街中で見かけるようになった、キャッシュレス・消費者還元事業の掲示物。記者が実際に対象店でキャッシュレス決済して感じたこととは……
「使いこなすにはちょっと根気がいるかも……」
2019年10月1日にスタートした「キャッシュレス・消費者還元事業」(以下、ポイント還元事業と略します)の対象店で実際に買い物をしてみた筆者(編集部員)の率直な感想です。仕組み自体が「複雑」かつ「わかりにくい」ということは事前に把握していたのである程度は想定していたものの、実際使ってみてその思いを強くしました。もちろんこれからさまざまな改善がなされることで消費者にとって使いやすいものになるはずですが、現時点でポイント還元事業の恩恵を受けるには特に「対象店探し」に少々の根気を要すると感じます。
本稿では、これまでキャッシュレス決済になじみのなかった方を読者に想定し、筆者がポイント還元事業の対象店で買い物した様子をレポートしていきます。順を追って読んでいただき
加盟店を探す → 決済する → ポイント還元を受ける
という一連の流れを追体験していただければと思います(本稿は、2019年10月8日時点の情報を元に執筆しています)。
※ポイント還元事業の仕組みについては下記の記事で詳しく解説しています。先に下記の記事を読んでいただくと、本稿の理解に役立ちます。
これならわかる!「キャッシュレス・消費者還元事業」の直前"集中解説"
https://kakakumag.com/money/?id=14329
公式サイト上で、加盟店を地図上で探すことができます(以下、本稿ではウェブ版と略します)。
ポイント還元事業公式サイト(https://cashless.go.jp/)→消費者の皆様へ→使えるお店を探す(https://map.cashless.go.jp/search)
公式アプリをスマホにインストールすれば、公式サイトと同様、地図上から加盟店を探すことができます。
アプリのインストールはポイント還元公式サイト(https://cashless.go.jp/)から可能。対象店は地図上に黄色い吹き出しで示されます。吹き出しをクリックすると、店名、還元率、住所、対応している決済方法が表示される仕組み
ポイント還元事業の対象店の店頭には、写真のようなポスター、あるいはステッカーが掲示されています。ポスターにはその店舗で対応しているキャッシュレスの決済手段が示されています。
ファミリーマートの店頭に掲げられた本事業のポスター。対応している決済方法も豊富です。コンビニなので還元率は2%となっています
東京・八重洲の中華料理店で見かけたポイント還元事業のステッカー。このようにステッカーだけを貼っている店舗も多く見かけます
この中で現実的に一番使う機会が多そうなのはアプリではないでしょうか? もちろん「街中を歩いていてポスターやステッカーを見かけたので入ってみた」というのもありだと思いますが、2019年10月1日時点で、本事業に参加する加盟店の数は約50万店にとどまっており、街を歩いていて出合う機会は意外と少ないと感じます(事業の途中での参加も認められていることから対象店の数は今後も増えていくと思われますが……)。その意味でアプリを使っていくのがよさそうですが、現段階ではアプリの使い勝手に少々難があるのも事実。実際に使ってみた感想は下記で説明します。
ポイント還元事業が始まって最初の日曜日、筆者は下記3回の買い物を予定していました。
(1)1週間分の食料品の購入
(2)昼食(外食)
(3)サッカー観戦前のアルコール類の購入
共働きの筆者は週末に食料品をまとめ買いしています。午前中、さっそくいつも使っているスーパーや青果店を上記のアプリで探してみるものの見つかりません。念のためウェブ版でもチェックしましたが軒並み本事業の対象外の様子。「まとめ買い」で金額が大きかっただけに、いち消費者としては残念な気もしますが、本事業には「消費増税にともなう中小店舗の売り上げ減を防ぐ」という目的があることを考えるといたしかたないことと言えるでしょう。
次に昼食です。筆者の居住地であるさいたま市の「与野駅」近辺を公式アプリで検索してみますが、ここでアプリの使い勝手で気になる点が次々に出てきました。
アプリではスマホのGPS機能を使ってユーザーの現在地の近くにある加盟店を検索し地図上に表示します。しかし、住所や駅名を指定して検索する機能がありません。そのため、たとえば「与野駅」にいる筆者が「浦和駅」や「大宮駅」の加盟店を検索しようと考えた場合、地図上を自分でスクロールさせたうえで探す必要があります。これはウェブ版でも同じでした。
