2015年2月20日に発売になった、オリンパスのミラーレス一眼カメラ「OM-D E-M5 Mark II」が話題だ。2月28日時点の価格.com「デジタル一眼カメラ」カテゴリーの注目ランキングで、他の一眼レフやミラーレス一眼を抜いて、1位に躍り出ている。最大の特徴は、レンズ交換式カメラとして世界最高(※2015年2月5日のリリース時点)となる、5段分の補正性能を実現した手ブレ補正機能を内蔵していることだ。
オリンパスの新型ミラーレス一眼 OM-D E-M5 Mark II。写真で装着しているレンズは、防塵・防滴性能などが追加された高倍率ズームレンズのリニューアルモデル「M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II」
シルバーカラーも用意されている
OM-D E-M5 Mark IIの最大の注目点は、ボディ内手ブレ補正機能の進化だ。
オリンパスのデジタル一眼カメラは、センサーシフト式の高性能な手ブレ補正機能をボディに内蔵している。従来モデルのOM-D E-M5では、レンズ交換式デジタル一眼カメラとして世界で初めて5軸対応の手ブレ補正を実現した。新モデルのOM-D E-M5 Mark IIは、その効果がさらに向上。磁力でセンサーユニットを常時動かすVCM方式の機構と、ピッチ/ヨーの角度ブレに、上下/左右の並進ブレ、光軸の回転ブレを加えた5軸補正を継承しつつ、メカの精度をアップしたり、検知センサーや補正のアルゴリズムを見直すことで、シャッタースピード換算で5段分の補正性能(CIPA基準)を実現している。CIPA基準で見てみると、オリンパスのミラーレス一眼では、これまでフラッグシップモデルの「OM-D E-M1」の4段分というのが最高であったので、1段分性能が向上したことになる。製品のリリース時点(2015年2月5日)では、レンズ交換式カメラとして世界最高性能の手ブレ補正機能となっている。
OM-D E-M5 Mark IIのボディ内5軸手ブレ補正機能は、「ボディ内でセンサーを動かす仕組みであるため、装着するすべてのレンズで手ブレを低減できる」という、ボディ内手ブレ補正の基本的な特徴のほかに、レンズシフト式では補正できない、長秒撮影時に発生する回転ブレを低減できるのもメリット。従来モデルから、シャッターボタン半押し中に、ファインダー内表示に手ブレ補正効果を加える「半押し中手ぶれ補正」なども継承している。
実際に試して見ると、その補正性能の高さがわかる。OM-D E-M5 Mark IIに望遠ズームレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」を装着して、焦点距離150mm(35mm判換算300mm)の望遠端で手持ち撮影を行ってみたが、シャッタースピード換算で約5段分の補正となる1/10秒では、およそ半分のショットで手ブレを抑えることができた。約3段分の補正となる1/40秒では、ほぼすべてのショットで手ブレが発生しなかった(※いずれもワンショットで計30枚撮影)。また、場合によっては5段分を超える効果を発揮することも確認できた。他モデルの手ブレ補正と比較したわけではないが、かなり高い補正効果を発揮するカメラであることは間違いない。
オリンパスは、APS-Cよりもセンサーのサイズが小さいマイクロフォーサーズ規格(フォーサーズ規格も含めて)を一貫して採用し、コンパクトなレンズ交換式デジタルカメラを開発してきた。また、ボディ内手ブレ補正にこだわって、その精度を磨いてきた。マイクロフォーサーズ規格のメリットを長年にわたって追求し、高性能なボディ内手ブレ補正機能を搭載する小型カメラを開発し続けてきたからこそ、OM-D E-M5 Mark IIにおいて5段分という世界最高性能を実現できたのだ。
5段分の補正性能を実現したVCM方式の5軸手ブレ補正機能を内蔵
OM-D E-M5 Mark IIは、動画撮影機能も大きく進化している。60pでのフルハイビジョン記録が可能になったほか、50Mbpsを超える高ビットレートにも対応。さらに、動画撮影時も5軸手ブレ補正が可能になり、電子手ブレ補正と組み合わせて、従来以上に手ブレを抑えた動画を撮影できる。動画撮影用のオートフォーカスと自動露出のアルゴリズムも刷新されており、より高品位なフルHDムービーを撮影できるようになった。
このほか、複数のショートムービーをつなぎ合わせたうえで、エフェクトやBGMを加えて1つのムービーに仕上げる「クリップス」機能も搭載している。
動画撮影時の手ブレ補正モードは、ボディ内5軸手ブレ補正に電子手ブレ補正を組み合わせることで、より強力な補正効果が得られる「M-IS1」と
5軸手ブレ補正のみの「M-IS2」を選べる
