実践主義! 高橋庄太郎の山道具コレクト
重ねることを計算して作られたアウターとミッドレイヤーだからこそ、いい!

レインウェアとダウンジャケットが一体化するマムート「コンベイ 3in1 HSフーデッドジャケット」


寒い時期にアウトドアウェアを着る場合、重要なのはレイヤリング、つまり重ね着の方法だ。その“基本”を簡単に説明すれば、肌の上に吸汗性、速乾性、保温性にすぐれたベースレイヤーを着用し、その上に保温性を重視したミッドレイヤー(ミドルレイヤーとも呼ばれる)を重ね、最後に防風性、防水性にすぐれたアウターで身を守る、となる。このようなレイヤリングの方法をくわしく話せば長くなり、例外もあるので、あくまでも“基本”と考えてもらいたい。

暑い夏は、Tシャツのようなベースレイヤーのみでもよい。そして、雨が降ったら、レインウェアのようなアウターをその上に直接着る。ミッドレイヤーを無理に使用すると暑さが増すだけなので、必要がなければ着用しなくてよい。つまり、保温性を向上させることが主な機能であるミッドレイヤーが活躍するのは、寒い時期が中心になるのだ。

ミッドレイヤーには、多様な形状や素材のものがある。街中でアウターとして利用されているインサレーション(ダウンなどの中綿入りウェアをはじめとする防寒着)や、フリースの類も、アウトドアウェアの視点ではミッドレイヤーの位置づけだ。たとえ、いちばん外側に着用した場合でもアウター扱いにはならず、アウターの着用を省略したベースレイヤー&ミッドレイヤーのコーディネートと考える。このあたりは街着の感覚とは少し異なるため、誤解を受けやすいが、この後に続く説明を理解するうえでご了承いただきたい。

アウターとミッドレイヤーからなるジャケットの魅力

今回ピックアップしたのは、マムート「コンベイ 3in1 HSフーデッドジャケット」だ。製品名にある「3in1」は、3つの目的をひとつの形に表したものということ。実はこのジャケット、アウター(防水性のシェル)とミッドレイヤー(インサレーション)という2種のウェアを組み合わせたユニークな構造となっており、「アウターのみ」「ミッドレイヤーのみ」「アウターとミッドレイヤーのコンビ」と、3つのパターンで着用できる。

外側(イエロー)が防水透湿性素材のゴアテックスを使ったアウターで、内側(ネイビー)がダウンの中綿が入ったインサレーション。つまり、ミッドレイヤーだ

アウターを外すと、ミッドレイヤーに位置付けられるダウンのジャケットになる。くわしくは後述するが、正確にはダウンと化繊の中綿のハイブリッドタイプのインサレーションだ

アウターとミッドレイヤーはどちらもジャケットの形をしており、首裏と両手首に付けられた3つのスナップボタンで連結し、2枚一緒に脱ぎ着できる。今回は、テストも兼ねて山中で不必要なほど何度も脱ぎ着してみたが、2枚重ねたままだとは思えないほどスムーズに着脱できた。もちろん1枚のほうが脱ぎ着しやすいのは確かだが、2枚同時でも袖が引きつれにくく、重ねたウェアがめくれることもない。

ダウンジャケットの首裏にスナップボタンがあり、アウターのループに連結できる。こうしておけば、2枚同時に着脱する時にもずれない

連結させた首もとを見ても、スナップボタンは首の真裏の位置なので見えない

連結させた首もとを見ても、スナップボタンは首の真裏の位置なので見えない

袖の部分も連結可能。ダウンジャケットの手首にある細いコードを、アウターの袖裏にあるスナップボタンと連結させる

本来ならば外部から連結部は見えないが、スナップボタンを確認するため、まくり上げてみた。写真のようにして連結する仕組みとなっている

スナップボタンで連結するので脱ぎ着しやすいと前述したが、それ以外にも理由がある。それは、サイズ感だ。アウターとミッドレイヤーを別々にそろえてレイヤリングする場合、アウターのほうが大きすぎるとミッドレイヤーが内部で浮いてしまい、反対に、ミッドレイヤーのほうが大きすぎるとアウターの内部、特に腕の部分でミッドレイヤーが押しつぶされてしまう。その結果、2つのウェア同士のフィット感が損なわれ、一緒に着脱するのが難しくなるのだ。

