「ナニコレ?! めっちゃくちゃイイ!」と、思わず試乗しながら叫んでしまったほど、とっても完成度が高かったのが、スズキ「eビターラ」。スズキ初のBEV(電気自動車)だというのにもかかわらず、これほどまでに完成形として出てきたのにはきちんと理由がありまして、「ウチは最後発になりますから、他社のBEVをすべてベンチマークと見立てて、トコトン研究しましたし、逆に最後発ゆえに市場の声を聴いて取り入れられたんですよね」と、スズキの開発者さんが仰っていました。
なるほど、このリリース時期を「出遅れた」と取るか、「満を持して」と取るかということですが、「eビターラ」の場合はまさに満を持してというのが正解! だと言い切ってよいと思える出来栄えでした。
2025年9月16日、スズキは日本での「eビターラ」の発売日を2026年1月16日と発表した
そんなスズキ初のBEVは、SUVというカテゴリーでの登場となりました。ビターラという名前、日本ではなじみが薄いですが、実は世界ではこれまでも使われていた名前でして、日本では「エスクード」と呼ばれていたSUVがこれに当たります。したがって、世界的には「eビターラ」でわかりやすいのですが、日本的に言うと、「エスクード」のEVが出てきたという風にとらえていただけると、なじみやすいかと思います。
ボディサイズは全長4275×全幅1800×全高1640(mm)と、小さすぎず大きすぎずとても使いやすいサイズ。駆動方式は、2WDモデルと4WDモデルがあり、パワースペックと電池の搭載量は、2WDは2種類、4WDは1種類の設定です。
1回の充電で走行できる距離は、総電力量49kWhの2WDで400km以上。総電力量61kWhの2WDで500km以上。4WDは450km以上とカタログスペックとしては発表されていますが、これだけ走ればさほど困ることはないでしょう。
EVになった途端、航続距離がものすごく気になる気持ちもわかりますが、ガソリン車と比べても納得できる数値ですし、ドライブシーンを考えても、400kmも走れば一度くらいは休憩するはず。ロングドライブはあまりしないという方は、1週間の走行距離を再確認していただくのがオススメです。通勤とお買い物とで1週間で300kmくらいしか走っていなかった……なんていう方も、意外といらっしゃるかもしれませんね。その場合は、ご自宅に充電設備がなくても、1週間に一度ショッピングセンターなどにお買い物に出かけて、そこで充電するなんていう使い方も可能かと思います。EVだからと身構えすぎずに、よ〜く自分のクルマの使い方を見直してみると、あれ? 意外と大丈夫かも? という方、予想以上に多いのです。
スズキは「eビターラ」に、安全性が高くバッテリー寿命も長いリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用した
ガソリンスタンドがどんどん減少している昨今、電気は日本中どこでもほぼ通っています。また、考えたくはないですが、地震大国日本のこと、有事の際はガソリンの供給より電気の復旧のほうが早いことが多いんですよね。となると、移動手段が手に入る、電化製品が使えるというのは、とても心強い。クルマを複数所有している方は、動く充電池としてEVを持つというのも、アリな時代になってきたと思います。
さて、そういったEVの基本的な魅力はもちろんのこと、ライバルたちと比べて足りないものが、eビターラにはほぼなかったんですよね。デザインは好みがあるからなんとも言えませんが、質感の高さは十分と言いますか、予想以上でした。
ブラックとブラウンを基調とした、上質感のある「eビターラ」のインパネ。メーターとセンターのディスプレイを同一平面上に配置した「インテグレーテッドディスプレイシステム」を採用し、優れた操作性と繋ぎ目のない1枚ガラスの高い質感によって、BEVならではの先進感を演出している
運動性能的には他社を凌駕しているところもありまして、私のオススメはそれが顕著な4WDモデル。登坂能力は2WDの1.4倍力強いですし、リアタイヤに駆動力を適度に配分できるおかげで、コーナリング性能も高いんです。
また、185mmの最低地上高を過信してラフロードに入ったら、1輪タイヤが浮いて空転してしまって動けない…なんていうシーンもないとは言えませんよね。そんなときも、トレイルモードという脱出モードが備えられているなど、SUVとしてかなり頼りになる本格派なんです。
「オートモード」(上)では、路面状況に応じて各制御を最適化、優れた操縦安定性を実現。「トレイルモード」(下)では空転したタイヤにブレーキをかけることで、タイヤが浮くような悪路からも、スムーズに脱出できる
ここまで聞いてもまだ「冬が不安なのよね。スマホだって電池すぐなくなるし…」と言われる方もいらっしゃると思うのですが、寒冷地への対策もバッチリ考えられています。急速充電の時間を短くするために、充電中や走行中にバッテリーを暖める機能を持っていたり、また走行前にスマホからリモートでエアコンを操作し、車内を適温に暖める際に、一緒にバッテリーも暖められたりします。バッテリーは一般的に暑い寒いには弱いですが、特に東日本商圏で強いと言われているスズキさんだけに、そこはしっかりと考えられています。
ヒーテッドドアミラー、デアイサーまで装備され、冬の寒冷地で使うことが前提とされている
そうそう、最近のクルマは最新の安全装備が装着されていますが、たとえば横滑り防止装置なんて、ガソリン車の5倍ほど早くモーターは反応してくれますので、雪道での安心感も高いです。回生ブレーキを上手に使えば、雪道の難関ブレーキもペダルを踏む回数が減らせますからね。
そんな具合でEVだからこそできること、実はまだまだたくさんあるんです。「eビターラ」は、EV食わず嫌いを克服してくれそうな魅力を持っていますので、ぜひ一度乗ってみてくださいね。きっとEVとの心の距離が縮まること請け合いです。