撮影機能では、ボディ内手ブレ補正を生かした新機能「40Mハイレゾショット」に注目したい。ハイレゾショットでは、0.5ピクセル単位の狭い範囲でセンサーユニットを動かしながら、8枚を連写・合成することで、4000万画素相当の高解像度画像を生成する。VCM方式の手ブレ補正機能を採用し、センサーユニットを非常に細かいエリアで高精度に動かせるために実現できた機能だ。動かない被写体に限定され、三脚利用が必須になるが、4000万画素相当の画像が得られるのは魅力である。
40Mハイレゾショットでは、JPEGだけでなく、RAW+JPEGでの撮影も可能。生成される画像データは、JPEGが7296×5472(ファイルサイズ約20MB)、RAWが9216×6912(ファイルサイズ約100MB)となっている。40Mハイレゾショットで撮影したRAWデータは、専用ソフト「Olympus Viewer 3」での現像は不可となっており、Photoshop 64bit版(CS5以降)に専用プラグインをインストールすることで現像を行える(※カメラ内でのJPEG変換も可能)。専用プラグインで編集できるパラメータは、露出補正、ホワイトバランス、コントラスト、シャープネス、彩度、カラー設定(sRGB/Adobe RGB)。
40Mハイレゾショットはドライブモードで選択する
OM-D E-M5 Mark IIのボディは、「OM-D」シリーズらしく、クラシックな雰囲気の一眼スタイルのデザインを採用している。モードダイヤルにロック機能が追加されたり、ファンクションレバーを搭載するなど、従来モデルOM-D E-M5から操作性がブラッシュアップされているほか、全体的なデザインも変わった。特に、印象的なのがファインダー部。上部カバーの重心を下げ(ボディの高さはOM-D E-M5の89.6mmから85mmになった)、ファインダーのデルタ形状を強調するデザインになり、より筋肉質な印象のボディになった。ボディ上面のダイヤルなどの存在感も高まったような印象を受ける。さらに、ボディの作りも向上しており、防塵・防滴に加えて、耐低温(-10度)性能も有するようになった。操作ボタンのクリック感やグリップの形状も見直されている。なお、ファインダー接眼部の上にあったアクセサリーポートは省略されている。
モニターは、上下方向に動かせるチルト可動式の3.0型有機ELモニター(約61万ドット、3:2)から、横に開くバリアングル可動式の3.0型液晶モニター(約104万ドット、3:2)に変更。他のオリンパス製ミラーレス一眼と同じく、タッチパネルに対応しており、タッチシャッターなどの各種タッチ操作が可能だ。オリンパス製ミラーレス一眼としては初のバリアングルモニター搭載モデルとなる。チルトとバリアングルは、使い方の違いで一長一短があるが、OM-D E-M5 Mark IIでは、モニターを反転させての自分撮りが可能となっている。
ファインダー部の重心が下がり、より筋肉質なイメージのボディになった。ボディサイズは123.7(幅)×85(高さ)×44.5(奥行)mm(突起部含まず)で、重量は約469g (付属バッテリーおよびメモリーカード含む、アイカップなし)。付属バッテリーはOM-D E-M1/E-M5と同じ「BLN-1」で、撮影可能コマ数は約310枚
ロック機能付きのモードダイヤルや、ファンクションレバーを搭載。OM-D E-M1に近い操作系になった
バリアングル可動式の3.0型液晶モニター(約104万ドット、3:2)を採用
OM-D E-M5 Mark IIは基本性能も向上。フラッグシップのOM-D E-M1に匹敵する内容になっている。
撮像素子には、光学ローパスフィルターレス仕様の有効1605万画素Live MOSセンサーを採用。画像処理エンジンは、OM-D E-M1と同じ最新の「TruePic VII」になった。感度はISO200〜ISO25600に対応。ISO100相当のISO LOWも利用できる。
電子ビューファインダーも高性能で、OM-D E-M1と同等となる、236万ドットで倍率1.48倍(35mm判換算0.74倍)のファインダーを採用。35mmフルサイズ一眼レフに匹敵する見え方を実現しているのが特徴だ。フレームレートを「高速」に設定すれば、表示タイムラグを0.010秒にまで短縮できる。
オートフォーカスシステムには、81点の測距点を持つ高速・高精度な「FAST AF」を採用。測距点の大きさを小さくできるほか、拡大表示したライブビュー画像の中心部分のみをAFポイントにして、最大70倍の小さなAFエリアでピント合わせが行える「スーパースポットAF」の利用が可能になった。マクロ撮影時や望遠撮影時など、ピンポイントで厳密なピント合わせを行いたいときに便利な機能だ。4色(白/黒/赤/黄)対応のフォーカスピーキング機能も利用できる。
81点の測距点を持つ「FAST AF」を採用
