自動車ライターのマリオ高野です。
職業柄、長時間・長距離ドライブをする機会が多いので、普段から運転時の肉体的・精神的負担の軽減を図ることに余念がありません。
取材やテストであちこちを走り回る日々です
そこで今回は、ドライビングシューズに注目。ドライビングシューズとは、すべりにくいゴム製ソールと、足の動きを妨げない柔らかいアッパーにより、ペダル操作をしやすくしたシューズのこと。革靴を軽量化し、突起の付いたソールを付けた靴、とイメージしてもらえればいいかと思います。
運転中に履くべき靴というと、スニーカーなどの運動がしやすくぬれても靴底が滑ったりしないものが適しているといえます。フォーマルな革靴でも、足首から先が動かしやすく、靴底が滑りにくければ問題ありません。
しかし、やはり本来は「自動車の運転用として開発された靴」=ドライビングシューズが最適です。運転がしやすく疲労の軽減効果の高いドライビングシューズなら、ドライブがより楽しくなりますし、安全性が高まることも見逃せないポイント。ちなみに、クローズドコースを高速で走行するときにはレーシングシューズという別の靴が推奨されています。こちらはさらに軽量かつ難燃性の素材が使われている、いわば”スポーツ用シューズ”です。ドライビングシューズは、運転しやすくかつ街でも履けるのがポイント。
私は昔、文化的な自動車雑誌の広告で知ったコールハーンのドライビングシューズを愛用しておりましたが、コールハーンはお値段が張ります。いい歳をした中年らしく「高くていいものを長く使う」的な虚勢を張りたいところですが、今なら、もっとリーズナブルでお手軽なドライビングシューズがあるはずと思い、ググってみたところ、こちらの製品にビビビとくるものを感じでポチってみました。ラクミ「メンズ 夏秋 ローヒール ドライビングシューズ スリッポン デッキシューズ オシャレ」です。
見た目や手触りなどは、3,000円以下という価格相応といったところながら、凹凸があってグリップ力の強そうなソールを見ればドライビングシューズであることがわかりやすく、質感を補えます
私が注目したのは、かかと部分のグリップがよさそうなところと、ソールが薄そうなところでした。
どんなドライバーも、繊細なペダルワークを行うには、薄くてしっかりしたソールが望ましいので、この点に期待して選びました。
ソールには凹凸があります
正直、間違っても高級そうには見えませんが、まったく飾り気のない質実剛健な雰囲気が「運転用にこだわって選んだ」感を醸し出してくれるので、運転への意識が高そうに見える効果は期待できます。手に取った質感は、まあ価格相応といったところ。
履いてみると、ほとんどスリッパのような緩さですが、その薄さによって繊細なペダルタッチができ、運転用として適していることを実感させます。足のホールド感がとても緩いので、歩いたり、走ったりするのには不向きでしょう。
そして、一般的な革靴と比べるととても柔らかいのが特徴的で、いかにもペダルワークがしやすそうな感覚ではあります。
カジュアルな服装との相性はまずまず。フォーマルな服装でも、私個人の感覚ではギリギリ許されるのではないかと思います
数時間のドライブで履いた印象としては、かかとを軸としたアクセルとブレーキのペダルワークはとてもやりやすいです。ソール部分の薄さによるペダルタッチのダイレクト感はおおむね期待どおりだったので、不満はありませんでした。右足の親指で微妙にアクセルをコントロールできる感覚は、普通の靴より確かなものがあります。柔らかいアッパーと薄いソールのなせる技でしょう。
ブレーキペダルを踏んだところ
MT車に必須のテクニック「ヒールアンドトウ」もまずまずやりやすいです
運転専用靴のため、頻繁に使うクラッチペダルの踏力の調整も容易。クラッチ板からのインフォメーションが足裏を通じてわかるような気がします
同乗者から言われた「今日のマリオさん、いつもより運転がていねいですね」とのコメントからも、アクセルワークが繊細になったことが証明されたといえます!(涙)
1日履き通してみましたが、足のホールド感が緩いせいか靴の影響で足が疲れるということはありませんでした。これなら運転用として購入する意義があると思います。
クルマの運転時以外の普段履きとしても一応問題なく使えそうですが、街を歩くには少し柔らかすぎる気がします。薄めのソールにより、足の裏でダイレクトに路面をつかむ感覚は悪くないものの、街履きだと足ツボが刺激されすぎて疲れるような感覚があるし、運転以外の場面では靴の消耗が心配となります。おそらく耐水性も高くはないので、なるべく運転時に限定したほうがいいでしょう。ペダル操作に集中する運転時の専用靴として、本品を車内に置いておくのがベストな使い方だと思いました。