専門家・南井正弘のランニンググッズ連載
日々の練習に85%のエネルギーリターンを提供

走って実感! “世界最速級シューズ”からカーボンプレートを外したらこうなった

「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」の走り心地をレース時だけでなく、毎日のトレーニングでも味わいたい――。

エリウド・キプチョゲ(※1)やシャーレーン・フラナガン(※2)といったエリートランナーたちのそんな要望に応えるべく開発されたのが、「ナイキ ズーム ペガサス ターボ」だ。正式リリースは2018年8月2日だが、ひと足先に実際に履いて走り、その実力を検証してみた。

8月2日発売の「ナイキ ズーム ペガサス ターボ」。メーカー希望価格は、19,440円(税込)

8月2日発売の「ナイキ ズーム ペガサス ターボ」。メーカー希望小売価格は、19,440円(税込)

ランニング業界を席巻するモデルの遺伝子を継承

2017年のデビュー以来、ランニング業界を席巻しているのが、「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ4%」と、その系列モデルとなる「ナイキ ズーム フライ」、「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ エリート」である。

「レース用シューズは、路面に効率よく脚力を伝達するために薄底であるべし!」という、これまでの常識を覆す厚底のミッドソールを採用し、その内部に「カーボンファイバープレート」(「ナイキ ズーム フライ」は「カーボンナイロンプレート」)を配することで、跳ねるような比類なき推進力を確保。2018年3月に開催された「東京マラソン2018」で設楽悠太選手が2時間6分11秒でフルマラソン日本記録を16年ぶりに更新した際にも、「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ4%」を着用していたように、世界のメジャーなマラソン大会の表彰台に上がった選手の75%が、この系列のシューズを履いていたという驚くべき状況となっている。

このように機能性の高さを世界中に見せつけた「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」の特性を日々のトレーニング向けにアレンジしたのが、今回発表された「ナイキ ズーム ペガサス ターボ」だ。

エネルギーリターン85%の「ナイキ ズームX」を搭載

「ナイキ ズーム ペガサス ターボ」は、エリウド・キプチョゲやシャーレーン・フラナガンらの「日々の練習ではその独特の『跳ね』は必要ではない」という意見を取り入れ、「カーボンファイバープレート」の代わりに、「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」と、「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ エリート」にも採用されていたミッドソール用フォーム材「ナイキ ズームX」を使用している。

この素材は、一般的なフォーム材のエネルギーリターン(※3)が60%程度だったのに対し、85%という驚きの数値でランナーのストライドをサポート。さらに、ナイキのフォーム材で最も軽量で、メンズ28cm の片足が238g、ウィメンズ25cmの片足が195gというライトウェイトを実現している。

ミッドソール上層部に「ナイキ ズームX」を配し、下層部には「ナイキ リアクト」(※4)を用いることで耐久性も追求。このことにより、800km程度の走行に対応するという

実際に履いて走ってみた!

中央部には、シュータンの端から前足部の下まで太めのレーシングストライプが伸びる

中央部には、シュータンの端から前足部の下まで太めのレーシングストライプが伸びる

実際に足を入れてみると、まず感じるのは前足部の幅の広さだ。ゆったりとしており窮屈な感じとは無縁。かといってゆるすぎることもないし、中足部にはシューレースと連動した「フライワイヤーケーブル」を装備しているので、この部分のフィット感は容易にアジャストできる。

「ナイキ ズーム ペガサス ターボ」の足長は長いほうで、さらにミッドソールのかかと部が「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」と同様に流線型に後方へと伸びているので、シューズの外観はかなり大きく感じられる。

走り始めてみると、まず感じるのがそのソフトな足裏感。「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」を履いたときにも感じた、フワフワしつつも足裏を力強く押し返してくるあの感覚だ。そして、着地から中間状態、蹴り上げまでの一連の動きもスムーズ。ただし、「カーボンファイバープレート」は内蔵されていないので、跳ねるような感覚と動きをガイドしてくれるような働きは、このシューズは有していないことがすぐに理解できた。