アプリ上で検索したい場所にたどり着いた次の難問はこちらです。検索結果を、業種、還元率などで絞り込めず、どんなお店なのかを知るにはスマホの小さな画面の中で吹き出しを1つひとつチェックしなければなりません。「与野」エリアは対象店の数がさほど多くはありませんでしたが、繁華街ではこれだけでも相当な労力を要しそうです。ちなみにウェブ版では、「業種」「還元率」「対応している決済方法」でソートができます。「次の日に行く場所が決まっている」というようなケースではウェブ版を使ったほうが効率がいいかもしれません。また、スマホのブラウザ上でウェブ版を使うと言う手もあります(本稿最後で解説)。
JR与野駅近辺で対象店を検索した結果がこちら。たくさんの吹き出しが表示されます。業種や還元率などでソートができないため、どんなお店なのかを知るには、1つひとつ吹き出しをクリックする必要があり手間がかかります
すべての店舗ではないのですが、「ひとつの店舗に対して複数の吹き出しが表示されている」ケースが散見されました。たとえば「餃子の満州与野西口店」の場合、下写真のように吹き出しが3つ表示されます。吹き出しによって「対応可能な決済方法」が異なっていたのでそれが影響しているのかもしれません。これはウェブ版でも同じ現象が見受けられました。
この3つの吹き出しはすべて「餃子の満州与野西口店」という表示。これには混乱させられました
現在アプリのバージョンは1.0。今後バージョンアップを重ねることで、使い勝手が改善されることを期待したいと思います。
今回昼食に利用したのは、個人経営のそば店。外の看板や店内のいたるところにポイント還元事業のステッカーが貼られ、対象店であることを積極的にアピールしていました。食事が終わり、あらかじめアプリやポスターで使用できることを確認していた楽天ペイでの支払いを店員さんに伝えます。店員さんの対応はスムーズでここでは特に混乱は見られませんでした
会計時に筆者が楽天ペイを指定すると、店員さんがipadを使ってQRコードを提示。筆者がこのQRコードをスマホのカメラで読み取る「ユーザースキャン方式」。ユーザースキャン方式の場合金額を客みずから打ち込む店舗もありますが、こちらの店舗ではスキャンと同時に金額も自動で認識されました
支払いが終わると下記のような画面が表示されます。画面下部の獲得予定ポイントにご注目。「25P」と還元率1%になっています。本来は5%還元されるはずですが……。実はこれ、後で楽天ペイのサイトを調べてわかったのですが、筆者が楽天ペイとひもづけて使用している楽天カード分(還元率1%)の還元だそうです。ポイント還元事業で獲得するポイントについては、利用月の翌々月末日に進呈される仕組みとサイトには記載されています。利用する決済方法によって還元方法が異なるのも今回の事業をわかりにくくしている一因だと思います。皆さんも、ポイントの還元方法については利用する決済方法のサイトなどを十分に確認しておいてください。
計算では2,550円×5%=127円(少数点以下切り捨て)分の楽天スーパーポイントが12月末に還元されるはずです
利用したそば店でもらったレシートは2枚。左側の通常のレシートにはクレジットで支払ったと表記あり。右側が楽天ペイの売上表。どちらにもポイント還元についての表記はありませんでした
最後はコンビニです。夕方出かけたサッカー観戦のお供にアルコール類を購入することに。利用したのはスタジアムの最寄りのセブン-イレブン。試合前ということもありどのレジも大行列かつ店員さんもフル回転という状況でしたが、楽天ペイでの決済でも全く問題なく、むしろ現金を数える手間がない分ストレスなく買い物できた実感があります。
また、昼の飲食店探しではいちから対象店を探すのに手間取りましたが、大手コンビニはほとんどの店舗が対象店となっているのでわざわざ探す手間がありません。加えて、豊富な決済手段にも対応しているので「行けば使える」という安心感は突出していると感じます。還元率は2%と低いですが消費者が日常生活の中でストレスなく利用するという点で、コンビニにはかなりのアドバンテージがあると言えそうです。
セブン-イレブン浦和美園店で楽天ペイで会計。試合前で混雑していることもあり店員さんの手際がよすぎて(?)、写真もぶれてしまいました。コンビニでは客が表示したQRコードを店舗のレジで読み取る「ストアスキャン方式」が採用されているのでスマホを出すだけでOK(QRコード決済の場合)
