2024年もすでに半分が過ぎ去り、残すところあと半年で2025年を迎える。ゲーム業界もクリスマス商戦に向けて盛り上がりを見せていくだろう。みなさんは半年でどれくらいのゲームをプレイしただろうか。
今回は、数多くのゲームをプレイするライターの筆者が、2024年上半期にプレイしたPS5向けゲームの中で特に面白かった8本をランキング形式でまとめて紹介しよう。ちなみに、ランキングの順位は完全に筆者個人による独自の見解、価値観によるものなので、その点は充分に留意して読み進めていただきたい。
長らく新作が発売されていなかったUBIソフトのかつての看板IP「プリンス オブ ペルシャ」の最新作に当たる本作だが、世間評は想像以上の好評で今年のダークホース的なタイトルの1本となった。
懐かしさすら覚える2Dスクロール式のステージをベースに、探索しがいのあるマップ構造や、やりごたえのあるバトルといった、メトロイドヴァニアと呼ばれるジャンルのお手本をていねいになぞりつつ、現代の最新作ゲームに恥じない完成されたアクションが本作の見どころだ。
本作の戦闘は近接攻撃がメインになるが、多彩な近接攻撃と補助武器である弓矢の組み合わせによって敵をハメられる点や、パリィ+カウンターからの畳みかけなど、骨太かつ爽快なアクションがしっかり完成されている。
さらに、しっかり考えて戦わないと突破できないボス戦など、ソウルライクなゲームデザインも踏襲されており、ゲーム全体はシンプルにまとまりながら要素1つひとつのバランスが絶妙に仕上がっているのが好評の理由と言える。
難易度変更含め初心者配慮もしっかりされているので、本シリーズデビューにぴったりのタイトルだ。
韓国のゲームスタジオ、SHIFT UPが手掛けたアクションアドベンチャーゲーム。これまでソーシャルゲームを作ってきたスタジオのコンシューマー機向け初作品としては上々の完成度だったと思う。
美しいキャラクタービジュアルと、多彩、かつやりごたえのあるアクションが相乗効果を発揮し、プレイヤーを視覚で楽しませつつ、本作ならではの特殊技が適度に散りばめられたことによって、バトルはほかのタイトルにはない独自性がある。
そういった工夫によって飽きがこないうちにクリアまで遊べ、ゲーム全体として適切なボリュームにまとめられている。わかりやすい誰でも楽しめるアクションゲームだ。
ただし、世界観や物語は既存の作品やテーマから色濃く影響を受けすぎており、本作独自のものを提供できているとは言い難い。また、コアなアクションゲーマーにとってはさほど特別感を得られるバトルデザインではなかったであろう点を踏まえると、まだまだ成長余地を残した作品だったとも言える。韓国スタジオの将来が楽しみになる作品だったのは間違いない。
幕末時代の動乱をオープンワールドアドベンチャーとして描いた「Rise of the Ronin」。コーエーテクモゲームスのTeam Ninjaは、ソウルライクの「仁王」シリーズを手掛けており、そこがオープンワールドと融合したことで集大成とも言えるのではないだろうか。
多種多様な武器を切り替えるだけでアクションビジュアルが多彩に変化するバトルは、敵の気力ゲージを弾きで削り切り、一気に大ダメージを与えて切り伏せる豪快さと爽快さを強く感じられる。
倒幕派と佐幕派それぞれの物語にスポットを当て、実在した多くの歴史上の人物たちと交流しながら、幕末という動乱期の混迷を多角的な視点で解釈する。その時代を自由に生きる浪人という立場の主人公だからこそ、違和感なく描けたゲームならではの歴史物語であり、筆者もレビューではその部分を高く評価した。
ビジュアルやアクティビティの側面でもていねいに作り込まれた幕末のオープンワールドは、本スタジオのオープンワールドデザイン力の興隆を感じさせてくれた。長年Team Ninjaの作品を追いかけてきた筆者にとって、まさにここ10年の集大成的な作品であったと思う。
到底万人受けするとは言えないゲームデザインで、世間的には賛否両論となった「ドラゴンズドグマ2」だが、個人的には上半期の上位に間違いなく入ってくる作品だ。
不自由なファストトラベルをはじめ、さまざまな“不便”を起点に発生する予想外の現象と、ゲームプレイのコツをつかみみながら独自の物理演算で構築された世界を思いどおりに動かせるよう攻略していく中毒性。入れ替えるたびに戦闘や探索の毛色が変わり、会話や仕草でパーティ全体の冒険を演出してくれる仲間ポーンの存在。これらは間違いなく唯一無二のゲーム性であり、オープンワールド黎明期で生まれた前作の独自性を強く引き継いでいた。
快適なオープンワールドが常識となった現代で、あえて不便で制約を軸にしたオープンワールドを出したことは、たとえそれがシリーズの作風の継承だったとはいえ、すさままじく”挑戦的”であったことは間違いない。
だが、それは結果として冗長で典型化した今のオープンワールド文化に一石を投じたのではないだろうか? 国内ではそこまで評価は振るわなかったが、全世界では総売り上げ300万本というヒットを早々に記録したことが、それを証明していると思う。
