長引くコロナ渦でネットショッピングの利用機会が増えた、という方も多いのではないのでしょうか。総務省「家計消費状況調査」によると、ネットショッピングを利用する世帯(2人以上)の割合は、新型コロナウイルスの感染拡大とともに増加し、2020年5月に約51%と初めて5割を突破。2021年2月の1世帯あたりのネットショッピング支出額は15,781円と、前年同月比22%アップという伸びを見せました。
日常生活に浸透し続けているネットショッピング。日本の3大ECサイトは「Amazon.co.jp(以下、Amazon)」「楽天市場」「 Yahoo!ショッピング」と言われています。特に意識しなくても買い物はできますが、この3サイトにはそれぞれセールを活用したり、相性のよいクレジットカードを利用したりと、お得な方法があります。今回は、ネット通販アナリストとして消費者向けの講演や執筆を行っている遠藤奈美子さんに取材し、Amazonで使える「お得ワザ」を紹介します。
(「楽天市場」と「 Yahoo!ショッピング」については後日、後編としてリリースします)
ネットショッピングは、ますます生活に欠かせないものになってきています
遠藤奈美子さん
高校卒業後、単身渡米しアメリカの大学で心理学を専攻。帰国後は、医薬品卸会社などを経て、2005年にネットショップ運営企業に転職、執行責任者としてショップ運営全般を担当。2007年に独立し、省庁や自治体などへのIT活用コンサルティング業務に従事するとともに、テレビ出演や雑誌、新聞への執筆を通じ、ネットショッピングに関する消費者向けの情報発信を行っている。自分自身の買い物もネットが中心。著書に「50歳からのネットショッピング」(セルバ出版)
オンライン書店として1995年にアメリカでサービスを開始したAmazonはグローバルなECサイトで、日本では2000年に「Amazon.co.jp」を開設。現在は約2億種類とも言われる商品を取り扱っています。遠藤さんは「ひとつのページにひとつの商品、というシンプルな設計で、見やすく検索しやすいのが特徴です。海外からの出店も増加しているので、日本では手に入りにくい商品を見つけやすい点もメリットになります」と説明します。そんなAmazon利用の際に使いたいお得ワザを紹介していきます。
遠藤さんが「Amazonを定期的に利用している方なら、まず検討したいサービス」と強調するのが年会費4,900円、または月500円で利用できる有料の会員サービス「Amazonプライム」です。配送無料や動画配信などはよく知られていますが、使える特典はこれ以外にも数多くあります。主なものを表にまとめました。
このうち、遠藤さんが注目するのは以下の5つの特典です。
Amazonでは注文料金が2,000円未満の場合、通常配送料が410円(北海道・九州・沖縄・離島は450円)発生します。また、「お急ぎ便」や「日時指定便」では、配送料が510円(北海道・九州は550円)かかりますすが、プライム会員ならいずれの配達方法でも無料で利用できます。
「このためだけにプライム会員になる人も多い」(遠藤さん)と言うほど人気なのがAmazonプライム会員のみが参加可能なビッグセール「Amazonプライムデー」です。2019年までは毎年7月に、2020年は10月13日・14日の48時間限定で実施されました。
通常ではあまり割引されないハイエンドパソコンが30%オフになったり、数量限定のタイムセールが行われたりします。遠藤さんは「特にFireやKindle、EchoなどのAmazonオリジナル商品は、半額近くになるなど割引率が高いので要チェック」と説明。「Amazonプライムデー」の開催日時は事前に発表されるので、該当月のみプライム会員になる、という手もあります。
ファッション好きにうれしいのが、洋服などを自宅に取り寄せ試着できる「プライム・ワードロープ」という特典です。「洋服をネットショッピングする際の最大のデメリットになるのが、試着ができない点。それをカバーしてくれるのが『プライム・ワードロープ』です」(遠藤さん)。
このサービスでは、レディース、メンズ、キッズ&ベビーの洋服やバッグ、靴などを1回6点まで自宅に取り寄せて最長7日間、試着できます。取り寄せた段階では決済が行われず、試着して気に入ったものだけ購入し、残りは無料で返品可能です(すべて返品することも可能)。「実店舗と違いその場で決める必要がないため、洋服選びに悩みがちな人にも向いているサービス。手持ちの洋服との相性をチェックできるというのもうれしいポイントです」と遠藤さん。返品の手続きもネットで完結し、伝票も同封されているので返品作業も手間なく行えます。
「プライム・ワードロープ」を使えば、自宅にいながら試着が可能に