こちらがセブン-イレブン会計時のレシート。レシート下部に「キャッシュレス還元額 −21円」の記載があります。コンビニのポイント還元は「即時割引」ですので還元をその場で実感することができます
最後にネット通販についても触れておきましょう。本事業の対象はあくまで中小店舗です。そのためネット上では楽天市場やYahoo!ショッピングなどの大手通販サイトに「出品」している中小の店舗や企業が対象店となっている場合、ポイント還元を受けられます。いずれのサイトでも、事業の対象店に絞った検索ができるようになっているので、ネットでの買い物に慣れている人にとってはリアルの店舗で還元を受けるよりもハードルは低いと言えるかもしれません。
楽天市場(上写真)、Yahoo!ショッピング(下写真)で、わが家の常備品であるハイボール用の炭酸水を検索。いずれのサイトも希望する商品を検索した後、左の詳細検索でポイント還元の対象店での絞り込みが可能。便利です
価格.comでも出店しているショップのうち、対象店かつ本事業に登録しているキャッシュレス決済で購入した場合に最大5%還元対象に。対象店は価格.comの商品ページで確認できます。詳しくは、価格.com内の「キャッシュレス・消費者還元事業特集」ページへ(https://kakaku.com/article/sp/cashlesspoint/)
※価格.com キャッシュレス・消費者還元事業特集
https://kakaku.com/article/sp/cashlesspoint/
以上、筆者が実際にポイント還元事業を使った様子をお伝えしてきました。記事の中でも触れていますが、リアルの買い物においてはまず「どこが対象店なのか」を探すことにかなりの労力を要しました。そこをクリアしても次に「決済方法」の壁が待っています。場合によっては自分で持っていない決済方法にしか対応していない店舗もありました。今後アプリ等が改良されることで、より探しやすくなることを期待しています。
余談ながら今回お昼に訪問したそば店は味も雰囲気もよく再訪の可能性大。ポイント還元事業をきっかけに、生活圏の中にありながら、これまで縁のなかった中小店舗を知るというメリットはありそうです
その意味で、現状、コンビニとネット通販はポイント還元を受ける場所として非常に優位にあると感じました。コンビニの場合、還元率が2%なのがネックではありますが、ユーザーの使いやすさという点でリアルの店舗の中では突出している印象です。同様に、PCやスマホでじっくり商品が探せるネット通販も本事業において注目されていくのではないでしょうか?
「それでも、街中で5%の還元を受けたい!」という人には、スマホのブラウザ上であえてウェブ版を使って対象店を探す方法をおすすめします。これなら「業種」「還元率」「決済方法」でソートすることができるので、探す手間がかなり省けるはずです。ブラウザ上で動かすので操作感はイマイチですが、アプリに比べるとベターな選択と言えそうです。
スマホのブラウザでもウェブ版を動かすことが可能。「業種」「還元率」「決済方法」でソートもできます。操作はどうしてももっさりとしてしまいますが、「使える情報」を効率良く得るという点でアプリよりはベター
来年2020年6月まで続くポイント還元事業。この恩恵を受けるには消費者の側にも「使いながら知っていく」姿勢が求められているというのが現時点での正直な印象です。全消費者向けの事業としては正直ハードルの高さを感じずにはいられませんが、その是非はともかく、このハードルを「超える人」「超えない人」の間には9か月後に大きな差が生じるのはまぎれもない事実です。読者の皆さんもぜひ必要に応じてクレジットカードや各種QRコード決済などの決済方法を導入し、フレキシブルに還元を受ける体制を整えて頂ければと願います。価格.comマガジンでも引き続き本事業のノウハウを提供していく予定です。
参考記事:
これならわかる!「キャッシュレス・消費者還元事業」の直前"集中解説"
https://kakakumag.com/money/?id=14329
ポイント二重取りも! 6つのQRコード決済の使い方&開催中キャンペーンまとめ
https://kakakumag.com/money/?id=13577
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