実践主義! 高橋庄太郎の山道具コレクト
丸めれば1.5Lボトルサイズに! サブバッグとしても役立つ

容量24L、重量510g。軽量性と快適性のバランスが絶妙なグラナイトギアの小型バックパック「スカリー」

新型コロナウイルスの影響で、2020年は山へ行く人の流れが変わった。遠出をする代わりに近くの山やアクセスが容易な山へ向かう人が多くなり、宿泊をともなわない日帰り登山をする人が増えたのである。この流れは今年も続きそうだ。

そこで注目されるのが、日帰り登山向けの小型バックパックだ。大型タイプほどさまざまなポケットやストラップ類が付いているわけではなく、比較的シンプルなものが多いのが特徴となる。

軽量化のため簡素な構造としながら、収納や快適性に工夫あり

今回ピックアップしたのは、アメリカのブランド「グラナイトギア」の小型バックパック「スカリー」。いわゆる“ロールトップ式”で、省ける要素は省いて軽量にデザインしつつも、大事な部分はおろそかにしていないモデルである。

荷室の開口部の生地を丸めて留めるロールトップ式。上部の雨蓋(トップリッド)も省略されている

荷室の開口部の生地を丸めて留めるロールトップ式。上部の雨蓋(トップリッド)も省略されている

バックルとストラップを外すと、すぐに大きく開口。荷物の出し入れが容易だ

バックルとストラップを外すと、すぐに大きく開口。荷物の出し入れが容易だ

内部もシンプル。背中側にハイドレーション用ポケットがあるだけで、フレームなどはない

内部もシンプル。背中側にハイドレーション用ポケットがあるだけで、フレームなどはない

ロールトップ式の利点は、荷物の出し入れがスピーディーに行えることだ。一般的な雨蓋があるタイプは、雨蓋を外してから荷室を閉じているコードをゆるめるなどして荷室を開いていくが、ロールトップ式ならば、丸めて留めるだけ。多くのモデルは防水性が高い生地を使用していることもあり、この「丸めて留める」構造は防水性をさらに向上させる効果も持っている。

スカリ−の容量は24Lで、重量は510g。容量に対する重さとしては、かなり軽量だ。しかし、その軽量性を実現するために、割り切って簡素に作っている部分も多い。たとえば、バックパックの背面部分には通気性がよいメッシュ製のパッドなどは採用していない。実に、平面的でシンプルな構造なのである。

背面部分はステッチが入っているだけで、見た目もシンプル

背面部分はステッチが入っているだけで、見た目もシンプル

ショルダーハーネスにはチェストストラップが付き、ウエストベルトも付属。背負った時のフィット感が高まり、荷物が揺れ動かない

ショルダーハーネスにはチェストストラップが付き、ウエストベルトも付属。背負った時のフィット感が高まり、荷物が揺れ動かない

チェストストラップは簡単に移動でき、不必要な場合は取り外せる

チェストストラップは簡単に移動でき、不必要な場合は取り外せる

一見しただけではただの布地に見える背面部分だが、生地の裏には薄手のパッドが封入されている。その厚みは5mmほど。硬い荷物を適当に放り込むと背中に違和感を覚えるが、ある程度整頓して入れれば心地よく背負える。軽量性と快適性のバランスをとった必要十分なパッドと言えそうだ。

外部に露出しているポケットは計3つ。そのうち2つは両サイドのポケットだ。適度な伸縮性があるサイドポケットは、1Lのボトルがちょうど入るくらいのサイズ感。ただし、口径が大きいタイプだと荷室側を少し押し込むようになるので、口径が小さいタイプのほうが相性はいい。

アウトドア用飲料ボトルの大定番、ナルゲンの1Lボトルを入れた状態。スカリ−には少し口径が大きい感じである

アウトドア用飲料ボトルの大定番、ナルゲンの1Lボトルを入れた状態。スカリ−には少し口径が大きい感じである

このサイドポケットは、ポケットの上からストラップでさらに押さえつけられるようになっている。その効果でポケットに入れたものが落ちにくくなり、使っていて安心だ。

残るもうひとつのポケットは、フロント部分。このポケットは縦長かつ大型という、小型バックパックではあまり見ない形状だ。容量は2L以上もあり、たっぷりと収納できる。また、その内側はさらに小さなポケットで仕切られている。

サイドからのストラップがフロントポケットの上にまわり、全体を圧縮できるようになっている

サイドからのストラップがフロントポケットの上にまわり、全体を圧縮できるようになっている

ポケット内側のオーガナイザー。財布やスマートフォンを入れるのに適している

ポケット内側のオーガナイザー。財布やスマートフォンを入れるのに適している

ポケットの上のストラップを利用すれば、脱いだレインウェアなども固定できる

ポケットの上のストラップを利用すれば、脱いだレインウェアなども固定できる

ロールトップ式は荷物の出し入れが容易な半面、ポケットが付属している雨蓋がない。だから、行動食などを保管するのに不便なこともある。だが、スカリ−のようにフロントへ大型ポケットが付いていれば、ポケット付き雨蓋を省略したデザインでも使い勝手はあまり損なわれない。

背負い心地は?