Amazonには無料で登録できる「Amazonファミリー」というサービスがあり、随時開催される登録者限定セールでは、ベビーやキッズ用品をセール価格で購入できます。プライム会員は定期おトク便の利用でいつでも、オムツとおしりふきが15%オフで購入できるサービスが上乗せされ、さらにお得になります。オムツ代は年間で数万円になることもあり、15%オフになれば、小さなお子さんがいる家庭にとっては大きな節約につながるでしょう。
プライム会員は、映画やドラマ、アニメに加えてオリジナル作品も扱う動画配信サービス「プライム・ビデオ」が利用できます。このほか、200万曲の音楽が聞き放題の「プライム・ミュージック」や、対象のKindle本が読み放題の「プライム・リーディング」も利用でき、プライム会員はエンタメも幅広く楽しむことができます。さらに、遠藤さんが重宝しているのが「Amazon Photos」。「写真を無制限で保存できるフォトストレージサービスで、子供の写真を保存して両親と共有しており、親からもとてもよろこばれています」と話します。
「Amazonプライム」で意外と知られていないのが、会員本人のほかに同居する家族2名まで家族会員として無料で登録できること。「プライム・ビデオ」や「プライム・ミュージック」などは対象外ですがお急ぎ便無料、お届け日時指定便無料、プライム会員限定先行タイムセールなどの特典は家族会員も利用できます。「夫婦や親子でそれぞれ会費を払ってプライム会員になっているケースも少なくないようです。本会員と比べて利用対象外のサービスもありますが、ショッピング利用がメインなら家族会員で十分でしょう。かぶってプライム会員になっていないか、ぜひチェックしてみてください」(遠藤さん)。
また、学生(国内の大学・大学院・短大 ・専門学校生・高専の学生)を対象にした特典「Amazon Prime Student」も用意されています。通常会員の約半額(年会費2,450円または月額250円)でプライム会員と同様の特典が利用可能。さらに、対象の書籍を3冊以上同時購入で最大10%分のポイント還元を受けられるなど、さらに手厚い特典内容になっています。
多彩な特典を使える「Amazonプライム」ですが、遠藤さんは「年会費を支払っていることを忘れがち」と指摘したうえで、「『プライム・ビデオ』や『プライム・ワードロープ』などのサービスをあまり使わず、送料無料の特典にひかれて会員になっている場合は注意が必要です」と説明します。
プライム会員になると、2,000円未満の注文や最短翌日配送の「お急ぎ便」を無料で利用できます。とはいえ、2,000円以上の注文は誰でも送料無料ですし、「お急ぎ便」はあまり必要ないという方もいらっしゃるでしょう。送料無料の特典だけでプライム会員年会費(4,900円)の元をとるには、2,000円未満の注文(1回の配送料410円)を年間12回以上利用する必要があります。遠藤さんは「Amazonプライムに入会を検討する際は、こうした配送特典や動画配信などの配送特典以外のサービスが自分にとってどれだけ利用価値があるか、という視点で判断するとよいでしょう」と言います。
動画配信サービスなど、「Amazon プライム」には多彩な特典が用意されています
「Amazonプライム」以外にも、Amazonをお得に使うワザはまだまだあります。
日用品や食品など定期的に購入する商品は、「Amazon定期おトク便」を上手に使いたいところ。こちらを使うと、表示価格から最大10%オフになり、プライム会員以外でも金額にかかわらず無料で配送してくれます。「配送頻度は2週間から最長6か月まで選ぶことができ、申し込んだ後でもサイズ・ブランド・配送頻度・数量の変更や解約がいつでも可能です」と遠藤さん。なかには、定期便の初回限定で割引クーポンが適用される商品もあり、より割安な価格で購入できます。
また、同じ住所に配送される「定期おトク便」が同月に3件以上ある場合は、さらに5%オフとなる「おまとめ割引」というサービスもあり、合計最大15%オフになります(一部対象外の商品あり)。トイレットペーパーやお米、洗剤など日常的に使う商品については「Amazon定期おトク便」と「おまとめ割引」を使うことで、家計の節約につなげることができます。
最大10%オフになる「Amazon定期おトク便」。配送頻度を2週間から、最大6か月まで選べるのもメリット
Amazonでは、無料で入手できる割引クーポンが多く発行されています。「○○円オフ」と「○%オフ」の2種類あります。Amazonクーポンの特集ページには、食品や日用品などのクーポンが数多く掲載されています。遠藤さんは「Amazon内にはクーポン対象商品のみを集めたページがありますが、こちらは表示価格から50%オフになるクーポンもあり、対象商品もひんぱんに入れ替わるので、こまめにチェックしておきたいページです」と言います。「クーポンをもらう」のボタンをクリックして取得すると、自動的に割引が適用される仕組みです。
参考HP:Amazonクーポン特集
クーポン対象の商品を集めたページ(写真左)は要チェック
