングパンツも夏の高山では裾をまくり、ショート丈で着用すればよさそうだ。反対に膝下の丈では寒い時期に心配という人は、ロングソックスを合わせてもよいだろう。どちらも汎用性が高いダウンウェアなのであった。

注意したいのは、着用方法だ。ニーロングPTはともかく、コンバーチブルJKは、どちらかといえばインナー向け。今回は撮影時に目立たせるため、主にアウターとして着用していたが、このように着ているといずれ傷みが生じるかもしれない。バックパックを背負っている場合は、薄手の表面生地が背中と肩で擦れ、生地を縫っている細いステッチが切れる可能性も出てくるからだ。アウターとして利用する場合は、過度に摩擦を起こさないように気をつけたほうが、長く愛用できる。

ソフトな感覚で軽量なダウンウェアは山だけでなく、日常生活でも着用できるのがいい。気温に合わせて街中でコンバーチブルJKを長袖、もしくは半袖で着用したり、自宅ではニーロングPTでしのいだりというのも悪くない。薄手の生地は汚れが目立ちやすいものだが、スペリオダウンシリーズのダウンウェアは専用洗剤などで自宅でも簡単に洗濯できるので安心なのである。

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高橋庄太郎

高橋庄太郎

テント泊での登山を中心に1年の半分近くは野外で過ごす、山岳/アウトドアライター。好きな山域は北アルプス。「山道具 選び方、使い方」など、著書も多数。

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