実践主義! 高橋庄太郎の山道具コレクト
フライシートやインナーテントの出入口部の工夫がおもしろい!

便利な機構を備えながら重量1.13kg! ビッグアグネスのソロテント「コッパースプールHV UL1」

新型コロナウイルスの影響が大きかった、2020年のアウトドア界。密を避けながら楽しめるキャンプが人気を呼び、オートキャンプ場は平日でもにぎわいを見せた。また、“自動車では行けない”山中のテント場は、夏までは人影が少なかったものの、秋になると驚異的なほどに登山者が集まり、シルバーウィークの北アルプスの雷鳥沢キャンプ地では1日に1,000張近いテントが張られ、過去最高の記録になったほどだ。なかでも、ひとり用のソロテントが非常に多かったという。このようなテント泊ブームは、このまま2021年も続くに違いない。

今回ピックアップしたのは、アメリカのメーカー「ビッグアグネス」の「コッパースプールHV UL1」。まさに、現在人気のひとり用テントだ。

「コッパースプール」は、リニューアルされながら何年にもわたって販売が続けられているビッグアグネスの人気シリーズである。今回紹介する「コッパースプールHV UL 1」は前モデルから大きく改良され、さらなる軽量化を実現。もはや“ほぼ新作”と考えてもよいほどで、非常におもしろい工夫も加えられている。

ユニークな工夫を備えた自立式ダブルウォールテント

コッパースプールHV UL 1は、インナーテント(テント本体)と防水性のフライシートを組み合わせて使う、いわゆる「ダブルウォールタイプ」だ。そして、それらにポールを組み合わせるだけで立体化する「自立式」。まとめて言えば、「自立式ダブルウォールテント」である。

コッパースプールHV UL 1の全パーツ。左がインナーテント(グレーのもの)とフライシート(オレンジのもの)で、中央がポール、右がペグだ

コッパースプールHV UL 1の全パーツ。左がインナーテント(グレーのもの)とフライシート(オレンジのもの)で、中央がポール、右がペグだ

ポールは、2つのハブですべて連結されている

ポールは、2つのハブですべて連結されている

7本のペグはジュラルミン製。ガイライン(張り綱)も付属している

7本のペグはジュラルミン製。ガイライン(張り綱)も付属している

重量は1.13kgと、超軽量。同社にはひとり用のテントで1kgを切るモデルもラインアップされているが、コッパースプールHV UL1に比べると居住性や耐風性がかなり低い。さらに、簡単には手が出せないほど高価だ。つまり、コッパースプールHV UL1は超軽量なのに現実的な価格設定で、しかも居心地がいいという、高いレベルでバランスが取れたモデルなのである。

収納サイズは15(直径)×42(長さ)cm。付属のスタッフバッグは、無理に押し込まなくても余裕を持ってすべてが収められるサイズ感だ

収納サイズは15(直径)×42(長さ)cm。付属のスタッフバッグは、無理に押し込まなくても余裕を持ってすべてが収められるサイズ感だ

スタッフバッグにポールを入れずに押しつぶすと、非常に小さくなる。このようにまとめるとパッキングがしやすい

スタッフバッグにポールを入れずに押しつぶすと、非常に小さくなる。このようにまとめるとパッキングがしやすい

コッパースプールHV UL1は、インナーテントの外側に位置するポールにインナーテントのフックを取り付けて内部スペースを作り出していく「吊り下げ式」でもある。インナーテントを地面にペグで固定してからポールにかけていくだけなので、風が強い時でも設営しやすい。

インナーテントにポールを組み合わせた状態。数本のポールがハブで連結している

インナーテントにポールを組み合わせた状態。数本のポールがハブで連結している

なお、左右非対称な形状なため、ポールはその形状に対応する向きに組み合わせなければならない。このような構造だと設営に少々手間取りそうに思えるかもしれないが、ポールは左右で色分けされており、同じ色がつけられたインナーテントの隅に合わせればいいだけ。実に簡単だ。

ポールの末端はシルバーとオレンジの2色に作り分けられ、これらを同色のインナーテントの角と組み合わせる

ポールの末端はシルバーとオレンジの2色に作り分けられ、これらを同色のインナーテントの角と組み合わせる

こんな状態から、インナーテントの上にフライシートをかけていく。このフライシートこそが、コッパースプールHV UL1の一大特徴でもある。

インナーテントは生地が薄いため、向こうまでうっすらと透き通って見える

インナーテントは生地が薄いため、向こうまでうっすらと透き通って見える

フライシートをかけた状態。これで風雨から守られる

フライシートをかけた状態。これで風雨から守られる

フライシートをかけた見た目は、フライシートにファスナーが1列付けられている一般的な山岳テントと変わらない。風向きに合わせてフライシートを片側のみ開いたり、両サイドを同時に開けて開放的なスタイルで使用できたりするが、この構造自体は特にめずらしいものではない。

