「楽天」、「ドコモ」、「au」、「PayPay」。今、ポイ活に欠かせないのが「ポイント経済圏」(ネット経済圏とも)という考え方です。これは、リアル店舗やECサイト、銀行、証券、携帯電話など、同じ企業グループ(あるいは提携グループ)のサービスで「同じポイント」が貯まり、それをお金代わりに使えるエコシステムのことを指します。
本企画では、ますます注目度が高まるポイント経済圏のヘビーユーザー(住人)に取材。経済圏の内側で実践しているリアルなポイ活について聞いていきます。今回は「ドコモ経済圏」がテーマ。毎年コンスタントに「dポイント」を貯め続けている「おちみかん」さん(ハンドルネーム)にお話をうかがいました。
取材協力・解説 おちみかんさん
関西地方在住の30代男性。食品関係の会社で働くかたわら、運営するサイトやSNS上でドコモ経済圏のおトク情報を発信。毎年「dポイント」を10万ポイント程度獲得
おちみかんさんはドコモ携帯のユーザー歴18年で、4年ほど前から「ドコモ経済圏」でのポイ活に本腰を入れています。ここ数年のおちみかんさんのポイ活の成果は下記のとおりです。
2021年:約10万ポイント
2022年:約15万ポイント
2023年:6万9,711ポイント
2022年のポイント数が多いのは、マイナポイント第2弾でもらった2万ポイントの影響です。いっぽう、昨年2023年は、年間100万円以上利用すると翌年以降の年会が永年無料になる「三井住友カードゴールド(NL)」の“修行”(※)をしていたため、6万9,711ポイントという結果に。2024年は再びドコモ経済圏に集中しているので、8〜10万ポイント獲得を想定しています。
▼「三井住友カードゴールド(NL)」については下記の記事で詳しく解説しています。
例年と比べると2023年のドコモ経済圏でのポイント獲得数が少なかったおちみかんさん。前出のとおり、ドコモ以外のクレカを併用していたことが主な要因とのことですが、それ以外に、ドコモ経済圏の複数の改悪も影響したと振り返ります。
おちみかんさんの2023〜2024年にかけての「dポイント」獲得数の推移(月別)
「d払いステップボーナス」は、ドコモのスマホ決済「d払い」の前月の決済回数やドコモ系サービスの利用状況に応じて、「d払い」のポイント還元率が1か月間おトクになる特典のこと。「d払い」の通常還元分などと合計すると、最大で2.5%還元まで目指せる魅力的な内容でした。
2022年9月に始まった特典でしたが、残念ながら2023年8月判定分を最後に終了しました。私は最大還元率の条件を満たしていただけに残念です。このプログラムは元々「d払い」の利用者を増やす目的でスタートしたと言われていました。これは推測ですが、目的が一定程度果たせたため終了したのかもしれません。
「ドコモでんき」はドコモの「新電力」(電力自由化によって既存の電力会社以外の企業が始めた電気の小売事業のこと)で、2022年3月から始まったサービスです。「ドコモでんきBasic」と「ドコモでんきGreen」の2つのプランがあり、毎月の支払いに応じて「dポイント」が貯まるのが特徴です。2022年から2023年にかけて、世界的なエネルギー価格の高騰などを受けて「ドコモでんき」にもさまざまな影響があったようです。
電力供給の見通しがたたないなどを理由に、2022年11月8日〜2024年2月29日までの間、「ドコモでんき」の新規の申込受付が停止されました。さらに、当初最大10%だったポイント還元率も、2023年6月(7月検針分)に最大6%にまで引き下げられました(いずれも「ドコモでんきGreen」プランで「dカードGOLD」を利用した場合)。
※編集部注
「ドコモでんき」は、2024年3月1日より、一部エリアで新規申込受付が再開。また2024年4月(5月検針分)からは、中部電力エリア、関西電力エリア、九州電力エリアで最大10%還元に戻るなど、ポイント還元率についても回復傾向にあります(電力エリアによってポイント還元率は異なります)。
2024年1月からは、ドコモのゴールドカード「dカードGOLD」を「保有」することで対象となっていた「ドコモの携帯料金に対するポイント付与」の条件も変わりました(発表は2023年11月)。それまでは、このカードを保有しているだけでドコモの携帯電話(一部プランを除く)やドコモ光の利用料金の10%分の「dポイント」が付与されていましたが、2024年1月利用分以降は、「dカードGOLD」でこれらの料金を「支払う」ことが、ポイント付与の条件に変更されています。