さらに、最高1/8000秒対応のメカニカルシャッターを採用。OM-D E-M5ではシャッタースピードが最高1/4000秒に抑えられていたが、OM-D E-M5 Mark IIでは、1/8000秒でシャッターが切れるようになった。レリーズタイムラグは0.044秒で、OM-D E-M1と同等の短さになっている。さらに、センサーの駆動速度の高速化や、AFアルゴリズムの改善、高速駆動対応の「MSCレンズ」によって、撮影タイムラグもOM-D E-M5と比べて45%短縮。オリンパスによれば、2015年2月5日現在発売済のレンズ交換式カメラにおいて、世界最短の撮影タイムラグを実現しているとのことだ。
このほか、最高1/16000秒の電子シャッターにも対応。「静音撮影モード」での無音撮影も可能になった。連写性能は、連写H(ピント・露出1枚目固定)で最高約10コマ/秒、連写L(AF追従可)で最高約5コマ/秒にスペックアップ(従来はそれぞれ約9コマ/秒、約3.5コマ/秒)。UHS-IIカードの利用が可能になり、最大撮影コマ数も増えており、連写L時であればRAW/JPEGともにカード容量いっぱいまで撮影できる。
撮影機能では、夜空の星の動きなど、光の動きを切れ目のない光跡として記録する「ライブコンポジット」や、設定した間隔で露光中の画像を更新表示する「ライブバルブ/ライブタイム」、シフトレンズを使用したような効果が得られる「デジタルシフト」といった機能を搭載。Wi-Fi機能も内蔵しており、専用アプリ「OLYMPUS Image Share」を使うことで、スマートフォン/タブレット端末に画像を転送したり、スマートフォン/タブレット端末からのリモート撮影が可能だ。カメラコントロールシステム&専用PCアプリ「OLYMPUS Capture」を使っての撮影にも対応している。
無音撮影が可能な「静音撮影モード」を用意
SDHC/SDXC、UHS-I/II、Eye-Fiカード対応のSDメモリーカードスロットを搭載
防塵・防滴仕様の外付けフラッシュ「FL-LM3」が同梱。上方向に90度、左右に180度動かせるタイプでバウンス撮影も可能
オリンパスは、新しいカメラをリリースするにあたって、性能や機能の出し惜しみが少ないメーカーだ。そのため、新モデルには、これまでにはなかった最新のスペックが搭載されることが多く、下位モデルが上位モデルと同じ性能を持ったり、場合によっては、一部の性能・機能が上位モデルを超えてしまうこともある。今回のOM-D E-M5 Mark IIでは、手ブレ補正機能において、フラッグシップのOM-D E-M1を超える5段分という補正性能を実現した。その他、基本性能でもOM-D E-M1に匹敵する内容が多く、下位モデルではあるものの、フラッグシップに肉薄する性能を持つ高品位モデルに仕上がっている。
OM-D E-M5 Mark IIのボディ単体の価格は108,000円程度(2015年2月28日時点の価格.com最安価格)。OM-D E-M1は113,000円程度(同)。OM-D E-M5 Mark IIは、2月20日に発売されたばかりということもあって、現時点では、発売から1年以上が経過したOM-D E-M1とほぼ同価格帯になっている。どちらを購入しようか悩んでいる方も多いはずだ。
両モデルの性能を比べてみると、オートフォーカスと連写性能、最大撮影コマ数が異なっていることがわかる。OM-D E-M1は、フォーサーズ規格とのシステム統合を狙ったモデルで、コントラストAFの「FAST AF」に像面位相差AFを加えた「DUAL FAST AF」を採用しており、フォーサーズ規格のレンズを装着した際に像面位相差AFが使えるようになっている。連写性能も高く、ファームウェアver.3.0の追加機能によって追従性能が向上し、約9コマ/秒でのAF追従連写が可能になった。撮影可能コマ数も多く、最高約10コマ/秒の連写H(ピント・露出1枚目固定)時では、RAWで約41コマ、JPEGで約95コマまで撮影できる(OM-D E-M5 Mark IIは、同じ最高約10コマ/秒の連写H時で、RAWが約16コマ、JPEGで約19コマ)。また、OM-D E-M1は大きくてしっかりと握れるグリップになっているので、大きなレンズを装着する場合には、OM-D E-M1のほうがホールド感がよいだろう。
フォーサーズ用レンズでより高速なオートフォーカスを利用したい場合や、動物やスポーツなどの動体撮影がメインの利用用途である場合は、やはり、フラッグシップのOM-D E-M1のほうがベターな選択になるだろう。いっぽう、よりコンパクトなボディと、高性能な手ブレ補正機能に魅力を感じ、旅行やスナップ撮影をメインで使うのであれば、OM-D E-M5 Mark IIのほうが、購入後の満足度が高くなるのではないだろうか。