このシューズが全世界に発表されたメディアプレビューで最初に走り、行きは1.6kmのジョグ、その帰りの1.6kmは全速力で走ってみたが、ゆっくり走ったときと速めのペースで走ったときとでは走り心地がかなり異なった。

ゆっくり走ったときは、ミッドソールの沈み込みが感じられるのに対し、速めのペースで走ったときはミッドソールが反発するリアクションがクイックに感じられた。ランニングシューズは、各モデルにおいて適正ペースや推奨ペースのようなものが提示されることも多い。それでいうと、このシューズは、エリートランナーのアドバイスをもとに開発されているのにもかかわらず、ビギナーランナーが履いてもその機能性を堪能できると思うので、かなり幅広い層のランナーに対応するはずだ。

また、「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」系列のシューズでは、「カーボンファイバープレート」や「カーボンナイロンプレート」の内蔵を意識して転がすように走るコツのようなものを必要としたが、この「ナイキ ズーム ペガサス ターボ」は、「かかと着地」「フラット着地」「フォアフット着地」のいずれにも対応しそうだ。軽量でクセのない走行感なので、中級ランナーまでならレース時にも着用可能だと思う。そして、シームレスの透明メッシュアッパー、ミッドソールまで伸びた大型の「スウッシュ」など、そのルックスもかなりスタイリッシュなので、ギアのデザインにこだわるランナーからの評価も高いはずだ。

アッパーには、シームレスの透明メッシュを採用し、中足部にはシューレースと連動した「フライワイヤーケーブル」を装備。前足部はどちらかというとゆとりのあるフィッティング

【まとめ】推進力よりもソフトな着地感を求めるニュートラル着地のランナーに!

以上のように、「ナイキ ズーム ペガサス ターボ」のランニングシューズとしての完成度は、かなり高いレベルにある。いっぽうで、以下のようなマイナス要素もある。

・「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」や「ナイキ ズーム フライ」で体感した独特の推進力を期待するランナーには向かないこと。
・着地時に足が極端に倒れこむオーバープロネーションの補正機能は採用していないこと。
・価格が19,440円と、2万円近い高額であること。

しかしながら、筆者は「ナイキ ズーム ペガサス ターボ」の履き心地に魅了され、1日おきに履いているほど気に入っている。懐に余裕があり、推進力よりもソフトな着地感を求めるニュートラル着地のランナーにはぜひとも試してほしい1足である。

アウトソールは、スタッドを敷き詰めた最近の「ナイキ エア ズーム ペガサス」シリーズでも定評があるタイプ。このパターンは、オンロードはもちろん、土の上でのグリップも悪くない

※1:エリウド・キプチョゲ……1984年生まれ。ケニア出身。男子マラソンの現オリンピックチャンピオン。10のマラソン大会に出場し、9回優勝。地球上で最強のマラソンランナーと評される人物である。自己ベストは、2016年の「ロンドンマラソン」でマークした2時間3分5秒。これは歴代3位の速さだ。

※2:シャーレーン・フラナガン……1981年生まれ。アメリカ合衆国出身。アテネ、北京、ロンドン、リオ・デ・ジャネイロと4つのオリンピックに出場したメダリスト。2017年の「ニューヨークシティマラソン」では、アメリカ人女性としては初めて優勝した。

※3:エネルギーリターン……反発性のこと。踏み込んだ足が地面から離れるときに素材が元の形に戻ろうと跳ね返って、足にエネルギーを還元させる割合。

※4:ナイキ リアクト……「クッション性」「反発性」「軽量性」「耐久性」の4つを同時に実現した、ナイキ独自の新ミッドソール素材。

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南井正弘

南井正弘

ランニングギアの雑誌・ウェブメディア「Runners Pulse」の編集長。「Running Style」などの他媒体にも寄稿する。「楽しく走る!」をモットーにほぼ毎日走るファンランナー。フルマラソンのベストタイムは3時間52分00秒。

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