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素材も製法も、テクノロジーの塊だった

ラグビーW杯開幕! 「日本代表ジャージ」のスゴい秘密を聞いてきた

東大阪市にある"ラグビーの街・花園"で育ったライター、マリオ高野です。

いよいよ日本でのラグビーワールドカップが始まりますね! この夏には日本代表チームが着るジャージのレプリカが発売されましたが、今回のワールドカップは日本代表ジャージに要注目です! ワールドカップをより楽しく観戦するためのポイントのひとつでもあるので、日本代表ジャージのすごさの秘密について紹介しましょう。

2019年7月4日、日本代表の新ジャージが報道陣に公開されました

2019年7月4日、日本代表の新ジャージが報道陣に公開されました

匠の技で作られた日本代表ジャージ

ラグビー日本代表ジャージは、日本が世界に誇るテクノロジーを凝縮したきわめて高性能なもので、現代の名工による匠の技により誕生。日本の伝統の融合と調和をコンセプトに入魂開発されています。

どんなスポーツでもウェアは大事ですが、ラグビージャージはとりわけ多機能が高いレベルで求められます。耐久性と軽量性という相反する要素を高いレベルで両立させたうえ、運動性や快適性も兼ね備えたものでなければなりません。さらに、対戦チームの選手につかまれにくい構造であることもきわめて重要です。屈強な男たちが激しくぶつかり合い、大汗をかきながら走り回るスポーツのシーンを想像すると、ウェアに求められる機能の重要性がイメージできるでしょうか。

ラグビー日本代表が着る2019新ジャージは「世界で一番強いウェア」を目指して開発され、世界で勝つための人類の叡智が結集された武器でもあるのです。

相手との接触があり、かつ着用者の運動を妨げない工夫がいるなど、ラグビージャージはスポーツウェアの中でもかなり特殊な部類に入ります

ラグビー日本代表が着る2019新ジャージを開発したのは、ラグビーの歴史とともに歩み続けてきた老舗のスポーツアパレルブランドとして知られるカンタベリー。ラグビーを中心にスポーツウェアからタウンウェアまで多彩なアイテムを開発、販売していることでも知られていますが、1904年にニュージーランドで生まれ、「世界一タフな活動着」を作ることにこだわり続けてきました。

強度や耐久性の高さはもちろん、軽量性や伸縮性、快適性などさまざまな機能を織り交ぜて、ラグビー試合のいかなる状況でも選手の体をしっかりサポートすることを追求。世界トップクラスからアマチュアまで、幅広い層のプレイヤーから絶大な信頼を得ています。

高評価を得た「2015年モデル」を超えるべく

カンタベリーは、1997年からラグビー日本代表チームのオフィシャルサプライヤーとなり、「ラグビー史上最大級の番狂わせ」とまで言われた2015年のワールドカップでは強豪の南アフリカに歴史的な勝利をもたらしたことから、日本代表チームから「最高のジャージ」と絶賛されました。

今回の2019年新ジャージの開発では、2015年に歴史的勝利を支え、高評価を得たジャージをさらに超えるという高いハードルが立ちはだかります。株式会社カンタベリーオブニュージーランドジャパンで日本代表ジャージの開発総責任者を務める石塚正行さんによると、2015年ジャージでの不満点を解消しようにも、選手からネガティブな意見が出てこなかったという問題があったのだとか。ですが、前回のワールドカップでは歴史的な大躍進を見せてくれた日本代表が、今回は日本を舞台に戦うということで、「日本のモノづくりの技術力」を結集して世界に示すものにしようと考えます。糸から生地、加工、生産までのすべてを一から見直したのでした。

カンタベリーオブニュージーランドジャパン 事業部長の石塚さんは、代表チームに帯同して選手の意見を開発現場に反映させてきました。新しいジャージのデビュー戦は大変に緊張するとのこと

ポジション別に異なるジャージを開発

ラグビージャージの開発にあたっては、基本機能である耐久性・軽量性・運動性・快適性のすべてを向上させるとともに、これらの相反する点を解消していくわけですが、今回着目したのは、ポジションによって求められる機能の違いです。1チーム15人で構成されるラグビーのポジションは、フォワード8人とバックス7人に分けられますが、そのうちスクラムを組むのがフォワード。そのフォワードの中でも、最前列で相手チームのフォワードと組み合うのがフロントロー、その後ろで支えるのはセカンドロー、最後列で押し込む役割を担うのがバックローと呼ばれます。

たとえばフォワードでは”しっかり着ている感”や”守られている感”が、バックスでは”速く動くこと”が重視されるなど、ポジションごとのプレーや戦い方、選手の体格の違いに合わせて3種類のジャージを開発。フォワード用とバックス用で異なるシルエットを採用し、素材や機能も専用のものとしたのです。

