オグさんです。
今回は「ボーケイ・SM7」についてお話したいと思います。
ボーケイ・ウェッジとは、米国のゴルフギアメーカーであるアクシネット社の持つブランド「タイトリスト」に属するウェッジのブランドです。
その名のとおり、ボブ・ボーケイさんという人が設計しており、プロからアマまで絶大な信頼と人気を誇っています。
人気の秘密は、高い性能と豊富なバリエーションにあります。ボーケイさんは、ツアープロから一般アマチュアまで、さまざまなゴルファーからの要望をヒアリングし、それに応える高い性能と、細かいニーズに合わせて選べるバリエーションを展開することで、世界中の多くのゴルファーに支持され続けています。
やわらかな曲線で輪郭を形作っています。誰もが構えやすい形状をしていて、デザインやメッキ仕上げで素直にカッコいいと思えるクラブです
「SM7」とはスピンミルドシリーズの7代目という意味。7代も続いているわけですから、それだけ支持され続けている証しです。まさに信頼と実績のブランド!
SM7の特徴は豊富なロフト/バンスのバリエーションに加え、実に6種類もある「グラインド(ソールの形状)」にあります。このソール形状のバリエーションが、ボーケイ・ウェッジの真骨頂とも言え、多くのプロに選ばれる理由でもあるのです。
それぞれのグラインドはソールの削り落とされている場所が異なり、打ち方によってソールの接地の仕方が変わるようになっています。そうすることでさまざまなゴルファーの細かいニーズに応えられるようになっています。
「テクニックがないからアマチュアには関係ない」と思いがちですが、決してそんなことはありませんよ。ウェッジを自分の打ち方に合わせるだけで、ミスの多くを軽減できます。
ウェッジで一番重要なのは、なんといっても「バンス角」です。バンス角とは、シャフトを垂直にしたときにリーディングエッジからソールの張り出した量を示した値です。ウェッジはクラブ長が短いので、ヘッドの入射角がきつくなりがちです。そのため、たとえクリーンにボールをとらえられたとしてもリーディングエッジが先に接地するため、刺さりやすくなってしまいます。その刺さりすぎを防止するのがバンスの主な役目になります。
バンス角は少ないほど刺さりやすくなりますが、反対にギリギリまでエッジを地面に近づけることができるのでプレイヤーは多彩なテクニックを使うことができます。バンス角が大きいほど刺さりづらくダフりのミスに強くなるとも言えますが、テクニックを使うのにじゃまになることがあります。
このバンス角の効き具合を調整するのがグラインド、つまりソールの形状です。ウェッジは、通常の打ち方はもちろん、フェースを開いて打つなどの打ち方を要求されることがあります。どの打ち方をしたときにどれくらいバンスが作用するかを決めているのがソール形状なのです。バンス角のちょうどいい効き具合は、ゴルファーそれぞれで微妙に異なり、打ち方によっても変わってきます。だからボーケイ・ウェッジは、ロフト角、バンス角だけでなくソール形状まで多くのバリエーションを用意しているのです。
通常の打ち方(写真・上)ソール中央で接地)と開いたとき(同・下)では、接地する面が変わります
ターゲットに対してフェースをスクエアに構えると、ソールの中央で接地しますが、開いて構えるとソールのヒール側で接地します。開いたときにバンスの効果がどれくらい欲しいのかでソールの形状が変わってくるため、ソールの形状にはバリエーションが複数用意されるのです。
ではソールのどこがどうなっているとどんな効果があるのかを簡単に説明しましょう。
ソールのヒール側は、主にフェースを開いたときに接地しやすい場所。ここを削ると、開いたときのバンスの効果を軽減させ、ヌケを向上させる効果が出ます
トゥ側を削ると、開いたときに地面にまったく触れなくなり、バンスの効果が軽減されてヌケがよくなります
ソールの後方、トレーリングエッジ側を削ると、接地したときに跳ね返る力を抑える効果が出ます
ソール幅が広いと接地面積が増えるため、芝の上ではもちろんバンカーでも刺さりすぎなくなります
ソール全体が丸いと接地時の抵抗が少ないため、跳ね返りの角度が穏やかになりやすく、オートマチックに打ちやすくなります。反対に、ここがフラットな形状だと面で接地するため、バンスを故意にバンスを跳ねさせたり、砂を飛ばしたりといったテクニックを使えます
