「スプリット・フィクション」は2人協力プレイで攻略していく連携型のアクションアドベンチャーゲーム。妻と2人でストーリー全クリまでプレイしたのでレビューしていこう。なお、本レビューは一部ストーリーについて触れており、場合によってはネタバレに感じる可能性があるため、注意して読み進めていただきたい。
本作はスウェーデンのゲームスタジオ 、Hazelight Studiosの最新作。画面分割の2人協力プレイで攻略するストーリー主導型の作品を得意とするスタジオで、2021年に発売された前作「It Takes Two」は、数ある大作を退けて「Game of the Year(The Game Award 2021)」に輝いた。
本作の主人公は異なる価値観を持つ2人の作家ミオとゾーイ。2人はとある企業が提供する自分の空想の世界を味わえる専用マシンの参加体験に応募し、自分たちの作品を出版してもらおうとする。
主人公ミオ(右)とゾーイ(左)
しかし、2人が誤って同じマシンに接続されてしまい、近未来を舞台にしたSFなミオの世界と、自然豊かな風景を舞台にしたファンタジーなゾーイの世界が、お互いに相容れずグリッチと呼ばれる裂け目が発生してしまう。そして2人はマシンから脱出するため、グリッチを通じて互いの世界を行き来する冒険を繰り広げる。これが物語の大筋である。
次章からは具体的なゲーム内容を掘り下げていこう。
本作は基本的にミオの描くSF世界と、ゾーイの描くファンタジー世界を交互に冒険していく。そこで描かれる世界や味わえるゲーム性は実に多種多様だ。サイバーパンクな近未来を舞台にサイバー忍者の反逆者となって戦うパートや、大猿や木の精に変身して魔法の世界を冒険するパートなど、章ごとにさまざまな世界が描かれる。
ミオの描くSF世界
ゾーイの描くファンタジー世界
ステージはシューティングやカーチェイス、剣技アクションなどの王道な3Dアクションだけでなく、「マリオブラザーズ」や「メトロイド」シリーズのように横スクロールで進めていくパートなど、味わえるゲーム体験は多種多様だ。そして多くの場面でプレイヤー同士の連携や協力が求められる。
横スクロール視点に切り替わって「メトロイド」シリーズのようにステージを進んでいくパート
面白いのは、章ごとにサイドストーリーが用意されており、そこで一時的に別の世界に移動できる点だ。たとえば、ミオが描くサイバーパンクの世界を冒険している途中でゾーイの描くファンタジー世界に飛んでオークの軍団から逃げる体験を味わえる。サイドストーリーは協力して目的を達成するものだけでなく、レース形式で競争するパートもあるなど、おまけ要素とは思えないほど多彩で、物語の補完としても充実していた。
サイドストーリーを入れると本作で描かれる世界やゲーム性はさらにバリエーションが増える。サイドストーリーをプレイすることにメリットは用意されていないが、本作をプレイするなら積極的に周りたいと思わせてくるパートだ。
2人でコースを競争するサイドストーリー
そして、互いの世界を行き来するなかで、ミオとゾーイ、2人の対比もより鮮明になっていく。ミオは都会出身で戦闘モノが大好きだからこそSFや近未来の世界を描いており、ゾーイは田舎出身で自然との共生を重んじる人間だからこそ動物や植物が出てくるファンタジー世界を描いていることが明らかになっていく。
出身や価値観がまるで真逆の2人が、最初はいがみ合っていたものの、お互いの空想の世界を冒険するうちに徐々に理解を示していく。プレイヤー2人で協力してクリアしていくゲーム体験と2人の溝が徐々に埋まっていく物語構造はシンプルでわかりやすい。自然と物語への没入感も高まる。
世界観やゲーム性、そしてそれらに説得力を持たせるための物語がうまくリンクしており、わかりやすくて楽しめるゲームだと感じた。
ここからは気になった点について述べていこう。筆者は妻とローカルプレイで遊んだのだが、互いのアクションゲームに対する経験の差によってゲーム内で齟齬が生じる瞬間が多少あった。
たとえば、いっぽうが乗り物を操作し、いっぽうが乗り物の上から敵を撃つシーンがあるのだが、妻はゲームの車操作に慣れていないことから何度も壁や障害物に激突してゲームオーバーとなった。
ゾーイが乗り物運転を、ミオがシューティングを担当するパート
ミスしても直前からやり直せるので過度にストレスがたまることはないが、ゲームテンポは悪くなっていく。結局、車操作のパートはその都度交代してクリアした。
ほかにも謎解きパートは2人の連携面でタイミングやスピードが重要な部分が多々あり、解き方はわかっているのに互いのスキル差によってなかなかクリアできない場面があった。
また、本作はボス戦もかなり手が込んでいる。第2形態、第3形態と連戦になり攻略法の変わるボスが多いだけでなく、プレイヤー2人が同程度攻撃しないと倒せないボスもいる。つまり、いっぽうだけががんばっていても倒せない局面が多く、アクションゲームを普段あまりプレイしない人と遊ぶとどうしてもゲームテンポが悪くなってしまうのだ。
ボス戦は非常に長く、ゲーム性や攻略法が同じボスの間でもたびたび変わるので、アクションゲームに不慣れな人は苦戦するかもしれない
もちろんすべてのパートでテンポが悪くなるわけではなく、2人でスムーズに楽しく連携できるパートも存在した。パートごとにどうしても連携しやすさにムラを感じたという印象だ。
その半面、前作「It Takes Two」は、アクションゲームが苦手な人とプレイしてもスムーズに楽しめる作品になっていたため、前作同様のゲーム体験を期待した筆者と妻にとって先ほど述べたゲームスキルの差によるテンポの悪化は少々残念な部分となった。
「スプリット・フィクション」は多彩な世界観とゲーム性、良質な物語を味わえる良作である。いっぽう、ゲーム全体がアクションゲーム寄りになったことでプレイヤー間のゲームスキルの差によっては、ゲームテンポが悪くなる場合もある。
そのため、アクションゲームが得意な人同士でやる場合や、オンラインでほかのプレイヤーと接続して遊びたい人は「スプリット・フィクション」も十分楽しめるだろう。しかし、必ずしもゲームが得意な人同士でプレイしないのであれば個人的には「It Takes Two」をおすすめする。「It Takes Two」をプレイしてもう少し歯ごたえが欲しければ、「スプリット・フィクション」もプレイしてみてはいかがだろうか。