めまぐるしく変化するキャッシュレス関連の動向を月イチで伝える本連載。キャッシュレス関連のニュースの中から、マネー担当の編集部員やライターが気になったものをピックアップしてお伝えしています。
今回は、楽天証券が、主要ネット証券としては初めて、単元未満株取引での「指値(さしね)注文」に対応した動きからお伝えします。楽天証券はすでに、単元未満株取引での「リアルタイム取引」にも対応しており、他社と比較して、単元未満株取引での充実ぶりが目立ちます。
単元未満株を、「リアルタイムかつ指値」で取引できるのは、2024年9月時点では楽天証券のみ(画像はイメージです)
このほか、PayPayの「給与デジタル払い」開始の動きや、メルカリによるビットコインの積立サービスについてもお伝えします。
3行サマリー
〇楽天証券は、2024年8月26日より単元未満株取引における「指値注文」に対応
〇単元未満株取引で「指値注文」が可能になるのは主要ネット証券で初
〇すでに対応している「リアルタイム取引」と合わせて単元未満株の取引環境が改善
楽天証券は、2024年8月26日より、国内株式の単元未満株取引(サービス名「かぶミニ」)において、国内主要ネット証券では初めてとなる、「指値(さしね)注文」に対応しました。
これにより、楽天証券の単元未満株取引では、すでに対応している「リアルタイム取引」と合わせて、「リアルタイムかつ指値で注文できる」ことになり、一般的に語られる「単元未満株取引のデメリット」を解消する仕組みとして、個人投資家の注目を集めています。
本章では、まず、「単元未満株取引のデメリット」を解説。そのうえで、楽天証券の単元未満株取引の優位性についてお伝えします。
楽天証券の単元未満株取引にはどんなメリットがあるのか?
●「単元未満株取引」は1株から少額で買える仕組み
現在、国内株式の最低取引単位(単元)は「100株」です。仮に1株5,000円の株を買う場合は最低でも50万円が必要になってきます。銘柄の価格にもよりますが、この“用意すべき元手”の存在が、投資をするうえでのハードルになっている個人投資家も多いと思います。
そこで、多くの証券会社は、1単元の株数に満たない数の株(1株)から取引できる、単元未満株取引のサービスを提供しています。これにより、株価が一定以上の株にも少額から投資できることから、主に、投資ビギナー層に人気の取引方法となっています。なお、多くの証券会社では、新NISAの「成長投資枠」においても単元未満株を取引することができます。
●制限1:約定タイミングは1日1〜数回
ただし、単元未満株取引には注意すべき“制限”があります。そのひとつが「約定タイミング」です。約定とは、株の注文を出したあと、その取引が成立した状態を指します。
単元未満株取引では、基本的に約定タイミングが1日1〜数回に限られます(頻度は証券会社による)。このタイムラグによって、注文時点の価格が、取引成立までに大きく変わってしまう可能性があります。
●制限2:注文は「成行」のみ
そして2つめは「注文方法」です。株の注文方法には、主に下記の2つがあります。
・「指値注文(さしねちゅうもん)」……買いたい株価を指定して購入(売却)の注文を出す方法。売買成立よりも価格を優先。
・「成行注文(なりゆきちゅうもん)」……値段を指定せずに購入(売却)の注文を出す方法。値段は取引が成立した相手によって決まる。値段よりも売買成立を優先。
それぞれに利点や目的があるわけですが、単元未満株取引においては、基本的に「成行注文」しかできません。
これら2つの制限の存在により、単元未満株取引では、想定外の価格で売買が成立してしまう可能性があるというデメリットがあります。
ここで、あらためて楽天証券の単元未満株取引の内容を見てみましょう。
●以前より「リアルタイム取引」に対応
楽天証券の単元未満株取引では、2024年8月以前より、「寄付取引(よりつきとりひき)」(1日1回約定)と、通常の株取引と同じようにリアルタイムで取引できる「リアルタイム取引」の2種類が用意され、ユーザーが好きなほうを選んで取引できる仕様でした。
手数料無料の「寄付取引」に対し、「リアルタイム取引」では売買時に0.22%のスプレッド(※1)が発生し、また、取引できる銘柄にも限りがありますが(※2)、ほかのネット証券にはないサービスとして知られていました。
※1 この場合のスプレッドとは、本来の株価から加減されて生じる価格差を意味し、実質的な手数料のこと。楽天証券の単元未満株取引の「リアルタイム取引」では、買い注文時に株価(東証基準価格)の0.22%が加算され、売り注文時には0.22%が減算。
