レビュー
積極的に6MTのシフトチェンジを楽しもう

運転自動化の時代にあえてのMT! 12代目「カローラ」は手漕ぎが楽しい

自動車ライターのマリオ高野です。

皆さん、あのトヨタが新しくMT(マニュアルトランスミッション)を開発し、12世代目の新しいカローラシリーズに採用したのをご存知でしょうか!?

試乗車「カローラ ツーリング W×B」と筆者

試乗車「カローラ ツーリング W×B」と筆者

古式ゆかしきMTをわざわざ新開発!

自動運転や電気自動車の時代を迎えつつある今になって、古式ゆかしきマニュアルトランスミッションをわざわざ新開発するとは驚きです。もはやMTなど、日本ではごく一部のスポーツカーマニアしか選ばないニッチな斜陽メカに成り下がって久しく、このままひっそりと絶滅する運命にあるものとばかり思っていましたが、トヨタがやってくれました!

このほど、トヨタが新しいカローラシリーズに採用したのは「iMT(インテリジェントマニュアルトランスミッション)」という文字どおりの知的なMTで、旧型のカローラシリーズに積まれてきたMTとはまったくの別物。1.2リッターのターボエンジン搭載車にのみ設定されます。最大の注目ポイントは、変速時に自動的に適切なエンジン回転に合わせてくれる機能が備わること。

カローラ ツーリング W×B[6MT]のシフトノブ

カローラ ツーリング W×B[6MT]のシフトノブ

カローラ ツーリング W×B[6MT]のペダル

カローラ ツーリング W×B[6MT]のペダル

また、シフトアップ/シフトダウンの変速操作のアシストに加え、発進時にも微妙にエンジンのトルクをアップさせて、よりスムーズな発進ができるようにもアシストしてくれるのです。MTの運転時に可能な限り避けたい、発進時の「エンスト」をしにくくする狙いもあります。

変速時にエンジン回転数を合わせてくれる

ドライブモードセレクトで「SPORTモード」を選択すると、変速時の自動アシスト機能がONに。同様の機構は現行型・日産「フェアレディZ」やホンダ「シビック タイプR」など、これまでのクルマにも備わった例があり、それらは主にサーキット走行などでドライバーがハンドルとアクセル/ブレーキ操作に集中しやすくすることを狙ったものでした。もちろん、MTの運転に不慣れな人にとってもありがたい機能でしょう。

トヨタの「iMT」も同様に、スポーツ走行時には便利な武器となりますが、カローラというクルマのキャラからして、MTの運転に不慣れな人をサポートする意味合いのほうが強いと言えます。「iMT」がクルマの速度やドライバーによるシフトとクラッチの操作を検知して、エンジン回転を自動で調整。変速時のショックがほぼなくなり、さらにエンジンを壊す原因になりかねない、シフトダウン時の操作ミスも防いでくれます。

最高出力:116PS/5,200〜5,600rpm、最大トルク:530Nm/2,300-5,000rpmを発生する1.2L直4ターボエンジン

最高出力:116PS/5,200〜5,600rpm、最大トルク:185Nm/1,500-4,000rpmを発生する1.2L直4ターボエンジン

トヨタの「iMT」はさらに一歩踏み込んで、発進時までサポート。MT車に乗る際の大きなネガ要素である「シフト操作時にギクシャクする」ことと「エンストする」心配から解放されるというわけですね。どうやらトヨタは、日本のドライバーにもっとMT車に乗ってほしいと考えているようです。

トヨタがMTに乗って欲しいと考える理由は「MT車の運転は楽しいから」に尽きるでしょう。どれだけAT(オートマチックトランスミッション)が進歩してもなお、運転する面白さは手動変速のMTが上です。クルマの運転の面白さを満喫し、クルマを好きになってもらうためには、MTもまだまだ必要だとトヨタは考えているのです。「カローラスポーツ」というスポーティーなモデルだけではなく、実用的なセダンやワゴンにもiMTを設定していることも、このことを裏付けます。

性能面でのMTのアドバンテージはほぼなくなりましたが、操る楽しさはATにない魅力

性能面でのMTのアドバンテージはほぼなくなりましたが、操る楽しさはATにない魅力

そもそもMTが廃れた理由は、操作の面倒くささやエンスト忌避などユーザーの心理的なものに加え、ATの性能が格段に向上したことにより、性能面と経済面におけるMTのメリットが相対的に薄れたからでした。

