イベントレポート
【CES 2019現地レポ】自動車だけじゃない! ハーレーからキックボードまでもがネットにつながる

5G普及に先駆け、ネット接続で便利になるコネクテッド・ビークルが集結!

アメリカ、ネバダ州のラスベガスで開催されている民生用テクノロジーの見本市「CES 2019」では、これからの未来を担うとされるさまざまなテクノロジーが紹介され、関連する幅広いジャンルの製品が展示されています。かつて、CESに登場した技術や製品の中にはその後大きく世界を変えたものから、鳴かず飛ばずであったものまでさまざまですが、少なくとも「テック業界が今年注目しているトレンド」を知るために最適な場所であると言えるでしょう。

そんな「CES 2019」のテーマとしてフィーチャーされていたのが大容量かつ低遅延の次世代移動通信システム「5G」でした。5Gと言えば、スマートフォンやIoT製品への活用が見込まれていますが、「CES 2019」ではコネクテッド・ビークル(ネットワーク接続の自動運転カー)や電動バイク、電動キックボード(アメリカではスクーター)、電動自転車が5G関連の製品として多数出展されていました。本記事では、現地で見つけた5G関連の乗り物にフォーカスしてレポートします。

「CES 2019」に登場したコネクテッド・ビークルは以下の動画からご確認ください。

スマホだけじゃない。チップセットメーカー、クアルコムが自動車で目指す未来

チップセットメーカーとして、すでに5G対応のモバイル向けCPU「Snapdragon 855」やモデム「Snapdragon X50」を発表しているクアルコムは、「CES 2019」でプレスカンファレンスを実施しました。その中で「私たちのネットワークは、これまで30年に渡り人と人をつなげてきました。これからの30年間はモノとモノをつなげていきます」というビジョンが紹介され、このモノとモノをつなげる技術のひとつとして大きく取り上げられたのが自動車です。

クアルコムは、自動車と自動車、自動車と人、自動車と道路インフラ(信号機や標識など)をLTEや5Gで接続する通信システム「C-V2X」(セルラーV2X)の実証実験をアウディ、フォード、ドゥカティと共同で「CES 2019」期間中に行い、そのライブデモをブースにて展示(クアルコムは「9150 C-V2X」というチップセットを供給)。実際に搭載ビークルがラスベガスを走行しながら、安全性や走行効率といった観点から「C-V2X」の有用性をアピールしていました。

さらに、AIをベースとした自動車用コックピットプラットフォームの第3世代「Snapdragon Automotive Cockpit Platform」を発表。これは、AIによる運転サポートや車内エンタメなどを提供する車内システムで、発表会ではアマゾンの音声アシスタント「Alexa」を動作させるデモが披露されました。

クアルコムは年間約130万人が交通事故の被害にあっているというWHOのデータなどを紹介し、5Gの技術を活用した通信システムが、自動車の安全性を向上させ、こういった問題を解決すると説明

自動車用コックピットプラットフォームの第3世代「Snapdragon Automotive Cockpit Platform」。映画で見たような世界が5Gによって実現しようとしています

なお、CESを主催する全米民生技術協会 (CTA)によれば、2020年には「ほぼ自動運転」とも言える高度運転支援が広く実用化され、2030年には人間の作業を必要としない完全自動運転が実用化されるとのこと。もちろん、法律の整備や保険の扱い、そして人間(ドライバー)が自動運転カーと一緒に走ることへの慣れなど、技術以外にも考慮すべき点はありますが、5Gの普及により自動運転の未来はグッと近づきます。