「十三機兵防衛圏」など数々の名作を生んできたヴァニラウェアの最新作はやはり傑作だった。本作は、将軍ガレリウスによって国を奪われた王子アレインと、その仲間たちが解放軍として戦う過程を描いた戦略シミュレーションゲームで、オープンワールド風のフィールドデザインを採用している。
初心者ゲーマーにはハードルが高い戦略シミュレーションゲームのシステムを、ていねいなチュートリアルとオート処理機能によって格段に遊びやすくしただけではなく、探索性と自由度が高いオープンワールドチックなワールドデザインを取り入れることでより攻略しやすいゲームに昇華させた。
さらに、わかりやすいRPGの王道ストーリーながら、膨大な登場人物1人ひとりにスポットを当てる緻密なストーリーテリングや、2Dゲームとしては異様なまでに描き込まれた人物の表情や動き、風景など、ビジュアル面のすばらしさもヴァニラウェアのよさが存分に発揮された点だろう。
今まで戦略シミュレーションゲームを遊んだことがない人には、その奥深さ、面白さが一発でわかる作品なので、ぜひ遊んでみてほしい。
「ファイナルファンタジーVII リバース」は、大ヒットした前作「FF7 リメイク」を超えてきた。PS5のスペックを最大限に生かし、「FF7」(1997年発売)の世界を現代によみがえらせた、正真正銘スクウェア・エニックスの本気作と言える。
原作のワールドマップを忠実に再現し、原作リスペクトの探索システムを採用しつつも、さまざまなアクティビティやミニゲームをオープンワールド式のフィールドに散りばめた。合体技や新たな召喚獣を始め、ビジュアル的な演出面をよりパワーアップさせた戦闘。そして「クライシスコア」のザックスを交わらせながら、FF7の重大局面「忘らるる都」で待ち受ける運命へと導いていく物語。FF7ファンの見たいものがふんだんに詰め込まれており、前作よりさらに長く深い新たなFF7を満喫できる作品に仕上がっている。
原作「FF7」への思い入れが本作の魅力の大前提となっており、単一のゲームとしての構成やデザインの面で新鮮さに欠けるのでこの順位とさせていただいたが、規模感や作り込みは今年上半期で間違いなくトップの作品だろう。
今年上半期発売された国産AAAタイトルの中で個人的に最も印象に残ったのは「龍が如く8」だ。本作はこれまでのシリーズ作品の中でも、群を抜いたボリューム、贅沢感がストーリーやアクティビティの随所で味わえるすばらしい作品だった。
美しく壮健な新マップ、ハワイには「スジモンバトル」「ドンドコ島」を始めとする大型アクティビティや、マップを回るほどに仲間との絆を深められる探索要素、そして桐生の過去を1つひとつ巡っていくエモさ抜群の「エンディングノート」など、遊べることが詰め込まれまくっている。すべてのアクティビティを回らずにストーリーを進められない、誘惑だらけの作り込みは贅沢の極みといった完成度だ。
何より印象的だったのは、春日と桐生のダブル主人公で送る「人がそれでも生き続ける理由」を描く物語。現代の情報化社会への皮肉も込めながら、残酷すぎる桐生の運命とその意志を引き継ごうとする春日、そしてその2人を囲む仲間たちの熱い想いと行動を描くストーリーはラストのラストまで本当に目が離せなかった。
初の海外マップを採用するなど、海外でも多くのファンを抱えるようになった「龍が如く」シリーズにとってより国際的な感覚を意識した作品という面もあった。しかし、これらに関する描写は若干古臭く、核心に足るものではなかった部分があり、まだまだ洗練されるべき点は多い。ただ、そのような挑戦を捨てなかった点も踏まえて、「龍が如く」シリーズをこれからも応援したくなるような作品だったと改めて思う。
発売されるやいなや、海外で突如大ヒットし、現在でも多くのゲーマーを熱中させている「HELLDIVERS 2」。本作はすぐれたシューティングアクションとして完成されているだけでなく、PvEの新たな形とも言えるゲーム性を示してくれている。
フレンドリーファイヤーという、協力プレイなのに自身の攻撃が仲間に当たってしまうゲーム性に大胆にフォーカスしたことで、陣形の取り方や爆撃するタイミングなどを既存の作品以上に考慮しなければならなくなっただけではなく、突然味方や自分がバラバラになって死んでしまうハラハラ感が絶妙な中毒性を実現している。
それは1990年代のハチャメチャなアメリカンSF映画に飛び込んだような体験であり、装備やマップを始め豊富なゲーム要素と、何とも言えないバカゲー感による化学反応が新鮮で奥深いゲーム体験に昇華しているのだ。
プレイヤーに不利を強いる要素を大胆かつ繊細に取り入れたことで、これまでの作品にはなかった一歩踏み込んだPvEとして完成されているのが、本作が大ヒットした理由だろう。これまでのPvEスタイルのゲームに風穴を開けるようなゲームデザインをもって、筆者の2024年上半期1位としたい。