レビュー

PS5「プレイグ テイル -レクイエム-」全クリレビュー。海外で超高評価の隠れた名作

海外ユーザーからの評価が非常に高いアドベンチャーゲーム「プレイグ テイル -レクイエム-」。世界のメディアやゲームファンの投票によってすぐれたゲームが選ばれる「The Game Awards 2022」にて、最もすぐれたタイトルに贈られる「Game of the Year」にもノミネートされており、その面白さは折り紙付きと言えるだろう。

この「プレイグ テイル -レクイエム-」のPS5版がオーイズミ・アミュージオより2023年6月29日に日本国内で発売された。今回は、本作の独特なゲーム性と物語体験としての魅力、そしてなぜ海外で非常に高い評価を獲得したのかを、前作から追い続けているファンの目線も込めつつレビューしていく。

なお、レビューではストーリーについて触れているが、本作の物語は前作「プレイグ テイル -イノセンス-」から続いているため、場合によっては前作のネタバレも含む内容になっている。その点に関しては注意しながら読み進めていただきたい。

「プレイグ テイル -レクイエム-」とは?

本作は、フランスのゲーム会社、Asobo Studiosが制作したアクションアドベンチャーゲームであり、2019年に発売された「プレイグ テイル -イノセンス-」の続編である。筆者は、前作のPC版を英語字幕(発売時は日本語字幕がなかった)でプレイし、その後、日本語字幕が実装された際にやり直した。それほどハマったシリーズなのだ。

「プレイグ テイル -レクイエム-」は中世フランス暗黒期を舞台にしており、姉のアミシアと弟のユーゴを主人公に据え、姉弟2人の冒険劇を描く。

主人公のアミシア(上)と、その弟のユーゴ(下)

主人公のアミシア(上)と、その弟のユーゴ(下)

前作では、母に使命を託されたアミシアが、異端審問官から命を狙われた弟のユーゴを守る命懸けの逃避行が描かれたのだが、本作では、前作で判明した重大な問題を解決するために2人がとある島を目指す旅路が描かれる(物語の詳細は後半にて解説)。

ゲーム性はサバイバルとステルスを基盤にしたアクションが主体。限られたアイテムとギミックで敵をやりすごしてステージを攻略していくアクションパートと、押し寄せるネズミの大群をかいくぐる謎解きパートが、ゲームを構成する大きな要素だ。

次章からは、本作のゲーム性と物語に分けて解説し、その魅力を掘り下げていこう。

シビアなステルスサバイバルアクションを基盤にしたアクションパート

本シリーズは、サバイバルとステルスが非常に強い作品であり、スムーズに敵を倒していく一般的なアクションゲームとは根本的に趣向が異なっている。

主人公のひとりであるアミシアは華奢(きゃしゃ)な少女であり、肉体的な能力が敵と比べ圧倒的に劣る。そのうえ、時代設定が14世紀のフランスであるため、銃器などの近代武器は本作に登場しない。

アミシアの主な武器はスリングと呼ばれる簡易的な投石武器、ヘッドショットを決めないと敵を倒せない。さらに、兜を着けている敵はそもそもスリングで倒す手段がないなど制約が厳しい。

加えて、スリングは構えると音が鳴るため使う場所を誤ると敵にすぐに発見されてしまう。追いかけてくる敵の動きもスピーディーなので簡単に撒くこともできない。また、背後からこっそり近づいて倒すステルスキルのような技も最初からは使えないし、難易度が普通でも敵の攻撃1〜2回でアミシアはやられてしまう。戦闘を避けて進める、慎重なゲームプレイが常に求められるのである。

スリングで倒せる敵は兜を被っていない敵だけで、ほかの敵はひるませることしかできない

スリングで倒せる敵は兜を被っていない敵だけで、ほかの敵はひるませることしかできない

本作は倒せる敵だけを適切に排除し、倒せない敵は石や壺を投げて気をそらしているうちにやりすごす、草陰に隠れて敵の動きを観察しなるべく見つからないようにステージクリア地点まで移動するというのが基本のゲーム性になる。

特に、序盤はクラフトできるアイテム、使用可能な武器やスキルが少ないため、非常にシビアなステルスアクションゲームをプレイしている感覚になるだろう。

本来戦闘向きでないアミシアが、剣を持って追いかけまわしてくる兵士に立ち向かう、彼らの目をあざむき進んでいくというゲーム性は、本作の面白さの根幹に関わる部分だ。
 
もうひとつ注目したいのが、おぞましいネズミの大群をかいくぐって、謎解きのような感覚で進めるパートだ。本作にはペストの象徴として人も襲う黒いネズミの大群が地面を埋め尽くし、その中を無事に通り抜けなければならないというシーンがいくつも登場する。ネズミは地面から突如噴き出してアミシア達を襲ってくるため、ネズミが苦手でなくとも恐怖を感じる瞬間だ。

