照りつける太陽、肌にまとわりつくような熱気、そして身体を動かしていないのに汗が噴き出す――。
ここ数年続くそんな猛暑に対処するべく、日本を代表するスポーツブランド、ミズノは、「エアリージャケットベスト」と「エアロバッグ」を発売。風の力を使って身体を冷やす2つの空冷ギアの実力をテストした。
写真は、「エアロバッグ」(品番:B3JD0500)。ミズノ公式オンラインショップの価格は、12,650円(税込/ファン・バッテリー別売)
今回テストを行った「エアリージャケットベスト」は、ファンが付いたウェア。「空調服」とも言われているものだが、衣服に搭載されたファンが外気を取り込み、空気を循環させて身体を冷やしてくれる。従来モデルは、エアコンが使用できない工場や建設現場などで利用されており、夏場の仕事現場では今や欠かせないものとなっているという。そのファン付きウェアを日常生活やスポーツシーンで使えるデザインに仕上げたのが、2020年春夏の新作である本作だ。
「エアリージャケットベスト」(品番:C2JE0102)。ミズノ公式オンラインショップの価格は、8,690円(税込/ファン・バッテリー別売)。実はフードがかなりポイント!
従来品は、ファンによる風だけではなく、風によって汗が蒸発する際の気化熱で身体を冷やすため、「想像以上に涼しい」と評判がよかったという。なお、ファンはバッテリーの電気によって作動する。
「エアリージャケットベスト」のシルエットは少し大き目。写真のモデルは、170cmで68kgのやせ型で、Lサイズを着用している
「エアリージャケットベスト」は、撥水性のあるウインドブレーカーの素材を使用。工場や建設現場などでの利用が想定される空調服は、作業中の破れやひっかきへの耐久性が求められるため、厚手の素材が採用されていることが多いが、本製品はスポーツシーンなどでの使用が想定されているため、薄く軽量な素材を使用しているわけだ。
腰のあたりにファンを取り付けるパーツが備え付けられており、ファンの重さでジャケットが破れないように補強されている。ファンの穴の間には、バッテリーを入れるポケットを設置
ジャケットには、専用ファン2個と充電式バッテリーをセットして風を吹かせる。どちらもセットで別売されており、公式サイト価格は15,180円(税込)
スイッチ操作は、シンプル。ボタン2つで電源のオン/オフや風の強弱4段階を操作する
実際にファンを作動させてみると、外気がウェア内に取り込まれていく。想像以上にファンがパワフルで、心地よい風が身体の表面を冷やしながら通り抜けていく。下の写真でもわかるとおり、ウェアが膨張してまるで風の層をまとっている感じに。これは涼しい!
スイッチをオンにすると、すぐにファンが外気を取り込みウェアが膨張。思わず笑ってしまうほど涼しい!
フードをかぶると、さらに冷却効果が増加! うなじ付近から頭頂部まで風が吹き抜ける
「エアリージャケットベスト」は、一般的な空調服には付いていないことが多いフード付き。かぶってみると、首から頭、そして顔まで風が通り抜け、さらに冷却効果が高まる。テスト当日は気温が30℃を超えており、Tシャツが軽く汗で濡れていたが、ものの数分で乾いてしまった。特に、本製品の下に吸汗速乾素材のウェアを着ていると、気化熱が発生しやすく効果がより高まるという。
風力を可視化するため、おでこ付近にリボンを設置。写真のようにリボンが激しく揺れるほど、フードからも風が強く通り抜けていた
「涼しさ」に関しては、十分と言ってよいだろう。中に吸汗速乾のTシャツを着用し、気温が少し下がった夕方に使用していたせいか、ちょっと肌寒く感じるほどだった。おそらく酷暑の日中でもかなり快適な状態でいられるはず。実際筆者は、オリンピック観戦に向けてこの手のウェアを探していたので、「ベストのもの、見つけたっ!」という気持ちだ。
いっぽうで、本製品の気になるポイントをあげると……
・風でウェアが膨張してしまう
・バッテリーとファンを取り付けるとちょっと重い
・ファンの作動音が少し気になる。
くらいだろう。
バッテリーとファン2個で重量は600g弱。ランニングに使うのはちょっと厳しいかも……
ウェアの膨張は仕方がないとして、重量に関しては使用シーンを選ぶ必要がありそうだ。ランニングは重さと揺れの問題からあまり現実的ではないが、ウォーキングならまったく問題ない。自転車やゴルフなども十分対応するだろう。
