ニコンは2024年6月17日、ミラーレスカメラ「Zシリーズ」の新モデル「Z6III」を発表した。フルサイズミラーレスの中級機だが、一部で上位モデル「Z9」「Z8」を超える性能を実現したハイスペックなカメラに仕上がっている。特徴を速報で紹介しよう。
※本記事で使用した「Z6III」は開発中の試作機です。製品版とは仕様が異なる場合があります。
ティザー動画での予告どおり、2024年6月17日21時に正式発表された「Z6III」
「Z6III」の主な特徴
・世界初の部分積層型CMOSセンサー(有効2450万画素)
・画像処理エンジン「EXPEED 7」
・常用感度(静止画):ISO100〜64000
・被写体検出機能など「Z9」「Z8」ゆずりの高性能AF
・FXで60fps、DXで120fpsの超高速連写
・約576万ドット/最大4000カンデラの高品位EVF
・バリアングル液晶モニター(3.2型、約210万ドット)
・CFexpress Type B/SDのダブルスロット
・補正効果8段分のボディ内5軸手ブレ補正
・動画:6K/60p RAW記録、フルHD/240p記録などに対応
・「Z8」と同等の堅牢性/信頼性
・「フレキシブルカラーピクチャーコントロール」からの書き出し・登録が可能
・新サービス「Nikon Imaging Cloud」に対応
・サイズ:約138.5(幅)×101.5(高さ)×74(奥行)mm
・重量:約760g
・発売日:2024年7月12日
・予約受付開始:6月19日10時
・ニコンダイレクト価格:435,600円(ボディ単体、税込)
ニコンは、2021年12月にフラッグシップモデル「Z9」をリリースして以降、フルサイズミラーレスのラインアップを拡充している。「Z9」の性能を凝縮した「Z8」を2023年5月に、ヘリテージデザインを採用した「Zf」を2023年10月にリリース。いずれも価格.com「デジタル一眼カメラ」カテゴリーの人気売れ筋ランキングで1位を獲得するなど、目の肥えたカメラファンを中心に人気を集めている。
そして、ここ3年くらいのニコンの勢いをそのままに、満を持して登場したのが、今回の新モデル「Z6III」だ。モデルナンバー的にはフルサイズの中級機に位置づけられる製品だが、ニコンが持っている技術を惜しげもなく投入することで、中級機の枠を超える高性能を実現しているのが大きな魅力だ。
「Z6III」が搭載する技術の中で特に注目なのは、フルサイズミラーレスでは世界初の採用となる「部分積層型CMOSセンサー」。その名のとおり、部分的に画素と回路を積層構造にすることで、コストを抑えつつ画質と処理速度を両立しているのが特徴だ。
フルサイズミラーレス初の部分積層型CMOSセンサーを採用。センサーの上下の積層部に高速処理回路を配置している
さすがに、画素と回路が完全に独立する「積層型CMOSセンサー」と比べると性能は落ちるとのことだが、処理速度は速く、「Z6II」比で約3.5倍の高速読み出しを達成。このセンサーの搭載によって、最高約120コマ/秒(DXフォーマット時)の超高速連写、連写時の滑らかなファインダー表示、ローリングシャッター歪みの低減、AF演算サイクルの高速化、6K/60p RAW内部記録などを実現している。
なお、「Z6III」の最高シャッタースピードはメカシャッター時が1/8000秒、電子シャッター時が1/16000秒。フラッシュ同調はメカシャッター時が1/200秒以下で、電子シャッター時が1/60秒以下(※オートFPハイスピードシンクロは不可)だ。
CFexpress Type B/XQDカードとSDカード(UHS-II対応)のダブルスロットを採用
「Z6III」では、世界初の部分積層型CMOSセンサーとあわせて、電子ビューファインダー(EVF)にも注目してほしい。「Zシリーズ」はどのモデルもEVFの見え方のよさで定評があるが、「Z6III」は、ニコンが「Zシリーズ史上最高」と自信を持つほどのEVFに仕上がっているのだ。
