Apple Pay(アップルペイ)はiPhone、もしくはApple Watchをレジの端末にかざすだけで、登録したクレジットカードや電子マネーで支払えるスマホ決済サービス。複数のキャッシュレス決済をひとまとめに管理でき、レジでの支払いもスムーズに完了できるため、対象となるiPhoneユーザーにとっては利便性が高く人気を集めています。そこで、100枚以上のカードを保有し、ポイント・カードのポータルサイト「ポイ探」を運営する菊地崇仁さんに、ポイントを貯めやすいなどの特徴を持つ、Apple Payに登録したいクレジットカードを紹介してもらいました。
(以下、菊地崇仁さん語り。聞き手は価格.com マネー編集部)
〈菊地崇仁さん〉北海道札幌市出身。日本電信電話株式会社(現NTT東日本)を退社後、友人と起業したシステム設計・開発・運用会社を経て、06年にポイント交換案内サービス「ポイ探」の開発に携わり、11年3月代表取締役に就任。以後、ポイント、クレジットカード、マイレージに関する豊富な知識を生かし、テレビや雑誌などでも活躍中
Apple Payとは、iPhoneなどに標準搭載されているアプリ「ウォレット(Apple Wallet)」を利用したスマホ決済サービスのこと。「iPhone 7」以降のiPhone、「Apple Watch Series 2」以降のApple Watchには、ICカードと瞬時に情報のやり取りができるFeliCa(フェリカ)が搭載されており、これらの端末ではタッチ決済が可能になります。
そして、Apple Payにはクレジットカードやプリペイドカード、電子マネーが「iPhone 8」「Apple Watch Series3」以降では合計12枚(iOS15以降は16枚)まで、それ以前のモデルでは合計8枚まで登録できます。
2023年現在、登録・利用できる決済サービスは以下の11種類の決済サービスになります。
・前払い方式の電子マネー:Suica、PASMO、nanaco、WAON、ICOCA
・後払い方式の電子マネー:iD、QUICPay
・クレジットカードのタッチ決済:Visaタッチ決済、Mastercardタッチ決済、JCBタッチ決済、アメックスのタッチ決済
実店舗での支払いは端末にタッチするだけで完了し、基本的にサインや暗証番号の入力は不要です(一定額を超える場合、必要なときもあります)。Apple Payはいわば“お財布”のようなもので、支払いは各決済サービスで行います。そのため、レジスタッフには「Apple Payで」と言うのではなく、「Suicaで」「WAONで」「クレジットカードで(Visaで)」などと利用したい決済サービスを伝えると、スムーズに完了するでしょう。
また、ネットショップでは「Apple Payで購入」を選択すればワンタップで支払いが完了します。Apple Payを利用すれば、普段の買い物では財布がカードでかさばる煩わしさから解放され、オンラインショップではクレジットカード情報を入力する手間が省けて大変便利です。
Apple Payには、日常生活でよく使うカードをメインカードとして登録し、ポイント還元率などを考慮してサブカードを2〜3枚くらいプラスするとよいでしょう。カードそのものの還元率や利便性・付帯サービスに加え、Apple Payに登録し、利用することで上乗せでポイント還元を受けられるカードもあるので、そういった視点で選ぶとよいでしょう。
それでは、ポイントが貯まりやすいなど、ぜひともApple Payに搭載したい、おすすめの高スペックカードをご紹介します。
※ 初年度の年会費無料、年に1度のカード利用で翌年分の年会費が無料
「三井住友カード ナンバーレス(NL)」は年会費無料。最短30秒という即時発行が可能で(即時発行には、Vpassアプリのダウンロードが必要)、後日送られてくるカードは、表面にも裏面にもカード番号やセキュリティコードなどが一切記載されていない完全ナンバーレスカードとなります。
通常時は200円で「Vポイント」が1P貯まり、還元率は0.5%で平均的な水準です。ただ、対象店舗において、このカードに搭載された「Visaのタッチ決済」あるいは「Mastercardコンタクトレス」で支払いをすると5%還元にアップ。さらに2023年7月1日から、Apple Payにカードを登録し、「Visaのタッチ決済」あるいは「Mastercardコンタクトレス」で支払うと7%還元までアップします(カード現物によるタッチ決済は5%還元のままです)。
Google Payについても同様の7%還元となりますが、三井住友カードの公式サイトによると2023年7月現在、Google Payでは「Mastercardコンタクトレス」は利用できないとのことです。対象店舗にはセブン‐イレブンやローソン、マクドナルドに加え、すかいらーくグループの各チェーンも名を連ね、これらの店舗を定期的に使うなら、持っておきたいカードと言えそうです。
〈スマホでタッチ決済で7%還元となる店舗〉
「三井住友カード ナンバーレス」に、ゴールドカード特典を上乗せしたのが「三井住友カード ゴールド ナンバーレス(NL)」です。セブン‐イレブンやマクドナルドといった対象店舗で、Apple Payなどのスマホ決済を使ってタッチ決済をすると7%還元になるのは、このカードも同様。そして、年間100万円以上利用すると、翌年以降の年会費(5,500円)が永年で無料になり、年間100万円利用するたびに、Vポイント10,000Pが通常分とは別に付与されるのがこのカードの大きな特徴です。年間100万円以上のカード利用が見込める場合、検討したいカードと言えそうです。
