現役時代に当たり前のように使っていたクレジットカードを、定年後もそのまま使いたいと思うのは当然のことです。ただ、覚えておかなければならないのは、定年後も順調に限度額が上がったり、新たにクレジットカードを手に入れたりできるのかというと、それがかなり難しいということです。
人生100年時代を迎え、ゆとりある老後を送るためにも、お得で便利なクレジットカード選びは大事なポイントの1つになります。
定年後に後悔しないクレジットカード選びについて徹底解説します。
これまで人生80年といわれて、サラリーマンは60歳で定年になると会社を辞めて年金生活に入っていました。そのため、我々自身も60歳で線引きをし、それを目印にライフプランを作り、貯蓄し老後に備えてきました。しかし、100歳まで生きるのが珍しくなくなると、60歳はまだ人生の折り返し点を通過したにすぎないことになります。
一方で、定年を迎えるとそれまでとは異なる、さまざまな状況に遭遇することになります。
たとえば、航空系カードを持って海外出張のたびにマイルをためていたサラリーマンのケースです。会社の出張などで、どんどんマイルがたまるので、それを特典無料航空券に変え、年に一度、家族と海外旅行を楽しむことができました。
しかし、定年になって会社を定年退職すれば当然出張もなくなり、マイルもたまらなくなります。そのときになって、他のカードを作ろうとしても、定年後は、いわゆる"安定的な収入"がないため、カード会社の審査を通ることは難しくなります。
定年あるいは高齢になると、誰もが考えるのが身の回りを整理することです。しかし、このときにも注意が必要です。「断捨離(だんしゃり)」という言葉に乗せられて、クレジットカードを整理してすべて解約してしまうと、後悔することになってしまうからです。
たとえば、クレジットカードを1枚も持っていないと、ネットショッピングでの支払いが「代引き」「銀行振り込み」「コンビニ払い」などに限られてしまいます。「代引き」は宅配便を家で待つ必要がありますし、「銀行振り込み」「コンビニ払い」は手間がかかってしまいます。カードを使わない生活になると、常にお財布にお金を入れておく必要があります。ATMに行く回数も増えるし、防犯上も不安がつきまといます。
あるいは専業主婦の場合、夫が給料をもらっているので、妻本人が"安定的な収入"がなくてもクレジットカードを作ることができます。しかし、高齢の女性の一人暮らしとなると、新たにカードを作ることは難しくなってきます。突然思い立ち、クレジットカードの「断捨離」をしてしまったがために、ネットショッピングや日ごろの買い物が難しくなってしまいます。これはうっかりミスが招いた悲劇です。
定年を機にクレジットカードをすべて解約してしまった、という人に向いているのが、デビットカードです。デビットカードは、買い物の際に使用すると、銀行預金から代金がすぐに引き落とされる決済手段です。デビットカードのうち、「ブランドデビット」は銀行のキャッシュカードにVisaやJCBといった国際ブランドが付いているので、クレジットカードが使える所ではほとんど利用できます。
また、クレジットカードのような入会審査はなく、ほぼ誰でも申し込んで取得できます。買い物などに利用する際はクレジットカードのように店員に渡すと、原則、即時に自分の口座から引き落とされるので、現金感覚で使うことができ、使い過ぎる心配はありません。
たとえば、三菱UFJ銀行には、三菱UFJデビット(VISA・JCB)があります。年会費は1,080円(税込)。初年度無料、年間10万円以上の利用で2年目以降も無料になります。三菱UFJデビット-VISAは、毎月のショッピング利用金額の0.2%が自動でキャッシュバックされます。お誕生月や前年の利用金額に応じて、キャッシュバック率アップの特典もあります。三菱UFJデビット-JCBは、1,000円ごとに1Pと、毎月のデビットカードのショッピング利用金額に応じてポイントがたまります。
自分が利用している銀行で、このようなカードがないか確認してみるといいでしょう。
デビットカード(ブランドデビット)の特徴
・買い物代金は即座に銀行口座から引き落とされる