CTAが公開した自動運転のロードマップ

CTAが公開した自動運転のロードマップ

サンフランシスコ、ワシントンD.C.、サンホセなどでは自動運転カーの実証試験が進められています

サンフランシスコ、ワシントンD.C.、サンホセなどでは自動運転カーの実証試験が進められています

「CES 2019」で注目のコネクテッド・ビークル

トヨタやフォードといった自動車大手から多くの新興メーカーが集まった「CES 2019」。ここでは注目度の高かった出展ブースを紹介します。

「CES 2019」が初参加となったオーストラリアのAEV ROBOTICSは「CONNECTED. AUTONOMOUS. ELECTRIC.(ネットワーク接続、自動、電動)」にフォーカスしたロボットメーカーです。同社は、シェアリング電動自動運転カーのモジュラーシステム「MVS」を発表。これは、ホイールなどベースとなるパーツをモジュラー方式にし、その上部に異なる形の“ポッド”を取り付けるもので、製造コストの大幅な削減が可能です。コンシューマー向けではなく、法人向けの製品で、カーシェアリングのほかタクシーなどへの活用が見込まれています。

「MVS」は、あえて時速40km以上の走行をしない仕様にすることで軽量化と低コスト化を実現したモジュラーシステム。同社のデザイナーは「電動自動車の多くは静止状態から○秒で時速100kmに到達する、というような速度競争をしていますが、私たちはそのまったく逆です」と說明してくれました

街中を自動で走るシェアリングカーやタクシーへの活用を想定しているためか、内装はいたってシンプル。人が乗るタイプだけでなく貨物用自動運転カーなどとしても運用できます

自動運転機能を備えたラグジュアリーカーを開発する中国のメーカー「BYTON(バイトン)」は、創業から年月が浅いものの「テスラ・キラー」とも言える高級感のある電動自動車の販売に成功しているメーカーです。「CES 2019」では、車載OSがAmazonの音声アシスタント「Alexa」との連携で、音声操作のほか、プライムビデオのコンテンツを視聴できるといった機能を紹介していました。

2019年中の発売が予定されているセダン「K-Byte」は、同社の2世代目となるモデル。大手自動車メーカーの多くが、自動運転カーやコネクテッド・カーについてはコンセプトモデルの展示にとどまるケースが多い中、BYTONは自動運転機能を搭載するEVの販売をすでに始めており、テスラを追う新興メーカーとして存在感を高めつつあります

グーグルと同じく、アルファベット傘下の「ウェイモ」は、自動運転技術を開発する企業で、2018年12月には有人の自動運転カーを使った配車サービスをアメリカのフェニックスで実用化しました。

ただし、一部のハードウェアは自社で設計していますが、車両そのものの開発や販売などは行っていません。筆者が「どのメーカーをライバルと見ているか?」と質問すると、「私たちは他社に興味がなく、ただ自分たちのベストを追求するだけです」という超然とした解答が返ってきました。

ウェイモが稼働中の配車サービス向けの自動運転カー。シェアライド大手のUberが公道での事故でつまずく中、ウェイモは着実に実績を積みつつあります

ハーレーダビッドソンが電動バイクの予約受付を開始

2014年にプロトタイプが登場し、テストが繰り返されていたハーレーダビッドソンの完全電動バイク「LiveWire」。その予約受付が、「CES 2019」でついにアナウンスされました。爆音をあげるガソリンエンジンのイメージが強いハーレーが、電動バイクを発売するというのは感慨深いものがあります。なお、価格は29,799ドル(約323万円)からで、2019年秋にアメリカと西ヨーロッパで納車が始まる予定とのこと。なお、日本国内での発売時期や価格は未発表です。

パナソニックと共同で開発した「H-Dコネクト」により、バイク本体がインターネットと接続。充電状況や盗難になっていないか、といった情報をスマートフォンのアプリから確認できます

フル充電状態では最長177kmの走行が可能で、静止状態から3.5秒で時速約96kmに到達可能。最高時速は未発表です

復活のセグウェイ。シェアスクーター界の寵児に

体重移動だけで操作できる電動の2輪車で一世を風靡したセグウェイが、姿を変え今アメリカで注目を集めています。西海岸を中心に「バード」や「ライム」といった電動キックスクーター(アメリカではスクーターと呼ばれる)のシェアリングサービスが利用者を拡大しつつあるのですが、そういったサービスに車両を供給しているのがセグウェイを開発するセグウェイ・ナインボットなのです。