「Zシリーズ史上最高」のEVFを搭載
まず、EVFの解像度が約576万ドットに向上したのが大きい。これは「Z9」「Z8」などの約369万ドットを超える、「Zシリーズ」最高の解像度だ。さらに、ミラーレスカメラ史上最高をうたう最大4000カンデラの高輝度に対応。「Z9」「Z8」は最大3000カンデラなので、こちらも「Zシリーズ」最高の明るさを誇る。EVFの明るさを「オート」に設定した場合の上限も2500カンデラ(「Z8」は2000カンデラ)と高く、極端に明るいシーンでも調整なしで視認性を確保できるのがポイントだ。
加えて、ミラーレスとして初めて、sRGBを超えるDCI-P3相当の広色域表示に対応するのもトピック。イルミネーションなど高輝度な被写体をHLGで撮影する際に、HDRモニターに近い見え方で確認できるようになった。
このほか、電子シャッターでの最高約20コマ/秒連写時に60fpsでの滑らかな映像表示に対応。光学系は「Z6II」と同等で、ファインダー倍率は約0.8倍、アイポイントは21mm。ファインダー表示サイズの切り替え(標準、小さめ)にも対応している。
「Z6III」は非常にすぐれた連写性能を搭載するのも大きな特徴だ。
メカシャッター時で最高約14コマ/秒、電子シャッター時で最高約20コマ/秒の連写が可能なうえ、JPEGでの超高速連写機能「ハイスピードフレームキャプチャー+」時は、FXフォーマット(フルサイズ)で最高約60コマ/秒、DXフォーマット(APS-C)で最高約120コマ/秒の超高速連写に対応。シャッターボタンを全押しする前の状態(最大1秒前まで)を記録できるプリキャプチャー機能も搭載している。
特に、FXフォーマット/2450万画素で最高約60コマ/秒連写に対応しているのがポイント。上位モデル「Z9」「Z8」の最高約60コマ/秒連写は、DXフォーマット/約1900万画素での記録だったので、「Z6III」は、上位モデルを上回る性能を実現していることになる。
FXフォーマットでの最高約60コマ/秒連写に対応
AFは上位モデル譲りで、人物/犬/猫/鳥/車/バイク/自転車/列車/飛行機の計9種類の被写体検出に対応。「Z9」「Z8」と同様、飛行機撮影に特化した「飛行機」専用モードを搭載している(※「鳥」専用モードは非搭載)。合焦速度は「Z6II」比で約20%高速化しているとのこと。AFの低輝度限界は-10EVで「Zf」と同等だ。
「人物」「動物(犬/猫/鳥)」「乗り物(車 /バイク/自転車/列車)」「飛行機」の被写体検出に対応。人物は顔/瞳以外に頭部/胴体も認識する
「Z6III」の画質面では、画像処理エンジン「EXPEED 7」の採用によって、静止画撮影時の常用最高感度が、「Z6II」のISO51200からISO64000に向上。高感度撮影時に「Z6II」よりもノイズも抑えた描写を実現している。
「Zf」と同様、常用感度は最高ISO64000に対応している
また、RAW現像ソフト「NX Studio」に追加される新しい調整機能「フレキシブルカラーピクチャーコントロール」を使って設定した画作りを、メモリーカードを介して「Z6III」本体に「カスタムピクチャーコントロール」として登録できるのも特徴だ。
さらに、新しいクラウドサービス「Nikon Imaging Cloud」にいち早く対応するのもトピック。このサービスでは、著名なクリエイターが作成した「ピクチャーコントロール」設定をカメラに直接ダウンロードできる「イメージングレシピ」や、撮影した静止画をアップロードして外部オンラインストレージに自動転送できる機能、自動ファームウェアバージョンアップ機能などが用意される。
「フレキシブルカラーピクチャーコントロール」では、色相ごとの色調整と明暗別の色調整に対応。細かいカラーグレーディングが可能だ
