めまぐるしく変化するキャッシュレス関連の動向を伝える本連載。最近のニュースの中から、マネー担当の編集部員やライターが気になったものをピックアップしてお伝えします。記事後半では、現在開催中のキャッシュレス決済関連キャンペーン情報も掲載していますので、こちらもぜひチェックを!
SBI証券と楽天証券が相次いで国内株式の売買手数料無料化を発表。これに端を発する形で、ネット証券各社の動きが活発化しています(写真は2023年10月4日、ドコモとマネックスグループの資本提携発表会での松本大マネックスグループ会長)
今月のトップニュースは、ネット証券大手のSBI証券と楽天証券による、国内株式(日本株)の売買手数料完全無料化の話題から。両社の「無料化」の中身をチェックします。また、ネット証券業界ではこの2社以外にもさまざまな動きが出てきており、ここまでわかっている各社の動きについてもまとめました。
このほか、外為どっとコムによる新しいクレジットカード「外為どっとコムカード」や、三井住友カードの「最大7%還元」対象店の拡大についてもご紹介します。
2023年8月30日、ネット証券大手のSBI証券が、それまで1注文あたり55~1,070円かかっていた国内株式の売買手数料を無料化すると発表しました(2023年9月30日注文分より)。
SBI証券が“ゼロ革命”と題して、国内株式の売買手数料を無料化(画像はSBI証券のプレスリリースより)
SBI証券の国内株式売買手数料無料化は、同社のオンラインでの国内株式の売買(インターネットコース)が対象。取引報告書などの各種交付書面を「電子交付」に設定することも無料化の条件になります。約定代金や、現物取引(同社の単元未満株取引サービス「S株」も含む)・信用取引を問わず「恒久的に無料」とのことで、証券業界や投資家の間で大きな話題となっています。
SBI証券の国内株式売買手数料無料化の概要(画像はSBI証券のプレスリリースより)
SBI証券は創業当初から顧客中心主義を掲げ、業界最低水準の手数料でサービスを提供してきたことで知られています。2019年6月には、オンライン取引における国内株式売買手数料や一部費用を無料化する「ネオ証券化」構想を発表。これを受け、2021年からは25歳以下の若年層を対象に国内株式の売買手数料をゼロにしており、今回、その年齢制限が撤廃された形です。
SBI証券は、続く9月22日にも、「ゼロ革命」の一環として、現行NISAですでに売買手数料無料である国内株式、投資信託などに加え、2024年から始まる新NISAにおいては、米国株式と海外ETFの売買手数料についても無料化することを発表。新NISAで手数料無料で取引できる商品の幅を広げてきました。
こうした活発な動きもあってSBI証券の口座数は増加しており、2023年9月26日には国内の証券会社としては初めて口座数が1,100万を超えたことを明らかにしています。
SBI証券は新NISAにて、取引手数料無料で取引できる商品を増やします(画像はSBI証券のプレスリリースより)
SBI証券を追う動きを見せたのが楽天証券です。SBI証券の「国内株式売買手数料無料化」発表の翌日、2023年8月31日に、国内株式の現物・信用取引の取引手数料が無料になる「ゼロコース」の導入を発表しました。これまでは、SBI証券同様、1注文あたり55〜1,070円の売買手数料がかかっていました。
楽天証券は、10月1日取引分から国内株式の取引手数料が無料に(画像は楽天証券のプレスリリースより)
「ゼロコース」は、楽天証券に新たに加わる手数料コースです。同社にはこれまで、各種取引でポイントが貯まる「超割コース」と、1日の取引金額100万円まで取引手数料無料の「いちにち定額コース」の2つの手数料コースがありましたが、今回、ここに「ゼロコース」が加わります。
「ゼロコース」では、楽天証券で取引可能なすべての国内株式において、現物取引・信用取引ともに、取引金額にかかわらず取引手数料が無料になります。ただし、カスタマーサービスのオペレーター経由の電話注文は対象外です。
なお、「ゼロコース」の導入にともなって、既存の手数料コースも内容が変更されます。主な変更店は下記のとおりです。
外国株(米国、中国、アセアン株)と、先物・オプション、金・プラチナ取引にかかる取引手数料の1%分のポイントがもらえるプログラムがスタートします。すでにポイント付与対象の「超割コース」に加えて、「ゼロコース」、「いちにち定額コース」でもポイントがもらえるようになります。
