2016年7月26日、セガゲームスは「龍が如く」シリーズ最新作となる「龍が如く6(仮称)」の発表会を、東京・秋葉原にて開催した。ステージにはシリーズ総合監督である、セガゲームスの名越稔洋(なごし・としひろ)氏が登壇し、登場する俳優陣や舞台のほか、それまで仮称だったタイトル名、そして発売日を明かしてくれた。その模様をレポートしよう。
「龍が如く」シリーズ総合監督の名越氏。発表会では、最新作について熱く語ってくれた
「龍が如く」シリーズといえば、2005年にプレイステーション2で発売された1作目「龍が如く」から続く、シリーズ累計800万本以上を数える大ヒットタイトルだ。主人公の桐生一馬が欲望・暴力の渦巻く繁華街を舞台に、さまざまなドラマを繰り広げるアクションアドベンチャーゲームで、リアルに再現された街にはミニゲームや本編以外のサブストーリーが豊富に設けられており、本筋を追って物語を進めるのも、脇道にそれて遊びまくるのも、すべてプレイヤーの自由という世界観が特徴のひとつだ。
そのシリーズ最新作の新情報が公開されるとあって、会場には数多くの報道陣が詰めかけた。また、今回は抽選で選ばれた一般のユーザー66人も会場に招待されていた。イベントが始まると、ステージに「龍が如く」シリーズ総合監督である名越稔洋氏が登壇。「まずは最新映像を見てほしい」と切り出し、最新版の紹介映像が披露された。その後、これまで「龍が如く6(仮称)」と言われてきた本作の正式タイトルが「龍が如く6 命の詩。(いのちのうた)」になったことを公表。最後の句点「。」については「シリーズの中で、物語としてひとつの区切りを付けるため」と解説してくれた。「血のつながりや絆といった人間ドラマをいつも描いてきたが、どんなタイトルがふさわしいかを考えて、この名前を採用した」と、サブタイトル名の意味についてもコメントした。
ついに正式タイトルが初公開となった。その名も「龍が如く6 命の詩。」。サブタイトルの最後に句点「。」が付いているのにも意味がある
今作は、ナンバリングタイトルでは久しぶりとなる桐生一馬の単独主人公となるが、紹介映像の最後に「桐生一馬伝説 最終章」という、シリーズファンとしては衝撃的なキャッチコピーが! これについては「本作は、桐生一馬という男の最終章。1作目では9歳だった女の子の遥ちゃん(澤村遥)から話が生まれていったが、それに関連する物語は本作で一度終わりにする」と、その意味が名越氏の口から語られた。
桐生一馬をメインにした物語にひとつの区切りが付くというだけであり、もちろん「龍が如く」シリーズが終わるわけではない
桐生一馬(きりゅう・かずま)は本作の主人公。東日本最大の極道組織、東城会元四代目会長。堂島の龍と呼ばれる、伝説の極道。過去の因縁から数々の事件に巻き込まれており、2012年に勃発した全国の極道組織を巻き込んだ一大抗争の後、過去を清算するためにみずから服役の道を選ぶ。そして2016年、出所した桐生は家族同然の存在である澤村遥が失踪したことを知り、その謎を追うために広島・尾道仁涯町へと足を踏み入れる。CV(キャラクターボイス)は黒田崇矢さん
澤村遥(さわむら・はるか)は桐生最愛の女性、澤村由美が遺した一人娘。2005年に起きた「消えた100億」を巡る事件が縁で桐生と出会い、以降は沖縄の児童養護施設・アサガオでともに暮らしていた。2016年、刑期を終えて出所した桐生は、アサガオの子どもたちから遥が失踪した事実を知らされる。CVは釘宮理恵さん
「龍が如く」シリーズと言えば、多数の有名俳優陣が出演していることでも注目されているが、ここで「龍が如く6 命の詩。」に登場するメインキャスト6人と、それを演じる俳優陣が紹介された。1人目は、広島の極道組織・陽銘連合会の末端組織である広瀬一家の総長、広瀬徹を演じるビートたけしさん。シリーズ4作目より俳優にも使われるようになったフェイスキャプチャーという技術により、ゲーム内に登場する広瀬徹はまさにビートたけしさんに瓜二つのクオリティで再現されている。物語の中ではキーマンとなるキャラクターとのことだ。
ビートたけしさんが演じる広瀬徹(ひろせ・とおる)。陽銘連合会の末端に組を構える、広島でも古参の極道。ひょうひょうとしてとらえどころがなく、一見すると気の良い初老の男性といった風采。しかし、広瀬の発する言葉には不思議な含蓄とユーモアがあり、周囲からの人望は厚い
2人目は、陽銘連合会系広瀬一家の若頭である南雲剛役の宮迫博之さん。ゲーム中では広島を訪れた桐生に対し、なぜか敵意をむき出しにする。宮迫さんはシリーズ2回目となる出演だが、それに関して名越氏は「抜群に上手なので、いつかもう一度お願いしたいと願っていた1人。オファーを受けてもらえてうれしく思ってる」と、表情をやわらげて語った。