MTを選ぶ理由が薄れた今だからこそ……

昔のATは、MTよりも遅くて燃費が悪く、しかも値段も高かったので、マニアじゃなくてもMTを選ぶ理由が明確にあり、MTは一定数のシェアを確保し続けていました。しかし、ATとMTの性能差は年々小さくなり、燃費や価格もほとんど同じになるどころか、むしろクルマによってはATのほうが燃費がよくなるまでに至ったので、走行性能や経済性を重視する人にとっても、MTを積極的に選ぶ理由がなくなったのでした。日産「GT-R」など、高度な走りを追求する高性能スポーツカーでも2ペダルが当たり前になってすでに久しくなりました(ATならば変速ミスがなく、高出力エンジン含む車体の保護や安全性にもつながります)。

そうなると、MTのメリットは「楽しい」などの情緒的な部分しかなくなり、やがてマニアックな人にしか選ばれなくなります。本質的には必要ないが、手動変速という行為を楽しむためだけに選ぶ。それが今のMTの位置付けと言えるでしょう(なかにはモータースポーツ競技向けのスポーツモデルなど、MTでなければならないという車種も存在します)。

運転が“作業”にならない楽しさがMTにはあると筆者は思います

運転が“作業”にならない楽しさがMTにはあると筆者は思います

潜在的な“MT需要”を刺激するか!?

トヨタの「iMT」のアシスト機能は、MTに慣れたドライバーにとってはお節介でじゃまになるとも言えますが、「シフト操作時のギクシャク」や「エンスト」が嫌でMTを購入候補から外してきた人を振り向かせる効果は高く、潜在的なMT所有願望をもつ人の背中を押す効果もおおいに期待できます。まず手始めにカローラシリーズという比較的低価格なクルマに設定したことも、幅広い層にMTのよさを思い出してもらうには最適。iMTを卒業して、さらに高性能な(または高額な)クルマのMTにステップアップしてくれれば最高でしょう。

今回は「iMT」の実際のフィーリングを試すべく、ワゴンボディ「カローラ ツーリング」のiMT搭載車(グレード名:W×B)を借り出して丸2日間さまざまな状況で乗ってみたところ、やはりワインディングロードでは痛快なまでに便利で楽チン。クルマが自動で適切なエンジン回転に合わせてくれるとはいえ、クラッチを踏んでシフト操作をするという操作ができるだけでも、やはりATよりクルマを操っている感覚や、クルマとの一体感がより濃厚に味わることを再確認しました。

シフトチェンジを駆使して山道を駆け抜けると実に爽快です

シフトチェンジを駆使して山道を駆け抜けると実に爽快です

「MT好きを増やすため」に開発されただけあって、シフト操作のフィーリングは以前のカローラのMTと比較すればはるかに秀逸。私はMTのクルマを2台所有するほどのMT好きなので、やはりMTに乗るからには、シフトアップ/シフトダウン時の自動回転合わせは自分で行いたいと思い直すにいたりましたが、発進時のアシストはとても自然で、知らずに乗ればアシストされていることに気がつかないほど。ドライバーの感性のじゃまにならない、絶妙かつ巧みな制御に感動しました。

「iMT」はミッションの小型化や軽量化、ノイズ低減なども入念に追求されているとのこと。今後もトヨタのクルマにどんどん展開されることを期待します。

トヨタ
カローラ ツーリングW×B[6MT]

■サイズ
全長:4,495mm
全幅:1,745mm
全高:1,460mm
車重:1,610kg

■エンジン
種類:1,196cc直列4気筒ターボ
最高出力:116PS/5,200〜5,600rpm
最大トルク:185Nm/1,500-4,000rpm

■トランスミッション
6段MT

■駆動方式
前輪駆動

■試乗車両価格
2,894,826円(税込・オプション含む)

本記事の試乗のもようは動画でご覧いただけます。

マリオ高野

マリオ高野

1973年大阪生まれの自動車ライター。免許取得後に偶然買ったスバル車によりクルマの楽しさに目覚め、新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、自動車工場での期間工、自動車雑誌の編集部員などを経てフリーライターに。2台の愛車はいずれもスバル・インプレッサのMT車。

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