特別企画
どれも一緒じゃありませんっ!

「軍手」の違いをメーカーに聞いてみたら、想像をはるかに超える奥深さだった

軍手には、実はいろいろあったのだ……

軍手には、実はいろいろあったのだ……

引っ越しやガーデニングなど、さまざまな場面で重宝する「軍手」。割と身近なアイテムながら、そういえば我々は軍手のことをあまりよくわかっていないのではないか。

そこで、インターネットで「軍手」と検索してみたところ、軍手の思わぬ奥深さが見えてきた。すべて同じように見える軍手にもさまざまな種類があり、特徴も異なるという。

筆者の中で、にわかに高まってきた軍手熱。そこで、軍手の専門メーカーを訪ね、その歴史や進化など、根掘り葉掘り聞いてみた。

「おたふくの軍手」は60種類以上! すべて特徴が異なる

お話を伺ったのは、軍手を作り続けて93年。大阪の老舗手袋メーカー「おたふく手袋株式会社」でマーケティングを担当している、徳永さん。

はるばる大阪からお越しいただいた、徳永智彦さん

はるばる大阪からお越しいただいた、徳永智彦さん

――そもそもの質問で恐縮なのですが、軍手ってどれも一緒じゃないんですか?

徳永さん(以下、敬称略)「軍手ってさまざまなシーンで使われるじゃないですか? だから、用途によって性能や厚みが違うんです。素材、糸の本数、糸の太さ(番手)、針の密度(ゲージ)の組み合わせによっても変わってきますよ」

――実際、どれくらいの種類があるんでしょうか?

徳永「今は60種類を超えるくらいですね。多岐にわたるニーズに応えていたら、ここまで増えていきました。実は僕も入社する前は軍手なんて6、7種類ぐらいかな〜と思っていたんですが、会社の壁一面に飾られている軍手を見て驚きました」

――そのすべてに違った特徴があるんですよね?

徳永「そうですね。はじめに素材ですが、大きくは『純綿』『特紡』『混紡』の3種類に分類されます。純綿は、その名のとおり綿100%で編んだ軍手になります。肌にやさしく丈夫で吸水性も高いのですが、その分お値段も高くなっています」

純綿の「デラックスG」。おたふく手袋株式会社が誇る最高級軍手

純綿の「デラックスG」。おたふく手袋株式会社が誇る最高級軍手

徳永「逆に『特紡』は価格の安さが特徴です。というのも、特紡は洋服やタオルなどの製造過程で出る余った繊維をかき集め、新たに紡績しているんです。素材が余った時に都度、製造するため割合が一定でなく、品質が安定しないリスクがあります。そのため、主に使い捨ての軍手として利用されていますね」

特紡の「日本一 No.300」。ときに湿布の外側にある、ふわふわした繊維が入ることもある

特紡の「日本一 No.300」。ときに湿布の外側にある、ふわふわした繊維が入ることもある

徳永「最後の『混紡』は先ほどの『純綿』と『特紡』のミックスになります。『特紡』の品質をより安定させるために、綿を混ぜ合わせたものですね。綿を使用している分、やや価格が張ります」

混紡の「綿混軍手」。そのほか、ペットボトル再生繊維やナイロンの化成品、アラミド繊維などを使用した軍手もあるそう

――僕がよく買うのは「特紡」ですね。素材だけでなく、「糸の本数」、「糸の太さ(番手)」、「針の密度(ゲージ)」によっても軍手の厚みが変わるとのことでしたが?

徳永「そうですね。当たり前ですが、多くの糸で編んだほうがより強い軍手になります」

軍手をひっくり返すと、親指の付け根から糸の本数が確認できる。こちらの純綿は13本

軍手をひっくり返すと、親指の付け根から糸の本数が確認できる。こちらの純綿は13本

徳永「2本の糸で編んだ場合、表面上で1本が切れるとすぐに穴が開いてしまいます。いっぽう、13本で編んだものは穴が開きづらい。ちなみに、糸の太さは番手という単位で示され、数字が大きくなるほど糸は細くなります。そして、ゲージ(針の密度)とは、1インチ間にある針数のこと。1インチの間に7本あれば7ゲージ、10本あれば10ゲージです。ゲージ数が大きいければ大きいほど、細い網目で薄い軍手が出来上がるんです」

軍手を伸ばすとゲージ数が確認できる

軍手を伸ばすとゲージ数が確認できる

――一般的な軍手は、どういった組み合わせが多いんですか?

徳永「糸の本数は純綿が5本編み、特紡は2本編みが主流です。糸の太さは10番手、20番手が多く、針の密度は7ゲージが一般的です。ただ、同じ7ゲージの軍手を作る場合、『5本×10番手』と『10本×20番手』だったらそこまで差がないように思いませんか? しかし、実際は後者のほうが優れています。なぜなら、細い糸で多く編んだほうが網目がキュッと締まるため強度が増すんですよ」

――ということは、多くの太い糸を13ゲージで編めば「最強の軍手」ができる?