2023年10月以降の楽天証券の各手数料コースにおけるポイント付与率(画像は楽天証券公式サイトより)
「超割コース」のうち、一定の判定条件(※)をクリアすると適用される「超割コース 大口優遇」においても、これまで一定額以上の取引でかかっていた取引手数料が、約定金額にかかわらず無料化されます。同コースの判定条件は下記ボックス内参照。
「超割コース 大口優遇」の判定条件
まいにち判定……信用取引で「1日における新規建約定代金の合計額が3,000万円以上」「1か月の新規建約定代金の合計が3億円以上」「15時30分時点の信用建玉残高が3,000万円以上」のいずれか。
まいつき判定……貸株もしくは投資信託の「1か月平均残高が3,000万円以上」。
※上記条件のいずれかをクリアすると、3か月間、大口優遇が受けられます。
また、2023年9月22日には、SBI証券の動きと同じく、新NISAにおいて米国株式と海外ETFの売買手数料を無料化することも発表されています(国内株式や投資信託の売買手数料は現行NISAですでに無料化)。
SBI証券と楽天証券の売買手数料無料化の動きは、2024年から始まる新NISAをにらんだものと見られています。新NISAでは、多くの投資未経験者層が新たに取引口座を開くことが予想されており、先んじて国内株式の取引手数料を無料化することで、彼らを囲い込もうという狙いがあると考えられます。
そして、こうしたSBI証券・楽天証券の動きは、ほかの大手ネット証券にも影響を与えているようです。
マネックス証券は、2023年8月31日、「マネックス証券が提供する運用リターンにコミットする商品・サービスについて」と題したリリースを発表。現行の国内株式手数料体系を維持することを明らかにしています。これによると、同社は手数料の引き下げではなく、米国株サービスの強化や、ポイント還元率の高い投信積立サービスなどによって、ユーザーに付加価値を提供していくことを目指すとしています。
ただし、2023年9月28日には、新NISAで扱うすべての商品(日本株・米国株・中国株・投資信託)の売買手数料を無料にすることを発表。新NISAにおいては、SBI証券、楽天証券を意識した動きを見せています(マネックス証券については、本章最後に追記あり)。
auカブコム証券は、2023年9月26日に、「auカブコム証券 『すべてのひとに資産形成を。』の実現に向けた今後の取り組みについて」と題したリリースを発表しています。
これによると、今後、現行NISAにおいてすでに手数料が無料の国内株式、投資信託に加え、新NISAにおける米国株、単元未満株の手数料の無料化(2024年1月予定)や、信用大口優遇プランの拡充(2024年前半予定)などを予定しているとのこと。一部手数料の引き下げや、そのほかのサービスの拡充で他社に対抗する構えです。
松井証券は2023年8月31日に、新NISAにおける、日本株、米国株、投資信託の売買手数料を無料とすることを発表しています。
また、2023年11月から始める新サービス「最大1%貯まる投信残高ポイントサービス」にて、同社が扱う全銘柄を対象に、投資家が保有する銘柄の投信残高に応じて最大1%のポイントを付与することも明らかにしています。
さて、本記事を執筆中の2023年10月4日午後、ネット証券の業界再編を感じさせる大きな動きが明らかになりました。それが、ドコモとマネックスグループの資本業務提携です。これにより、マネックス証券はドコモの連結子会社となります。
マネックス証券がドコモの連結子会社化!(画像はマネックス証券のプレスリリースより)
ドコモのプレスリリースによると、マネックスグループとの提携により、投資分野に本格的に参入していくとのこと。具体的には、同社スマホ決済アプリ「d払い」を通じた資産形成サービスの提供や、ドコモショップなどを通じた投資情報や金融教育コンテンツの提供などを予定しているようです。
同日19時から開催された記者発表によると、今後も「マネックス証券の名前は残す方向性」とのこと。ドコモが展開する金融サービスとのすみ分けや、両社の提携によってどのようなサービスが生まれるかなど、今後の展開が非常に気になります。
新NISAのスタートを目前にして、大きく動き出した感のあるネット証券業界。今後もインパクトの強い変化が続く可能性があります。これから新たにネット証券での口座開設を考えている人、あるいは、新NISAをきっかけに既存の口座からの変更を考えている人などは、しばらく各社の動きを注視し、ご自身の取引スタイルでメリットのある証券会社をチョイスしたいところです。