「フレキシブルカラーピクチャーコントロール」で設定した画作りは「カスタムピクチャーコントロール」として「Z6III」本体に登録できる。なお、2024年6月17日時点では、画作りの登録に対応するのは「Z6III」のみ
「ピクチャーコントロール」の「リッチトーンポートレート」や「美肌効果」「人物印象調整」など人物撮影用の設定・機能が用意されているのも特徴だ
動画撮影機能が充実しているのも「Z6III」の魅力だ。
12bit RAW(N-RAW)での6K/60p記録、10bit ProRes 422 HQ/H.265での5.4K/60p記録、10bit H.265での4K UHD/120p記録(APS-C)、10bit H.265でのフルHD/240p記録(FXの95%の画角)といった多彩なフォーマットに対応。6Kオーバーサンプリングによる4K UHD/60p記録も可能だ。8bitでの4K UHD/60p記録時は最高125分の長時間撮影に対応している。
RAWのカメラ内部記録に対応。N-RAW/ProRes RAW HQでは6K/60p記録が可能だ
さらに、ニコンとしては初めて音声のライン入力に対応するのも見逃せない。マイク入力端子をライン入力として使用可能で、音響ミキサーやマイクから音声を収録することができる。
このほか、広角レンズ使用時の台形歪み補正にも対応する電子手ブレ補正機能を搭載。N-Log使用時の感度をLo 2.0(ISO200相当)まで下げられるようになった。解像感を保ちつつズーミングできる「ハイレゾズーム」や、4K UHDタイムラプス動画機能なども備わっている。
マイク入力端子はライン入力にも対応している。HDMI端子はフルサイズのType-A
動画撮影との親和性を考慮し、タッチパネル対応のバリアングル液晶モニター(3.2型、約210万ドット)を採用している
上面右側のシャッターボタン周りの3連ボタンは、「Z9」「Z8」と同様、横に並ぶレイアウトに変更された
付属バッテリーは「Z8」などと同じ「EN-EL15c」
「Z6III」は、「Z6シリーズ」としては約4年半ぶりの新モデルで、従来モデル「Z6II」と比べると性能が大幅に底上げされている。フルサイズミラーレスの中級機としては、静止画撮影、動画撮影の両方で間違いなくクラスナンバーワンのスペック。現時点での「Zシリーズ」のラインアップでは、「Z9」「Z8」に次に位置づけられるハイスペックモデルだ。
うれしいのは、コンパクトなサイズ感を保ったまま性能向上を実現していること。サイズは約138.5(幅)×101.5(高さ)×74(奥行)mmで、重量は約760g(バッテリーおよびメモリーカードを含む、ボディキャップ、アクセサリーシューカバーを除く)。「Z8」と比べるとひと回り小さくて軽いボディだ。
「ニコンダイレクト」での価格は、ボディ単体が435,600円、標準ズームレンズ「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」が付属するレンズキットが551,100円(いずれも税込)。「Z6II」と比べると価格が上がっているが、「中級機最強」と言っても過言ではないスペックと昨今の経済状況を考慮すると、納得のプライスではないだろうか。
特に、「『Z8』は少し大きいので購入を躊躇していた」という人にぜひ手に取ってほしいカメラだ。発売は2024年7月12日で、6月19日10時より予約受付を開始する。6月18日10時30分より、ニコンプラザ東京/ニコンプラザ大阪にて「Z6III」の先行タッチ&トライが実施されるので、気になる人はぜひ足を運んでほしい。6月23日(日)はタッチ&トライ開催にあわせてショールーム・ギャラリーを臨時営業するとのことだ。
なお、これまで「Zシリーズ」は、モデル名の「Z」とナンバリングの間に半角スペースが入るのが正式な表記ルールだったが、「Z6III」の発表をもってこのルールがなくなっている。よって、本記事では「Z」とナンバリングの間の半角スペースをなくす表記で統一した。