徳永「いえ、13ゲージにはあまり太い糸が使えないんですよ。使えるのは綿、ナイロン、ポリエステルといった細い糸だけです。まあ仮に作ったとしても、太い糸では指が曲がらないと思います。要は『ゲージ数が高い=薄い』ため、細かい作業をする場合はゲージの高い軍手が向いています。そして、薄い軍手をさらに強くするためには多くの本数を編むというわけです」

もとは軍隊用の手袋だった? 知られざる軍手ヒストリー

――軍手って、いつから日本で使われているんですか?

徳永「軍手って『海外生まれ、日本育ち』みたいな商品なんです。始まりは、日本が明治時代の頃。スイスにある『エドワール・デュビェ社』が横編み機を開発したことによって『編み手袋』が生まれました。そして、明治39年に日本に持ち込まれると、軍隊で使われるようになりました。『軍用手袋』、これが軍手の由来ですね」

――ああ、それで「軍手」なんですね。今の軍手との違いは?

徳永「当時は機械の性能が低く、指先の部分は人が1つひとつ手縫いしていました。そのため大量生産ができず、高級品だったそうです。以降、機械の独自改良を重ね、繊細な性格の日本人に受け入れられる、より手にフィットした軍手を製造できるようになっていきました」

軍手の種類はもちろん、歴史や製造工程まで熟知

軍手の種類はもちろん、歴史や製造工程まで熟知

―― 今のように広く普及したのはいつ頃ですか?

徳永「市場に一気に出回るきっかけとなったのは、昭和45年に島精機製作所が開発した『全自動シームレス編み機』でしょうね。これにより、人が縫っていた指先部分も含め、全自動で製造できるようになり、以降、軍手は大量生産・大量消費されるようになりました。軍手業界にとって、一番のターニングポイントだったと思います」

――おたふく手袋さんも、その頃から軍手の製造に乗り出したそうですね。

徳永「弊社は、創業者の井戸端政一が大正15年に個人企業として、和歌山県海草郡下津町で作業手袋の製造を始めたことが原点になります。昭和26年に『大洋手袋株式会社』を設立し、昭和37年に本社を大阪市に移しました。ちなみに社名を今の『おたふく手袋株式会社』に変更したのは、昭和55年になります」

――創業以来93年間、軍手をメインにやってこられたと……!!

徳永「そうですね。弊社が今でも軍手を作り続けられるのは、『全自動シームレス編み機』を発明した島正博さんと井戸端政一が同郷だったことが大きいと思います。聞くところにようと、井戸端政一は開発にあたって、アドバイスや出資、最初に作った機械を購入するなど親しい間柄だったそうです」

――そんな友情秘話が軍手に隠されていたとは……。ただ、軍手って安いし、そう何度も買うものじゃないから商売としては大変そうだなあ……と思うんですが。

いつの間にか軍手を装着した徳永さん

いつの間にか軍手を装着した徳永さん

徳永「それ、よく言われます(笑)。確かに一般のご家庭の場合、軍手を使うのはガーデニングや家の掃除をするときくらいですよね? となると、1ダース(12ペア)も買っておけば1年以上は持つでしょうね。
ただ、我々はホームセンターや工場に大量納めているので、ビジネスとして成り立つんですよ。特に工場や作業現場で使用すると非常に汚れるため、使い捨て感覚で毎日のように新しいものに取り替えています。なかには、1日2ペア3ペアを使う人もいますからね。業界によっては薄利多売な商品なんです」

軍手の進化系? 「コーティング手袋」とは何か

――昔に比べ、軍手の性能って上がってるんですか?

徳永「2000年前後にまで遡ると、さまざまな進化がありました。塩化ビニールの滑り止め軍手、13ゲージの化学繊維100%軍手、素手感覚の18ゲージ軍手。ただ、ここ5年は大きな変化がないですね。細い進化でいえば、小指の指股を下げた軍手ですかね」

こちらが小指の指股を下げた進化系軍手「桜龍」。より手にフィットする軍手になっている。特紡ではあるものの、ポリエステル糸を2本補強しているため伸縮性と強度を増している

徳永「軍手の性能がある程度のところまで到達してしまったいっぽう、今は『コーティング手袋』と呼ばれる、軍手に特殊なコーティングを施した手袋が人気を集めています。こちらは、手のひら部分を樹脂やゴムでコーティングすることでグリップ感を強めています。いっぽう、手の甲部分はコーティングしていないので、通気性がよくムレにくいのが特徴です」

人気のコーティング手袋「ソフキャッチEXフィット 天然ゴム  クレーターパーム」

人気のコーティング手袋「ソフキャッチEXフィット 天然ゴム クレーターパーム」

表には滑り止め効果のある、天然ゴムを使用

表には滑り止め効果のある、天然ゴムを使用

――軍手界のニューカマーとして「コーティング手袋」にも頑張ってほしいですね。

徳永「そうですね(笑)。まさに今、軍手で行われてきた戦いがコーティング手袋でも繰り広げられていますからね。たとえば、フィット感を出すために新しい化学繊維を試したり、コーティング部分にもゴム、ニトリルゴム、ポリウレタンなどの混合や凹凸を付けたりと、日々改良を重ねています」