真っ黒いネズミの大群の中を進んでいくゲームプレイは本作の象徴的な要素

真っ黒いネズミの大群の中を進んでいくゲームプレイは本作の象徴的な要素

ネズミは火などに近づけないため、松明(たいまつ)を持ってネズミの大群の中を進んだり、火種を利用して薪に火をつけて通れる道を作ったり、吊り下げられた肉などをスリングで落としネズミにたからせて道を作ったりすることで進められるのだが、少しでも強引に突破しようとするとたちまちネズミに食べられてしまう。

ステージ内に用意されたさまざまなギミックやアイテムを駆使してなんとかネズミの海を突破していく謎解きのようなゲームプレイは、前作から続く本作の象徴的なゲームパートである。

ステージに用意されたギミックやアイテムを使うパートは謎解きゲームと似た面白さがある

ステージに用意されたギミックやアイテムを使うパートは謎解きゲームと似た面白さがある

先述したサバイバル&ステルスアクションと、ネズミの大群パートが融合することで、双方のゲーム性がより高まった奥深いゲームデザインになっているのが本作の特に秀逸な部分。倒せない敵はネズミに襲わせたり、特定の場所で敵をネズミに襲わせることで通り道ができたりと、ネズミと敵NPCを利用することで攻略の幅が広がるようデザインされているのだ。

ネズミに襲わせればスリングで倒せない敵も排除できる

ネズミに襲わせればスリングで倒せない敵も排除できる

その際、敵の持つ松明に消火用アイテムを投げつけてネズミが襲えるようにしたり、ネズミの大群の中に敵NPCを背後からつき飛ばして襲わせたり、なかなか残虐な方法を採る必要がある。ステージを攻略する過程において非人道的な方法で敵を倒さなければならない場面が多く登場するのだが、これも本作の物語と関わってくる部分なのでぜひ知っておいてほしい。

道中にはさまざまな場所にアイテムが隠されており、用意されたギミックを解きながら探索してアイテムを集めるのも大事だ。素材を集めてクラフトアイテムを作成できるようになり、それらが道中のステージ攻略を助けてくれるだけではなく、作業台でアミシアの能力のアップグレードにも使える。これによって敵を倒す手段が増えたり、アミシアのスリングやステルスの能力が上がったり、持ち運べるアイテムの上限が増えたりする。

道中で見つかるアイテムは、敵をほんろうするためだけではなく、アミシアの能力のアップグレードにも使える

道中で見つかるアイテムは、敵をほんろうするためだけではなく、アミシアの能力のアップグレードにも使える

さらに、本作では、「スリングでは倒せない敵を倒せるクロスボウ」「あるパートナーに指示を出すことで敵を直接倒してくれる」「ネズミを操れる能力が使えるようになる」といった新しい要素が追加されている。ゲームを進めると前作より攻撃パターンの増したデザインに進化していくのも本作の特徴と言える。

クロスボウは鎧や盾を着けていない敵を楽に倒せる

クロスボウは鎧や盾を着けていない敵を楽に倒せる

ただし、クロスボウの矢はひんぱんに手に入らないうえにすべての敵に有効なわけではない。敵を倒してくれるパートナーも常にいるわけでないし、ネズミは火を持った敵を襲えないことに変わりはない。

ゲームを進めると敵の数や強さもより上がっていくため、敵をどんどん倒していくようなゲームにはならず、常に緊張感に支配される中で頭を使うゲームプレイが求められる。

つまり、限られた選択とギミック、アイテムを駆使することでステージを攻略していくサバイバル性の強い本作の本質は終始変わらないのだが、それでも序盤倒すことが難しかった敵が倒せる手段が増えるだけでプレイヤーには攻略の幅が広がった感覚を与え、モチベーション向上につながる。こういったゲームパートを見事なバランスで実現しているのが、本作がゲーマーを惹きつける理由だろう。

固い絆で結ばれた姉弟の新たな旅

本作が、姉のアミシアと弟のユーゴの姉弟愛に着眼点を置いている作品であることは、前作から引き継いでいるテーマである。前作では命を狙われ家を追いやられただけでなく、弟のユーゴを守りながら、敵国の兵士や宗教裁判官の追跡を振り払いネズミの大群の中を進んでいく、命がけの逃避行の中で成長する姉のアミシアの姿。そして、姉弟が互いに信頼関係を築いていく物語が描かれた。

本作では、前作からさらに踏み込んだ部分に物語の焦点を当てている。ここからは、前作および本作のネタバレに触れるパートがあるので、気になる人は飛ばして読んでいただきたい