2019年モデルでは、ポジション別に3種類のジャージが作られました

2019年モデルでは、ポジション別に3種類のジャージが作られました

それら2つの素材の違いのポイントは、編み方。バックス用は丸編(まるあみ)の素材で、伸縮性が高く、走り回るバックスの動きに適したストレッチバランスが得られる設計。フォワード用は経編(たてあみ)の素材で、体を強くホールドするフィット性と強度にもすぐれながら、フォワード用に適したストレッチ性を確保しています。

大成功を収めた2015年ジャージに対し、バックス用素材は耐久性が8%アップし、軽量化は7%を実現。フォワード用素材は耐久性が9%アップし、12%もの軽量化を実現しました。さらに、いずれも速乾性が向上。激しく激突しても破れたりせず、軽くて動きやすく、汗が乾きやすいという、背反する要素を高いレベルで向上させることに成功したのです。

歴代の日本代表ジャージ 右から2015年、2011年、2007年、2003年、1999年

歴代の日本代表ジャージ。右から2015年、2011年、2007年、2003年、1999年

ちなみに、フォワード用に使われる経編(たてあみ)の素材は、クルマのシート表皮やスニーカーの生地からヒントを得て発想したもので、最初は汗を吸って重くなるなどの失敗もありましたが、さまざまな創意工夫によってこれを解消。汗によるベタつきを抑えながら、同時に汗冷えも防止するという、これまた二律背反した要求項目を見事にクリアしたのでした。

身体の部位ごとに異なる素材を使用

また、素材については、大好評だった2015ジャージとはまったく異なる素材を採用。原料の選定から改め、糸の検討もし直し、約2年かけて50種類もの素材をテストした中から2種類を厳選。

さらに、ベースとなる素材だけでは解消できない課題、たとえば腕や肩まわりの複雑な動きに対しては、身体の部位ごとに異なる素材を採用したハイブリッド仕様に。これは2015年ジャージでも採用していましたが、2019年ジャージでは袖、脇下、肩の3か所でそれぞれ伸縮性が異なる素材を採用しています。

フォワード(フロントローとセカンドロー&バックロー)用は3種類、バックス用は4種類の生地を使って作られています

選手の快適性を高める着心地については、ジャージの縫い目をフラットにして、縫い目が肌に当たることで生じるストレスを解消。選手の姿勢や動作によって生じる突っ張り感に対しても、身体にストレスを与えない工夫が各部に施されています。

部位ごとに、驚くべき細かさで生地を使い分けて作られています

部位ごとに、驚くべき細かさで生地を使い分けて作られています

カブトに込めた日本スピリット

デザインについては、「兜(KABUTO)」をコンセプトに日本精神性と誇りを表現。ひと目で日本だとわかる赤と白のストライプは、武士の兜の前立てをモチーフとし、前から見たときは身体を大きく見せる錯覚効果で相手を威圧。後方からは追いつけない速さを感じさせるものとしました。

日本代表チームには外国人も少なくありませんが、新ジャージのデザインはチームとしての「日本」という意識を強める効果を発揮。戦う選手はもちろん、観ている観客にも一体感が強まるジャージなのです。現場でもテレビでも、ぜひレプリカシャツを着て観戦したいものですね。

視覚効果も狙った凝った意匠のデザインも見どころ

視覚効果も狙った凝った意匠のデザインも見どころ

屈強な選手が身にまとうと、このジャージは様になります!

屈強な選手が身にまとうと、このジャージは様になります!

実際のジャージをよく見ると、精緻に編まれた生地が使われていることが確認できました。兜の前立てを表現した金色には特殊なラメが使われています。また、遠目にはわかりにくいのですが、生地には「和柄」があしらわれているんです!

レプリカジャージを着て代表を応援しよう!

新ジャージ開発にあたり立ちはだかった「耐久性と軽量性」「耐久性と速乾性」「伸縮性とフィット性」、これら3つの矛盾をことごとく解消し、傑作と呼ばれた2015年ジャージを凌駕する機能を実現したラグビー日本代表の新ジャージ。これを着て戦う選手たちの身体の動きに注目することで、ラグビーワールドカップをより楽しく観戦できることでしょう。

私もレプリカジャージを着て日本代表を応援したいと思います!

私もレプリカジャージを着て日本代表を応援したいと思います!

左がレプリカ、右が本物。本物は強度を確保するため縫い方が異なります。が、それをそのまま市販するとたいへんな高額になってしまうんだとか……。とはいえレプリカもデイリーユースには十分な強度があると感じました

マリオ高野

マリオ高野

1973年大阪生まれの自動車ライター。免許取得後に偶然買ったスバル車によりクルマの楽しさに目覚め、新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、自動車工場での期間工、自動車雑誌の編集部員などを経てフリーライターに。2台の愛車はいずれもスバル・インプレッサのMT車。

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