※2 2024年8月23日時点で、「寄付注文」に対応する銘柄は1,758。「リアルタイム取引」に対応する銘柄は722。
●2024年8月より「指値注文」に対応
そして、今回、楽天証券は単元未満株取引での「指値注文」に対応することになりました。主要ネット証券で、単元未満株取引での「リアルタイム取引」と「指値注文」が可能なのは、現時点では楽天証券のみとなります。
主要ネット証券の単元未満株取引サービス比較。画像は楽天証券公式サイトより
●スプレッドと取引可能銘柄には注意
楽天証券の単元未満株取引のうち、「指値注文」が選べるのは「リアルタイム取引」のみとなるため(「寄付取引」は「成行注文」のみ)、必然的に0.22%のスプレッドが発生する点はやや気になる人もいるかもしれません。また、前出のとおり、取引できる銘柄数にも制限があります。
このように、注意すべき点はあるものの、「少額から投資してみたい」「単元未満株取引でも取得価格を確実に抑えたい」といった人にとっては、十分に魅力を感じられる仕組みが整ったと言っていいでしょう。
現在、新NISAの影響もあり、個人投資家獲得に向け、ネット証券各社がサービス改善を競うような状況となっています。今後他社も追随してくる可能性は十分に考えられますが、現時点では、単元未満株取引の利便性において、楽天証券が一歩抜け出した形となっています。
下の2つの記事では、単元未満株取引の基本や、実践者の体験記を紹介しています。
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3行サマリー
○PayPayが「給与デジタル払い」対応の資金移動業者として国の指定を受けたことを発表
○ソフトバンクグループ従業員のユーザーに対し「PayPay給与受取」の提供を開始
○2024年内には、PayPay全ユーザーへの「PayPay給与受取」の提供を予定
2024年8月、 PayPayは、「給与デジタル払い」に対応する資金移動業者として厚生労働大臣の指定を受けたことを発表しました。
これにより、まずソフトバンクグループ社員のPayPayユーザーに対し、PayPayアカウントで給与を受け取れる「PayPay給与受取」サービスの提供をスタート。その後、2024年内には、PayPayの全ユーザーを対象として、同サービスを提供する予定であることを明らかにしています。
画像はPayPay公式サイトより
数年前から「給与デジタル払い」という言葉をよく目にするようになりました。これは、会社が従業員の給与を、PayPayなどの資金移動業者の口座に支払える制度のことを指します。
従来、会社から従業員への給与の支払いは、現金か、銀行や証券の口座への振り込みのみが認められていました。しかし、2023年4月に制度が改正され、厚生労働大臣から指定を受けた資金移動業者の口座も利用可能となっていました。今回、資金移動業者として初めて、PayPayがこの指定を受けた形です。
この指定を受け、PayPayは、2024年8月14日より、PayPay、ソフトバンク、LINEヤフーなどのソフトバンクグループ10社の従業員に「PayPay給与受取」の提供を開始しました。希望する従業員を対象に、2024年9月分の給与からPayPayアカウントへの給与支払いを始めます。
PayPayの発表によると、本施策には、福利厚生の一環として従業員の給与受取の方法の選択肢を増やすとともに、グループ全体でPayPay経済圏の拡大を推進する狙いがあるとのことです。
ただし、「PayPay給与受取」にはいくつかの注意点があるようです。
たとえば、「PayPay給与受取」で振り込まれるのは新設される「PayPayマネー(給与)」という電子マネーになります。機能的には従来の「PayPayマネー」とほぼ変わりがないもののようですが、厚生労働省のガイドラインにより、資金移動業者のサービスにおいて、「給与デジタル払い」の口座と「それ以外」の口座とを分けるよう定められているため、わざわざ違う名称の電子マネーで振り込まれるようです。
また、「PayPayマネー(給与)」は、1アカウント20万円までしか保有ができません。この上限を超えてしまう場合は、従業員があらかじめ設定した本人名義の金融機関口座(自動送金先口座)へ、PayPayから手数料無料で送金されます。
「PayPay給与受取」を利用するユーザーの「PayPayマネー」の残高上限額は80万円に設定され、「PayPayマネー」と「PayPayマネー(給与)」の合計で100万円が保有上限となります。
「PayPay給与受取」の登場により、いよいよ、具体的に「給与デジタル払い」の動きが出てきました。