自転車通勤にも最適。かいた汗を積極的に乾かしてくれる
ただし、作動音は少し気になるところ。4段階の最弱の設定にしていても、近くにいる人が気づくレベル。静かなオフィスや電車の中で使うのは難しいかもしれないが、体育館などの広いスペースで使う分には問題ないだろう。室内の熱中症も近年問題になることが多いので、大いに活用できるジャケットだ。
「エアロバッグ」の「ブラック」。ファンとバッテリーは別売で、先述の「エアリージャケットベスト」で使用したものと共通
もうひとつテストした冷感アイテムは、「エアロバッグ」。「エアリージャケットベスト」と共通のファンとバッテリーを使って風を起こし、猛暑でも快適にしてくれるリュックだ。
ファンはリュックの両側に取り付けて、バッテリーはポケットにイン
筆者は、自転車通勤やトレッキングの際に、さまざまな夏向けのバックパックを使用してきた。各ブランドがいろいろな工夫を凝らし、涼しく快適でいられるようなシステムを開発してきた。メッシュ素材を使用して汗でベタつかないようにしたり、背中との接触面積を減らすようなデザインを採用したりとあらゆる製品があったが、涼しさの面で言えば、「エアロバッグ」がいちばん涼しかった。蒸れを感じやすい背中に、直接風を当てて冷却してくれるからだ。
左右のファンが取り込んだ外気は、背中側に設けられた通気エリアを通って排出される
風は、通気エリアを通って背面中央のメッシュ部分から排出される。可視化のために付けたリボンが激しく揺れるほどの風圧!
風が通り抜ける背面中央のメッシュ部分は、横9cm×高さ30cmくらいあり、いちばん蒸れが気になる背中を冷やしてくれる。もちろんファンに近い腰あたりがいちばん風圧が強いが、上部の首の付け根あたりにも風が当たるので、背中全体がかなり涼しい。
「空冷」の機能はまったく問題ないが、背負いやすさや収納性に関しても十分に考慮されている。ショルダーや背中には、メッシュ素材やクッション素材が採用されているので、重い荷物を収納しても痛みが出にくく、背中にフィットする。
背面中央のメッシュ部分以外からは風は出ないが、荒めのメッシュ素材とクッション素材を使用しており、汗でもベタつかず背中にフィットする
また、普段使いには十分な容量や荷物へのアクセスのしやすさも十分に考えられた作りがうれしい。メインの荷室の容量は20Lで、口が180°ガバッと開くので使い勝手はいい。前面にはポケットが付いているので、小物などの収納力も十分にある。欲を言えば、PC用のスリーブがあればさらにうれしかったが……。
メインの荷室は、ファスナーを全開にできるために中の荷物にアクセスしやすい。容量は20Lと普段使いには十分
前面にはポケットが2つ。スマホやタブレット、財布などを収納可能
ファンを使用しない時でも、フラップを閉じれば普通のバックパックとしても使える
デザインはごくシンプルなので、スーツでの通勤スタイルから普段使いまで、持ち歩くシーンを選ばない。特に「これはイイ!」と感じたシーンが、自転車通勤の時。自転車は前から風が当たるので前面は涼しいが、バックパックを背負った背中はどうしても蒸れてしまう。「エアロバッグ」なら背中をしっかりと風で冷却してくれるので快適だった。真夏の自転車通勤では大活躍が期待できる。
「エアリージャケットベスト」の時と同様にファンの音が気になるので、電車内の使用はちょっと厳しそうだが、自宅から駅、駅から会社までの徒歩区間なら十分に使用できるだろう。なお、ファンの稼働時間は、フル充電で、「強/4時間」「中/5.5時間」「弱/8時間」「最弱/20時間」となる。
自転車通勤ならファンの音も気にならない。実際に街を走ってみたが、誰にも気づかれなかった(たぶん)
「エアリージャケットベスト」と「エアロバッグ」を実際に使用して、風の力の偉大さに改めて気づかされた。2019年の夏は手持ちの携帯扇風機が流行ったが、それ以上に涼しくしてくれるギアと言える。
あくまで個人的な感想ではあるが利用シーンのオススメは
「エアリージャケットベスト」/自転車通勤、ウォーキング、ゴルフなど、主にスポーツシーン
「エアロバッグ」/自転車通勤や徒歩(電車)通勤など、主に普段使い
という感じ。
もちろん使い方は人それぞれだと思うが、いずれにせよ想像以上に涼しく、熱中症対策になるのは間違いない。猛暑を快適に過ごしたいなら、早めのご準備を!
●モデル/岡田拓海