Googleのスマートウォッチ「Google Pixel Watch 4」が発売された。同シリーズの弱点であったバッテリーの短さを克服し、その多機能っぷりを存分に味わえるようになった注目作をチェックしよう。
ついにバッテリーの弱さを克服した「Google Pixel Watch 4」
「Google Pixel Watch 4」(以下、「Pixel Watch 4」)は、41mmモデルと45mmモデルの2サイズがあり、それぞれ4G LTE対応の有無を選べる。
公式サイトの販売価格(すべて税込)は、
・41mm のBluetooth / Wi-Fiモデルが52,800円〜
・45mmのBluetooth / Wi-Fiモデルが59,800円〜
・41mmの4G LTE + Bluetooth / Wi-Fiモデルは69,800円〜
・45mmの4G LTE + Bluetooth / Wi-Fiモデルは76,800円〜
この記事では、45mmの4G LTE + Bluetooth / Wi-Fiモデルを借りて、スマホ「Google Pixel 10 Pro」と接続してレビューしてみた。
「Pixel Watch 4」の文字盤は円形で、カバーガラスは湾曲し、ドーム状になっている。パッと見では従来モデル「Pixel Watch 3」との差分がわかりにくいが、「Pixel Watch 4」はカバーガラスだけでなくディスプレイ全体がドーム型になり、表示エリアが拡大。ほぼベゼルレスに見える。
左がPixel Watch 3(45mm)、右がPixel Watch 4(45mm)。一見するとデザインに変更はないように思える
「Pixel Watch 4」は画面全体がドーム状になった。幼少のころに想像した“未来のガジェット”といった趣がある
右側面にリューズ(デジタルクラウン)を搭載。押し込むことでアプリメニューを表示したり、時計画面に戻したり、回せば画面をスクロールできる。その上にあるボタンを押すと、最近使ったアプリを表示。長押しで、グーグルのAIアシスタント「Gemini」が起動する。
右側面にリューズがあり、その上にサイドボタン、下にマイクがある
リューズは回して操作できる
左側面には、スマートウォッチとしては大きめのスピーカーを搭載。スピーカーの上下には充電器に接続するためのマグネットが付いている。「Pixel Watch 4」の充電器は、従来モデルとは異なり、横向きにして立てて置く形となった。充電中に現在時刻や充電の進捗を確認できる趣向だ。なお、従来モデルの充電器で「Pixel Watch 4」を充電することはできない。
左側面にはスピーカーを搭載
充電器の上に載せて充電する。充電中は時刻を確認しやすい向きに画面が回転して表示される
同梱のバンドはフルオロエラストマー製。フィット感がよく、防水性と耐久性にもすぐれている。SとLの2サイズがあり、筆者の手首は成人男性として平均的な太さだと思うが、Sでもギリギリ装着でき、Lでは余る部分がやや長くなった。
2サイズのバンドが同梱されている
まず、「Pixel Watch 4」でできることをざっくりと触れておこう。
「Pixel Watch 4」は、現在スマートウォッチに求められる機能をもれなく備えていると言って差し支えないだろう。ヘルスケア機能は心拍数、血中酸素濃度、皮膚温を自動で計測し、睡眠のモニタリングも可能。ストレスの兆候を示す「身体反応」も調べられる。これまで日本では利用できなかった心電図アプリも使えるようになった。
画面が大きいので、ヘルスケアデータが見やすい
エクササイズは50種類以上(筆者の確認では52種類)に対応。水泳、スキー、ゴルフなども含まれるが、筆者が趣味としている「卓球」は見当たらなかった。しかし、個別のエクササイズに並んで「スポーツ」「ワークアウト」といった汎用性のあるメニューが用意されているので、不便はない。ランニング、ウォーキング、サイクリングなどは運動開始・終了の自動検出にも対応している。
ワークアウトのメニューも充実。ランニング、ウォーキングなど、多くの人がよく行う運動は自動検出にも対応している