温暖な夏の登山時は荷物が少なく、大きめのバックパックを使っていると、荷物が下部に溜まって背負い心地が悪くなる。これは、容量24Lのスカリ−でも起こりえる話だ。しかし、スカリ−のサイドストラップはフロントポケットの上にもまわされているため、バックパック全体を一気に圧縮できる。その結果、荷物が下にたまらず、背負い心地は損なわれないのがいい。

荷物をたっぷりと詰め込んだ様子。厚みは15cmくらいだ

荷物をたっぷりと詰め込んだ様子。厚みは15cmくらいだ

荷物が少なく、ストラップを引き絞った様子。容量は半分程度になっている

荷物が少なく、ストラップを引き絞った様子。容量は半分程度になっている

ただし、引き絞りすぎると薄いパッドしか入っていない背面が丸くなり、背負いにくくなる。少しずつ加減しながら調整したほうがいいだろう。

適応背面の長さは46〜53cm。小柄な人には少し大きいかもしれない

適応背面の長さは46〜53cm。小柄な人には少し大きいかもしれない

繰り返すが、軽量性を重視したスカリ−は全体的に簡素なデザインである。それは、ショルダーハーネスも同様だ。板状のハーネスには通気性が高いメッシュ素材などは配されず、背面と同じくらいの厚みのパッドが入っているだけなのである。これだけでは肩が痛くなるのではないかと心配になる。

ショルダーハーネスのパッドの厚みも5mm程度。やわらかい素材なので、肩へ食い込みにくい

ショルダーハーネスのパッドの厚みも5mm程度。やわらかい素材なので、肩へ食い込みにくい

だが、実際に背負ってみると、まったく問題はない。スカリ−の“コンフォートレンジ”は10kgで、つまり10kgまで快適に背負える設計になっている。今回のテストでは、ちょうど10kgの荷物を背負ってみたが、たしかに快適さはキープされていた。華奢な見た目以上に、重い荷物を無理なく背負える力を持っているのである。

むしろ僕が少し気になったのは、背中の蒸れである。パッドの上に布地を張っただけのスカリ−は、通気性が高いとは言いがたく、背負っているうちに汗で背中が次第に濡れてくる。ある程度の蒸れはどのようなバックパックにも起こるものだが、スカリ−は少し蒸れやすいのは否めないようなのである。だが、蒸れの防止以上に軽量性を重視したというのが、スカリ−というモデルなのであろう。

ただし、背面は蒸れやすいとはいえ、その生地は汗をすみやかに吸い取って蒸発させる。速乾性が高いのはありがたい。

背中の汗が浸透した背面の生地。こういう点は割り切って使うべきモデルなのである

背中の汗が浸透した背面の生地。こういう点は割り切って使うべきモデルなのである

いっぽう、背面以外の生地はもともと水分を吸収しにくいものが使われ、さらに「BARRIER」という撥水加工が施されている。そのため、雨水を弾き飛ばし、内部には水分が浸透しにくい。

すばらしい撥水性! 少しバックパックを動かせば、大半の水滴は振り落とせる

すばらしい撥水性! 少しバックパックを動かせば、大半の水滴は振り落とせる

小雨くらいならば、レインカバーなしでもバックパックの内部はほとんど濡れない

小雨くらいならば、レインカバーなしでもバックパックの内部はほとんど濡れない

もっとも、いくら撥水性が高く、防水性を高めた生地であっても、生地の縫い目からは次第に雨水が浸透していく。小雨程度ならともかく、大雨の時はレインカバーを併用したほうがいいだろう。

ところで、背面パッドは入っているものの、金属や樹脂製のフレームやパネルを使っていないスカリ−は小さく折りたたんだり、丸めたりすることができ、収納性にすぐれる。旅行用のサブバッグとしても有用で、スーツケースの中に放り込んでおけば、街中での買い物にも便利だ。もちろん旅先でのワンデイハイクにも活躍するだろう。実は、収納性のよさもスカリ−の特徴なのであった。

このように小さく丸められる。飲料ボトルのサイズで言えば、1.5Lくらいだ

このように小さく丸められる。飲料ボトルのサイズで言えば、1.5Lくらいだ

山行を終えて

背負い心地だけを考えれば、スカリ−以上の小型バックパックはいくつもあるかもしれない。だが、容量24Lで、重量510g。それでいて必要十分な背面パッドが入り、背負い心地も悪くはないモデルはなかなか見つからないだろう。特に小さくまとめられるのはサブバッグとしての可能性を高く感じさせる。自宅で収納する場合もじゃまにならないはずだ。シックなカラーリング(今回使用したネイビーのほか、ブラックもラインアップ)で、老若男女誰でも使いやすいのも長所である。スカリ−は、日帰り登山向けの小型バックパックを選ぶ時の有力候補になるのではないだろうか。

高橋庄太郎

高橋庄太郎

テント泊での登山を中心に1年の半分近くは野外で過ごす、山岳/アウトドアライター。好きな山域は北アルプス。「山道具 選び方、使い方」など、著書も多数。

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