フライシート中央のファスナーを開けて、フライシートの生地を巻き上げた状態。これならば、一般的な山岳テントと同様の仕組みに見える

フライシート中央のファスナーを開けて、フライシートの生地を巻き上げた状態。これならば、一般的な山岳テントと同様の仕組みに見える

フライシートの両サイドを巻き上げて使うことも可能。これも多くの山岳テントでできるスタイルだ

フライシートの両サイドを巻き上げて使うことも可能。これも多くの山岳テントでできるスタイルだ

だが、コッパースプールHV UL1のフライシートには中央と右側、ファスナーが2列付けられている。これはあまり見ない仕様だ。ファスナーが2列あることにより、どのようなスタイルで使用できるのかは以下の写真を見ていただきたい。

トレッキングポールなどを支柱にすれば、水平の屋根のような状態でフライシートを使用できる

トレッキングポールなどを支柱にすれば、水平の屋根のような状態でフライシートを使用できる

少し角度を変えて見た様子。テントの前方に大きなひさしができ、雨や日光を広く遮ってくれる

少し角度を変えて見た様子。テントの前方に大きなひさしができ、雨や日光を広く遮ってくれる

中央と右側の2列のファスナーを同時に開ければ、フライシートをタープのような状態で使用することができるのだ。棒のようなものを支柱にしたり、ロープを取り付けて木に留めたりする必要はあるが、これで居住性は一段と高くなる。ファスナーを1列のみにしておけば、より軽量なテントになったはずだが、このような“遊び”はおもしろい。

テントの裏側はシンプル。なお、同シリーズの2人用テントは裏側も正面と同じ仕様になっており、両側のフライシートをタープ的に使用できる

テントの裏側はシンプル。なお、同シリーズの2人用テントは裏側も正面と同じ仕様になっており、両側のフライシートをタープ的に使用できる

フライシートの頭側の上部にはベンチレーター。余分な熱気と湿気を排出する

フライシートの頭側の上部にはベンチレーター。余分な熱気と湿気を排出する

ゆったり横になれて使い勝手もいい居住空間

ここからは、居住性を確認していく。コッパースプールHV UL1の高さは97cm。フロアの広さは横幅が224cmで、縦幅は頭側が97cm、足側が71cmと、縦に長い台形になっている。ひとり人用テントではあるが、緊急時ならば2人が眠れないこともないサイズ感だ。

頭側は足側よりも幅が広いだけでなく、天井も高い

頭側は足側よりも幅が広いだけでなく、天井も高い

頭側の天井部には左右に分かれたポケットが用意されている。ヘッドランプなどを入れておくと便利だ

頭側の天井部には左右に分かれたポケットが用意されている。ヘッドランプなどを入れておくと便利だ

足側は頭側よりも幅が狭くなり、奥に行くほど高さが低くなる。こちら側の天井部には、大きなポケットがひとつ設けられている

足側は頭側よりも幅が狭くなり、奥に行くほど高さが低くなる。こちら側の天井部には、大きなポケットがひとつ設けられている

内部には天井部に3つのポケットがあるほか、寝転んだ時に頭の近くにもポケットがひとつ配置されている。細かなモノの収納性にもすぐれ、使い勝手がいい。

生地が同色のためにわかりにくいが、テントの角にポケットがひとつある

生地が同色のためにわかりにくいが、テントの角にポケットがひとつある

インナーテントの素材は上部と下部で異なり、上部は通気性がある薄手の生地で、下部は同様に薄手ながらも防水性を備えた生地を採用。このコンビネーションにより、雨による濡れを防ぎ、温暖な時期の蒸し暑さを軽減する。

インナーテント下側のグレーの生地は防水性を備えている。上側の生地は防水性ではないが、その外側をフライシートが覆うので雨で浸水することはない

インナーテント下側のグレーの生地は防水性を備えている。上側の生地は防水性ではないが、その外側をフライシートが覆うので雨で浸水することはない

フライシートの裾は地面近くまで伸びているので、地面で跳ね返った雨水でインナーテントが濡れにくい

フライシートの裾は地面近くまで伸びているので、地面で跳ね返った雨水でインナーテントが濡れにくい

インナーテントの出入り口のパネルの“まとめ方”もユニークだ。一般的なテントのように“巻いて留める”ことも可能だが、より簡単な“ちょっとした工夫”も取り入れており、パネルをループに引っかけるだけでも出入口を開いたままにできるのである。

出入口側のテントの壁に付けられている赤いループ状のパーツが“ちょっとした工夫”だ

出入口側のテントの壁に付けられている赤いループ状のパーツが“ちょっとした工夫”だ

出入口のパネルを開けたら、適当にまとめて赤いループに引っかける。これだけで出入り口は開いたままに!