スマホを探す、カメラの遠隔シャッター、録音、音楽再生なども可能で、「Suica」やクレジットカードを登録できる決済機能も備えている。
スマホの「ウォレット」に登録したクレジットカードや交通系ICカードをウォッチでも使えるように設定できる
OSは、グーグルが開発したWear OS。Googleアプリとの親和性が高く、Google Playストアから入手したアプリを追加できることも大きな利点だ。
対応するスマホはAndroidのみ。スマホには、各種設定などに用いる「Google Pixel Watch」アプリ(以下、「Watch」アプリ)と、健康と運動のデータを管理する「Fitbit」アプリをインストールする必要がある。
筆者は「Google Pixel 10 Pro」とペアリングして使った
「Watch」アプリでは、文字盤デザイン、タイル(ウィジェットのようなもの)、通知などの設定を行える
「Fitbit」アプリでは、ヘルスケアや運動のデータを管理する。なお、ユーザーに最適化したプログラムが提案され、細かい分析結果が表示される「Fitbit Premium」(月額640円)を無料で6か月間利用できる
睡眠の結果画面。従来モデルより正確さが向上したという
ウォーキングの結果画面。高精度デュアル周波数GPSにより、位置情報の精度も向上している
「Pixel Watch 4」を実際に使った筆者が気に入ったポイントを紹介していこう。まず、電池持ちだ。
45mmモデルはディスプレイを常時表示にして最長40時間、バッテリーセーバーモードにすると最長72時間使える(41mmモデルは常時表示で最長30時間、バッテリーセーバーで最長48時間)。
実際に常時表示の状態で使ってみると、フル充電から40時間が経っても15%ほど残る日もあった。ややヘビーに使った日でも、24時間使って25%ほど残っていたので、1日は余裕で持ち、使い方によっては2日の連続使用を見込めると考えていいだろう。
初期設定では、電池残量が15%以下になると自動でバッテリーセーバーモードに切り替わる。手動での設定も可能
新しくなった充電器は急速充電にも対応し、従来モデルより25%スピーディーに充電できるという。ためしに、残量が13%になった時に充電を開始すると、約43分で100%になった。Googleによると、50%までは約15分で充電できるそうなので、1日に必要な電池容量は素早くチャージできそうだ。
「Pixel Watch 4」は、心電図(ECG)を測定できるようになったことも魅力。実は、ハードウェアの機能としては「Pixel Watch 2」から搭載されていたが、日本では医療機器として認可されていなかったために封印されていたらしい。筆者は循環器に基礎疾患があり、定期的に病院で心電図検査を受けている。「Pixel Watch 4」で検知できるのは心房細動だが、日常的に異常がないか否かをチェックできるのは心強い。現状、健康な人も、ときどき測定することで、体調の変化に気づけるかもしれない。
測定方法は簡単。「心電図」アプリを起動し、ウォッチを着けた腕を安定させて、操作するほうの手の人差し指をデジタルクラウンに当てて30秒じっと待つだけ。ちなみに、すでに心電図に対応しているApple WatchやHUAWEI WATCHでの測定方法と同じだ。
心電図アプリを起動して、リューズに指を当てるだけで測定できる
30秒の計測後、画面に結果が表示される
心臓が正常なリズムで拍動している場合は「洞調律」と表示される。おそらく、多くの人は常に「洞調律」に表示されるはずだ。もし、「心房細動」と表示されたら、自覚症状はなくとも、病院でより精密な検査を受けたほうがいいだろう。その際、「Pixel Watch 4」で測定した心電図をプリントして医師に見せることもできる。
測定結果は「Watch」アプリに同期される。30秒間の心拍リズムを示す心電図をプリントすることも可能
なお、「Pixel Watch 2」、「Pixel Watch 3」もアップデートによって心電図が使えるようになる。
「Pixel Watch 4」は、グーグルのAIアシスタント「Gemini」を利用できることも魅力。サイドボタンの長押し、時計画面にあるアイコンをタップ、「OK Google」と話すなどして起動できるほか、「Pixel Watch 4」だけの優位性として腕を上げるだけで起動するようにも設定できる。