FX専業大手の外為どっとコムは、ポケットカードとの提携カード「外為どっとコムカード」の発行を2023年8月26日から始めました。
通常時2%還元、初年度3%還元と、高い還元率が特徴の「外為どっとコムカード」(画像は外為どっとコムのプレスリリースより)
同カードは外為どっとコム会員に向けて発行される初めてのクレカで、入会金・年会費は永年無料。国際ブランドはVisaで、タッチ決済やアプリでのカード管理ができ、追加でETCカードも発行できます。
最大の特徴はその還元率の高さ。利用金額の2%分が、同社オリジナルポイントの「FXポイント」で還元されます(申し込みの翌年同月末までは合計3%が還元されます)。外為ドットコムでは、これまでも各種サービスやキャンペーンにより「FXポイント」を付与していましたが、「外為どっとコムカード」の登場により、「FXポイント」を貯めやすくなったのは間違いないでしょう。
なお、貯まった「FXポイント」ですが、同社の外貨積立サービス「らくらくFX積立」(通称「らくつむ」)に利用することができます。「らくらくFX積立」は、1通貨、あるいは100円から外貨を定期的に積み立てられるサービスです。少額からの取引が可能ですが、為替差益はもちろん、スワップポイントも受け取れ、元本の3倍までのレバレッジも利用することができます。
2023年10月2日、三井住友カードは、同社対象カードのポイントアッププログラム「対象のコンビニ・飲食店で最大7%還元!」の対象店舗を追加すると発表しました。
ミニストップとモスバーガーが加わり、最大7%還元となる対象店がさらに拡充(画像は三井住友カードのプレスリリースより)
「対象のコンビニ・飲食店で最大7%還元!」は、三井住友カードが発行する多くのカードに付帯している目玉特典のひとつ。2023年7月より、それまでの「最大5%還元」から2%還元率が上がり、注目度が増していました。
今回この特典の対象店に新たに加わったのは、コンビニの「ミニストップ」と、ファストフードチェーンの「モスバーガー」です。これらの店舗で、対象の三井住友カードにて、スマートフォンのタッチ決済で支払うと、利用金額200円につき7%の「Vポイント」が還元されます。リアルカードのタッチ決済で支払った場合は5%還元、それ以外の方法で支払った場合はポイントアップの対象外です。
今回加わった2つのチェ―ンは、いずれも人気、知名度ともに高く、本特典の魅力アップにつながりそうです。
最後に、現在実施されているキャッシュレス関連のキャンペーンの中から、編集部がチョイスした3つのキャンペーンをご紹介します。
「ローソンでQUICPayを利用すると抽選で300円キャッシュバック」など、3つのキャンペーンをご紹介(画像はQUICPay公式サイトより)
開催中〜2023年10月31日
https://www.quicpay.jp/campaign/2023/quicpay_lawson.html
JCBは、同社クレカのオリジナルシリーズにて、2024年3月31日まで、家族カードの同時入会、もしくは追加入会で、最大4,000円キャッシュバックとなるキャンペーンを実施しています。期間中、家族カードを新規で申し込み、申し込んだ家族カードでMyJCBに登録し、ログインすることが条件。家族1名につき2,000円のキャッシュバックとなり、上限は4,000円です。
開催中〜2024年3月31日
https://my.jcb.co.jp/campaign/myj/family_card_os2310/index.html
セゾンカードは、2023年11月20日の期間中の「5日、20日」に、最大全額キャッシュバックとなるキャンペーンを実施中です。期間中にコースを選んでエントリーし、「5日、20日」に合計500円以上対象カードを利用すると、抽選で1万100名にキャッシュバック特典が当たります。
コースは「全額キャッシュバック」と「10円キャッシュバック」の2コース。「全額キャッシュバック」は100名、「10円キャッシュバック」は1万名に当たります。なお、「全額キャッシュバック」の上限は1万円までです。
開催中〜2023年11月20日
https://www.saisoncard.co.jp/present-campaign/entry/saison-luckyday2309/