ここ数年、日本市場においてザ・ノース・フェイスのアパレルが絶好調なのをご存じだろうか。登山やキャンプ、トレイルランニング、音楽フェスといったアウトドア・アクティビティはもちろんのこと、カジュアルシーンでも良好なセールスを記録している。そんな“アウトドアブランドの巨人”が、2018年SSシーズン向けに最新機能搭載のオンロード向けランニングシューズをリリース。試走したのでレポートしたい。
同社の新作ランニングシューズ「ウルトラレプルージョンスムースII」。公式オンラインストアの価格は、13,824円(税込)
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ザ・ノース・フェイスは、アウトドアアパレルにおいて確固たるポジショニングを築くことに成功しているトップブランド。本国アメリカだけでなく、日本やヨーロッパでも高いシェアをキープしている。そんなブランドがここ数シーズン特に注力しているのが、フットウェア。シューズに参入したのはそれほど昔のことではないが、現在では他ブランドと比較しても遜色のないモノ作りを行っており、その中でもランニングシューズの評価がシーズンごとに高まっている。
筆者はこれまで「ウルトラスムース」や「ウルトラニュートラル」といったいくつかの同社製ランニングシューズを履いて走ってきたが、いずれのモデルもソールユニットに適度な硬さがあり、効率よく路面に脚力を伝達するタイプのシューズ。個人的にもこれらのセッティングは好みであった。
タンとライニングが連結しており、シューズ内での足のズレを抑えた「ウルトラニュートラル」。公式オンラインストアの価格は、16,200円(税込)
いっぽうで、昨今はフワフワした感覚のフォームをミッドソールに使用したシューズが好まれる傾向がある。2017年秋に登場した「ウルトラベロシティ」は、2層構造のEVA素材と、高反発でやわらかい新素材「エクストラフォーム」を組み合わせることで、着地時の安定感と衝撃吸収性を両立。ビギナーランナーも安心してトライできるスペックとなっており、そのスタイリッシュなデザインも追い風となって、セールスも良好だ。
シームレスメッシュアッパーですぐれたフィット感を実現した「ウルトラベロシティ」。公式オンラインストアの価格は、12,744円(税込)
そして2018年、新たなランニングシューズがリリースされた。それが「ウルトラレプルージョンスムースII」である。以下で試走レビューをお届けしよう。
「ウルトラレプルージョンスムースII」の「ターキッシュシー×ホワイト」。カラーバリエーションは全4色で展開
「ウルトラレプルージョンスムースII」の最大の特徴は、衝撃吸収性よりも反発性を重視した新素材「ファストフォーム」が初めて採用された点だ。その感触だが、蹴り出しの際に強く踏み込むとクイックに反応し、自然と走行ペースが上がる気がした。
また、インソールにはオーソライト社のソフトなタイプを使用しているので、柔軟な走り心地を想定していたが、走り始めると“懐かしい走り心地”を感じられた。そう、硬めのミッドソールを採用する「ウルトラスムース」や「ウルトラニュートラル」でおなじみの、効率よく路面に脚力を伝達するタイプの走行感を感じられたのだ。
結果として、「ウルトラレプルージョンスムースII」では、同社の従来のランニングシューズにはないレベルの反発性能を体感することができた。
衝撃吸収性よりも反発性を重視した新素材「ファストフォーム」を前足部とかかと部分に内蔵し、抜群のエナジーリターンをランナーに提供する
アウトソールは、ビブラム社製のラバーコンパウンドを採用しており、高いグリップ性と耐久性を誇る。接地面積の多い、刻みの浅いパターンなので、コンクリートやアスファルトといったオンロードで最高のグリップ性を発揮する
日本人向けに製作されたアッパーは、足を包み込むような感覚で、長時間のランでも快適な履き心地をキープしてくれる。デザインがスタイリッシュな点もうれしい
この抜群の反発性のおかげで、日課の6kmランを終えるころには5分15秒/kmほどの速めのペースとなっていた。このように、「ウルトラレプルージョンスムースII」のポテンシャルは、ゆっくり走っているときよりも、ある程度スピードを上げてからのほうが実感することができることがわかった。従って、6分/km程度で走る場合は、前述の「ウルトラベロシティ」のほうが向くだろう。「ウルトラレプルージョンスムースII」は、どちらかいうと体重が軽めで、5分20秒/kmあたりの速いペースで走るランナーに最適な1足であり、そういった状況のトレーニングやレースにおいては必ずや本領を発揮してくれるはずだ。そして、「ウルトラベロシティ」とともに、ザ・ノース・フェイスがフットウェア分野においても着実に進化していることを確認させてくれるプロダクトでもあった。
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