その点、重ねて着ることを想定した「コンベイ 3in1 HSフーデッドジャケット」は、アウターとミッドレイヤーが過不足なくフィットするようにデザインされている。2つのウェアのサイズ感が合っているからこそ、重ねたままでも脱ぎ着しやすいわけだ。意外と見落としがちだが、このことには大きな意味がある。

また、重ね着した時にアウターとミッドレイヤーのサイズ感がぴったり合うということは、保温性の向上にも大きな効果を生み出す。中綿入りのインサレーション(このウェアでのミッドレイヤー)というものは、ふっくらした状態でこそたくさんの暖気をため込んで温かいが、インサレーションに対してアウターが小さめだと中綿のボリュームがつぶれてしまい、本来持っている保温力を発揮できない。だからといってアウターが大きいと、アウターとインサレーションのあいだに隙間ができ、寒気が流れ込む。つまり、あらかじめ適切なサイズ感で2つのジャケットが組み合わされている本製品は、保温性という意味でもすぐれた設計なのである。ドローコードなどのディテールも、保温力アップにひと役買っている。

フードにあるドローコードを絞れば、首まわりから暖気が逃げにくくなり、保温性が高まる

フードにあるドローコードを絞れば、首まわりから暖気が逃げにくくなり、保温性が高まる

ドローコードは裾にもある。フード同様に内部の暖気を守り、寒気の流入を防ぐ

ドローコードは裾にもある。フード同様に内部の暖気を守り、寒気の流入を防ぐ

袖は面ファスナーを採用。面ファスナーはかなり長いので、手首が細い人でもフィットさせられるいっぽうで、グローブを装着した上からゆったり留めることもできる

着方を変えながら山で実用性を確かめてみた

「コンベイ 3in1 HSフーデッドジャケット」を実際に山で試すため、僕は登山口から日の出とともに歩き始めた。明け方は寒く、気温2℃ほど。「コンベイ 3in1 HSフーデッドジャケット」のアウターとミッドレイヤーは、2つを組み合わせて着用した。保温力は最大だが、歩き始めは体温が上がらないこともあり、ちょうどよい体感温度だった。

なお、この記事中で触れる「コンベイ 3in1 HSフーデッドジャケット」の場合、「ミッドレイヤー=インサレーション=ダウンジャケット」という式が成り立つ。同じウェアに対して文脈により異なる単語を使うが、そのあたりに注意して読み進めていただきたい。

ファスナーを首もとまで上げているのでわかりにくいが、出発時は内側にミッドレイヤーのダウンジャケットを着用。そのため、ウェアのシルエットがふっくらしている

登っているうちに暑さを感じ始めた僕は、内側のダウンジャケットを外してアウターのみの状態に。ミッドレイヤーを重ねて着ることを想定したサイズのアウターだけに、単体だと少し大きめだが、着心地を損なうほどではない。生地は非常にやわらかく、ウインドジャケットとしても活用できる存在だと感じた。

内側のダウンジャケットを脱いだので、体のシルエットが少しすっきりとした。アウターのみでも風はさえぎられ、寒さは感じない

一般的に、内部にインサレーションを着ることを想定した冬用のアウターはハードシェルと呼ばれ、過酷な雪山で通用するように強靭で硬く、簡単には破れにくい生地が使われている。それらに採用されるゴアテックスのカテゴリーは「ゴアテックスプロ」の素材が多い。しかし、「コンベイ 3in1 HSフーデッドジャケット」に使われているのは、やわらかくて収納しやすく、軽量性にもすぐれる「ゴアテックスパックライト」。レインウェアにはよく使われるが、冬用のアウターとしては普通ならばあまり出番がない生地なのである。ただ、その分だけ軽く、アウターとミッドレイヤーを合わせた総重量は785g。アウターのみだと300g(実測数値)と軽量だ。

とてもしなやかなゴアテックスパックライトの生地。ゴアテックスのメンブレンに表地を張り合わせ、裏側を加工した「2.5層」構造となっており、28,000mmの耐水圧を持つ