・口座の残高以上の利用ができず、使いすぎの心配がない
・VISAもしくはJCBが使える店舗では、海外を含めほぼ利用可能
・入会審査がなく、ほぼ誰でも利用できる
三菱UFJ-VISAデビット
発行元/三菱UFJ銀行
年会費/1,080円(税込、初年度無料)
国際ブランド/Visa
基本ポイント/500円で1円を自動キャッシュバック
クレジットカードで定年後に後悔しないためには、カードを作りやすい状況にある現役時代、つまり50代のうちに新たなカードを作っておく必要があります。たとえば旅行が趣味という人であれば、ゴージャスな海外旅行から視点を変えて、国内旅行を考えてみてはいかがでしょう。
ビューカードが発行する「大人の休日倶楽部ミドル」は、JR東日本とJR北海道の切符が1年に何回でも5%割引になります。男性は満50〜64歳、女性は満50〜59歳の人が入会対象です。
さらに年齢が上の場合、男性なら満65歳以上、女性なら満60歳以上の人が入会対象となる「大人の休日倶楽部ジパング」というカードもおすすめです。このカードは、JR東日本とJR北海道の切符が何回でも30%引きになる、シニア層にとてもお得なカードです。カード会社はとかく、定年までカードを使ってくれる20代30代の若者を取り込もうと必死で毎週のようにキャンペーンをやっていますが、50代以上でないとカードに入会できないカードもあるので、このようなカードを上手に利用することが肝心です。
大人の休日倶楽部ミドルカード
入会条件/男性満50歳以上64歳まで、女性満50歳以上59歳まで
主な特徴/JR東日本とJR北海道線の切符料金が何度でも5%OFF
発行元/ビューカード
年会費/2,575円(税込、初年度無料)
国際ブランド/Visa、Mastercard、JCB
基本ポイント/1,000円で5ポイント(1ポイント1円)
大人の休日倶楽部ジパングカード
入会条件/男性満65歳以上、女性満60歳以上
主な特徴/JR東日本とJR北海道線の切符料金が何度でも30%OFF
発行元/ビューカード
年会費/4,285円(税込)
国際ブランド/Visa、Mastercard、JCB
基本ポイント/1,000円で5ポイント(1ポイント1円)
50代の現役世代は、それなりの収入があるのでゴールドカードなどの高額な年会費もそれほど苦にならなかったことでしょう。しかし、定年後の年金生活で高額な年会費を払うのは大変です。
とはいえ、時間に余裕ができたことで旅行する機会も増えて、空港ラウンジを利用したり、高い設定の限度額を活用したりする機会が増えるのも定年後の生活の特徴です。また、ホテルへのチェックインやレストランでの会計時など、ゴールドカードで支払うことがそれなりのステータスと思っていた人にとって、金ピカのゴールドカードを解約するのは苦渋の選択です。
ゴールドカードを使ってアクティブに定年後の生活を過ごしたい。一方で、高額な年会費の負担は避けたい。
このような人に向いているのは、比較的年会費が安い、庶民派といわれるゴールドカードです。たとえば、三菱UFJニコスが発行するMUFGカード・ゴールドの年会費は2,057円(税込)、初年度無料です。ポイントは1,000円で1Pが付き、利用金額に応じてボーナスポイントがもらえるなど、コストパフォーマンスが高いお得なカードです。
もちろん、カード券面はゴールドなので、以前と同じような気持ちで利用できるのではないでしょうか。このようなカードを現役時代に作っておけば、定年後の年会費の負担を軽減することができます。
これまでは、多くのカードを使ってポイントをためて得しようとしてきましたが、定年後のカード選びとしては、還元率よりも年会費無料あるいは年会費の負担が少ないカードを選んだほうが良いと思います。少しでも年金生活の負担にならないようにしておくことが大切です。
MUFGカード ゴールド
発行元/三菱UFJニコス
年会費/2,057円(税込、初年度無料)
国際ブランド/Visa、Mastercard、JCB
基本ポイント/1,000円で1ポイント(4.7円)
クレジットカード評論家・早稲田大学を卒業後、月刊誌の記者を経て独立。クレジットカードのオピニオンリーダーとして30年にわたり活動しています。