「Gemini」は従来のPixel Watchでも使えるが、「Pixel Watch 4」では手を上げるジェスチャーで素早く利用できる
「Gemini」は従来の「Googleアシスタント」に置き換わって搭載された機能だ。「今日の天気は?」「明日の予定は?」などと話して、知りたい情報を引き出したり、「◯◯さんに電話して」「タイマー5分」などと話して、ハンズフリーでスマートウォッチを操作したりできる。
会話形式でAIを使用する「Gemini Live」には対応していないが、会話するような感覚で、続けて質問をすることも可能。例えば、「◯◯に行くには?」と聞いて経路を調べてから、「渋滞は?」「途中で美味しいランチを食べたい」などと聞いて、知りたい情報を引き出していくこともできる。レスポンスが早く、従来の「Googleアシスタント」よりも使う機会が増えそうだ。
話し言葉で調べられる
結果は音声および画面表示で確認できる
4G LTE + Bluetooth/Wi-Fiモデルは、携帯電話会社が提供するモバイル通信サービスに加入すれば、スマホと接続しなくてもウォッチ単体で音声通話やデータ通信ができるようになる。
筆者はahamoのSIMで「Google Pixel 10 Pro」を使っているので、ドコモの「ワンナンバーサービス」(月額550円)に加入した。
「Watch」アプリから申し込めて、申し込み完了後にウォッチにeSIMがインストールされる。しかし、最初に申し込みを試みた際は「対応している携帯電話会社がないため、eSIMを追加できません」と表示された。ahamoでは加入できないのか? と思ったが、前モデルではスムーズに設定できたことを思い出し、後日あらためて試したところ、問題なく設定できた。
「Watch」アプリの「接続」→「モバイルネットワーク」に進むと、利用できるモバイル通信サービスの申し込み画面に進む
ウォッチ側では何もしなくても、モバイル通信サービスのeSIMが有効になると、画面に表示される
スマホとの接続が切れた状態でも、電話、SMSが利用できるほか、Gメールの受信も確認できた。ほかに、「マップ」で目的地を設定してナビゲーション、「YouTube Music」での音楽再生(ただし、ワイヤレスイヤホンからの出力のみ)を確認できた。キャッシュレス決済も利用できるので、スマホを持たずにランニングをしたい人は重宝するだろう。
ウォッチのモバイル通信は4Gのみで、5Gには非対応
スマホを持っていなくても、目的地を設定してナビゲーションを利用することが可能
ちなみに、筆者が契約している回線では、ソフトバンク回線は「ウェラブルデバイスモバイル通信サービス」(月額385円/4年間無料)に加入でき、ドコモの「ワンナンバーサービス」と同じように利用できた。auは「ナンバーシェア」(月額385円)が利用できるが、筆者が持っているUQ mobilleとpovoは対応していなかった。
楽天モバイルの回線でも試してみたが、電話番号シェアサービスの対象はApple Watchのみで、Pixel Watchでは利用できなかった。つまり、ウォッチ単体で通信できるのはドコモ(ahamoを含む)、au、ソフトバンクの回線で使う場合に限られる。その他の回線で使っている場合は注意が必要だ。
「Pixel Watch 4」は、バッテリーの持ちが向上したことで、積極的に運動の計測を行え、電池切れを心配せずに睡眠のトラッキングも行えるようになった。飽きが来なそうなシンプルなデザインも魅力。「Gemini」に対応したことで、音声で操作する利便性が向上したこともアドバンテージと言えよう。
しかし、他のメーカーの製品に目を向けると、「Pixel Watch 4」よりも電池が長く持つモデルは多い。登山やゴルフ、ダイビングなど特定の機能にフォーカスしたモデルや、デザインに凝ったモデルも選べる。そんな多様なスマートウォッチの中で、「Pixel Watch 4」は、いい意味で無難であり、王道とも言える。「迷ったらコレ」という、手堅い選択肢となるだろう。