宮迫博之さんが演じる南雲剛(なぐも・つよし)。粗暴だが裏表のない田舎者。広島の寂れたスナック街を縄張りとしているが、シノギよりも惚れた女を守ることを優先してしまう不器用な男
3人目が、広瀬一家の若衆である宇佐美勇太を演じる藤原竜也さんだ。藤原さんは「龍が如く3」に続いて2回目の出演となるが、「同じく抜群にうまいのでお願いしたところ、快諾してもらえた。気合の入った役作りをしてもらい、よい内容になったので、期待してほしい」と、こちらも満面の笑みで語ってくれた名越氏。
藤原竜也さんが演じる宇佐美勇太(うさみ・ゆうた)。寂れた尾道仁涯町ではどこか浮いた印象を与えるごく普通の若者で、幼なじみに誘われるまま何となく極道の世界に足を踏み入れた。現在では、将来の夢も抱かず一家の面々と怠惰な毎日を過ごしている
4人目に登場したのは、広島は尾道仁涯町の小さなスナック「清美」のママを務める美女・笠原清美役を演じる真木よう子さん。名越氏が「個人的に女優さんとして大好きで、いつかお願いできたらな……と思っていたんですが、実現できてうれしいです」と、気持ちの入ったコメントをしていたのが印象的だった。
真木よう子さん演じる笠原清美(かさはら・きよみ)若いころから町のマドンナ的な存在であり、地元の男たちの憧れの的。広瀬一家若頭の南雲も、彼女に恋い焦がれる男のひとり
5人目に紹介されたのは、広島の造船会社にして世界有数の造船会社である巌見造船の社長で実業家、巌見恒雄役の大森南朋さん。広島に対して大きな影響力を持つキャラクターで、その淡々とした空気感が重くて格好いいので注目してほしいとのことだ。
大森南朋さんが演じる巌見恒雄(いわみ・つねお)。造船業だけではなく、病院や学校、交通網など、さまざまな分野で事業を展開。広島における彼の影響力は、絶大なものがある
6人目として紹介されたのが、東城会直系染谷一家総長・染谷巧を演じる小栗さん。インテリ武闘派ヤクザとして活躍するキャラクターだが、映し出されたスライドを見て「似てるなー」と思わず名越氏がこぼすほど、こちらも本人そっくりに仕上がっている。「わりと早めにPS4上での画像として登場していたが、CGになっても小栗さんは素晴らしかった」と、本音も語ってくれた。
小栗旬さんが演じる染谷巧(そめや・たくみ)。東京・神室町の一角、亜細亜街の大火事を発端に勃発した東城会と海外勢力との一大抗争に乗じて、東城会内での地位を急激に上げつつある極道。抗争をきっかけとした「暴力の復権」を歓迎しており、桐生に対しても不遜な態度を見せ、自身の野心を隠さない男
メインキャストを紹介し終わり、名越氏は「ビートたけしさんはじめ、実力のある方が勢揃いした。『龍が如く』ブランドの信用が積み上がってオファーをかけたところ受けていただけたが、何回かこういう発表会で語っているように、最初のころはキャスティングひとつとってもなかなかOKがもらえない。というより、ほぼOKをしてもらえた記憶がなかった。今回は逆オファーをいただいた人もいるし、ここにくるまで11年間という長い時間がかかったんだなと思いつつも、脚本の中でまさに我々が妥協なく理想とするキャスティングができたことにうれしく思う」とまとめた。
ナンバリングの6と同じく、6人の豪華な俳優陣も参加。フェイスキャプチャー技術で、顔の表情もそっくりだ
今作で、新たに選ばれた舞台となる町は、広島県の尾道。ゲーム中では、仁涯町という呼称で呼ばれる。尾道を選んだ理由として名越氏は「単純に神室町はネオン街。今回は、都会とのコントラストを出すために田舎町を選んだ。田舎もいろんなところがあるが、広島は知っての通り、日本が戦争をした暗い歴史の中で這い上がってきたというドラマがある。そんなバックボーンを持つ場所なので、ドラマを作るうえでいろんなものを生み出しやすい環境・ポテンシャルを持っていると思う」と解説。さらに、すでに体験版をプレイした人には「神室町も、完成版ではその表現に驚いてもらえると思う。PS4の表現力を駆使して、空気感も再現したシリーズ集大成の仕上がりになっている」と、自信のみなぎった表情で言い切った。
PS4専用タイトルということで、その能力を駆使した町並みを作っているとのことだった
最後に、発売日が2016年12月8日と発表された。この日は、奇しくも1作目「龍が如く」の発売と同じ日。「こじつけたわけではないが、ひとつのドラマの結末を迎えられるのは感慨深いものがある」と名越氏。当初は2016年秋発売予定と公表していたことについては「2016年秋発売予定と言っていたので、12月は秋かと言われると……、そこは勘弁してほしい」と、苦笑いしていた。
発売を待ち望んでいるファンへのメッセージを求められた名越氏は「『龍が如く』シリーズは、常にチャレンジしてきた。今作ではPS4専用ソフトになったことで、また新たなる挑戦をしている。ゲーム内容を言えていない部分も数多いが、絵として見せられるような、もしくは触って遊べる状況になってから満を持してお目にかけたい。作品の中身としてもサプライズがまだまだ残っているので、続報を待ってほしい」として、イベントを締めくくった。