――コーティング手袋への世代交代も近いと。

「とはいえ、コーティング手袋もベースは軍手です。軍手の進化がずっとあったからこそ、コーティング手袋の進化があります。我々はあくまで軍手メーカーとして始まった会社です。軍手あってのコーティング手袋ということを忘れず、誇りを持って作っていきますよ」

ホームセンターで軍手に悩んでいる人がいたら、率先して話しかけて相談に乗っているそう

ホームセンターで軍手に悩んでいる人がいたら、率先して話しかけて相談に乗っているそう

――僕もこれからは、値段だけでなくしっかり性能もチェックして買うようにします。

徳永「ぜひ、シーンによって軍手を使い分けたり、進化しているコーティング手袋を使ってみたりしてほしいですね。いい軍手は工場や作業現場だけでなく、一般のご家庭でも役に立ちますから。特紡と比べると若干値は張りますが、その分長持ちしますし、作業がずっと楽になると思いますよ」

――心得ました。最後に、軍手に関する熱いメッセージをお願いします。

徳永「これだけは言いたかったんですけど……軍手ってめちゃくちゃ道端に落ちてるんですよね……。あれを見ると、とても切なくなってしまって(苦笑)。とても地味でニッチな軍手産業ですが、そこには伝統があり、進化があり、価格競争があり、ひと言では語り切れないさまざまなドラマが詰まっています。ですから、できれば落とさず、大切に使ってもらえたらうれしいですね」

■草むしりで実践! 軍手の使い心地を比較してみた

最後に、今回紹介した軍手を使い比べてみよう。
「コーティング手袋」、「特防」、「純綿」、「混紡」の4種で草むしりをして、それぞれの使い心地を検証してみた。

むしりがいのある、放置された庭で検証

むしりがいのある、放置された庭で検証

左からコーティング手袋、特防、純綿、混紡

左からコーティング手袋、特防、純綿、混紡

まずは「特防」。最もポピュラーで使い慣れた軍手であるが、はたして。

特紡「日本一 No.300」。420gと軽量かつリーズナブル。いわゆる軍手といえばこれを思い浮かべる人が多いだろう

使い慣れているためこれといった意外性はないが、軍手があると草むしりがとてもはかどる。手が汚れず怪我もしない。と、改めて軍手のよさを再認識したものの、使い心地自体はまあ普通。

続いては「純綿」。国産の綿を100%使用しているというが、果たして……。

おぉ〜、手をやさしく包み込む〜

おぉ〜、手をやさしく包み込む〜

さすが綿100%。肌ざわりが抜群で、つけ心地は文句なし。普通に手袋として使いたいレベルである。

さらにベタつきにくく、汗を吸ってくれるのもポイント。さすがは「おたふく手袋」が誇る最高級軍手だ。

純綿「デラックスG」。20番手(糸の太さ)を13本の糸で編んでいるため頑丈

純綿「デラックスG」。20番手(糸の太さ)を13本の糸で編んでいるため頑丈

また、しっかり縫製されているため指が汚れる心配や爪に砂が入る煩わしさがないのもすばらしい。ただ、やや硬さもあるため、草むしりのような細かい作業には若干不向きかもしれない。
ともあれ、実際に使い比べてみると、使用感が全く違うことに驚く。次は「混紡」だ。

軍手のおかげで手は守れるが、腰が痛い

軍手のおかげで手は守れるが、腰が痛い

綿と化学繊維で編んだ「混紡」は、特紡の軽さと純綿の風合い、それぞれの軍手のメリットを兼ね備えた印象。そのうえ、値段も高すぎず、耐久性も高いためバランスの取れた軍手だと感じる。

最後に、軍手の進化系である「コーティング手袋」も試してみよう。

「ソフキャッチEXフィット 天然ゴム  クレーターパーム」。見た目もカッコいい

「ソフキャッチEXフィット 天然ゴム クレーターパーム」。見た目もカッコいい

おお! ものすごいフィット感。まるで僕の手にあつらえたかのように、ぴったりだ。

抜群のグリップ力で、雑草も根本からごっそり

抜群のグリップ力で、雑草も根本からごっそり

ゴム特有のグリップ力で、軍手よりも力を入れずに抜くことができる。それでいて手の動きを損なわないやわらかさ、蒸れる心配のない通気性も備え、これは作業効率がグンと上がる。

表面がゴムに覆われているため、手がまったく汚れないのもうれしい。ガーデニングなど、水を使う作業にも適していそうだ。すばらしい!

これまでなんとなく使っていた軍手。改めて比較してみると、使用感や着心地にはだいぶ違いがあることがわかった。みなさんも作業を行う際は、使い捨ての安い軍手をただ購入するのではなく、吟味して選んでみてはいかがだろうか?

【取材協力】
おたふく手袋株式会社
https://www.otafuku-glove.jp/

小野洋平

小野洋平

1991年生まれ埼玉育ち。編集プロダクション「やじろべえ」所属。服飾大学を出るも服が作れず、ライター・編集者を志す。https://twitter.com/onoberkon

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