以前は、「dカードGOLD」保有分の10%の「dポイント」を獲得しつつ、別のクレカで支払うことでそのクレカ分のポイントを別途受け取ることができたわけですが、これができなくなりました。残念な変更ですが、ほかの通信キャリアでは、この条件(同系列のクレカでの決済で携帯料金の10%還元)が一般的なので、仕方のない変更だと思っています。
「dカードGOLD」にはもう一点変更がありました。それが、年間利用額に応じて受け取れるクーポンの“減額”です(発表は2023年11月)。従来、年間利用額100万円以上で1万1,000円分のクーポンが受け取れていましたが、これが1万円分に減額。さらに、従来は年間利用額200万円以上で2万2,000円分受け取れていたクーポンが廃止になりました(※)。従来のクーポンは2023年12月利用額までが対象なので、実質的に今後は新ルールでクーポンが配布されます。
※ドコモによると、年間利用額が200万円を超えるユーザーに対する新サービスは2024年秋ごろに発表予定とのこと。
このクーポンは「dショッピング」などドコモ系のECサイトの支払いで使えるので、私のようなヘビーユーザーには使い勝手のよいものです。私自身は年間利用額が100万〜200万円以下なので、使える額が1,000円分減ることになります。
「d払いステップボーナス」しかり「ドコモでんき」しかり、企業側の事情によって条件がすぐに変わってしまうのはポイントサービスの宿命ですが、ネガティブな変更が相次いでいたドコモ経済圏を、おちみかんさんはどう受け止めているのでしょうか。
昨年2023年からドコモ経済圏は条件悪化の動きが多く、ほかのポイント経済圏と比べると「やや弱くなった」との印象を受けていたのは事実です。ただし、ここにきてドコモ経済圏にもいくつか新しい動きが出てきていて、今後に向けての期待感は高まっています。
おちみかんさんが期待する「新しい動き」のひとつが、ネット証券大手「マネックス証券」との提携です。2024年夏以降、両社が提携した新サービスが順次スタートしていくとアナウンスされています。
現状、マネックス証券では「マネックスカード」を使った投信積立(クレカ積立)に対して、1.1%という高い還元率でマネックスポイントが付与されています。同社の発表によると、今後、同社における「dポイント」の扱いも「マネックスポイント」と同水準になるとのこと。これを踏まえると、2024年夏ごろに始まるとされている「dポイント」が貯まる「クレカ積立」でも1.1%程度の高い還元率が期待できそうです。
また、2024年秋ごろには「dポイント」での投資信託の購入や、投資信託の保有額に応じた「dポイント」の付与、2024年冬頃にはdアカウントによるマネックス証券へのログイン・口座開設なども予定されています。
ドコモ経済圏はこれまで、金融サービスが弱いとされてきましたが、マネックス証券との協業でこの評判が変わる可能性があると見ています。特に「dカード」で投資信託の積み立て(クレカ積立)ができるようになるのは大きく、仮に5万円を積み立てると、1.1%還元なら月に550ポイント、年間で6,600ポイントとなるので見逃せません。私は現在「SBI証券×三井住友カード」の組み合わせでクレカ積立を利用していますが、夏以降は「マネックス証券×dカード」のクレカ積立への乗り換えも検討しています。
マネックス証券での「dポイント」が貯まるクレカ積立は2024年夏ごろスタート予定。使えるクレカはもちろん「dカード」や「dカードGOLD」です(画像はマネックス証券公式サイトより)
そして、2024年4月10日にはAmazonとの協業も発表されて話題となりました。
これにより、「dアカウント」と「Amazonアカウント」を連携すると、Amazonでの買い物の際に「dポイント」を使ったり、貯めたりできるようになりました。具体的には、Amazonでの1回の注文で5,000円以上支払うと、金額の1%分の「dポイント」が付与されるほか(※)、手持ちの「dポイント」を1ポイント=1円でAmazonでの支払いに使うこともできます。
このほか、NTTドコモ経由で「Amazonプライム」を契約すると毎月120ポイント還元される特典や、ドコモの中・大容量プランの契約で+1%の還元率アップ、60歳以上のユーザーの場合も+1%の還元率アップなど(いずれもAmazonで「d払い」を使って支払った場合の還元率)の特典も用意されています。
※ポイント付与上限は1回の注文で100ポイントまで。実質的には1万円までの買い物にポイントが付く。