前作「プレイグ テイル -イノセンス-」では、アミシアとユーゴが命懸けの逃避行の中で互いの絆を深め合っていく物語が描かれた

前作「プレイグ テイル -イノセンス-」では、アミシアとユーゴが命懸けの逃避行の中で互いの絆を深め合っていく物語が描かれた

本作で姉のアミシアは、弟のユーゴがおかされている病気を治療するために、ユーゴが夢で見たとある島へ向かうことになる。実は、前作でユーゴが患っているのは病気ではなくネズミを操ることができる特別な力であり、ユーゴの血を浸食し、やがて死にいたらしめることが判明していた。そればかりか、ユーゴの精神に影響を与え、暴走を始めるとネズミを大量に地表に解き放ち大災害を引き起こしてしまうという危険な症状も現れる。

病気はユーゴの命を侵食しているだけでなく、暴走すると街を埋め尽くすほどのネズミの大群をも呼び寄せる危険性を秘めている

病気はユーゴの命を侵食しているだけでなく、暴走すると街を埋め尽くすほどのネズミの大群をも呼び寄せる危険性を秘めている

アミシアはユーゴを治療すべく奔走するのだが、その過程で多くの人間を殺すことになってしまう。目の前の人間を殺さなければユーゴを救うことはできない。彼女は自分自身の使命と人を殺めなければならない運命に苦しむことになる。

アミシアは前作でもユーゴを守るために多くの人間を殺してきた。その過程でスリングの技術も培われたのだが、元々は地方領主の娘であり特別な戦闘訓練を積んだ人間でもなければ、人を殺すことに慣れている人間でもない。そんな彼女がユーゴという大切な存在のために次々と手を汚していき、やがて敵兵士からは殺人鬼、魔女のように恐れられる存在になってしまうのだ。

ゲーム性のところで述べたように、本作では残虐な方法を採ってでも敵を倒さなければいけないシーンが多発する。その瞬間こそが、アミシアの耐え難い心境にプレイヤーが感情移入するきっかけになっており、物語との親和性を実現している点だろう。

前作でも残虐な方法で敵を倒すゲームプレイは確立されていた。しかし、残虐な描写は非力なアミシアが屈強な兵士を倒すために使用するやむを得ない手段として描かれており、それが中世ヨーロッパ暗黒時代の残酷な世界観を強調する役割だった。

その部分が本作でさらに発展し、アミシアが弟のユーゴを救うために乗り越えなければならない運命として描かれている。華奢(きゃしゃ)だったアミシアが、本作ではその能力に磨きをかけ、より強い女性へと変わっていく。彼女の行動は、弟ユーゴの心理や行動にも深く影響を与え、やがて“病気”の隠された真実に迫る物語へと進んでいく。
 
そんな2人が旅を始め、新たな出会いを通してどのような結末にたどり着くのか? 実際にプレイして確かめてみてほしいと思う。

総評

「プレイグ テイル -レクイエム-」は、サバイバル&ステルスのゲーム性と、心に深く刺さるシナリオ、その互いの親和性によってゲームならではの物語体験を味わえる傑作である。特に、主人公の戦闘能力が低く限られた手段でしか敵が倒せないというゲームデザインは昨今のトレンドの中では珍しい。そんなアミシアが、ユーゴを救いたいという一心でもがく姿を見せるからこそ本作の物語には惹き込まれる。

本作を含めて「プレイグ テイル」シリーズは、「The Last of Us」シリーズのような作品が好きな人にぜひプレイしてほしい作品だ。自分の大切な存在を守るために手段を選ばず他人を殺めなければならないゲームプレイは「The Last of Us」シリーズに近いものを感じる。

広いマップ内をまるで観光しているかのように探索したり、記念品などを集めたりするパートも登場し、こういった要素も「The Last of Us」シリーズに共通している。

前作では生き延びるのに必死だったアリシアとユーゴが新しい場所をたくさん訪れ、アミシアとの思い出を作っていく

前作では生き延びるのに必死だったアリシアとユーゴが新しい場所をたくさん訪れ、アミシアとの思い出を作っていく

本作はストーリークリアまでの時間も20時間程度なので、短時間で満足度の高いゲーム体験を味わいたい人におすすめだ。ただし、日本語吹き替えが用意されておらず、日本語字幕でプレイしなければならないのが若干不便なポイントだった。

とは言いつつも、海外での高評価を裏付けるように本作の完成度は非常に高い。今回の続編を含めて一度はプレイしていただきたい作品である。

ぐう実況(ゲーム紹介系YouTuber)

ぐう実況(ゲーム紹介系YouTuber)

YouTubeを中心に活動するゲーマー。PSやPCのソフトを中心にゲーム紹介をする機会が多く、同分野を専門に活動しています。プライベートでは任天堂などの作品も頻繁に遊びます。

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