ソールとバンスについて、おわかりいただけましたか? この部分はなかなか難しいので、徐々に理解を深めていただければと思います。では、SM7に用意された6つのグラインドを見ていきましょう。
ソールを全面的に残したグラインドで、バンスの効果が得られやすい形状。ヘッドが刺さりづらいのでダフリのミスに強いのも特徴です
ソールの後方側を落とした形状。通常のショット時は適度なバンスの効き具合があります。フェースを開いてもそれがあまり変わらず、適度に効く感じです
トゥ側からソール後方、ヒール側にかけて削り落としてある形状で、通常の打ち方ではバンスの効きは少なめ。開いたときにバンスが効くように設計されています
Mグラインドと形状は似ていますが、通常のショットでも開いたショットでもバンス効果はこちらが上。テクニックの使いやすさとミスへの許容性の両立を狙ったグラインドです
こちらもMグラインドと似ていますがバンスの効果を減らし、シビアなテクニックを生かせるように設計されたモデル。大きく開くとバンスが効くようになっています
ソールの幅が広く、ソール全体が接地するよう設計されています。幅広ソールは刺さりにくく滑りやすいので、ダフリのミスに強いですね
一般的なゴルファーに多く見られる動きを例に、SM7のグラインドの選び方の一例を解説します。
たとえば、下の写真のように強いハンドファーストでアプローチをする方は、基本的にバンスがしっかりと効くタイプがおすすめです。
バンスがないとエッジから接地しやすくなるため、ザックリの心配が高まります。SM7のソールでいえば、FグラインドやKグラインドがいいですね。基本的にオートマチックにウェッジを打ちたい方は、バンス角が大きくかつバンス効果の大きいウェッジを使うと大きなミスを減らすことができると思います。
ボールを右足寄りにおいてハンドファーストで構える方は、ザックリのミスが多いはず。それを軽減してくれるのがバンスの効きが大きめのウェッジです
体が浮いてトップなどする方は、ザックリを恐れているか、ボールを上げようとするのが原因と思われます。
インパクトで体が伸びてしまうのがこのミスの原因
バンスの効くウェッジを使うと、多少ミスしてもザックリになりにくいので恐怖心が減り、ボールもちゃんと上がるようになるので、自分で上げようとする動きも軽減することができるはずです。
インパクトでソールのどこで接地するかが大事です
バンスを効果的に使うイメージとしては、ソール後方の一番出っ張っている部分をボールの真下の地面にトンと当ててあげるイメージを持つといいと思います(左)。ボールをクリーンに打とうとするとフェースをボールに当てようとしてリーディングエッジから接地してしまい(右)、ザックリになりやすくなります
ウェッジのバンスは芝の上で打ったときに効果を発揮するため、練習場のマットではなかなか判断できません。どんなソール形状が自分に合っているかというのが体感しづらいんですよね。
まずは、今お使いのウェッジのロフト角やバンス角、そしてソール形状を確認してみてください。そしてそのウェッジを使うとコースではどんなミスが起こるのかを踏まえ、次のウェッジのスペックを決めるといいと思います。
ウェッジは、さまざまなショットに対応しなければならない重要なクラブ。できれば、芝の上から打って決めたいところです
ちなみに私が気に入ったSM7のモデルは、Dグラインド。普通に打つときはバンスが強く効いてダフりに強く、開いて使うとバンスが適度に効いてヌケのいいところが好印象でした。ほかにはKグラインドもよかったですね。よく滑り、少々のダフりはなかったことにしてくれました。
アプローチでテクニックを使わない、できるだけ簡単に打ちたいという方は「K」「F」を、たまには開いて打つ、将来的にはテクニックを修得したいのであれば「S」「D」「M」を、ひとつの状況から数種類のアプローチを打てるような方であれば「L」を、それぞれ試してみるといいと思います。
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。