昨年からの改悪で、ほかの経済圏と比較してポイ活面での弱さを感じていたので、Amazonとの協業はうれしい発表でした。私はAmazonも時々使いますが、使うのは金曜・土曜が中心です。この日は「d曜日」に該当し、ポイントの還元率が3.5%に上がるからです(要エントリー)。今回の協業でここにさらに+1%上乗せされるので、Amazonで「dポイント」がさらに貯まりやすくなりました。 なお、ドコモの携帯電話を契約していない“ドコモ経済圏の住人以外の人”でも、Amazonで「dポイント」を貯めて、使うことができるので、「dアカウント」と「Amazonアカウント」を連携させておいて損はないと思います。
毎週金・土曜日は「d曜日」として、Amazonをはじめとする対象のネットショップで「d払い」のポイント還元率がアップします(画像はドコモ公式サイトより)
▼ドコモとAmazonの連携によるメリットについては下記の記事で詳しく解説しています。
以上のように、さまざまな変化が続いているドコモ経済圏。最後に、おちみかんさんが現在具体的に取り組んでいるポイ活の方法を教えてもらいます。
おちみかんさんが利用しているクレカは、ドコモのゴールドカード「dカードGOLD」です。年会費は11,000円必要ですが、水道光熱費などの毎月の固定費や、前出のとおりポイントが10%還元になるドコモ携帯やドコモ光の料金など、あらゆる支払いを集約させることで、年会費以上のメリットがあると言います。
「dカードGOLD」基本の還元率は1%と悪くありません。これに加えて、ドコモの携帯料金の10%還元や、年間100万円以上使うともらえる10,000円相当のクーポンがあるので、私の場合は1年間普通に使うだけで年会費以上のメリットを受けられます。
おちみかんさんが買い物でもっとも利用する機会が多いのが、ドコモ系の総合通販サイト「dショッピング」です。通常はクレカ払いや電話料金合算払いで1%のポイントが付きますが、毎月10日と20日に開催される「dショッピングデー」時には、ポイント還元率が最大で40倍にアップします。
「dショッピングデー」では、公式サイトからエントリー後24時間の間に4,400円以上買い物すると、ポイント還元率が10倍〜最大40倍になります(購入商品によって還元率は異なる)。私はこの機会に、米や水など保存のきく食料や、日用品などをまとめて買うようにしています。ポイント付与の上限は1回あたり5,000ポイントまでですが、チャンスは月に2回あるので、買い物を分散させてポイント獲得につなげています。 「dショッピング」は「楽天市場」並みとまではいかないかもしれませんが、取り扱う商品の幅は意外と広く、普段の買い物に十分役立っています。
おちみかんさんのポイ活の核になっているのが「dショッピングデー」でのまとめ買い。この特典が悪化することがあれば、ドコモ経済圏から離れる可能性もあるとのこと(画像はドコモ公式サイトより)
街中での買い物では、ドコモのスマホ決済「『d払い』の加盟店」を積極的に利用。「d払い」の支払い方法を「dカードGOLD」に設定すると、決済時に1%のポイントが還元されます(「d払い」決済分の0.5%と、「dカードGOLD」分の0.5%の合算)。
また、これとは別に、支払先が「『dポイント』の加盟店」であれば、「dポイントカード」の提示でも1%のポイントがつきます。「dポイントカード」は「d払い」のアプリ内でも表示させることができるので、欠かさず提示するようにしているとのことです。
少しややこしいですが、「『d払い』の加盟店」と「『dポイント』の加盟店」は異なるグループです。なかには、「『d払い』の加盟店」かつ「『dポイント』の加盟店」という店舗もあり、この場合は合計で2%還元されます。たとえば、大手ドラッグストアの「ココカラファイン」がこれに該当します。私は「dショッピングデー」で買わない日用品の多くを「ココカラファイン」で買っています。
「d払い」で最大2%還元の内訳(画像はドコモ公式サイトより)
今回の取材でおちみかんさんに教えてもらったとおり、2023年以降のドコモ経済圏は、既存の特典の悪化が目立ちました。いっぽうで、マネックス証券やAmazonとの協業など、経済圏を広げていく動きもあり、良くも悪くもドコモ経済圏は変化の大きい状態が続いているようです。
おちみかんさんが話したように、これまでドコモ経済圏は金融サービスに弱いとされていました。その意味で、今年の夏以降本格的に提携サービスがリリースされていくマネックス証券との連携は注目の動きと言えるでしょう。新NISAで投資に注目している人が増えているタイミングでもあり、「dポイント」でのクレカ積立やポイント投資にうまく関心を集めることができれば、ドコモ経済圏の発展につながるかもしれません。