つまり、「コンベイ 3in1 HSフーデッドジャケット」はハードな「雪山」には少々きゃしゃな設計といえるが、高い保温力と幅広い対応温度を持っており、それほど厳しくない標高が低めの「冬山」には適している。また、汎用性が高いので、街中などの普段使いでも気軽に羽織れるウェアだ。

脇の下に、ファスナーで開閉できるベンチレーターを装備。暑い時は涼しい外気を取り込み、汗による無用な湿気を逃がせる

今回テストを行った日は晴天だったため、雨水代わりに沢の水をアウターへ大量にかけて防水性をチェックしてみた。結果は、大きな問題はなし。撥水性も上々で、玉のように水を弾き飛ばしてくれた。このことから「コンベイ 3in1 HSフーデッドジャケット」のアウターは、ほぼレインジャケットと同じ機能と考えてよい。

撥水力はバツグン。ただし、ゴアテックスパックライトの生地は傷みやすいので、あまり手荒に扱わないほうがいい

ファスナーは止水タイプなどではなく、一般的なもの。雨水の浸透を完全には防げないが、裏側にはフラップがあり、内部のウェアをすぐに濡らすことはない

体を動かさなくなると、すぐに冷えを感じるのが冬というもの。「コンベイ 3in1 HSフーデッドジャケット」のアウターは風をさえぎり、暖気を逃しにくいとはいえ、保温力自体は持ち合わせていない。そこで休憩の際、僕はいったんバックパックに収納しておいたダウンジャケットを取り出した。だが、わざわざアウターと連結するのはめんどうなので、アウターは着ずにダウンジャケットのみを着用して過ごすことに。昼になると日差しが強く、ほぼ無風にもなり、日向にいるぶんには十分な保温力であった。

ダウンジャケットは比較的薄手。アウターと重ねて着ることを想定しているからだろう

ダウンジャケットは比較的薄手。アウターと重ねて着ることを想定しているからだろう

表地の素材は耐摩擦性が高く、丈夫で軽量なパーテックス・クァンタム。織りの密度が高いので、内部のダウンが抜けにくい

内部のダウンは750FP+と高品質。裾はドローコードなどで引き絞れる仕様ではないが、これは上にアウターを重ねた時にじゃまにならないようにするためだと思われる

このジャケットで感心したのは、肘から袖の部分だ。先ほどから僕はこのジャケットを「ダウンジャケット」と言っているが、実際にダウンが封入されているのは体の表・裏と、肩から肘にかけてのチューブ状のバッフル構造の部分だけ。肘から先は化繊の中綿に変え、ふくらみが少ない平面的な作りにしているのである。

これにより、アウターへ腕を通す時の摩擦が減る。しかも化繊の中綿は濡れに強く、袖先から浸水して湿っても一定の保温力を保ってくれるメリットがある。気がきいたデザインといえるだろう。

肘よりも先は化繊の中綿なので、すっきりとしたシルエットになっている

肘よりも先は化繊の中綿なので、すっきりとしたシルエットになっている

野暮ったさとは無縁のシンプルなダウンジャケット。街着としても使いやすい

野暮ったさとは無縁のシンプルなダウンジャケット。街着としても使いやすい

山行を終えて

「コンベイ 3in1 HSフーデッドジャケット」のメーカー希望小売価格は64,900円(税込)と、買い求めやすい価格のウェアではない。だが、ゴアテックスパックライトを使った軽量なレインウェアと、750FPのダウン&化繊の中綿のハイブリッドインサレーションを、別々に購入して組み合わせることを考えれば、それほど高価には思えない。もちろん、それぞれにリーズナブルな類似タイプを探して合わせれば、少しは安価になると思われるが……。

しかし、あらかじめ2つのウェアのサイズ感を計算してレイヤードできるこのウェアは、ミッドレイヤーの保温性を最大限に生かすことができる。もとから持っているウェアに合わせてアウターなり、インサレーションなりを買い足したいのであれば、「コンベイ 3in1 HSフーデッドジャケット」を選ぶ必要はない。だが、アウターとミッドレイヤーのどちらも購入したいと思っている人には、実に合理的な選択肢のひとつとなるだろう。

高橋庄太郎

高橋庄太郎

テント泊での登山を中心に1年の半分近くは野外で過ごす、山岳/アウトドアライター。好きな山域は北アルプス。「山道具 選び方、使い方」など、著書も多数。

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