レビュー

高性能&グッドルッキングな“小型水槽”でアクアリウムを始めよう♪

小型の魚と相性がよさそう

水を上限のラインまで入れ、低床(※)のソイルを7cm敷いただけの状態で空回りさせながら様子を見ると、水流はかなり弱めとの印象。その分、小さな水草でも植えやすいし、水槽のサイズから考えると適切な水流であるとも思いました。

水流の加減からして、最適だと思えるのはベタや小型のグラミー類などのアナバス科、小型のアピストグラマ類です。水流が穏やかな環境を好み、酸欠に強い種を選ぶのが楽だと思います。メダカ類やアカヒレも向くでしょう。いっぽう、コリドラスやプレコ類など、やや強目の水流や豊富な溶存酸素量を求めるサカナを飼育する際は、エアレーションを追加するなどの工夫が必要かと思います。

※水槽の底に敷く砂利や土など。「AQUA-U」の場合、何らかの低床を敷いたほうが望ましいので、別途用意する必要があります。昔ながらの大磯砂利やソイルなど、飼うサカナや植える水草によって適するものが変わるので、熱帯魚ショップなどで相談して選びましょう。

水を張ったのち、ソイルを投入。最初は濁りますが、数時間で気にならないレベルに落ち着きました。ソイルの場合は、排水口のスポンジが軽く埋まる程度が適当かと思います

まずは水だけを入れて、キチンと水が回るかチェックしましょう。低床の厚みが5cm以下だと排水口と吸水口が目立ってしまいますので、気になる人はやや厚めに。低床を敷かないと排水口と吸水口が安定しないので、ベアタンク(底床を一切敷かない水槽のこと)として使うのは不向きです

製品のパッケージには、ゴールデンハニードワーフグラミー3匹とネオンテトラが10匹ほど収容されている写真が載っていますが、正直これは過密状態にて、あまり初心者向けではありません。水草の状態やろ過機能が安定しても、これだけの生体数を収容してコケのないキレイな状態をキープするには頻繁な水換えが不可欠です。

筆者は今回、ほかに所有する水槽内で適当に増えた水草を2種類移植。「トニナ」という水草を奥に10本ほど、前景には「ストロギネ レペンス」という、成長してもあまり上に伸びない小型水槽向けの水草を若干植えました。レイアウトのセンスについては何年やってもうまくならず、お恥ずかしい限り。管理の悪さから、すでに糸状のコケが水草に生えた状態であることもご容赦ください(笑)。

ほかの水槽から2種類の水草を移植。「ただ植えただけ」のセンスのなさは残念なところですが……

ほかの水槽から2種類の水草を移植。「ただ植えただけ」のセンスのなさは残念なところですが……

水は、埼玉県所沢市の水道水(中性)でカルキを抜いただけ。弱酸性の軟水に傾く性質のソイルを低床として敷き、弱めながら二酸化炭素を添加(※)しているので、PHは5.0〜5.5と、やや低めの弱酸性となりました。

※水草の光合成に必要な二酸化炭素は、水中では不足しがち。水草をしっかり育てたい場合は、二酸化炭素の添加キットを別途購入してセットしましょう。「AQUA-U」の場合、水流は穏やかで曝気(ばっき・空気と液体を接触させて水中に供給すること)することがなく、水中の二酸化炭素は比較的温存しやすいので、なくても問題ありません。エアーポンプで曝気をすると水中の二酸化炭素が飛んでしまうので、両立させるのは難しくなります。

今回はベタを1匹収容してみた

生体はベタのオスを1匹のみ収容。ベタは、コップのような小さな容器に入れて売られているのをよく見かけるように、小型水槽での飼育に向いています。基本的に水深は浅めで、弱めの水流を好む(というか止水を好む)サカナなので、実際、ベタを買ってみると「AQUA-U」はベタの飼育環境としては最高であると実感しました。

止水状態を好むサカナとはいえ、止水のままだと水質が悪化しやすくなりますし、水草の育成にも好ましくありませんが、「AQUA-U」の緩やかな水流は、ベタの負担にならない範囲でほどよく循環し、観察も管理もとてもしやすいです。

ベタの中でも、比較的原種に近い「ブルーインベリス」という種類を導入。大阪のベタ専門店「フォーチュン」さんで購入。さすがベタの専門店だけあって、サカナの状態は最高でした。梱包もていねいで、遠方からでも安心して注文できます

今回導入したベタは、繁殖時に水面に泡巣を作る習性があり、水流が強いと泡巣が作れないのですが、「AQUA-U」の水流なら問題なく泡巣を作る様子が観察できました。別の水槽で飼育中のメスが産卵可能になったら「AQUA-U」で繁殖させてみる予定です

個人的に「AQUA-U」は見た目のスタイリッシュさもさることながら、何よりもゆるやかな水の循環がもたらす環境維持のしやすさが一番気に入りました。ベタが殖えたら数本増設したいぐらいです。