たしかに、給与をPayPayで直接受け取ることで、チャージなどの手間がなく“すぐにPayPayで使える状態”を作ることができるのは、PayPayをよく使うユーザーにとってはメリットになるかもしれません。また、PayPay側にとっても、こうした状態が生まれることによって、店舗での支払い機会の拡大はもちろん、「PayPay証券での資産運用」など、PayPay関連のサービスの利用につなげていくメリットも考えられます。
いっぽう、給与を支払う側のメリットについては、これまでのところなかなか見えてきません。PayPayが開設した「PayPay給与受取」の事業者向けサイトを見ても、導入のメリットとしては、「従業員のニーズに応えること」や「企業イメージの向上」といったあたりへの言及にとどまっています。
そもそも論ではありますが、「給与デジタル払い」を利用するには、雇用主と従業員間での労使協定の締結や、雇用主と従業員との個別の同意が必要です。今後、「PayPay給与受取」がPayPayの全ユーザーに対応しても、勤務先が対応していないと利用することはできない点は留意しておきたいところです。
3行サマリー
○メルカリが、「メルカリビットコイン取引」において積立機能を追加
○決めたタイミングで1円からの積立設定が可能、引き落とし対応金融機関は800以上
○サービス開始1年で220万口座獲得した「ビットコイン取引」の人気に拍車をかけるか
メルカリのグループ会社で、暗号資産やブロックチェーン関連サービスの企画・開発を手がけるメルコインは、2024年8月1日より、メルカリアプリ上で設定ができ、銀行口座からの自動引き落としでビットコインを積み立てられる「ビットコインつみたて機能」のサービスを始めました。
画像はメルコイン公式サイトより
「ビットコインつみたて機能」では、1円から任意の金額で積立金額を設定可能です。積み立ての頻度も月1回(7日、14日、21日、28日から選択)、月2回(7日、21日、もしくは14日、28日のいずれかを選択)、月4回(7日、14日、21日、28日)から選べます。また、自動引き落としに登録できる金融機関は800以上と豊富に用意されています。
積み立てたビットコインはいつでもメルペイ残高に出金することができ、買い物やメルカリ内での支払いなどに利用することができます。
メルコインは、メルカリの売上金やポイントをビットコインと交換できる、「ビットコイン取引」サービスを2023年3月に開始。2024年5月に同サービスの暗号資産口座数は220万口座を突破し、2023年4月から1年間の暗号資産取引口座開設者数において、業界トップを記録する人気サービスとなっています。今回ここに「ビットコインつみたて機能」が加わることで、その人気ぶりに拍車がかかるかもしれません。
最後に、現在実施されているキャッシュレス関連のキャンペーンの中から、編集部がチョイスした3つのキャンペーンをご紹介します。
期間中、キャンペーンサイト上から、ポイントアップ対象となるショップ(マクドナルド、ケンタッキーフライドチキン)ごとに「ポイントアップ登録」を行い、JCBのプロパーカード(JCBオリジナルシリーズ)で買い物をすると、基本倍率に加えてキャンペーン倍率分のポイントが進呈されます(通常ポイント+29倍=30倍)。
付与上限は、2024年9月15日決済分までが500ポイント、同9月16日から10月15日までの決済分が500ポイントで、合計1,000ポイント(5,000円相当)となります。
期間:開催中〜2024年10月15日まで
期間中にJCBのタッチ決済で東急線の運賃を支払うと運賃が50%オフになります(上限は500円)。タッチ決済対応マークのあるJCBカードか、対象カードをメインカードに設定したApple Payに対応したiPhoneを用意し(要カード認証)、東急線の専用改札(Q SKIP対応改札)にかざして支払うことで、キャンペーンが適用されます。
期間: 開催中〜2024年9月19日まで
キャンペーンにエントリーのうえ、対象店舗で会計時に「モバイルVカード」を提示し、Vポイントを期間中合計5ポイント以上利用することが条件。期間中の合計利用ポイントの20%分が、後日まとめてポイントバックされます。対象店は、ドトールコーヒーショップ、エクセルシオールカフェ、ドトール珈琲農園、ドトール珈琲店、カフェレクセル、本と珈琲 梟書茶房です。
ポイントの進呈時期は2024年10月下旬で、本キャンペーンで受け取ったポイントの有効期限は2025年1月末まで。
エントリーおよび実施期間:開催中〜2024年9月30日