Amazonにアウトレット品専用のページがあるのをご存じでしょうか。家電やパソコン、食料品など12のカテゴリーに分けられ、食品に関しては賞味期限が近づいたものを、それ以外は返品された商品や倉庫内で梱包や商品に傷がついた商品のうち、Amazonの基準で新品として販売できないアイテムを扱っています。「商品は毎日更新されていて、なかにはどこが訳ありかわからないくらいの商品もあります。私は以前お米を買いましたが品質も問題なく、通常品と比べ3割近く安くなっていておトクに買い物できました」と遠藤さん。思わぬ掘り出し物に出会えるかもしれません。
ただ、Amazonアウトレット利用の際にチェックしておきたいのは商品のコンディションで、以下の4パターンにわかれています。
ほぼ新品:梱包が開梱された形跡や商品が使用された形跡はなく、新品同様の状態
非常に良い:梱包に多少の傷や汚れがあるが、商品に目立った傷はない
良い:梱包に多少の傷や汚れがあり、商品に傷があるが、使用の妨げにはならない
可:梱包が破損しており、商品に傷があるが、使用の妨げにはならない
同じように中古商品と表現されていても、梱包が開梱された形跡もない「ほぼ新品」と、梱包が破損しており、商品に傷がある「可」では大きな違いがあるため、必ずコンディションの「詳細」ボタンをクリックして、確認しておきましょう。
アイテムによっては、欲しいアイテムが割安で買えるAmazonアウトレット。ただ、中古商品と書かれた横の「詳細」ボタンをクリックし、コンディションは必ずチェックしたほうがよいでしょう
Amazonでは基本的に、毎日以下の2つのタイムセールが実施されています。
数量限定タイムセール:最大8時間で終了する、時間・数量限定のセール
特選タイムセール:通常1日(24時間限定)に最大5件しか行われない、24時間限りのセール
「特選タイムセール」は24時間の時間制限があるものの、対象商品が売り切れになることは基本的にありません。いっぽう、「数量限定タイムセール」は数量に限りがあり、人気商品はすぐに売り切れになってしまうことも。タイムセールの情報を見逃さないために、遠藤さんがおすすめするのはAmazonショッピングアプリの活用。「気になる商品は『ウォッチリスト』に入れておくと、セール開始5分前に通知してくれます。また、『欲しいものリスト』に入れた商品がタイムセールの対象になったら教えてくれる機能もあり、使い勝手にすぐれています」と言います。
ただし、「数量限定タイムセール」の商品をセール価格で購入できるのは、カート追加後15分以内に注文を確定した場合のみ。15分を過ぎて注文確定をしてしまうと、割引が無効となり、Amazonでの通常販売価格に戻る点は注意が必要です。
気になる商品をウォッチリストに入れておくと、セール開始5分前に通知してくれます
Amazonショッピングアプリの活用法として、もうひとつ遠藤さんがおすすめするのは「スキャン検索」機能です。アプリを立ち上げて目の前にある商品のパッケージやラベル、バーコードをかざすだけで、Amazon内の商品ページ、または該当商品の一覧が表示されます。「商品検索に困ったときには重宝する機能です」(遠藤さん)。
スキャン検索をすると(写真左)、すぐに対象商品のページが表示されます
Amazonで商品を購入すると、Amazon内の買い物で「1P=1円」で利用できるAmazonポイントが貯まります。ただし、楽天市場やYahoo!ショッピングに比べると一般的な還元率は低く、ポイント付与対象外の商品も少なくありません。遠藤さんは「還元率は各商品の価格の下に表示されていますが、商品によってまちまちです。でも、Amazonポイント特集ページから探すと高還元の商品を見つけやすいので要チェック。たいていは還元率1%ですが、2〜20%と高還元の商品を選ぶと効率的にポイントが貯められます」と説明します。
参考:Amazonポイント還元特集ページ
Amazonを定期的に利用するなら、提携クレジットカードの利用も検討したいところ。三井住友カードがアマゾンジャパンと提携して発行している「Amazon MasterCardクラシック」は年会費1,375円。初年度は無料で、年1回カードを利用すると、翌年度も無料になります。このカードを使ってAmazonで買い物すると1.5%分のAmazonポイントが、プライム会員なら2%分のポイントが還元されます。遠藤さんも「簡単な条件クリアのみで年会費無料になるので、Amazonユーザーなら持っておいて損はないでしょう」と言います。