出入口のパネルを開けたら、適当にまとめて赤いループに引っかける。これだけで出入り口は開いたままに!

もちろん、普通に巻いて留めることもできる。風が強い時などは、やはりこのほうが確実だ

もちろん、普通に巻いて留めることもできる。風が強い時などは、やはりこのほうが確実だ

インナーテントの出入り口を大きく開けると外気がスムーズに取り入れられ、非常に開放的な気分で使用できる。内部スペースは人間ひとりと荷物がちょうど収まる広さで、座っても頭が天井につかえず、あまり窮屈さを感じないのはとてもよい。

ひとり分のテント泊装備であれば、すべてテント内部に収納でき、外に荷物を置かずに済む

ひとり分のテント泊装備であれば、すべてテント内部に収納でき、外に荷物を置かずに済む

シューズや水筒など汚れたものや湿ったものは、インナーテント前でフライシートに覆われたスペースである「前室」へ。前室の奥行きは最大71cmある

シューズや水筒など汚れたものや湿ったものは、インナーテント前でフライシートに覆われたスペースである「前室」へ。前室の奥行きは最大71cmある

マットを敷いて横たわると、ひとり用として過不足ない広さがよくわかる

マットを敷いて横たわると、ひとり用として過不足ない広さがよくわかる

「コッパースプールHV UL1」でひと晩過ごしてみた

今回テストを行ったのは晩秋。標高2000mほどの山で、夜間の気温は5℃程度まで下がった。だが、コッパースプールHV UL1は冷たい風が内部に吹き込みにくい構造のため、それほど寒さは感じない。持参した寝袋と防寒着の保温力にはかなり余裕があったこともあり、ひと晩快適に眠ることができた。

テント内にランタンを灯した様子。オレンジ色のフライシートは、夜もキレイだ

テント内にランタンを灯した様子。オレンジ色のフライシートは、夜もキレイだ

秋の山は乾燥しているが、翌朝になると、フライシートは表も裏も結露ですっかりと濡れていた。しかし、フライシートの撥水力は十分あり、小さな玉のようになった水分は、フライシートの表面を軽く叩くだけで大半は弾き飛んでしまった。もちろん、インナーテント内への浸水はない。また、就寝中の体から発散される湿気により、インナーテント内部の壁もいくぶん結露したものの気になるほどではなかった。ただし、湿気が多い夏であれば、もう少し結露が多いかもしれない。

フライシートの表面。生地の縫い目は防水処理されており、水分が裏側まで浸透することはない

フライシートの表面。生地の縫い目は防水処理されており、水分が裏側まで浸透することはない

フライシートの裏面にも水滴は付いている。表面ほど結露しなかったのは、この日は風が比較的強く、湿気が逃げていったからだろう

フライシートの裏面にも水滴は付いている。表面ほど結露しなかったのは、この日は風が比較的強く、湿気が逃げていったからだろう

フライシートから弾き飛ばされた水分の一部はインナーテント下部にかかってしまったが、防水生地なのでテント内に入れておいた荷物に大きな影響はなかった

フライシートから弾き飛ばされた水分の一部はインナーテント下部にかかってしまったが、防水生地なのでテント内に入れておいた荷物に大きな影響はなかった

山行を終えて

コッパースプールHV UL1の若干心配な点は、超軽量テントゆえの生地の薄さだ。使用されている生地はすべてリップストップナイロンなので簡単には破れないだろうが、そのまま使用すれば何かの拍子に小穴が空くこともあり得る。特に、フロアは傷みやすいので、別売のフットプリント(グラウンドシート)などを併用したほうがよさそうだ。

地面に接するフロアの生地は、下の草が透けて見えるほど薄い

地面に接するフロアの生地は、下の草が透けて見えるほど薄い

また、付属のペグは7本しかなく、すべての張り綱を活用してテントの強度を最大に生かすためには、自分であと3本は用意する必要がある。なぜ、付属のペグをあらかじめ10本にしていないのか、よくわからないが……。

ペグの本数はともあれ、コッパースプールHV UL1はよくできたテントだと思う。タープ的にも使えるフライシート、内部に4か所も取り付けられたポケット、簡単にまとめられる出入口のパネルなど、さまざまな工夫を凝らしながら1.13kgという重量に留めているのは驚異的だ。個人的にはテント場で目立ちそうな、きれいなオレンジ色も気に入っている。今回はテントを張ってからそれほど強い風は吹かなかったが、超軽量テントのわりには耐風性も高そうだ。生地の薄さにだけ注意して使えば、気持ちのよい夜を過ごすための相棒になってくれるだろう。

高橋庄太郎

高橋庄太郎

テント泊での登山を中心に1年の半分近くは野外で過ごす、山岳/アウトドアライター。好きな山域は北アルプス。「山道具 選び方、使い方」など、著書も多数。

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