「三菱UFJカード」も、コンビニなどの対象店舗で、最大5.5%と高いポイント還元を受けられる1枚。年会費は1,375円です(初年度無料、年1回以上利用で翌年度無料)。通常は、1,000円の利用ごとに「グローバルポイント」が1P(最大5円相当)貯まり、基本還元率は0.5%です。さらに、セブン‐イレブン、ローソン、コカ・コーラ自販機(タッチ決済、QUICPay、Coke ON)、ピザハットオンライン、松屋(松のや、マイカリー食堂含む)の5つの店舗・サービスで、このカードを利用すると、1,000円利用で10P(最大50円相当)が上乗せされ、5.5%還元となります。
「三井住友カード(NL)」で5%以上の還元を受ける決済方法は、タッチ決済に限定されていますが、「三菱UFJカード」の場合、クレジットカード決済やタッチ決済に加え、Apple Payに登録したうえでのQUICPay決済でも5.5%還元となるのはメリット。ただし、「三井住友カード(NL)」の利用で貯まる「Vポイント」は「200円→1P=1円」で1P単位でカード代金に充当できるのに対し、「三菱UFJカード」の「グローバルポイント」は同様の使い方をしたときに、「1,000円→1P=4円」とレートが下がります。さらに、キャッシュバックに必要な最低ポイント数が500Pになることなど、「ポイントの使い道」という点では幾分見劣りすることは留意しておきたいところです。
「セゾンパール・アメリカン・エキスプレス・カード」の年会費は1,100円(初年度無料、年1回以上利用で翌年度無料)。通常時は1,000円利用で「永久不滅ポイント」が1P(最大5円相当)貯まり、0.5%還元。さらに、「Apple Pay」「Google Pay」などに登録して、電子マネーの「QUICPay」加盟店で利用するとポイント4倍の2%還元(1,000円利用で4P)になります。QUICPayは大手コンビニや飲食チェーン、ガソリンスタンドなど全国205万か所で利用でき、非常に幅広い店舗で2%還元を受けられるのは大きなメリットと言えそうです。
ただし、2%還元になるのは利用金額が年間合計30万円に達する引落月までが対象(毎年10月11日〜翌年10月10日利用分を1年間と規定)。利用金額30万円に達した翌月からは、0.5%還元になる点は留意しておきましょう。
「Apple Pay」でSuicaを使うなら、保有を検討したいのが「ビュー・スイカ」カード。年会費は524円。通常時は1,000円の利用で「JRE POINT」が5P貯まり、還元率は0.5%です。このカードは、改札通過時に残額が一定額以下(金額は1,000〜10,000円で1,000円単位で設定可能)の場合、オートチャージできる機能が備わっていますが、このときに1,000円で15P貯まり、1.5%還元になります。
Suica利用そのものではポイントを貯められなくても(ポイント還元を受けられる店舗・サービスもあり)、オートチャージを利用すれば自動的に1,000円で15Pが貯まるため、Suicaが使えるお店では実質的に1.5%還元を受けられることに。カードそのものの基本還元率は平均的な水準ですが、こうした利用方法ができるため、高還元カードと捉えることも可能でしょう。
このほか、「ビュー・スイカ」カードでモバイルSuica定期券の購入時には3%還元となるほか、えきねっとでJRのきっぷを予約したときにも3%のポイント還元を受けられ、JR東日本の各種サービスを利用するなら持っておきたい1枚です。
なお、グレードが上の「ビューゴールドプラスカード」なら、JR東日本のサービス利用時の還元率はさらに上がり、えきねっと利用時やモバイルSuicaでグリーン券購入時には8%還元、定期券購入時(モバイルSuica)には4%還元となります。年会費は11,000円かかりますが、新幹線をはじめとしたJRの利用頻度が高い場合は、「ビューゴールドプラスカード」を選んでも年会費を上回るポイント還元を受けられる可能性があるので、こちらを検討してもよいでしょう。
JCBの各種カードも、「Apple Pay」に登録する際の定番カードのひとつ。その中でも、第一候補となるのが「JCB CARD W」です。年会費は無料。通常時は1,000円の利用で「Oki Dokiポイント」が2P(最大10円相当)貯まり、基本還元率は一般的なJCBカードの2倍の1%となります。
さらに、セブン‐イレブンやローソン、イトーヨーカドーなどでは2%還元となるなど、ポイントアップのパートナー店が豊富にあるのが魅力の1枚です。ただし、このカードは39歳以下限定で申込可能である点は留意したほうがよいでしょう(一度入会すれば、40歳以降でも利用可能)。
なお、「JCB CARD W」を含めたJCBオリジナルシリーズの新規入会者を対象に、Apple Pay(Google Payも対象)利用金額の20%がキャッシュバック(最大3,000円)される期間限定キャンペーンを実施されています(2023年9月30日までの入会が条件)。
以上、Apple Payに登録したい6枚のカードを紹介してきました。基本還元率が高いカードは候補に入ってきますが、Apple Payに登録し、対象店舗で利用すると7%還元となる「〈1〉三井住友カード(NL)」のように、一定の条件をクリアすると高還元となるカードも検討したいところです。Apple PayはAppleユーザーにとっては便利な決済サービスなので、自身のライフスタイルにあったカードを見つけて(複数枚でも可能)、活用していくとよいでしょう。