プレイステーション4専用ソフトとして、2016年12月8日に発売決定
イベント終了後には名越氏によるサイン会も行われた。入場した一般ユーザーの方々はその場でもらえるポスターにサインを入れてもらい、がっちりと握手をしていた
イベント終了後、報道陣を集めて名越氏へのインタビューが行われたが、そこではイベント中に語られなかった内容も飛び出した。インタビューの模様を、余すところなくお伝えしよう。
記者:今回のキャスティングの意図についてお聞かせください。
名越:毎作毎作驚いてほしいので、そのプレッシャーと期待に負けないキャストを揃える、というのが前提にあります。今作で、それができたという自信もある半面、こうやってお見せしたときに「越えてきたな」と言ってもらえるか?という不安もあります。ただ、自分的には越えられたと思っています。9月の東京ゲームショウで全貌が明らかになる流れなのですが、今日のイベントも短い時間ではありましたが緊張感の高い発表会でした。
記者:尾道が舞台ということで、改めて説明をお願いします。
名越:ドラマのために、都会の人ばかりがいるというよりは、生まれも育ちも違うという人を混ぜて描きたかったという関係上、まず田舎にしたかったというのがありました。尾道は映画などでよく扱われていますし、街自体がエンターテインメント作品を創ることに対して協力的でしたから、アメリカでいうところのロサンゼルスのようだと思っています。そういう意味では取材もスムーズでしたし、よい選択ができたと思っています。ただし、これまでに培ってきたノウハウは一応あったのですが、画面内で尾道の空気感があるように見せるために、ある意味、作り直しのところがあり、そういう意味では大変な選択でした。
記者:発売日の12月8日といえば、初代「龍が如く」の発売日ですが、そのあたりに関しての思いをお願いします。
名越:初回作を語ると長いので、はしょって言うと「思いの濃い作品がたまたま12月に出た」ということですが、結果として思い出深い日になりました。今回、そこに合わせてきたのは狙いがなかったわけではないですが、それ以上に「秋発売と言っていたが12月は秋か?」というツッコミが怖いです(笑)。時間が思ったよりもかかりましたが、本作発売を待っているユーザーの方は「早く出せ!」ではなく「しっかり作ってよいものを出して」と言ってくださる方が多いと思うので、そこはお許しいただけるのではないかと。
記者:桐生一馬の物語にひと区切り付けようと思った理由を教えてください。
名越:ボクも、そしてゲームに登場するキャラクターたちも年を取ります。そういう中で、どこかでひとつの終わりが来るだろうというのは、はじめの段階では気にしていませんでした。そもそも、シリーズが続くかどうかも考えておらず、夢中で作っていましたし。しかし、ドラマ性の高いコンテンツですから、何らかの区切りをつけずにダラダラと続けていくというのは、緊張感がなくてボクは好きじゃない。物語には必ず終わりがあるべきだ、というポリシーをボクは持っていますので。もちろん、商売ですからいきなり年齢が止まったり、急に若返るというのもできなくもない。しかし、キャラクターたちが年を取る様子を見届けてファンは一緒についてきてくださっているわけなので、急にルールを変えるのは裏切りですしよくないと思ってます。そう決めたら、どこかで何かけじめをつけないといけないし、実際そういう時期に来たと解釈してもらえればと。もちろん「龍が如く」というタイトルがどうなるか、というのとは別の話です。
記者:開発の進捗は?
名越:順調です……、超順調です。最後のセリフがこれか(笑)。
記者:では最後に、期待して待っているユーザーにコメントをお願いします。
名越:よいキャスト、よい舞台、よいシナリオが揃ったと思います。ボクらは日本人向けの現代風ドラマを作っていますが、いっぽうで1人の消費者として見た場合、海外のCG映画はうまいことをやってるし、すぐれたものも多い。そこに近づきたい、越えたいという気持ちが常にあるわけです。そこを少しでもかなえていくというのを毎作品ごとにやっているので、そのレベルの違いも見てほしいです。今作はPS4オンリーなのでパフォーマンスがいいですが、それを単純に人や建物の数を増やす方向だけでなく、質を上げることにつなげたい。今回は、そこに焦点を当てた開発ができたと思っています。今作、「最終章」と銘打ったことに嘘はないですけれど「そんなこと言わないでくれよ!」とたくさん言ってほしいという気持ちも少しあったりとか……、そのへんのジレンマがあるのが、今の正直な心境です。