また、ベタをはじめ、小型のサカナは興奮したり驚いたりすると飛び跳ねることが意外と多く、水槽にしっかりフタをしていないと、水槽の横でいつの間にか干物になってしまう恐れがあるのですが、「AQUA-U」は水槽の最上部のフチ部分にシリコンが貼られており、フタとの密着性を高めているという配慮もすばらしい。

しっかりと閉まるフタ。水の蒸発やサカナの飛び出しなど、小型水槽で起こりやすいトラブルを回避しやすくなっています

セットしてから2週間での印象は、新規セット直後からでも日増しに環境が安定することを実感するなど、予想以上に機能面がすぐれていることを実感。少数の小型魚と水草を楽しむには、やはり画期的と言えるシステム水槽です。小型水槽のオーバーフローは、大いにアリだと思いました。パッケージの写真にあるとおり、水耕栽培やビオトープ的にも使えるなど、工夫次第では創造的な水景を演出することができるでしょう。

セットしてから2週間。奥に植えた水草のトニナは倍ほどに伸びました。ほかの水槽から移植した時点で糸状のコケも一緒に入れてしまったので、よく見ると早くもコケが生えていますが、個人的にはあまり気にならないレベル。むしろ、ベタの繁殖時には、水槽内になるべく多くの微少生物が発生していることが望ましいので、今後もコケはあまり気にせず、ある程度は放置する所存です。せっかくのオシャレ水槽なのに本末転倒かもしれませんが……(笑)

将来的に排水口が目詰まりをした場合、水があふれることは避けられても、ろ過機能は著しくダウンすることが予想されますが、おそらく排水溝のスポンジを洗浄すれば簡単に復活させられるはずです。

いっぽう、アピストグラマなどでは、浮上したての稚魚が排水口に吸い込まれることが少し心配されます。モーターのパワー的に考えて、おそらく大丈夫だと思われますが、これでアピストグラマなどの繁殖を行う場合は、念のためよく注視してください。

あとは、水流が穏やかなので、油膜が出ると少しやっかいかも知れません。もし油膜が出たら一次的に水槽内部に直接エアレーションしてみてください。

また、新規からの立ち上げ時の安定感から考えると、一般的な小型水槽より“全リセット”することがおっくうにならないのもメリットとしてあげられます。

長期間の飼育で起こる変化については未知数ですが、時間の経過とともに環境がどう変わっていくのか楽しみな水槽ですね。

☆☆コケはどうしてもイヤ! という人へ☆☆

コケが発生するのは、水中の養分と照明を当てる時間が過剰であることが原因です。コケを防ぐためのコツは「マメな換水」に尽きます。特に水槽の新規セット直後は、ろ過機能はほとんど働いておらず、低床のソイルからにじみ出た成分などにより、水は意外と養分過多になっています。

今回紹介した「AQUA-U」程度のサイズなら、大きめのコーヒーカップや味噌のカップなどの容器5〜6杯で3分の1ぐらいの水になるので、コケを避けたいのであればマメに換水してください。

環境が整うと、換水をしないでもコケが出ない状態を維持することも可能ですが、過去に水槽がコケまみれになってイヤになったという経験のある人は「マメな水換え」が必須です。水槽内の水は、パッと見がきれいでも、サカナの排泄物やエサの残り、低床のソイルからにじみ出た成分、枯れた水草の破片などで余分な栄養分が溶け込んでいるものです。「見た目がきれいだから換水しないでいい」と判断するのは誤りです。

水が頻繁に入れ替わることは、サカナにとってあまりよくない面もありますが、小型水槽の場合、汚れた水よりはいいことのほうが多いです。もちろん水温は変動のないように調整し、カルキはしっかり抜いた水で換水します。

日本の水道水は水質が安定しているので、頻繁に換水をすると「換水」の水そのものが、そのサカナにとって日常的な環境になりますので、換水でサカナが受けるストレスはほとんどなくなります。

サカナの種類にもよりますが、安価で入手しやすいポピュラーな種類のサカナであれば、多くの場合、日常的に少しずつ水が新しくなることにすぐ慣れるので、マメな換水による弊害はほとんどありません。逆に、水槽を長期間放置して、一気に、かつ急激に水が換わるのはサカナにとって大きなストレスになりますのでご注意を。

マリオ高野
Writer
マリオ高野
1973年大阪生まれの自動車ライター。免許取得後に偶然買ったスバル車によりクルマの楽しさに目覚め、新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、自動車工場での期間工、自動車雑誌の編集部員などを経てフリーライターに。3台の愛車はいずれもスバルのMT車。
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芝崎 瞬(編集部)
Editor
芝崎 瞬(編集部)
自動車専門媒体からゴルフ専門メディアを経由し、価格.comマガジンへ。クルマは左ハンドルMTに限る! と思って乗り継いでいたが翻意して今は右AT。得意クラブは、強いて言えばミドルアイアン。
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