スカートやスーツなどを着ていても、自転車より乗りやすいといったメリットがあるスクーターは、「UberやLyftなどのシェアライドを使うほどではないけれども、歩くには遠い」という距離の移動手段としてユーザーを増やしつつあります。また、サービス提供する事業者にとっても、電動自転車より安く生産でき、かつ稼働部品が少ないため壊れにくいといったメリットがあるため、参入企業が増えているとのことです。

セグウェイ・ナインボットが供給する電動キックボード。セグウェイ・ナインボットの担当者は「エアライン会社と飛行機メーカーは別ですよね? 私たちはバードやライムのようなシャリングスクーターのサービス提供はしません。ただ、最高の電動スクーターをつくるだけです。言ってみれば、私たちはシェアリング・スクーター界のボーイングになりたいのです」と話してくれました

2018年の販売台数は約150万台。ほとんどが大手シェアリング・スクーター事業者向けのOEMとのこと

2018年の販売台数は約150万台。ほとんどが大手シェアリング・スクーター事業者向けのOEMとのこと

CES 2019で発表された新型の電動キックボード「MAX」は、一般的なモデルの倍近い60kmの連続走行が可能。最高時速は25kmで、積載可能重量は最大100kgです

セグウェイ・ナインボットは、「MAX」のアクセサリーとしてSIMカードを備えた通信ができるスマートモジュールも用意しており、同社のOEM車両を使ったサービス提供者が、容易に開発を行えるようにするとも発表しています。これはまさにコネクテッド・ビークル時代におけるメーカーのお手本とも言える戦略で、シェアリングサービスの開発者側はアプリとモジュールのプログラミングさえできればIoTデバイスを製造しなくてもいいというわけ。メーカー側がハードを開発することで、シェアリングサービスのプラットフォーム化を達成しつつある新生セグウェイはコネクテッド時代の成功例として要注目です。

自転車だってコネクテッド

英国を拠点とするカー&サイクリング部品販売会社、「ハルフォーズ」は「世界初のAlexa搭載」をうたう電動自転車「Cybic Legend」を展示していました。

Alexaによるボイスコントロールでルート検索や音楽再生、ライトのオン/オフなどが行えます

Alexaによるボイスコントロールでルート検索や音楽再生、ライトのオン/オフなどが行えます

デモ機はバッテリー切れで、ボイスコマンドの自転車体験はできず……

デモ機はバッテリー切れで、ボイスコマンドの自転車体験はできず……

残念ながら現地ブースで「Cybic Legend」を体験することはできませんでしたが、現状スマートフォンでルートをナビしたり、音楽を再生しているサイクリストからすると非常に期待度の高い製品ではないでしょうか。バッテリー持続時間などは明らかにされていませんが、発売は2019年夏を予定しています。日本での発売については未定です。

乗り物同士やインフラが5Gネットワークを介してつながり、高度な自動運転が実現されるのはまだ少し先の話のようですが、「ネットとつながることで、ちょっと便利、ちょっとたのしい」というメリットが享受できる製品はすでにその姿を見せつつありました。「CES 2019」で垣間見えたコネクテッド・ビークルは、一瞬で世界を変えるようなイノベーションではないのかもしれませんが、ジワリジワリと私たちの周りに増えていきそうです。

Mr.TATE(Masahira TATE)

Mr.TATE(Masahira TATE)

世界50カ国以上を旅したバックパッカー。週間アスキー編集部などを経て、AppBankに入社。「バイヤーたてさん」として仕入れとYouTubeを活用したコンテンツコマースに取り組み、上場時は広報として企業PRを担当。現在はフリーランスで活動中。

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