さらに、ヘビーユーザーにおすすめしたいのが年会費11,000円の「Amazon MasterCardゴールド」。Amazonでのポイント還元率が2.5%と、一般カードに比べて「+1%」の高還元。さらに、本来4,900円かかるAmazonプライムに無料で入会できる特典も付きます。「国内の主要空港のラウンジ無料利用や最高5,000万円の海外・国内旅行傷害保険、最高300万円のお買い物安心保険などの特典もありますし、ゴールドカードとしてはお得感があります。年会費は、カードの明細をWeb明細で申し込むと翌年以降は1,100円引きとなります」と遠藤さん。また、申し込み時に三井住友カードのリボ払いサービス「マイ・ペイすリボ」を選択し、年1回以上金利手数料を負担すると年会費が初年度5,500円、翌年以降はWeb明細との併用で4,400円まで下げることができます。
提携カードではありませんが、「JCB CARD W」もおすすめの1枚。こちらは年会費無料で、基本還元率は1%。優待店となっているAmazonでは還元率が「+0.5%」され、さらに、JCBのポイント優待サイト「Oki Dokiモール」を経由すると還元率が「+0.5%」となり、合計2%還元になります。ただし、こちらは39歳以下限定で申し込めるカードになります(1度保有すれば40歳以降も利用可能)。
Amazonには、現金と同様に買い物に使える「Amazonギフト券」があります。ギフト券と聞くと贈り物用と思われるかもしれませんが、自身の買い物に使うことも可能。「Amazonでクレジットカードを使うのは抵抗があるけど、ポイントを獲得したい」という場合に活用したいのが、Amazonギフト券への現金チャージです。
Amazonギフト券残高に5,000円以上チャージすると、以下のAmazonポイントが付与されます。プライム会員は0.5%分上乗せされ、チャージ金額が上がるごとに付与率はアップ。90,000円チャージすると、通常会員は1,800円分、プライム会員なら2,250円分のポイントが獲得できます。
〈1回のチャージ金額〉 〈通常会員〉 〈プライム会員〉
90,000円〜 2.0% 2.5%
40,000円〜 1.5% 2.0%
20,000円〜 1.0% 1.5%
5,000円〜 0.5% 1.0%
Amazonギフト券の有効期限は10年。残高を失効させる心配は少なく、まとまった金額をチャージするとより多くのAmazonポイントを獲得できます。ただし、ポイントが貯まるチャージ方法はコンビニ、ネットバンキング、ATMのいずれかで、クレジット払いなどは対象外なので注意しましょう。
以上、Amazonで、お得に商品を購入する8つの方法を紹介してきましたが、最後にAmazonに限らず、ネットショッピングの注意点も、遠藤さんに教えてもらいました。
商品を購入するにあたって、一般の方のレビューを参考にしている方は多いでしょう。しかし、遠藤さんは「レビューのなかにはショップに好意的なコメントを書いて印象をよくする『サクラ』が存在している可能性もあり、高評価のレビューをうのみにしてしまうのは危険」と指摘します。
「サクラによるレビューは当然ながら、評価の星を『5』とします。また、極端に悪い評価は内容が個人的すぎたり、競合ショップなどが悪い評価を書いていたりする可能性も考えられます。そうした意味で、私は「5」と「1」の内容はよく吟味し、「2」〜「4」とするレビューをより参考にするようにしています」(遠藤さん)。また、レビューを書いたレビュアーのページに飛んで、同じ日に何度も高評価のレビューを書いていないか、販売直後にもかかわらず数十のレビューがついていないかなどをチェックするのも、真偽を見極める判断材料になると言います。
「通常価格より〇%オフ」というのはECサイトでよく見かける表記ですが、この数字が実態に即したものかも注意したいところ。販売実績のない価格で元値を記載し、その価格から割引していると記載することで割引率を高くみせる不当な二重価格表示という手法があります(たとえば、通常価格5,000円の商品をセール価格3,000円で販売しているにもかかわらず、通常価格を10,000円と偽り70%オフと表示しているケース)。このような表記は景品表示法で禁止されていますが、過去にはこれに該当するとして、消費者庁から再発防止を求める措置命令を出されたECサイトもあります。遠藤さんは「高い割引率には惑わされないように、購入時にはほかのサイトやショップで販売価格を確認して、その商品の適正価格を把握しておくことが重要」と言います。
「買いすぎ」にも気をつけたいところです。リアルでの買い物にも当てはまりますが、とりわけECサイトでの買い物はお金を使う実感が薄いこともあり、このワナにはまりがち。遠藤さんは「欲しいと思ったものはとりあえずカートに入れておき、ひと晩そのまま放置しておくのも有効です。私の経験でも、特に深夜は思考力が鈍るケースもあり、翌日冷静になって考えてみると『やっぱりいらない』と気付くことも多いんです」と解説します。
これらの注意点も踏まえつつ、自宅にいながら、さまざまなものを購入できる便利なネットショッピングを有効活用してみてください。
編集者兼マイラー。JAL、ANAはもちろん、海外航空会社のマイレージにも詳しく、仕事の合間を縫って旅を楽しむ。ポイント、マイルの交換などカードの裏技にも精通。